前編:新型「メガーヌGT」で駆ける
走りの万能選手 2018.01.31 最新ルノー・スポールを愉しむ<PR> ルノーのスポーツモデルには、同社のモータースポーツ活動を担うルノー・スポールの知見と技術が生かされている。その醍醐味(だいごみ)を、まずは新型「メガーヌGT」の走りを通して堪能した。フランスの気風が感じられる
2017年10月に日本に上陸した第4世代のメガーヌは、競合車の多いCセグメントの中でも個性派と言える一台だ。
まずはボディーサイズ。メガーヌGTの全長は4395mm、全幅は1815mm、全高は1435mmとなっている。このクラスの中ではかなりワイド&ローである。スタイリングもそれを反映している。プロポーションは明らかに低くスマートだし、前後のフェンダーの張り出しもはっきりしていて、いかにも走りそうな雰囲気を与えてくれる。
いまの自動車業界のトレンドとしてSUVがあることは否定できない。これまでSUVとは無縁だったプレミアムブランドが、さまざまな理由を作り出してはこの分野に参入している。ハッチバックの市場が食われているという情報も耳に入っている。一方、ルノーは背の高いクルマの経験が豊富。ゆえにハッチバックのメガーヌには逆に、低いクルマの素晴らしさを盛り込もうと考えたのではないか。それが走りの雰囲気を前面に押し出した、この形に表れているように感じる。
前後のLEDランプも大胆だ。薄暗い場所に持っていくと、C字型を描くヘッドランプ、エンブレムに向かって伸びるリアコンビランプがくっきり目に飛び込んでくる。後で述べるインテリアもそうだが、フランスの前衛的・革新的な気風が感じ取れる。
室内はモダンでクール
日本仕様の新型メガーヌは、ルノー・スポールが開発した1.6リッター直列4気筒ターボエンジンを搭載する、スポーツモデルを中心にラインナップされている。
メガーヌ伝統のカードキーは従来より小さく、厚みを持たせた、手になじみやすい形状になった。そのキーを持ちながら車両に近づくと、ボタンを押さずともドアロックが解除されサイドミラーが開く。
ドアを開けるとウエルカムサウンドがドライバーを出迎えるという演出は他車にもあるけれど、メガーヌGTの場合は「ドクンドクン」と脈打つようなサウンド。走りだす前からスポーツマインドをアピールしてくる。
センターコンソールやドアトリムに走るアンビエントライトの帯も目につく。この帯はデフォルトのニュートラルモードではブルーになっているが、スポーツモードを選ぶとレッド、コンフォートモードではイエローに変わる。ほかにグリーンやパープルも用意されており、好みの色が選択できる。メーターのイルミネーションも同時に変わるほか、表示レイアウトまで変えられるなど、かなり凝ったメニューになっている。
シンプルだった従来のメガーヌとの違いに驚く人もいるだろう。でも僕は、シルバーやピアノブラックなどの光り物に頼った華美な演出ではない、モダンかつクールな方向性がフランスらしく、ルノーらしいと思った。
ルノー・スポールならではの心地よさ
運転席は最近のハッチバックとしては低め。ここからもスポーツマインドが伝わってくる。座り心地は硬めでサイドの張り出しも明らかに大きいが、座面は厚みがあって体になじんでくれる。
歴代ルノー・スポールのシートはサポート性に優れるだけでなく、ロングドライブでも不満を抱かせない高度な快適性を備えていた。これまで何度もルノー・スポールのシートで長距離をこなし、座り心地のよさに感心してきた。そんな経験を持つひとりとして、 メガーヌGTもまた、よき伝統を受け継いでいると確信した。
後席は身長170cmの筆者が座ると、ひざの前に10cmほどの余裕が残る。さらなるゆとりが欲しい人は、ホイールベースが40mm長くなるワゴンボディーの「スポーツツアラー」もチェックするといいだろう。
エンジンは前述したように1.6リッターターボで、基本的に「ルーテシア ルノー・スポール」に積まれているものと同じだが、最高出力と最大トルクは205ps/280Nmと、200~220ps/240~260Nmをマークするルーテシア ルノー・スポールとは異なっており、専用チューニングを施していることが分かる。
ルノーではEDC(エフィシェント・デュアル・クラッチ)と呼ぶデュアルクラッチトランスミッションがルーテシアの6段から7段にアップデートしていることも特徴だ。そのためあらゆるシーンで1430kgのボディーに力強い加速を与えてくれる。
