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【スペック】全長×全幅×全高=4190×1840×1390mm/ホイールベース=2465mm/車重=1400kg/駆動方式=4WD/2リッター直4DOHC16バルブターボ(200ps/5100-6000rpm、28.5kgm/1700-5000rpm)/価格=499万円(テスト車=574万5800円)

アウディTTクーペ 2.0 TFSI クワトロ(4WD/6AT)【ブリーフテスト】

アウディTTクーペ 2.0 TFSI クワトロ(4WD/6AT) 2008.10.21 試乗記 森口 将之 ……574万5800円
総合評価……★★★★

FFしか選べなかったアウディTTの2リッターモデルに、4WDモデル「クワトロ」が追加された。両モデルの乗り味に、どんな違いがあるのか? 最廉価な“ヨンクのTT”を試した。
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現行TTの理想形

最近のアウディのエンジニアリングは、FFへの挑戦という言葉がふさわしい。前輪駆動ともなれば、前後重量配分で6割ぐらいはフロントに荷重を与えるのが常識なのに、「TT」ではスカットルから前側を集中的にアルミに置き換え、「A4」では旧型よりフロントアクスルを154mm前進させることで、50:50に近い前後重量配分を手に入れているからだ。

それによるトラクション不足などの弊害は、少なくともTTには見られないが、ホンネはクワトロ、つまり4WD前提のパッケージングなのかもしれない。でもいままではTTもA4も、4気筒はFFしかなかった。クワトロには重量配分で不利になるV6しか選択肢がなかったのだ。

だからこそ今回乗った2.0TFSIクワトロは、現行TTの理想形に思えた。そもそも初代TTは4気筒ターボ+クワトロでスタートしたのだから、原点回帰でもあるわけだ。あと望みたいのは3ペダルMTの復活か。先代TTや3世代前のA4のクワトロMTを、いまも大事に乗り続けているユーザーは少なくない。スポーツカーを名乗るなら、すくなくとも1車種はMTを残すのが流儀ではないだろうか。

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【概要】どんなクルマ?

(シリーズ概要)
「アウディTT」は、1998年に初代がデビュー。いわゆる「バウハウスデザイン」による斬新な造形で注目された。スポーティなクーペであり、特にATモデルが登場してからは“お洒落グルマ”としても人気を博した。
8年余の間に約26万台を販売するヒット作となり、満を持して2006年に2代目が登場。日本での展開はFFの2リッター直噴ターボを搭載した「2.0 TFSI」と、3.2リッターV6エンジンにクワトロシステムを組み合わせた「3.2 TFSI クワトロ」の2モデルでスタート。その後、2007年にはオープンモデルの「TTロードスター」、2008年にはハイパフォーマンスバージョンの「TTS」、2リッターの4WDモデル「2.0 TFSI クワトロ」が導入された。

(グレード概要)
試乗車は、日本で最新のラインナップとなる「2.0 TFSI クワトロ」。従来FFしかなかった2リッターモデルに、追加された4WDバージョンである。ボディ寸法やエンジンの出力などはFFと変わらず。60万円アップの価格設定(499万円)となっている。

【車内&荷室空間】乗ってみると?

(インパネ+装備)……★★★★★
キャビンは基本的にFWDの2.0TFSIクワトロと共通。オフブラックの地にアルミを効果的に使い、情緒的な曲線を嫌った無機質的な仕立ては、機械式時計や銀塩式カメラを思わせる。機械好きの男性が好みそうな空間だ。デビュー当初は旧型に比べ幅が広がったことから、一体感が得られにくい印象を受けたが、あれから2年たった今は、まわりのクルマが大きくなったためもあり、ちょうどいい広さに思える。

(前席)……★★★★
TTにはスポーツシートが標準装備されるが、アウディの例に漏れず座り心地はハードではなく、なおかつ絶妙なサポート性能を発揮してくれる。ヒップポイントはそんなに低くはないが、ウエストラインはかなり高く、上下の丈が短いサイドウインドーによる閉鎖感の強いキャビンは意見の分かれるところだろう。

(後席)……★
身長170cmの人間がドライビングポジションをとった後ろでは足は入らず。助手席を前に出せばレッグスペースは確保されるが、ヘッドルームが絶対的に不足しており、写真のようにションボリした姿勢をとらざるを得ない。形状も平板かつ直角で、イスとしての快適性もいまひとつ。後席下に燃料タンクを置いたプラットフォームを流用したためかもしれないが、子供用というより、第2のラゲッジスペースとして考えるのが正しいかもしれない。

(荷室)……★★★★
後席とは対照的に、こちらは全長4mそこそこの2+2としては広いほうだ。ゲートの開口部はクーペとしては低いし、後席の背もたれを前倒しすれば、さらに空間を広げられる。2ドアとしてはかなり使える荷室といえるだろう。フロアやサイドのカーペットの仕上げ、開閉式フロアパネルの作動感など、細部の作りは緻密。実際に所有し、使い込むほどに満足感が得られるだろう。

【ドライブフィール】運転すると?

(エンジン+トランスミッション)……★★★
エンジンはFFの2.0 TFSIと同じ。対する車重は1400kgと60kg重く、同じエンジンを積むスパイダー(1410kg)に近い。しかし2000rpmあたりからなだらかにトルクを盛り上げるフレキシブルな性格ゆえ、FFより遅くなったという感触はない。SトロニックをDレンジに入れたままでも、姿にふさわしい速さは手に入る。しかもアクセルを踏み込んだときのフォーンという排気音はなかなか気持ちいい。
Sトロニックは、オープンロードではオートモード、マニュアルモードともにすばらしくシームレスな変速作業をやってのけるが、取材の帰路で遭遇した渋滞では、発進・停止のマナーがトルコンを使うATやCVTに及ばないことを認識させられた。これならクラッチペダルを操る労力を考えても3ペダルMTのほうがいいと思った。

(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
硬めだが鋭いショックはたくみにかわし、アルミボディに起因する硬質な感触もうまくやわらげ、高速では姿勢をフラットに保ってくれる乗り心地は、スポーツクーペとして絶妙の落としどころといえる。FFよりもボディが重いためか、はたまた2年間の熟成のおかげか、落ち着き感は高まっているような気がした。
ハンドリングはFFでもかなり高いレベルに達していたが、4WDのスタビリティとトラクションは、200psのターボパワーや鋭いステアリングレスポンスを積極的に味わいたいときに、的確なバックアップをしてくれる。なおかつESPのお世話になることが圧倒的に少なくなったので、ペースを上げてもドライバーの意志どおりに曲がり、加速していけるというよろこびも享受できる。

(写真=峰昌宏)

【テストデータ】

報告者:森口将之
テスト日:2008年9月17日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:2502km
タイヤ:--
オプション装備:S-lineパッケージ(40万円)/アウディマグネティックライド(20万円)/オプションカラー:パールエフェクト(3万円)/クルーズコントロール+アウディパーキングシステム(10万円)/ETCユニット(1万8800円)/iPod接続コネクター(7000円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離:564.9km
使用燃料:--
参考燃費:--

森口 将之

森口 将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。

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