スズキ・スイフト ハイブリッドRS(FF/CVT)/スイフトRSt(FF/6AT)
まぎれもない力作 2017.01.30 試乗記 スズキの世界戦略を担うBセグメントのコンパクトカー「スイフト」が、新型にフルモデルチェンジ。欧州仕込みの足まわりを持つ「RS」系の2グレードには、今このクラスに求められるクルマの要素がそろっていた。フロントシートは出色の出来栄え
先代、先々代と、10年以上にわたりキープコンセプトだったデザインが変わった。スイフトがこれまで持っていたDNAを継承しながら、先々代のデザイナーを再登板させて「変革を持たせた」というのだから、作る側の気合の入りようが分かる。
第一印象は「低く伸びやかなフォルム」だが、実際には全高は低く、全長は短くなっている。ホイールベースの20mm拡大や前後ライトの造形、フロントグリルの大型化などが、良い意味で影響しているのだろう。
室内はナビや空調類のパネルを5度ドライバー側に傾斜させている。ナビ類の視認性はこれだけでかなり違ってくるが、その一方で助手席側に“孤立感”が出ないようバランスを取り、全体として良好な前方視界や左右方向の伸びやかさを確保するなどうまく仕上げている。
フロントシートも出来がいい。最初のタッチは柔らかく、座る者の体を沈ませつつ最後のところでしっかりと支持する。特に臀部(でんぶ)の支え方は絶妙で、開発者によれば「スズキで最も高密度なウレタンを使っている」とのこと。ショルダー周りのサポートも旧型より向上している。ランバーサポート部の張り出しは腰痛持ちの筆者としてはもう少し欲しかったが、十分な仕上がりだ。
一方で、リアシートはリクライニング機構もなく(軽量化のため廃止)、座面全体の寸法は旧型と同じ。それでもホイールベースの拡大やフロントシート下部への足入れ性の改善などにより、居心地は悪くない。ラゲッジルームも奥行きを75mmも拡大。実用性の向上を高く評価したい。
新型のエンジンラインナップは3種類。今回筆者に用意されたのは、スズキではおなじみの1.2リッター直4+マイルドハイブリッドシステムと、すでに「バレーノ」に搭載されている1リッター直3ターボ仕様(ただしレギュラーガソリン仕様に変更済み)の2台。いずれも欧州で足腰をチューニングしたRS系だ。
販売の主力を担う欧州仕込みのRS
スズキはもともと、かの地でのチューニングを徹底して行っている。ユーザーにもその姿勢は受け入れられており、特に先代スイフトに特別仕様車として設定された「RS」は、販売末期には約3割のシェアを確保していたそうだ。ゆえに今回、スズキがRS系を販売のフックとしたねらいもよくわかる。
この2台に共通して感じたのは、後輪の接地感の高さ。誰にでもわかりやすく、コーナリングは非常にスムーズだ。一方、パワステは直進時におけるセンター部の曖昧さがやや気になる。もう少しピシッとした感覚が欲しい。
個々で見ると、マイルドハイブリッド車はもともと高い静粛性にプラスして、アンダーフロアまわりの遮音がよく効いている。アイドリングストップ機構は時に気になる作動時のギクシャク感も改善し、さらにエンジン始動時のショックの少なさはスズキ車全体の大きなアドバンテージだ。JC08モード燃費は27.4km/リッターだが、今回、市街地と高速道路を混在させて走ったところ、メーター内の燃費計は22.4km/リッターを示した。まずは十分といえる。
一方、ターボ車はいろいろな意味で期待以上の性能だった。アイドリング時の細かな振動と音質に関しては、マイルドハイブリッド車に比べてやや劣るが、走りだしてしまえば問題はないし、加速感も上々。売りのひとつである“徹底した軽量化”が効いていることは間違いない。常用域から4000rpmまでの豊かなトルクの出方もあって、市街地走行はもちろん高速走行時も走りはスッキリとしている。付属のパドルシフトを活用すれば、もっとドライブが楽しくなるだろう。燃費もマイルドハイブリッド車と同じルートを走って19.7km/リッターと、十分な性能だった。
マイルドハイブリッド車を除いてアイドリングストップ機構が付かないことや、アダプティブクルーズコントロールが全車速対応でない部分など改善すべき点は多いが、それでもこのクラスで確固たるポジションを持つ「マツダ・デミオ」の強力なコンペティターとなることは間違いない。
昨今、グローバルでの販売のためにコンパクトカーといえどもボディーは大型化される傾向にあるが、5ナンバーサイズを堅持しつつしっかりとしたクルマに仕上げた点にも、スズキの底力を感じる。
(文=高山正寛/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
【スペック】
スイフトRSt
全長×全幅×全高=3840×1695×1500mm/ホイールベース=2450mm/車重=910kg/駆動方式=FF/エンジン=1リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ(102ps/5500rpm、15.3kgm/1700-4500rpm)/トランスミッション=6AT/燃費=20.0km/リッター/価格=170万4240円
スイフト ハイブリッドRS
