新時代のカーライフを語る|サッシャ(ラジオDJ)×藤島知子(モータージャーナリスト)
キーワードは“多様性” 2021.09.27 シェルドライブ検定・特別対談<AD> 半年前に電気自動車を購入したラジオDJのサッシャさんと、マニュアルトランスミッションのコンパクトカーに6年間乗り続けているモータージャーナリストの藤島知子さん。持続可能なモビリティーへの取り組みが求められる新時代のカーライフについて語り合った。クルマの選択肢や使い方が多様化
サッシャ:去年の年末に「テスラ・モデル3」を買いました。初めてのEVです。
藤島知子:やっぱり、環境問題を考えての選択ですか?
サッシャ:もちろん、環境性能がいいものをというのはずっと自分のなかにあって。テスラの前に買ったのは「BMW 320dツーリングMスポーツ」でした。
藤島:内燃機関のクルマはもうやめようと?
サッシャ:そういう単純なことでもないんです。3年前からフォーミュラEの実況をするようになって、ドライバーの話を聞いていると同じフォーミュラでもEVだとまったく運転の仕方が違うというんですね。実況しているのにEVの運転をしたことないのはどうなのかなあ、と思いました。まあ、F1の実況もするのに、F1の運転をしたことはないんですけど(笑)。
藤島:私はマンション住まいだから、今はガソリン車がいいかな。EVって家で充電して満充電から走りだすほうが、やっぱりメリットが大きいと思って。クルマのパワーユニットって、今はいろいろ選べるのが面白いところですよね。ガソリンや軽油、水素、電気と、その人のクルマの使い方や生活に合ったものを選ぶのが賢い。環境が整えば、私もいろいろ検討してみたいなと思っています。
サッシャ:単純に新しいものが好きなんです。iPhoneが上陸したときもすぐ買ったし。テスラって、タイヤの付いたスマホのようなものなんですよ。一番ガジェット寄りのクルマがこれ。
藤島:フットワーク、軽いですよね。やはり新しいものは自分で試してみたくなるんですか?
サッシャ:日常使いしてみないとわからないことがありますからね。例えば、バッテリー。スマホと同じように放電する。1日に3%ぐらいずつ容量が減っていくので、1カ月乗らずに放っておいたら、電池が空になって動かないかもしれないんです。
藤島:スマホでも予備バッテリーにつないだら放電していて全然充電できなかったことがあります。クルマでも同じことが起きるんですね。それって、実際に所有してみないとわからない盲点です。
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EVがクルマへのハードルを下げる
藤島:私はどちらかといえば愛車を長く乗り続けるほうですが、サッシャさんは1台のクルマを何年ぐらい乗るんですか?
サッシャ:一番長くて5年ぐらいかな。
藤島:私の予想では、5年もたたないうちに今はないような価値を提供するクルマが出てきて……、新しいものが気になるサッシャさんはそれに引かれるような気がします。
サッシャ:僕もそう思います(笑)。これまではローンを返し終わったら次のクルマに、というのをディーラーも勧めてきましたが、それも今後どうなるかわかりませんよね。
藤島:クルマって、ずっとその時代なりの楽しさとか美しさとかがあったと思うんです。所有する満足感もあるし、クルマの運転や移動そのものがエモーショナル。そうした価値はこれからも変わらないと思うのですが、新しいクルマの登場をきっかけに、今までとは違ったかたちでクルマに興味を持つ人が出てくれば面白い。
サッシャ:クルマや機械が苦手という人にもEVは向いていると思いますよ。ギアもないし、シフトレバーもないし、圧倒的に操作が簡単。初めて免許をとって運転するならオススメです。ほとんどワンペダルでブレーキ踏まずにアクセルオフだけで止まりますから。
藤島:ワンペダルって、これまでの自動車に乗ってきた人のなかにはギクシャクするという人もいるけど、アクセルワークを繊細に行う必要性を学べたりもする。
サッシャ:簡単だから、多分すぐに慣れます。今では1日にブレーキを踏むのは1回か2回です。回生ブレーキで発電すると、バッテリー残量が増えます。だから、坂道をものすごく意識するようになりました。
藤島:ブレーキを踏むと熱で放出し無駄にしていたものを、回収してまた使うことができるエネルギーのリサイクルはすてきなこと。“アクセルを踏んで加速すると楽しい”という右脳を使って走る楽しさもあるけど、EVでの移動には、いかに効率的に楽しんで走るかっていう(従来とは違う)知的な世界もありますよね。
サッシャ:運転するドライバーが楽しいだけでなく、同乗者にとってもエンターテインメント機能が充実しています。ダッシュボードの真ん中に巨大なモニターがあって、ゲームができるしYouTubeを見ることもできる。子どもたちが乗ると、助手席の取り合いになりますね。
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できないことを無理してやるのは逆効果