それとともに感じたのは、ターボのしつけのよさだ。ルノー・スポールは1970年代から、F1やWRCなど実戦の舞台でターボをいち早く導入してきた。極限的な場面で多くの勝利をつかんできた経験が、いい意味でターボであることを意識させずドライブできる扱いやすさにつながっているのだろう。
驚きのハンドリング
しかし新型メガーヌGTにおいては、パワーユニットは脇役を担当してもらうことになるかもしれない。ルノー・スポールが開発に関わった「4コントロール」、つまり4輪操舵システムが出色の出来だからだ。
特徴は低速走行時と高速走行時で作動が異なること。具体的には、低速では後輪が前輪と逆向き(いわゆる逆位相)になるのに対し、高速では同じ向き(同位相)に切れる。さらに切り替えポイントは、スポーツモード以外のノーマルモードでは60㎞/hとなるが、スポーツモードでは80㎞/hに引き上げられる。
おかげで、市街地では小回り性能の高さが印象的。Uターンや車庫入れではボディーサイズから想像する以上に舵が切れてくれるのでありがたいし、 狭い路地での右左折も、4コントロールのおかげですんなりクリアできた。ステアリングを切る量が少ないので、楽でもある。
また大きめの交差点を曲がるときには、車体後半が外側に振り出されるような感触が伝わってくる。実際はドリフトしていないのにドリフトを楽しんでいるような、新鮮な感覚だ。
高速道路に乗ると、今度は後輪が前輪と同じ向きに切れることによる安定感に感心する。切れ角は逆位相のときほど大きくはないけれど、車線変更などでステアリングを切ると、車体が斜め前方にスライドするような感じを抱かせつつ隣の車線に移っていく。高速コーナーでは外に膨らもうとする雰囲気はほとんどなく、自ら進んでコーナー内側に入っていくようなフィーリングだ。
モータースポーツでの経験が生きている
山道ではスポーツモードをお薦めしたい。4コントロールだけでなく、スロットルやステアリングの特性なども変化するからだ。コーナーに挑むと、市街地で体感したような、リアが振り出していくような感触が心地いい。前後で旋回を分担しているためだろう、前輪の負担が少ないことも伝わってくる。しかもボディーはワイド&ローなこともあり、ロールは抑えられているので、新鮮な感覚である一方、安心感も抱かせてくれる。
そしてもうひとつ、4コントロールは市街地から高速道路、そして山道まで、終始ルノーらしい自然な雰囲気をキープしていた。この種のハイテクは、動きが唐突だったり過敏だったり、人工的な違和感がぬぐえない例が多い。その点、メガーヌGTの自然なフィーリングは異例と呼べるレベルだった。レースやラリーの世界を知っているルノー・スポールならではの技が乗りやすさに結実しているのだろう。
しかもメガーヌGTは単なるハンドリングマシンではない。GTの名に恥じない快適性にも高得点を付けられるのだ。ほかの多くのルノー車と同様、ボディーとシャシーは骨太な感じがするほど強固で、ダンパーも強力だが、スプリングはさほど硬くない。これが路面の凹凸を巧みに吸収し、ボディーの揺れを最小限に抑えてくれるというフラットライドを実現しているようだ。
SUVではなくハッチバックを選ぶ。そこには走りへの欲求が多かれ少なかれあるはず。メガーヌGTはルノー・スポール仕込みの 4コントロールという新兵器のおかげで、その気持ちにストレートに応える仕上がりになっている。
(文=森口将之/写真=小林俊樹)
車両データ
ルノー メガーヌGT
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4395×1815×1435mm
ホイールベース:2670mm
車重:1430kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:205ps(151kW)/6000rpm
最大トルク:280Nm(28.6kgm)/2400rpm
タイヤ:(前)225/40R18 92Y/(後)225/40R18 92Y(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5)
燃費:--km/リッター
価格:334万円/テスト車=341万6680円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション フロアマットセット<プレミアム RENAULT SPORT>(3万2400円)/ETC車載器(1万2960円)/エマージェンシーキット(3万1320円)