インディアン・スカウト100thアニバーサリーエディションを試す
伝説に跨って 2020.03.31 乗って知る“アメリカンレジェンド”インディアンの今<AD> バイク製造に乗り出したのは1901年と、アメリカでも“最古”の歴史を誇るオートバイメーカー、インディアン。あまたの伝説に彩られたこのブランドは、どのような魅力を秘めているのか? ラインナップの一翼を担う「スカウト」の100周年記念モデルで確かめた。スクリーンでも活躍を見せたアメリカの名門
アメリカのモーターサイクルといえば“ハーレー”というイメージが強い。いや、特にバイク好きという訳でもなければ、「ハーレー以外ありましたっけ?」というのがフツウだろう。だが、実は今から120年近くも前、ハーレーに先駆けて二輪車の製造を始めたアメリカのモーターサイクルカンパニーがある。それがIndian(インディアン)だ。今回、その基幹モデルであるスカウトの100周年記念モデルに試乗する機会を得た。
とはいえ僕自身、かつてはインディアンというブランドについて、あまりよく知らなかった。ライダーズテイストのアパレルなどでそのロゴを見かけたことはあり、“伝説的な”バイクメーカーであるという認識はあったが、その程度。その僕がインディアンについて知るきっかけとなったのは、2005年に公開された『世界最速のインディアン』という映画だった。
アンソニー・ホプキンス主演のこの映画は、1960年代、古いインディアンを改造して二輪の世界最速記録に挑んだ男、バート・マンローをモデルにした作品である。ニュージーランドの片田舎に住むバート(アンソニー・ホプキンス)は、自らの手で改造した1920年型インディアン・スカウトをアメリカのボンネビル・ソルトフラッツに持ち込み、世界最速記録に挑戦することを夢見ていた。年金暮らしの彼は倹約に励み、近所の少年の協力を得ながらバイクの改良を試みるが、いかんせん60代の男が40年以上前のバイクで世界最速記録を目指すという無謀な試みなど、誰も本気にしない。映画の中でマンローが少年たちに「忘れるな、夢を追わない人間などキャベツと同じだ」と語るシーンが印象的だ。
“誕生100周年”のアニバーサリーモデル
実はこのストーリーは、映画化するため脚色はされているものの、実話をもとにしたものだ。実際のバート・マンローは67歳のとき、47年落ちのインディアンで183.58mph(295.44km/h)という排気量1000cc以下の世界最速記録を打ち立てている。
掘り起こせばいくつも魅力的なエピソードが出てくるインディアンだが、そのブランドヒストリーも波乱に満ちている。1901年に初のモーターサイクルを製造すると、1910年代から30年代にかけてはVツインエンジンを武器に次々と速度記録を樹立。マン島TTで1、2、3位を独占するなど、レースでも華々しい成績を残した。その後は四輪車の台頭もあって、1950年代半ばに事業を終了。長らく歴史の表舞台から姿を消していたが、1990年代にブランド復活を果たす。2000年代にはニューモデルの生産が始まり、2011年にはスノーモービルやATVの分野でアメリカNo.1のシェアをもつポラリス・インダストリーズの傘下に入り、名実ともに「インディアンモーターサイクル」は再興を遂げた。
“アメリカ最古のモーターサイクルブランド”というヘリテージと最新のテクノロジーが融合した新世代のインディアンは、いったいどんなオートバイなのか? 今回試乗したのは、1920年に誕生した名車スカウトの100周年を祝うアニバーサリーモデルである。
インディアンのラインナップには大別すると、「チーフ」や「チャレンジャー」に代表される大型ツアラーと、コンパクトでスポーティーなスカウトがある。ハーレーにおけるビッグツインとスポーツスターの関係と考えればいいだろう。最近はトラッカースタイルの「FTR」も登場したが、基本はこの2系統と思えばいい。スカウトに搭載されるエンジンは水冷の1133cc Vツイン。DOHC 4バルブヘッドを備え、100HPに迫る最高出力を発生するハイパフォーマンスエンジンだ。
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スポーティーな身のこなしと小気味いいビート感
その排気量の大きさからすると、車体はとてもコンパクトに見える。跨(またが)ると、なるほどVツインエンジンのスリムさとも相まって、足つきは良好だ。身長173cmの僕だと両足がカカトまで地面についてヒザが余る。ただし、ステップはやや前方にあり、両足を投げ出すようないわゆる“フォワードコントロール”となるため、ポジションはコンパクトではない。身長が170cm以上あれば問題ないが、小柄な人は少し工夫が必要かもしれない。
右手でスタータースイッチを押し込むと、ごく軽いクランキングとともにVツインが目を覚ます。アクセルをあおると、ビッグツインらしからぬエンジン回転のスムーズさに驚く。ギアをエンゲージし、走り始めてもその印象は変わらなかった。とても軽やかなのだ。エンジンの吹け上がりの軽さに加えて、アルミ製フレームおよびスイングアームから伝わる剛性の高さ、低重心のレイアウトが効いている。“アメリカンバイク”というくくりからイメージする重々しさは感じられず、バンク角の小ささを除けば、まるでネイキッドスポーツバイクに乗っているような感覚で運転することができた。
いっぽう、Vツインらしい鼓動はしっかり感じられる。ボア×ストロークは99×73.6mmというショートストローク型で、ハーレーのような“ドドッ、ドドッ”という不規則な動物的息づかいとは異なるが、股下で2つのピストンが素早いショートパンチを繰り出しているような、小気味いいビートがシート越しに伝わってくる。
“本物”ならではの価値がある
スカウトのモダンでスポーティーな乗り味は、いい意味で予想を裏切るものだった。いっぽうで、バイクを止め、あらためてその姿を観察してみると、その随所にインディアンというブランドの歴史を感じさせるクラシックなディテールが息づいている。落ち着いたマルーンにゴールドのピンストライプが施された、シックなボディーカラー。馬の鞍(くら)を思わせる本革のサドルシート。美しいクロームで統一されたビーチバーハンドル、ヘッドライトケース、そしてエキゾーストパイプ。
全体にことさら大げさに“昔風”を装うのではなく、ツボを押さえた程よいヴィンテージ感がスタイリッシュだ。これなら革ジャンでビシッとキメても、ジャケットにデニムでさらっと跨っても似合うだろう。街乗りからツーリングまで、シーンを選ばず乗ることができそうなのもいい。
二輪にも四輪にもいえることだが、歴史と伝統をもつブランドがそのヘリテージをうまく生かしながら、洗練されたモダンなハードウエアを手に入れたとき、とても強いプロダクトが生まれる。紆余(うよ)曲折を経て生まれた最新のインディアンも、まさにそうした価値あるモーターサイクルになっている。
スカウトに乗りながら、あらためて『世界最速のインディアン』のことを思い出す。いま跨っているバイクが、あの血統を受け継いでいるのだと思うと心が踊る。家に帰ったらDVDを借りて、久しぶりに映画を見てみようか、そんなことを考えた。
(文=河西啓介/写真=郡大二郎)
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車両データ
インディアン・スカウト100thアニバーサリーエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2327×1029×1076mm
ホイールベース:1575mm
シート高:708mm
車重:267kg
エンジン:1133cc 水冷4ストロークV型2気筒 DOHC 4バルブ
トランスミッション:6段MT
最大トルク:97N・m(9.9kgf・m)/5600rpm
タイヤ:(前)130/90B16 67H/(後)150/80B16 77H(ピレリ・ナイトドラゴン)
価格:192万円
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