アウディRS 5クーペ
その走りに知性が宿る 2021.02.08 アウディテクノロジーの極み RSモデルを知る<AD> 疾走感に満ちたフォルムが印象的な2ドアモデル「アウディRS 5クーペ」。本格派スポーツカーのようなパフォーマンスが味わえる一方で、時に効率を重視した現代的な走りが実感できる二面性もまた、このモデルの注目すべき個性である。クーペの走りはより軽快
アウディスポーツは、「RS」および「R8」をラインナップするアウディのサブブランドである。圧倒的なパフォーマンスと洗練されたデザイン、そして都市にフィットする快適性など、あらゆるシーンにおいてその性能をいかんなく発揮するアウディの理想を体現するモデルで構成され、そして同時に、知性のすべてを搭載した“Intelligent Super Car”を提案するブランドだとも紹介されている。
確かにアウディには知的な雰囲気がある。たとえばデザインは、奇をてらったり小手先に走ったりすることなく、むしろ無駄をそぎ落としてシンプルに徹する。さらに、そこで際立つ造形美と工作精度を徹底的に高めることで存在感が高まり、時がたっても飽きがこないという評価につながる。
乗り味にしても、どこかクールでスマートだ。テクノロジーとパフォーマンスの高さをセリングポイントとするアウディスポーツでもそれは変わらない。たとえば「RS 4アバント」などはアンダーステートメントで、まさに都市にフィットする快適性を備えた、アウディスポーツが主張する通りのモデルであった。
今回試乗したアウディスポーツが擁するRS 5クーペは、RS 4アバントと同じDセグメントでハードウエアでの共通点も多い。だから、ボディーの違いによる差があるだけで似たようなフィーリングなのかと想像していたが、乗り始めてみるとどうも様子が違う。
エンジンが2.9リッターV6ツインターボで最高出力が450PS/5700-6700rpm、最大トルクが600N・m/1900-5000rpmでトルクコンバーター式ATの8段ティプトロニックと組み合わされるのは共通。Dセグメントには余りあるほどのパワーとトルクの持ち主なので、RS 4アバントでも文句のつけようがない動力性能だったが、RS 5クーペではさらに痛快に感じられた。
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ヒラリと舞うような感覚
これは車両重量が70kg軽い仕上がりであることとも無関係ではないだろう。数値の上でもアドバンテージがあることは承知していたが、普通に発進させるだけでもスッと軽やかに動き始めるフィーリングの良さがうれしい驚きだ。0-100km/h加速はRS 4アバントの4.1秒に対してRS 5クーペが3.9秒。どちらにしろ公道では実力を引き出す機会などほぼない非現実的なスペックではあるものの、車両重量が軽いことによる日常域での気持ち良さがあり、伊達(だて)なクーペを選ぶ価値をまず一つ見つけることができた。
それにも増してドライバーを興奮させるのがシャシー性能の高さだ。RS 5クーペのサスペンションはRS 4アバントよりもはっきりと引き締められていて、状況や場面によっては乗り心地が硬く感じられるほど。それはすなわちワインディングロードを駆け巡ったときに、よりエキサイティングな走りが味わえることを意味している。
RS 4アバントでもボディー全体やステアリングまわりの剛性感にまったく不足がないばかりか、圧倒的に高いとさえ感じたのだが、クーペボディーは特にリアまわりの剛性の確保がワゴンよりも有利なため、攻めたサスペンションセッティングとなっていてもまだ余裕がある。
コーナーに対してステアリングを切り込んでいったときの鋭さやアクセルオンでのリアの頼もしさは格別だ。あふれんばかりのトルクとパワーを四輪駆動の「クワトロ」が、路面により効率的に伝える。引き締まったサスペンションによる姿勢変化の少なさと、軽さゆえのヒラリと舞うような感覚が混然一体となって、クーペボディーならではの高揚感を醸し出す。そうした味つけは、オールマイティーなパフォーマンスが魅力のRS 4アバントと明確に異なるものだ。2ドアクーペという、スポーティーでパーソナル感の強いキャラクターが浮き彫りになる。
「アウディドライブセレクト」でドライブモードを切り替えていくと、RS 4アバントよりも変化幅が大きく感じられたことも合わせて報告したい。路面状況が刻々と変化するワインディングロードでは「Dynamic」は必要ないぐらいで、「Auto」にしておいたほうが、どんな場面でもしっかりタイヤを路面に押しつけてくれる。Dynamicは比較的路面が平滑なサーキットなどでより実力を引き出す、“レーシー”なセッティングなのだろう。
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走行モードを知的に使いこなす
