第2回 「フォルクスワーゲン・パサート」に乗るということ
“暮らしの友”を求める人に 2016.11.22 最新Passatの進化を探る<PR> 「フォルクスワーゲン・パサート」と過ごすカーライフとは、どのようなものなのか。新たにラインナップされた「TSIエレガンスライン」と、装備の充実が図られた「TSIハイライン」に試乗して考えた。ラインナップも装備も新たに
職業柄、「大人の男性にふさわしいクルマをあげてください」という依頼を受けることがある。けれども、これはなかなか難しい質問だ。なぜなら、ひとことで大人の男性といってもいろいろなタイプの方がいるからだ。
派手なモノを身に着けて目立ちたい人(予算が許せばいろいろな選択肢アリ)、昔ながらの大家族の家父長タイプ(3列シートの大型ミニバンか)、真っ黒に日焼けしたアクティブな行動派(SUVは百花繚乱<りょうらん>)、などなど、趣味や嗜好(しこう)によって似合うクルマは異なる。
では、車種ラインナップや装備を新たにした「フォルクスワーゲン・パサート」は、どんな男性に向いているだろうか。そんなことを考えながら試乗に赴いた。
車種ラインナップの刷新について簡単に説明すれば、従来の1.4リッターエンジン搭載仕様は、ベーシックな「TSIトレンドライン」、売れ筋の「TSIコンフォートライン」、豪華装備の「TSIハイライン」の3本立てだった。新しいラインナップも3本立てであることは変わらないものの、コンフォートラインは装備をより充実させ、名称も「TSIエレガンスライン」と改められた。
1.4リッターエンジンが7段DSGと組み合わされることと、2リッターエンジンと6段DSGを組み合わせた高性能仕様「R-Line」が存在すること、セダンと「ヴァリアント」(ステーションワゴン)という2種類のボディータイプが用意されることは従来と変わらない。
ここでは、新たに設定されたエレガンスラインを中心にリポートしたい。
上質なスーツを思わせる
セダンにしろヴァリアントにしろ、フォルクスワーゲン・パサートのデザインはクリーンでシンプルだ。ごちゃごちゃと飾らない機能的な造形は、モダニズム建築の大家、ルイス・サリヴァンの「形態は機能に従う」という名言を思い出させる。
シンプルであるけれど寂しい感じがしない理由は、デザインの細部にまで配慮が行き届いているからだ。わかりやすいのが、ボディーのサイドを走るプレスライン。後方に向けて駆け上がるこのライン上にドアのハンドルを配置することで、シャープさと躍動感を与えている。
自動車のデザインというと、ついデコラティブに飾り立てることを思い浮かべてしまう。けれどもパサート(というかフォルクスワーゲン)の場合は、無駄をそぎ落とす引き算の美学。華美に装うことを好まれる方には向かないけれど、長く使い続けても飽きないデザインであることは間違いない。
フォルクスワーゲン・パサートのデザインを眺めていると、これは男性のスーツに似ているのではないかと思えてくる。どちらも、奇をてらわないオーセンティックなスタイルを基本としている。ただし、細部の意匠に時流を反映させることで、現代的なデザインに仕立てている。例えばスーツなら、ラペル(襟)の幅を広げたり狭めたりすることでトレンドにフィットさせる。パサートのエレガンスラインの場合は、LEDヘッドライトを標準装備とすることで、きりっとしたイマ風の表情になっている。ひとつ感心したのはパサートの塗装の良さで、どの色も発色が美しい。さしずめ、上質な素材を用いたスーツといったところだ。
シンプルではあるけれど細部に至るまでデザインにこだわっているのは、インテリアも同じだ。いかにも清潔で機能的、無駄な装飾がない。それでいて美しく見える理由は、デザイン性の高さとともに、パーツに使われる樹脂類の質感によるところが大きい。例えば、センターコンソールパネルに新たに用いられるようになったピアノブラックの樹脂は、つやに深みがある。
質感といえば、従来のコンフォートラインのシートがファブリックだったのに対して、エレガンスラインのシートはアルカンターラとレザーを組み合わせたものになり、室内の雰囲気がぐっと上質になった。シートヒーターが備わるようになったのもうれしい変更点だ。
「静かさ」がポイント
走りだしてすぐに感じることは、とにかく快適であるということだ。まず第一に、路面の凸凹を乗り越えた瞬間のショックが小さい。タイヤが受け止めた衝撃は、「サスペンション」→「ボディー本体」→「シート」という経路でドライバーに達する。そしてそれぞれの過程で、衝撃の角が丸められ、最終的には非常にまろやかになっている印象だ。実に快適。同価格帯のライバルたちと比べても、快適性は頭ひとつ抜き出ている印象だ。
実はこの乗り心地のよさ、パサートだけでなく、「ポロ」や「ゴルフ」などフォルクスワーゲンの他の最新モデルでも共通だ。フォルクスワーゲンは、乗り心地を快適にする“方程式”のようなものを会得したのではないかとにらんでいる。
パサートが快適に感られるもうひとつの理由は、静かであることだ。車内で感じるノイズにはいくつかの音源がある。「エンジン音」「マフラーからの排気音」「ボディーが風を切る音」「タイヤと地面の擦過音」などであり、パサートはいずれの音量レベルも低い。おそらく、車体の遮音対策がしっかりなされているのだろう。中でも顕著に静かに感じられるのが、エンジン音。特にエンジン回転数が一定になる巡航時には、エンジンの存在を忘れるほどに静かだ。遮音対策とともに、エンジンが発する音そのものが低いとみた。
巡航時にエンジンの存在を忘れそうになると書いたけれど、それはエンジンの回転フィーリングがスムーズだということでもある。アクセルペダルを踏み込むと、滑らかに回転が上がっていく感覚が心地よい。加速力は十分で、このエンジンの排気量が1.4リッターしかないと知れば、多くの人が驚くはずだ。これは、排気量を低く抑えて効率化を図る一方で、ターボチャージャーで力を補うダウンサイジングというコンセプトにのっとっている。エンジン技術の新しいトレンドで、これだけの動力性能を発揮しながら、JC08モード燃費は20.8km/リッターを記録している。ボディーサイズを考えれば、この値は立派だ。
