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走りのアメリカンクルーザー「インディアン・スポーツチーフ」を知る・試す

獰猛な走りと伝統の体現者 2023.11.27 比類なきパフォーマンスとヘリテージ Indian Sport Chiefの真価<AD> 河西 啓介 アメリカの老舗、インディアンが擁する伝統のパフォーマンスクルーザー「チーフ」。そのなかでも“走り”を突き詰めた一台が「スポーツチーフ」だ。古き良きライドフィールと過激なパフォーマンスという、2つのキャラクターを併せ持つニューモデルの魅力に触れた。

古くて新しいモーターサイクルブランド

今から120年以上前、1901年に二輪車製造に乗り出したアメリカ最古のモーターサイクルメーカー、インディアンは、1950年代に一度事業を終了したのち、長いあいだ歴史の表舞台から姿を消していた。それが本格的に復活したのは21世紀になってからだ。つまり、長い歴史を持つ新しいメーカーなのである。

古くて新しい。その特徴をよく体現しているのが、このインディアン・スポーツチーフかもしれない。チーフというのは1世紀前、インディアンの黎明(れいめい)期につくられた歴史的モデルだ。その名を受け継いだ新生チーフが発表されたのは2011年のことだった。さらにモデルチェンジを受けて現行チーフが登場したのは2021年だ。スチールパイプを組み合わせた伝統的な形状のフレームに、排気量1890ccの空冷Vツインエンジン「サンダーストローク116」を積んだパフォーマンスクルーザーは、まさにクラシックなスタイルとパワフルな走りを融合させたモデルである。

そのチーフをさらにスポーティーに進化させたモデルがスポーツチーフだ。2リッター近い大型エンジンを積むクルーザーでスポーツ? と思う向きもあるだろうが、近ごろアメリカでは、「キング・オブ・バガーズ」というリアケースを付けたバガースタイルの大型クルーザーで競うレースが人気なのだ。インディアンやハーレーダビッドソンの超重量級クルーザーが、フルバンクしながらとんでもないスピードでかっ飛んでいく、迫力満点のレースだ。

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パワフルな走りとクラシックな装いが魅力の「チーフ」シリーズ。今日におけるインディアンの中核車種で、その名は1922年登場の往年の名車に由来する。
パワフルな走りとクラシックな装いが魅力の「チーフ」シリーズ。今日におけるインディアンの中核車種で、その名は1922年登場の往年の名車に由来する。拡大
インディアンは1897年創立、1901年にバイクの製造を開始した老舗中の老舗で、現存するものとしてはアメリカ最古のバイクメーカー/ブランドである。
インディアンは1897年創立、1901年にバイクの製造を開始した老舗中の老舗で、現存するものとしてはアメリカ最古のバイクメーカー/ブランドである。拡大
プレミアムモデルだけに装備は充実。Bluetoothを介して携帯端末と接続可能な4インチのタッチスクリーンに、USBポート、クルーズコントロール、キーレスイグニッションなどが標準で備わる。
プレミアムモデルだけに装備は充実。Bluetoothを介して携帯端末と接続可能な4インチのタッチスクリーンに、USBポート、クルーズコントロール、キーレスイグニッションなどが標準で備わる。拡大
パフォーマンスクルーザーの「チーフ」シリーズのなかでも、特に走りに重きを置いたのが「スポーツチーフ」だ。試乗したマシンは、純正アクセサリーでカスタムされた車両だった。
パフォーマンスクルーザーの「チーフ」シリーズのなかでも、特に走りに重きを置いたのが「スポーツチーフ」だ。試乗したマシンは、純正アクセサリーでカスタムされた車両だった。拡大

インディアン流の「クラブスタイル」を具現

そんなトレンドも踏まえつつこのスポーツチーフを見ると、なるほどその「クールさ」が伝わってくる。チーフシリーズの特徴である、丸いパイプをラグを用いてつないだフレーム、そこから直線的に配されたリアショックへの流れは、まるでカスタムバイクのような仕上がりだ。フレームのなかに収まるブラックペイントされたエンジンも、ヘッドから空冷フィン、ケースに至るまで美しくデザインされている。

スポーツチーフはそこに「走り」の要素を加え、さらにカスタム度をアップさせている。外観で特徴的なのは70’sカフェレーサー的な雰囲気を醸し出す、フロントのクオーターフェアリングだ。ライザーバーで高めの位置にセットされたハンドルは、スタンダードより幅の狭いナロータイプに換えられている。

