開幕戦オーストラリアGP「暗中模索で新時代に突入」【F1 2014 続報】

2014.03.17 自動車ニュース
チャンピオン最有力チーム、メルセデスのニコ・ロズベルグが2014年の開幕戦で勝利。(Photo=Mercedes)

【F1 2014 続報】開幕戦オーストラリアGP「暗中模索で新時代に突入」

2014年3月16日、オーストラリア第2の都市、メルボルンにあるアルバートパーク・サーキットで行われたF1世界選手権第1戦オーストラリアGP。自然吸気からターボへ、KERSはいっそうパワフルかつ複雑なERSへ──新時代のF1マシンによる初レースは、大本命メルセデスのニコ・ロズベルグが圧勝したものの、しばらくは暗中模索の展開が続きそうである。

予選ではチームメイトのハミルトンにポールポジションを奪われ3位となったロズベルグ。レースではスタートでトップに立ち、以降圧倒的なペースで後続を引き離した。(Photo=Mercedes)
昨年のフォーミュラ・ルノー3.5チャンピオン、21歳のデンマーク人ケビン・マグヌッセンがデビュー戦でいきなり2位表彰台を獲得。ルーキーを乗せないことで有名なマクラーレンが認めた力量は本物ということか。予選4番手から危なげない走りで快挙を成し遂げた。(Photo=McLaren)

■“新しいパワーユニット”による新時代F1の幕開け

2014年のF1シーズンが開幕。かつてないほどの大幅なレギュレーション変更が行われたF1は、新時代に突入した。

25年間続いてきた自然吸気エンジンの規定が撤廃され新しいパワーユニットが誕生。昨年までの2.4リッターV8エンジンから1.6リッターV6+シングルターボという、ダウンサイジングの時流に乗った、よりグリーンなイメージを与えるエンジンに一新された。サーキットから甲高いエキゾーストノートが消え、四半世紀ぶりに野太いターボサウンドが復活したことになる。

さらに昨年までの「KERS」をさらにパワーアップした「ERS(Energy Recovery System)」を採用。KERSが運動エネルギーを回生するのに対し、ERSではターボチャージャーの回転を利用して発電、パワーを供給する仕組みが加わった。昨季までKERS単体でエンジン出力に80psプラスだったが、ERSでは出力も倍に増え、さらに1周で使える時間も7秒足らずから約33秒へと長くなった。
この新世代パワーユニットにおいて、内燃機関としてのエンジンはもはや動力源のひとつにすぎなくなったといえる。
メルセデス、フェラーリ、ルノーの3社がこのユニットを手がけ全11チームに供給。そして来年にはここにホンダが参戦することになる。

レース中は燃料使用100kgまでという規制が採用されたのもニュースだ。前年比で約3分の2となり、レースの戦い方も変更を余儀なくされるだろう。そのほか、フロント&リアウイング、ノーズにも変更が加わり、ダウンフォースは激減。リアウイングのフラップを動かしオーバーテイクしやすくする機構「DRS」は継続となるが、50mmから65mmに開口を広げ、ダウンフォース減との釣り合いをとった。

スポーティングレギュレーションでの最大のトピックは、「最終戦ではポイントを2倍にする」というダブルポイント制が導入されたこと。シーズンフィナーレとチャンピオンシップを盛り上げるための策なのだが、ドライバーやチーム関係者からも「作為的」など批判が出ており、物議を醸している。

2007年にエンジン開発凍結のルールがスタートして以降、マシンパフォーマンスにおけるエンジンの影響力が低下していたが、しかし今年は様相が一変。まずはより確かな信頼性を獲得できたパワーユニット(&マシン)が勝利への第一条件となるだろう。また、かつてない複雑な機構に挑戦するのは技術者だけではなく、それをうまく使いこなすドライバー、チームの力量が問われる、そんな1年の始まりである。

冬のテストでまずまずの感触を得ていたフェラーリだが、開幕戦ではメルセデスやマクラーレンの後塵(こうじん)を拝した。フェルナンド・アロンソ(写真手前)は予選5位、決勝も5位で終えたが繰り上げで4位の座に。古巣に戻ったキミ・ライコネン(その後ろ)も苦戦し、11番グリッドから8位フィニッシュ(=7位)とパッとせず。壊れなかったが速くもなかった。(Photo=Ferrari)
マルティニ社のスポンサードを受けたウィリアムズ・メルセデスは冬のテストより好調が伝えられていたが、開幕戦でも健闘が光った。フェラーリから移籍してきたフェリッペ・マッサ(写真)は、スタート直後に小林可夢偉にはじき出され0周リタイアとなったが、僚友バルテリ・ボッタスは15番グリッドから次々とオーバーテイクを披露し6位でゴール、繰り上げで5位入賞を果たした。(Photo=Williams)

■4連覇チームに暗雲、テストで最強だったメルセデス

かように大胆な変更があれば、これまでのドライバーやチームの力関係がリセットされてもおかしくはない。実際、スペインとバーレーンで行われた計12日間だけの冬のテストでは、4連覇中のレッドブルがかつてないほどの不調に見舞われていた。

王者が抱える問題は、新型「RB10」というよりもルノーのパワーユニット、特にその冷却系にあるとされる。ニューマシン開発の出だしからつまずいてしまったレッドブル、シーズン序盤はキャッチアップに追われることはほぼ間違いなく、5連覇を目指すチームとセバスチャン・ベッテル、また姉妹チームのトロロッソから“Aチーム”入りを果たしたダニエル・リカルドにとっては厳しい船出となることが予想される。