“いいモノ”感があふれている
デザイン的には華美ではないけれど丁寧に作り込まれた上質さがある。だからデザインやファッションにこだわる方も、長く愛用できるはずだ。性能的には過剰ではないけれど、運転好き、クルマ好きが乗っても十分に満足できるパフォーマンスを発揮する。
総じて、単なる実用品を超えた“いいモノ”感があり、クルマを道具ではなく暮らしの友だと考える人に薦められる。参考までに言い添えれば、パサートは2015年の欧州カー・オブ・ザ・イヤー受賞車。その実力は折り紙付きだ。
もし購入するとなった場合に悩ましいのが、グレード選びだ。1.4リッターエンジンを積む3つのグレードのスペックを並べると、安全性能、環境性能では違いはない。例えば衝突の危険を察知すると「注意喚起」→「自動ブレーキ」の順で作動するプリクラッシュブレーキシステムや、先行車との適正な間隔を保って追従する渋滞時追従支援システムといった安全・運転支援装置は全車標準装備となる。このあたりの、クルマの基本性能には差は付けないというフォルクスワーゲンの考え方は筋が通っていて、好感が持てる。
装備が充実し、内外装ともにプレミアム感が増したエレガンスラインに心が動くけれど、ハイラインの18インチホイールやベンチレーション機能が備わるレザーシートにも引かれる。TSIハイラインには、アラウンドビューカメラやデジタルメータークラスター、駐車支援システム、ダイナミックライトアシスト、電子制御式ディファレンシャルロックのXDSをセットにした「テクノロジーパッケージ」がオプション設定されているので、車庫入れが苦手な妻も運転することを考えるとこっちもアリか……。
カタログを眺め、予算と付き合わせ、もう一度カタログの装備表を見直す。悩みは尽きないけれど、クルマを選ぶにあたってはこういう時間が一番楽しいのかもしれない。
(文=サトータケシ/写真=田村 弥)
「フォルクスワーゲン・パサート」グレード解説
セダン、ヴァリアントともに、パサートには「TSIトレンドライン」「TSIエレガンスライン」「TSIハイライン」「2.0 TSI R-Line」、そして、プラグインハイブリッド車の「GTE」が用意される。
TSIトレンドライン、TSIエレガンスライン、TSIハイラインは、1.4 TSIエンジンを搭載する基本グレード。スタンダードのTSIトレンドラインであっても、プリクラッシュブレーキシステム「フロントアシスト」をはじめ、レーンキープアシスト、レーンチェンジアシスト、アダプティブクルーズコントロール「ACC」などの機能はすべて標準装着である。TSIエレガンスラインは、LEDヘッドライトやクロームモールディングの多用、アルカンターラ&レザーシートの採用など装備の充実を図ったグレード。さらにTSIハイラインではナパレザーシートの採用や、コネクティビティー/テレマティクス機能の標準装着により上質さと機能性を高めている。TSIハイラインには、アラウンドビューカメラやデジタルメータークラスター、駐車支援システム、ダイナミックライトアシスト、電子制御式ディファレンシャルロックのXDSをセットにした「テクノロジーパッケージ」もオプション設定される。これを選べば、日常のさまざまな場面でドライバーを支援するテクノロジーを手に入れることが可能になる。
内外装をスポーティーに仕立てた2.0 TSI R-Lineは、最高出力220psのハイパワーを誇る2.0 TSIエンジンを搭載し、さらに余裕ある走りを実現する。GTEは、156psの1.4 TSIエンジンと専用の6段DSG、116psの電気モーター、そして大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載するプラグインハイブリッド車で、バッテリーの電気だけで最高速は130km/h、航続距離は最大51.7kmを達成。また、電気が少ない状況でもハイブリッド車として、力強く高効率な走行が可能である。
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テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・パサートTSIエレガンスライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4785×1830×1465mm
ホイールベース:2790mm
車重:1460kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150ps(110kW)/5000-6000rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1500-3500rpm
タイヤ:(前)215/55R17/(後)215/55R17
燃費:20.4km/リッター(JC08モード)
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フォルクスワーゲン・パサートTSIハイライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4785×1830×1470mm
ホイールベース:2790mm
車重:1460kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150ps(110kW)/5000-6000rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1500-3500rpm
タイヤ:(前)235/45R18/(後)235/45R18
燃費:20.4km/リッター(JC08モード)
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