162N・mの強大なトルクを発生するエンジンはチーフシリーズ共通だが、スポーツチーフを名乗るゆえんはそれを受け止め、存分に走らせるために強化された足まわりにある。フロントには径43mmのKYB製倒立フォークを備え、リアには他のモデルよりサスペンションストロークを伸ばしたFOX製ツインショックを採用している。ブレーキは前後ともブレンボ製で、フロントはシングルからダブルディスクへと強化される。タイヤはフロント:130/60B19、リア:180/65B16の「ピレリ・ナイトドラゴン」を装着している。

大排気量クルーザーをベースにハイウェイやワインディングロードでの走りのパフォーマンスを高めるカスタムは「クラブスタイル」と呼ばれ、近年においてバイカーのムーブメントとなっている。スポーツチーフはそのクラブスタイルをインディアン流に解釈し、構築したモデルと言っていいだろう。

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実車を前にすると、まずはその美しさに感嘆させられる。スタイリングのよさや見事な仕上がりの塗装、微に入り細をうがつ装飾、削り出しのパーツ類にほれぼれしてしまうのだ。
実車を前にすると、まずはその美しさに感嘆させられる。スタイリングのよさや見事な仕上がりの塗装、微に入り細をうがつ装飾、削り出しのパーツ類にほれぼれしてしまうのだ。拡大
「スポーツチーフ」の特徴であるクオーターフェアリング。ヘッドランプは今日のインディアンではおなじみのフルLED式だ。
「スポーツチーフ」の特徴であるクオーターフェアリング。ヘッドランプは今日のインディアンではおなじみのフルLED式だ。拡大
足まわりではフロントにKYB製倒立フォークを、リアにFOX製のピギーバックショック(写真)を採用。トラベル量が増したリアショックは、快適な乗り心地にも寄与している。
足まわりではフロントにKYB製倒立フォークを、リアにFOX製のピギーバックショック(写真)を採用。トラベル量が増したリアショックは、快適な乗り心地にも寄与している。拡大
より強力なフロントブレーキもこのマシンの見どころ。ブレンボ製の4ピストンキャリパーと、径320mmの2枚のセミフローティングローターが組み合わされる。
より強力なフロントブレーキもこのマシンの見どころ。ブレンボ製の4ピストンキャリパーと、径320mmの2枚のセミフローティングローターが組み合わされる。拡大

街なかでも扱いやすい300kgの巨体

スポーツチーフのシートにまたがり、走りだす。試乗車はオプションの10インチライザーバーが装着されているため(通常のスポーツチーフは6インチ)ハンドル位置はより高く、肩の位置から真っすぐに腕を伸ばしてグリップを握る。ステップ位置は足を前に投げ出すフォワードコントロールではなく、膝をほぼ直角に曲げてステップに足を下ろすミッドコントロールだ。独特のライディングポジションだが、日本人の平均的体格のライダー(筆者は身長173cm)でも手足のバランスは悪くなく、街なかをゆっくり走るような場面でも扱いにくさは感じなかった。

1890ccのVツインエンジンは力強い鼓動を響かせながら、およそ300kgの巨体を軽々と走らせる。一般道や高速道路をひとしきり走らせて気づいたのは、エンジンの出力特性を切り替えるライディングモードによる性格の“豹変(ひょうへん)”ぶりだ。穏やかなほうから「ツアー」「スタンダード」「スポーツ」の3モードが設定されているが、それぞれを選んだときの変化の度合いがかなり大きい。

ニュートラルなのは当然スタンダードモードで、街なかから高速までビッグツインの豊かなトルクとパワーを生かして気持ちよく走ることができる。これがスポーツモードを選ぶと、途端に驚くほどアグレッシブで獰猛(どうもう)になる。アクセルを開けるとトルクの塊にドン! と後ろから突き飛ばされたように加速し、思わず体が置いていかれそうになるのだ。

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車重は燃料非搭載時でさえ302kgと、まさに重量級の「スポーツチーフ」だが、意外や操作性は良好。走り好きの向きには、リーンアングルが29.5°に増している点も朗報だろう。
車重は燃料非搭載時でさえ302kgと、まさに重量級の「スポーツチーフ」だが、意外や操作性は良好。走り好きの向きには、リーンアングルが29.5°に増している点も朗報だろう。拡大
今回の試乗車には、10インチのライザーバー(写真)や、より大型のウインドディフレクター、サドルバッグなどのアクセサリーが装備されていた。
今回の試乗車には、10インチのライザーバー(写真)や、より大型のウインドディフレクター、サドルバッグなどのアクセサリーが装備されていた。拡大
1890ccもの排気量を持つ空冷Vツインエンジン「サンダーストローク116」。最大トルク162N・mという膂力(りょりょく)はもちろん、OHVならではの丸いヘッドまわりや、細かな冷却フィンが施されたシリンダーなど、その美しさも見どころだ。
1890ccもの排気量を持つ空冷Vツインエンジン「サンダーストローク116」。最大トルク162N・mという膂力(りょりょく)はもちろん、OHVならではの丸いヘッドまわりや、細かな冷却フィンが施されたシリンダーなど、その美しさも見どころだ。拡大
ライディングモードには「ツアー」「スタンダード」「スポーツ」の3種類を用意。4インチのタッチスクリーンで操作する。
ライディングモードには「ツアー」「スタンダード」「スポーツ」の3種類を用意。4インチのタッチスクリーンで操作する。拡大