全長×全幅×全高=3840×1695×1500mm/ホイールベース=2450mm/車重=910kg/駆動方式=FF/エンジン=1.2リッター直4 DOHC 16バルブ(91ps/6000rpm、12.0kgm/4400rpm)/モーター=直流同期電動機(3.1ps、5.1kgm)/トランスミッション=CVT/燃費=27.4km/リッター/価格=169万1280円
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

高山 正寛
-
ホンダN-ONE e:G(FWD)【試乗記】 2025.12.17 「ホンダN-ONE e:」の一充電走行距離(WLTCモード)は295kmとされている。額面どおりに走れないのは当然ながら、電気自動車にとっては過酷な時期である真冬のロングドライブではどれくらいが目安になるのだろうか。「e:G」グレードの仕上がりとともにリポートする。
-
スバル・クロストレック ツーリング ウィルダネスエディション(4WD/CVT)【試乗記】 2025.12.16 これは、“本気仕様”の日本導入を前にした、観測気球なのか? スバルが数量限定・期間限定で販売した「クロストレック ウィルダネスエディション」に試乗。その強烈なアピアランスと、存外にスマートな走りをリポートする。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション/ルークスX【試乗記】 2025.12.15 フルモデルチェンジで4代目に進化した日産の軽自動車「ルークス」に試乗。「かどまる四角」をモチーフとしたエクステリアデザインや、リビングルームのような心地よさをうたうインテリアの仕上がり、そして姉妹車「三菱デリカミニ」との違いを確かめた。
-
アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター(FR/8AT)【試乗記】 2025.12.13 「アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター」はマイナーチェンジで4リッターV8エンジンのパワーとトルクが大幅に引き上げられた。これをリア2輪で操るある種の危うさこそが、人々を引き付けてやまないのだろう。初冬のワインディングロードでの印象を報告する。
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】 2025.12.12 「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。
-
NEW
ホンダ・プレリュード(後編)
2025.12.21思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「ホンダ・プレリュード」に試乗。前編ではパワートレインの制御を絶賛した山野だが、シャシーやハンドリング性能はどう見ているのだろうか。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
フォルクスワーゲンTロックTDI 4MOTION Rライン ブラックスタイル(4WD/7AT)【試乗記】
2025.12.20試乗記冬の九州・宮崎で、アップデートされた最新世代のディーゼルターボエンジン「2.0 TDI」を積む「フォルクスワーゲンTロック」に試乗。混雑する市街地やアップダウンの激しい海沿いのワインディングロード、そして高速道路まで、南国の地を巡った走りの印象と燃費を報告する。 -
失敗できない新型「CX-5」 勝手な心配を全部聞き尽くす!(後編)
2025.12.20小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ小沢コージによる新型「マツダCX-5」の開発主査へのインタビュー(後編)。賛否両論のタッチ操作主体のインストゥルメントパネルや気になる価格、「CX-60」との微妙な関係について鋭く切り込みました。 -
フェラーリ・アマルフィ(FR/8AT)【海外試乗記】
2025.12.19試乗記フェラーリが「グランドツアラーを進化させたスポーツカー」とアピールする、新型FRモデル「アマルフィ」。見た目は先代にあたる「ローマ」とよく似ているが、肝心の中身はどうか? ポルトガルでの初乗りの印象を報告する。 -
谷口信輝の新車試乗――ポルシェ911カレラT編
2025.12.19webCG Movies「ピュアなドライビングプレジャーが味わえる」とうたわれる「ポルシェ911カレラT」。ワインディングロードで試乗したレーシングドライバー谷口信輝さんは、その走りに何を感じたのか? 動画でリポートします。 -
ディーゼルは本当になくすんですか? 「CX-60」とかぶりませんか? 新型「CX-5」にまつわる疑問を全部聞く!(前編)
2025.12.19小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ「CX-60」に後を任せてフェードアウトが既定路線だったのかは分からないが、ともかく「マツダCX-5」の新型が登場した。ディーゼルなしで大丈夫? CX-60とかぶらない? などの疑問を、小沢コージが開発スタッフにズケズケとぶつけてきました。















































