第10回:ワタナベ、大いに語る
2017.02.11 バイパーほったの ヘビの毒にやられまして 拡大 |
毎回、記者の完全なる独断と偏見で「ダッジ・バイパー」のリポートをお届けしている本連載。しかし“ドライビングスキルは新生児と同等”という男の感覚だけが評価軸で、ホントによいのだろうか……? 今回は“音速の編集総務”の異名をとるwebCGワタナベに出演を請い、そのドライブフィールを大いに語ってもらった。
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爆音と生ガスの競演
ほった:読者諸兄姉の皆さま、こんにちは。webCGほったです。今回はいつもと趣向を変えて、編集部員による漫才形式でリポートを進めたいと思います。お相手はwebCG編集総務のワタナベ女史です。
ワタナベ:どうも、webCG編集総務のワタナベです。普段はwebCGの取材や公開のスケジュールを組んだり、金庫番をしたり、餃子のハルピンでパクチー餃子を食べたりしているワタナベです。以降、お見知りおきを。
それで、ほった君。
ほった:はい?
ワタナベ:こちらでボーボー言っているクルマが、本日のアシ?
ほった:左様でございます。こちらがわれわれ取材班をJAIA(日本自動車輸入組合)合同試乗会の会場まで運んでくれる、ダッジ・バイパーでございます。
ワタナベ:まじか(ドン引き)。
ほった:ワタナベさん、ご存じですか? ワタクシも人並みに傷つくんですよ。
ワタナベ:とにかく、近隣住民から苦情がくる前に出発しましょう。
あれ、手にカメラを構えているけど、これはあのエッセイでネタに使うつもりなの?
ほった:小田和正です。
ワタナベ:あ~、オフコースね(※)。
ほった:ワタクシ以外の人間にバイパーを運転させ、感想を開陳してもらう。それが今回の趣旨なのです。そもそもエッセイのネタを兼ねないのなら、こんな燃費の悪いクルマを取材のアシに使うなんて許されるわけないでしょう。ささ、分かったらさっさとシートポジションを合わせてください。
シート位置を決めるだけで一苦労
ワタナベ:「シートポジションを合わせてください」ってったって、うわ、このレバーがシートスライドか。普段のクルマと全然違うね。リクライニングが見つからないけど、まあこれで大丈夫かな。ハンドルの調整はどうやるの?
ほった:そっちのレバーでロックを解除してください。ちなみにチルトだけでテレスコピックはありません。代わりにABCペダルの位置が前後しますので、ハンドルまでの距離についてはそちらで調整を。
ワタナベ:あれ? シートベルトがないよ。
ほった:右手をご覧ください(バスガイド風)。
ワタナベ:なんか、シートから海洋生物みたいなものが生えてるんですけど。
ほった:ランバーサポート用のエアポンプです。膨らませないでくださいね! 空気の抜き方が分からないんで。
ワタナベ:トリセツに載ってないの?
ほった:ワタシ エイゴ ワカリマセーン。
ワタナベ:そんなことだろうと思った。だいたいさ、なんでこんなリポートやろうと思ったの? ネタはいっぱいあるでしょ~。
ほった:いえいえ。ちょっと前にバイパーの燃費を紹介する回があったでしょう。あのとき、読者の皆さまやギョーカイ関係者の方から、「燃費が良すぎる」「踏んでないだろう」「もっと性能を使い切れよ!」という声をいただいたので、少し自分以外の人の運転を観察してみようと思いまして。
ワタナベ:ヘンなところで律義だね。
ほった:賛辞として受け取らせていただきます。あらためまして、ただいま2017年1月31日の朝6時。先発隊はこれより、中央道を八王子JCTへと向かいます。
ワタナベ:時計の表示は6時20分だよ。
ほった:その時計は狂っています。
ワタナベ:……。
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ドリンクホルダーはないが、灰皿はある
ワタナベ:ほった君。ほった君。
ほった:なんでしょう?
ワタナベ:さっきから気になってるんだけど。このクルマ、シフトノブのゲートパターンの向きがおかしなことになってない? っていうか、頭の部分がくるくる回っちゃうんですけど。大丈夫なの、これ?
ほった:一応、お巡りさんに摘発されないよう、撮影時以外はセンターコンソールにシフトパターンを描いたシールを貼っております。
ワタナベ:そんな対処方法でOKなのか。……というか、お巡りさんに呼び止められたりするんだね。このクルマ。
ほった:今のところ1回だけですけど。まあ、悪人が乗っていそうなクルマを、悪人面のビバンダム君みたいなのが運転しているわけですから。
ワタナベ:いろいろ自覚はしているのか。それにしても、このセンターコンソール広いね~。こんなに広いのにドリンクホルダーはないんだ。
ほった:灰皿はありますよ。
ワタナベ:灰皿はあるんだね。さすがはアメ車。昔のクルマって感じだね。それと、いつかの回で「収納がないない」って騒いでたけど、助手席の前にキーロックつきの立派なグローブボックスがあるじゃん。
ほった:それは助手席用エアバッグのフタです。キーはベビーシートを載せる時に使う、エアバッグのキルスイッチですよ。書いてあるでしょ?