共存する2つの魅力と価値観

過激な調律に最初は驚かされるスポーツモードだが、その反応の鋭さに慣れてくると、この巨体を意のままに操るのが楽しくなる。ガチッと利くブレーキ、路面をしっかり捉えるサスペンションなど、スポーツチーフに与えられた装備の恩恵が実感できる。気分はキング・オブ・バガーズ、とばかりに峠道を走ったらさぞ楽しいだろうと想像する。

いっぽうツーリングモードでは、アクセル操作に対する反応が「あれ?」と思うほどユルい。これはこれでちょっとルーズすぎるのでは、という気がしたが、いざ高速道路を流してみるとその意味がわかった。コンスタントなスピードで巡航していると、このユルいスロットルが実に気持ちいいのだ。右手をガバっとワイドオープンしたときの「ズダダダダダ……」という鷹揚(おうよう)な加速がたまらない。

しばらく走っていると、ライディングモードによるこのあからさまな変貌ぶりは、エンジニアによる確信犯的なセッティングなのだとわかる。クールなクラブスタイルの内側に、古き良きクルーザーの味と過激なパフォーマンス、2つの走りの楽しさを兼ね備えている。古くて新しい。そんなインディアンの魅力を、スポーツチーフは体現しているのだ。

(文=河西啓介/写真=郡大二郎)

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「スポーツ」モードを選ぶと一気に獰猛になる「スポーツチーフ」だが、専用設定の前後サスペンションと強力なブレーキにより、積極的にこのモードを楽しめる。
「スポーツ」モードを選ぶと一気に獰猛になる「スポーツチーフ」だが、専用設定の前後サスペンションと強力なブレーキにより、積極的にこのモードを楽しめる。拡大
ユニークな機能としては、他のインディアンの最新モデルと同じく気筒休止システムを搭載。停車時に1つシリンダーを休止することで、エンジンの放熱を抑えてくれる。
ユニークな機能としては、他のインディアンの最新モデルと同じく気筒休止システムを搭載。停車時に1つシリンダーを休止することで、エンジンの放熱を抑えてくれる。拡大
シート高は686mmと他の「チーフ」のモデルより若干高くなっているが、依然として足つき性は良好だ。試乗車にはアクセサリーのタンデムシート「チーフ シンジケートシート」が装備されていた。
シート高は686mmと他の「チーフ」のモデルより若干高くなっているが、依然として足つき性は良好だ。試乗車にはアクセサリーのタンデムシート「チーフ シンジケートシート」が装備されていた。拡大
サイドビューで大きな存在感を放つ2本のエキゾーストパイプ。スロットルをワイドオープンすると、低音の利いた刺激的なサウンドを奏でてくれる。
サイドビューで大きな存在感を放つ2本のエキゾーストパイプ。スロットルをワイドオープンすると、低音の利いた刺激的なサウンドを奏でてくれる。拡大
古き良きライドフィールとモダンで過激なパフォーマンスを併せ持つ「スポーツチーフ」。古くて新しいブランド、インディアンのヘリテージを体現したモデルと言えるだろう。
古き良きライドフィールとモダンで過激なパフォーマンスを併せ持つ「スポーツチーフ」。古くて新しいブランド、インディアンのヘリテージを体現したモデルと言えるだろう。拡大

車両データ

インディアン・スポーツチーフ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2301×842×1270mm
ホイールベース:1640mm
シート高:686mm
車重:302kg(燃料非搭載時)/311kg(燃料搭載時)
エンジン:1890cc 空冷4ストロークV型2気筒OHV 2バルブ
トランスミッション:6段MT
最高出力:--HP(--kW)/--rpm
最大トルク:162N・m(16.5kgf・m)/3200rpm
タイヤ:(前)130/60B19 61H/(後)180/65R16 81H(ピレリ・ナイトドラゴン)
価格:328万円~339万8000円

インディアン・スポーツチーフ
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