サスペンションが引き締まっているということで乗り心地が気になるところ。そこで、さまざまな場面でドライブモードを切り替えながら試してみた。結果を先に言ってしまえば、まず、同乗者がいるときにはDynamicはおすすめしない。突き上げがきつく感じられ、伸び側も規制されて上下動がややせわしなくなるからだ。一方、「Comfort」にするとかなりソフトタッチになる。
Comfortでは高速道路によくある目地段差の入力がきついところでも問題なく、乗り心地は快適だ。ただし、目地段差のようなシンプルな入力以外の、たとえば凹凸が連続しているなど複雑な荒れ方の路面だとComfortにしていても硬さが顔を出すことがある。ダンパーがソフトでも、いかにもロール剛性の高い踏ん張り感があるので、左右の凹凸が不均衡だとステアリングにしっかりとした手応えが伝わる。街なかや郊外路ではComfort、高速道路ではAutoに切り替えるのがオススメといえそうだ。
このアウディドライブセレクトの切り替えスイッチはセンターの左端にあって、ドライバーからは少々遠い(左ハンドルなら良さそう)。そこでうれしいのが「RSモード」。これはRS 4アバントとも共通していて、ドライブシステムやサスペンション、ステアリング、エンジン音、スポーツデファレンシャルのセッティングを好みで組み合わせられ、「RS1」と「RS2」の2種類を保存できる。呼び出しは、ステアリングスポーク上のRSボタンを押すことで瞬時に行える仕組みだ。
本来は、ワインディングロードなどしかるべきステージに足を踏み入れたら好みのスポーティーなモードに切り替えるものなのだろうが、RS1かRS2のどちらか一方を状況に合わせ、快適な乗り心地を維持するためのプログラムとして使うのもありだろう。
また、燃費性能にも最大限の配慮がなされているのもRS 5クーペのセリングポイントだ。もともと、この2.9リッターV6ツインターボは当然のことながら直噴で、低負荷時はBサイクル(ミラーサイクル)になるなど、一滴の燃料も無駄にしない高効率を追求したユニット。それに加えてコースティングさせるモードもある。この切り替えのスムーズさや、作動に至るアルゴリズムには知性を感じないわけにはいかない。
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効率とダイナミズムの両立
ハイパフォーマンスの対極にある要素でありながらも、アウディスポーツがこだわり続けたこうした効率的な走りは、新たにタッチモニターで操作することになったインフォテインメントシステムの「MMI」によって設定を行うようになっている。経済的な運転スタイルをサポートする「エフィシェントアシスト」をONにすることで、高速巡航時などで低負荷のときにアクセルから右足を離すとエンジン回転がアイドリングまで下がる。
通常はメーターに現在使用しているギアが何速なのかを、D6やD8などというように表示するが、この数字がなくなってDとなったらコースティングが行われている合図だ。コースティングは巡航時の実燃費が改善されることが多く、また無駄な減速感やピッチングがわずかながらも抑制され快適性も向上するので、エフィシェントアシストは常時ONにしておくことをおすすめしたい。
RS 5クーペはパーソナルユースを表現する2ドアの流麗なスタイルのみならず、Rennsport=RS本来のレーシーな趣が、より濃厚になったモデルだ。RSモードをフルにパフォーマンス側に振っていれば、サーキットなどでそれこそレーシングカー並みの実力を見せつけるだろうし、一方、DRC(ダイナミックライドコントロール)や可変ダンパーなどで路面コンディションや走行状況に対応する様子からは、まるでクルマに知性が宿っているような印象を受ける。
鍛え抜かれたシャシーとクワトロが織りなす高度なスポーツパフォーマンスと、快適で上質な効率重視の走りが一台で味わえる二面性もRS 5クーペの注目すべき個性である。オールマイティーなRS 4アバントに比べるとアスリートと表現したくなる硬派な仕上がりだが、走行モードを知的に使いこなせば刺激的かつ快適な日常を過ごせるはずだ。
(文=石井昌道/写真=郡大二郎)
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車両データ
アウディRS 5クーペ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4715×1860×1365mm
ホイールベース:2765mm
車重:1750kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.9リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:450PS(331kW)/5700-6700rpm
最大トルク:600N・m(61.2kgf・m)/1900-5000rpm
タイヤ:(前)275/30ZR20 97Y/(後)275/30ZR20 97Y(コンチネンタル・スポーツコンタクト6)
燃費:9.9km/リッター(WLTCモード)
価格:1340万円