ワタナベ:あ~ホントだ。「キーを挿しっぱなしにしないでください」だって。キーシリンダーでセルを回さなきゃいけないクルマなのに、こんなところにキーを挿したままで、どうやって運転できるんだか。
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やっぱり、どうにも、しっくりこない
ほった:ワタナベさん。ワタナベさん。
ワタナベ:なんでしょう? 現場のほったさん。
ほった:スピード出すぎです。
ワタナベ:(速度計を見て)まだ60km/hだよ。
ほった:バイパーのメーターはマイル表示です。
ワタナベ:あ~そっか。あぶない、あぶない。
ほった:それと、なんだか随分低いギアで走っている気がするんですけど。このクルマ、飛ばさないなら高速は6速オンリーで無問題ですよ。
ワタナベ:それは失礼。編集部の「フィアット・パンダ4×4」で、変なクセがついてんのかな。
ほった:確かに。パンダ号はシフトダウンしないと坂は上らないし、追い越しもできない虚弱貧弱カーですからね。でも、バイパーであれと同じ感覚でシフトしていたら、ガソリンがいくらあっても足りませんよ! 大磯に着く前に、ガス欠で遭難です。
ワタナベ:そんなに燃費悪くなっちゃうの?
ほった:ウソです。そこまで燃費悪くありません。
ワタナベ:……。
ほった:そんなことで期待されても困ります。あと、ずっと気になっていたんですけど、ワタナベさんシートが前に出すぎじゃないですか? バイザーにオデコぶつけそうですよ。
ワタナベ:迎えに来てくれた時のほった君も、着座位置はこんなだったよ。ちゃんとヒジが曲がる運転姿勢を作ろうとしたら、どうしてもシート位置はこのくらいになるよ。
おシリがズリズリすべるから、背もたれも起こし気味にしないといけないし。はたから見たら、ますます「シート前すぎ(笑)」な印象をうけちゃうね。狭いクルマなのに、背高ノッポなアメリカ人のことしか考えてない運転席だね。
ほった:“グローバルなんちゃら”とか考える必要がなかった、幸せな時代の最後のアメ車なんですよ。
ワタナベ:なるほどねえ……。
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元「ローバー・ミニ」乗りの証言
ほった:そろそろドライブフィールの話もしましょうよ。どうなんですか先生?
ワタナベ:うーん。いや~。何と言うか、これは運転が大変なクルマだわ(笑)。
ほった:運転が大変なクルマですか。オーナーですけど、なんだかすごく、分かる気がします。
ワタナベ:うん。まずクラッチがさ、どこまで抜いたらつながるのかが分かりづらいね。だからギアチェンジですごく気を使う。ペダル位置もほった君が言ってた通りかなりオフセットしてるね。まあ慣れの問題なんでしょうけど。
ほった:左足については、そもそもフットレストもありませんしね。
ワタナベ:そうそう。右足も左足も、ペダルの踏み加減とか足を置く位置とかに気を使うもんだから、なんだか太ももが疲れてくる。それとね、そもそもクラッチペダルがわたしには少し重いかな。
ほった:そうですか? ヘリウムみたいに軽いと思うんですけど。
ワタナベ:それはさー去年まで「ローバー・ミニ」に乗ってたから?
ハンドルもねえ、右に左に振られる感じがあるかな。常に気を使っていないと真っすぐ走れない(笑)。まあ、四六時中ガッツリ握っておかなきゃいけないほどではないけど。
ほった:乗り心地はどうです?
ワタナベ:思ったよりは悪くないよ。でも、目地段差を乗り越えた時のショックは少しくるね。
ほった:でもガツンとはこないでしょう?
ワタナベ:それはね、確かに。今のスポーツカーにありがちなカタさはないし、トガった衝撃もないんだけど、なんだかショックが増幅される気がするんだよね。段差を越えるたびに、びょびょん、ぼよんって跳ねる。後はねえ……こうして普通に走っているだけでも、やっぱりうるさいね(笑)
ほった:うーん。記者としては「まるでロールス・ロイス!」なんですけど。
ワタナベ:それはないでしょ!
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世紀末の乗り物
ほった:小田厚(小田原厚木道路)に入り、そろそろ武蔵野-大磯ツアーも佳境ですが……。ワタナベさん、さっきまで5速とか4速とかで走っていたのに、もうずーっと6速ですね。
ワタナベ:なにニヤニヤしてんの?
ほった:いやあ、すっかりアメ車乗りの運転の仕方だなあと思って。
ワタナベ:だって、大きな加減速さえなければ、6速に入れっぱなしでも取りあえず走っちゃうんだもん。
まあそれを勘定に入れても、のんべんだらりと運転するクルマじゃないよね。これ。ほかに乗った人はいるの?
ほった:助手席に乗ってもらっただけですけど、折戸さんが「マッドマックスに出てくる世紀末のクルマだ。文明社会で乗ってはいけない」って爆笑してました。
ワタナベ:だろうねえ。ほった君は、助手席に乗った感じはどう? たぶん人生初なんじゃないの?
ほった:そうですね。納車から3カ月にして、初めてわがバイパーの助手席に乗りました。遠慮なく足が伸ばせてイイ感じです。でもなんだか足先が熱い。エアコン切ってます?
ワタナベ:暑かったから切ったよ。助手席はエンジンに近いところまで足を伸ばせるから、それもあるんじゃないの?
ほった:あ、これは純粋にエンジンの熱ですね。今度助手席に乗る人がいたら、低温やけどをしないよう言ってあげないといけませんね。
ワタナベ:そうだね。近い将来できるであろう、彼女にね。
ほった:ワタナベさん、それ本心で言ってないですよね。
知ってますか? ワタクシも人並みに傷つくんですよ。
(文と写真=webCG ほった、ワタナベ)
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<告知>
webCG連載エッセイ『バイパーほったの ヘビの毒にやられまして』の看板カー「ダッジ・バイパーGTSクーペ」(2000年)が、代官山のPodium Cafeに展示されることになりました! 期間は2月14日(火)から2月19日(日)まで……でしたが、24日(金)までに延長されました! 記者と珍道中(?)を繰り広げるポンコツ・アメリカンの姿を、ぜひ間近でご覧ください。コーヒーもおいしいです。

堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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