「三菱エクリプス クロス」デザイン本部長インタビュー
三菱の伝統と未来をカタチに 2017.03.07 「三菱エクリプス クロス」がデビュー <PR> 三菱自動車の新しいコンパクトSUV「エクリプス クロス」が第87回ジュネーブ国際モーターショー(プレスデー:2017年3月7日~3月8日、一般公開日:3月9日~3月19日)でデビューした。スタイリッシュなクーペフォルムをまとうこのニューフェイスを、デザイナーたちはどのような思いを込めて作り上げたのだろうか。三菱デザインの方向性を示すモデル
三菱デザインが変わろうとしている。新たな方向性を示す役割を担うのが、ジュネーブショーのワールドプレミアモデル、エクリプス クロスだ。新型コンパクトSUVに託した思いを、三菱自動車デザイン本部長の國本恒博氏に伺った。
「エクリプス クロスのデザインは、躍動的でチャレンジングです。アスリートがスタートする瞬間を想起させるダイナミックな躍動感をもたせ、全体的にシャープでありながら筋肉質なフォルムを構築しました。十種競技の選手のようなイメージと言えばいいでしょうか。重々しくなるのを避け、バランスのとれた強靱(きょうじん)さを表現しています」
エクリプス クロスは、ベルトラインと強いキャラクターラインで前傾姿勢を作り出している。前後のフェンダーが大きく張り出して力強さを主張するが、いわゆるマッチョ的ないかつさはない。
「ウェッジシェイプなんですが、全高を高くすることで釣り合いの取れたプロポーションになっています。ボディー下部をブラックにしたのは、背が高くてももっさりしないようにするためです。鉄の塊から削り出したように見えるフレッシュなフォルムで、三菱らしいクーペSUVになりました」
三菱のフロントフェイスデザインコンセプト「ダイナミックシールド」が採用されている。2015年ジュネーブショーの出品車である「Concept XR-PHEV II」で初めて提案されたものだ。
「すでに『アウトランダー』や『RVR』などの市販車に採用されています。中央のブラックフェイスで力強いパフォーマンスを表現し、バンパーの左右とアンダーガードが包み込む形状にしてクルマを守る安心感・安全性をイメージさせました。デザインで機能を語っているわけです」
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三菱らしさの基本はRobust
ダイナミックシールドは、SUV以外のモデルにも順次採用されていく。力強さと高い安全性を重視するという三菱自動車の思想が、ラインナップ全体を貫いていることを強く印象づけることになる。
「私たちがデザインで目指している大きなテーマが2つあります。『三菱らしさの創出』と『一貫性の強化』です。ヘリテージを再確認しながら、同時にエボリューションを進めていかなくてはなりません。まずは、三菱が培ってきた歴史をたどることからはじめました。さかのぼっていくと、自動車だけでなく三菱重工の製造した艦船や飛行機にも源流があることに気づきます。自工には重工からの移籍組も多く、実際につながりがあるんです」
同時に世界のユーザーからも話を聞いたという。地域によって三菱車の位置づけは異なるが、共通する部分も見えてきた。
「お客さまから三菱が期待されているポイントを、5つのキーワードにまとめました。Honest(真面目)、Robust(力強い)、Dependable(信頼性のある)、Functional(機能的な)、Japanese Product(日本らしい造り)というものです。特にRobustというのは、世界中どこでも三菱車の特長だと考えていただいていますね。堅牢(けんろう)さ、力強さが評価されていることは、われわれのアセット、大切にするべき強みだと思います」
強みを生かすことが三菱らしさの表現につながる。そして、未来に向けて育んでいくべき価値も明らかになってきた。
「三菱自動車の社員は、これまでずっと新しい価値を提案してきたという自負を持っています。4WD、EV、PHEVといった分野で先駆けとなってきました。先進的テクノロジーを持つイノベーティブな集団であるというプライドが、デザインの中に見えている必要があります」
躍動感を表現する高彩度レッド
リサーチの結果を踏まえた議論の中で、これから進むべき道が浮かび上がってきた。
「三菱の持つオリジナルな価値を表現するデザインテーマが4つあります。Augmented Possibilities(可能性を拡張するデザイン)、Functional Beauty(機能に基づく美しさ)、Sculptured Dynamism(ダイナミズムを刻むデザイン)、Japanese Craftsmanship(日本の匠の美しさ)。エクリプス クロスには、この4つのテーマに沿ったデザインアイデンティティーを盛り込みました」
フロントのダイナミックシールド、サイドのウェッジシェイプに対応し、リアスタイルも立体的な造形が追求されている。
「ハイマウントストップランプと上下に分割されたウィンドウで、ワイド感とモダンさを演出しています。ガラス面は思い切って前傾させていますね。ダイナミックな印象になると同時に、荷室スペースの拡大にも役立っているんですよ」
エクリプス クロスのイメージカラーとなっているのは鮮やかな輝きを見せるレッドだ。新開発のボディーカラーで、このクルマが持つチャレンジングな姿勢を際立たせる。
「これまでにない深みを持つ高彩度レッドです。クリア層を焼き付けた通常の上塗り塗装に、半透明のレッドとクリア層を重ねています。ギラッとした感触を持つ色で、躍動感と立体感を見せるのにふさわしいボディーカラーになりました」
ドライバーの視点に立つインテリアデザイン
インテリアは三菱の伝統であるシンプルで水平基調の空間構成に。意図的に煩雑な意匠を排しているのだ。
「ホリゾンタルなインテリアデザインなのは、運転のしやすさと安全性を重視しているからです。クルマを運転している際に、挙動変化がわかりやすく感じられることを目指しています。過度に装飾的なのはマイナス要素になるんですね。カラーは黒とシルバーの組み合わせが基調で、白を配したものと2パターン用意しました。ストイックになりすぎないスポーティーでマッシブなイメージです。タイト感を出すことも意識していますね」
デザインのためのデザインではなく、乗り物としての性能と安全性をベースに置く。それが三菱が守り続けてきた手法なのだ。
「運転席のヒップポイントは高く、アップライトな着座姿勢をとります。ドライバーの視点に立ち、見下ろし角にもこだわっています。それが三菱らしさであり、三菱の伝統です」
エクリプス クロスのデザインは、エクステリアもインテリアも明らかに洗練度を増してきている。しかし、一時の流行に左右されることはない。
「追求しているのは、モダニティー、そして研ぎ澄まされたイメージです。エレガントさやモードではありません。根っこには常にRobustがあるから、彫刻的でダイナミックな造形が生まれるのです」
1989年にデビューした高性能スポーツカーに付けられた名がエクリプスだった。三菱の未来を託された新型SUVに、その精神が受け継がれていく。
(文=鈴木真人/写真=荒川正幸、三菱自動車工業、webCG)