サッシャ:でも、EVに乗っていれば環境にいいという簡単な話ではないですよね。EVは製造するときには環境負荷が高いっていうじゃないですか。車両製造や使用時の電力が風力発電とかのクリーンエネルギーだったら環境負荷は低い。ユーザーだけの問題じゃなく、技術の進展や政治の要素も絡んできます。
藤島:時代や環境が変化していくからこそ、今乗れるものを選びたいという気持ちがあります。だから私は、この「アウディS1」も大事に乗ろうと思っていますよ。このクルマを買った理由のひとつは、マニュアル(トランスミッション)だからなんですね。2ペダルのほうが快適で楽だけれど、自分がどうクルマに関わるかと考えると、私はマニュアルの操作をしたくて。燃費運転をしたければ自分でコントロールできるのもいい。リッター15kmくらい走りますよ。
サッシャ:それはスゴい! 内燃機関の役割が終わったわけではなくて、例えばサハラ砂漠の真ん中で充電するというのは難しい。「トヨタ・ランドクルーザー」のようなクルマが必要な地域はまだまだ多いんです。
藤島:ランクルは今回のモデルチェンジでも電動化はしませんでしたよね。ハイブリッド仕様すらありません。過酷な環境でも生きて帰ってくることが最優先されるモデルですから。
サッシャ:2015年9月の国連サミットで採択されたSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)では、途上国への支援がうたわれています。貧困や飢餓を解消するために、ランクルが果たす役割は大きいでしょう。
藤島:SDGsって17項目あって、すべてを覚えるのはなかなか大変。2030年までに達成すべき目標が掲げられていますが、そのためには17項目以外にもやるべきことはあるはずです。モビリティーの自由もそのひとつでしょう。前は体の不自由な方向けのクルマは特殊なものだったけど、今は普通のクルマにちょっと器具を付け加えるだけ。健常者が運転を代わることもできるから行動範囲や自由度が広がり、一緒にドライブに行けて移動の体験に楽しさやうれしさがプラスされますよね。いい変化だと思います。
サッシャ:それぞれがやれることはたくさんありますよね。フェアトレードのチョコを買うことも大事。でも、わざわざ隣町まで買いに行くのでは、無駄なエネルギーを使ってしまう。自分ができる範囲で考えればいいことで、できないことを無理してやるのはむしろ逆効果になるかもしれない。
藤島:ダイエットと一緒ですね(笑)。
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クルマのあり方にはインフラの拡充も重要
サッシャ:EVも、自分の生活環境に合っていないなら、無理して乗らないほうがいいでしょう。航続距離の問題があって、毎日遠出している人は今のところ不便ですから。
藤島:私のS1はもう6年目ですね。11万km走りました。新車で買って。エコの考えっていろいろあって、環境にいいクルマを買うというのもひとつ。同じクルマを大切に長く乗り続けるのもエコかもしれません。サッシャさんの故郷であるドイツや欧州と日本とでは、モビリティーを取り巻く環境にどんな違いを感じていますか?
サッシャ:例えば、車イスは段差があると移動しにくいんですが、ヨーロッパは歩道に大きな段差があるところも多い。障害って、社会の側にあるんですよね。その点に関しては、日本のほうが整備されている。でも、反対にEVに関してはまだまだ。高速道路のサービスエリアに充電器が1台しか設置されてなかったりします。
藤島:EVでドライブに出かけて、充電器を探してあちこち走り回らなければならないのでは困りますよね。
サッシャ:ノルウェーのEV比率が飛び抜けて高いのは、政策としてインフラの整備を進めたからです。ドイツも国が補助金を出してサービスステーションに充電器を併設することを促しています。
藤島:日本のサービスステーションも、変わってきていますよね。最近はコンビニやカフェが併設されているところも増えていて、ドライバーにはありがたいし便利で楽しいスポットになっています。
サッシャ:そういう場所なら、EVでも立ち寄りやすい。カフェでお茶を飲んでいる間にクルマをチェックしてもらったり、洗車したりできる。
藤島:充電器や水素の充塡(じゅうてん)機も一緒にあるといいですね。カーボンニュートラルを目指してエネルギーダイバーシティーが進むと、クルマのあり方や自由で快適な移動のためには、サービスステーションもこれまで以上に重要な要素になっていくような気がします。
サッシャ:充電ステーションだけだと商売にならないんです。ガソリンを入れるのと違って時間がかかるから。
藤島:お客の回転が悪いラーメン屋さんみたいなものですね(笑)。
サッシャ:何十台も同時に充電できるような大規模施設でないと割に合わない。だから、カフェとかレストランとか、何かを併設する必要がある。そういうことを国が補助してインフラを整備していくことが大事じゃないでしょうか。
藤島:クルマが変わることでサービスステーションも変わる。それがまたクルマの変化を促し、モビリティーの楽しさはもちろんですが、利便性や安全性の向上にもつながれば、未来のカーライフは明るくなりますね!
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