パワーユニットが一新されれば、シャシーとエンジン双方を手がけるチームが何かと有利。その好例が昨季ランキング2位のメルセデスだ。テストで順調に走行距離を伸ばし、一発の速さもある「W05」は完成度が高く、今シーズンのチャンピオン候補ナンバー1の呼び声が高い。ずばぬけて速いルイス・ハミルトンとクレバーなニコ・ロズベルグ、昨年計3勝したコンビがけん引役となり、2010年に復活したドイツの巨人はタイトルを目指す。

メルセデス同様、パワーユニットも作るフェラーリにもアドバンテージがある。2010年から続く“アロンソ時代”にことごとくタイトルを逃してきたスクーデリア。近年の課題であったシーズン中のマシン開発能力は、キャリブレーション問題で2012年から使用を止めていた自社風洞施設の再稼働で、克服のめどが立ったようだ。今季型「F14 T」を駆るフェルナンド・アロンソ&キミ・ライコネンのWチャンピオンには、最高の結果が求められている。

資金不足に苦しむロータスは、ライコネンと技術面の要であったジェームス・アリソンがフェラーリに、そしてチームのまとめ役だったエリック・ブーリエはマクラーレンに引き抜かれ、さらにルノーエンジンの不調も重なり不安材料に事欠かない。独創的なマシン「E22」と、成長著しいロメ・グロジャン、ウィリアムズから移籍してきたパストール・マルドナドが一矢報いたいところである。

また昨季優勝&表彰台なしのランキング5位だったマクラーレン・メルセデスは、チーム代表のマーティン・ウィットマーシュが責任を取らされ、グループCEOのロン・デニスが復権。ブーリエをレーシング・ディレクターに据えて再建中である。「MP4-29」をドライブするのは、ベテランのジェンソン・バトンと、21歳の新人、ケビン・マグヌッセンだ。

リカルドの抜けたトロロッソには、19歳のルーキー、ダニール・クビアトが加入。初戦は雨の予選でいきなりQ3進出、8番グリッドから並みいる強豪を相手に善戦した。10位でチェッカードフラッグ、繰り上がりで9位。この結果、セバスチャン・ベッテルの最年少入賞記録を更新した。(Photo=Toro Rosso)

■雨の予選、好調メルセデスの間に割って入ったのは……

金・土の3回のフリー走行では、やはりメルセデスの速さが歴然とあらわれた。1回目こそ上位に食い込めなかったものの、2回目はハミルトン、ロズベルグの1-2、3回目はロズベルグが後続を1.3秒も引き離しトップタイムをマークした。

雨に降られた予選。Q1ではロータスが2台とも敗退、続くQ2では何とチャンピオンのベッテルが13番手(他車ペナルティーで結果12番グリッド)に沈むという波乱に見舞われた。
そして続くQ3では、セッション終了のチェッカードフラッグ前後にドラマがあった。終盤にかけてハミルトン、ロズベルグの1-2だったが、終了30秒前にレッドブルのリカルドがトップを奪取、18秒前にすかさずハミルトンが首位を奪還、チェッカードフラッグ後に今度はロズベルグが1位に上り詰めた。
その後、場内の歓声がひときわ大きくなったのは母国でリカルドが予選1位の座を奪ったから。その夢の初ポールは、しかし最後の最後にハミルトンが最速タイムを更新したことでかなわなかった。

ルーキーの活躍も目立った。予選4位はマクラーレンに乗るマグヌッセン。トロロッソからデビューした19歳のロシア人ドライバー、ダニール・クビアトは堂々8番手タイムを記録した。
アロンソ5位、トロロッソのジャン=エリック・ベルニュ6位、フォースインディアのニコ・ヒュルケンベルグ7位、そして心機一転、今年ウィリアムズで再スタートを切るフェリッペ・マッサが9位に入った。マッサのチームメイト、バルテリ・ボッタスは10位に終わったが、ギアボックス交換のペナルティーで5グリッド降格、代わりにバトンのマクラーレンがトップ10最後の位置に収まった。

5連覇を目指すチャンピオン、ベッテルの表情は険しかった。予選では2012年ベルギーGP以来となるQ2どまりを経験。エンジン制御のソフトウエアが不調で、この問題はレース開始前にも認められていた。ペースが伸びず5周でリタイア。(Photo=Red Bull Racing)
小林可夢偉の復帰第1戦は不本意な結果に。弱小ケータハムでQ2にまで進出し14番グリッドを獲得。しかしレースでは、スタートで勢い余ってタイヤをロックさせてしまい、マッサを道連れにしてコースに飛び出してリタイア。(Photo=Caterham)

■ハミルトン失速、ロズベルグが首位に

ドライで迎えたレースデイ。スタートはマルシャの1台がエンジンストールでやり直しとなり、1周減算の57周で仕切り直しに。
ポールシッターのハミルトンが出遅れ、かわりにロズベルグのメルセデスが首位奪取に成功。2位にリカルド、ハミルトンを抜いたマグヌッセンが3位に上がりオープニングラップを終えた。
ケータハムからGP復帰を果たした小林可夢偉は、スタート直後にライコネン、マッサと接触、マッサを道連れにコースを飛び出しリタイアを喫した。

ハミルトンのメルセデスはズルズルと後退し3周を過ぎてピットへ。エンジンの1気筒がミスファイアを起こし、レースを諦めざるを得なかった。また12番グリッドからスタートしたベッテルも、前日から続くエンジンのソフトウエアの問題でパワーが得られず、5周で戦列を去った。

レースは序盤からロズベルグが頭ひとつ飛び出したペースで周回を重ね、2位リカルドを後方へと追いやった。ボッタスがウォールに当たりセーフティーカーが導入された12周目までに約6秒のリードを築き、レース再開後にも順調なペースを刻んだメルセデスは、最終的に25秒近くの大差をつけ圧勝するのであった。

一方のリカルドは、ペースこそロズベルグにかなわなかったものの、冬のテストの不調と精彩を欠くチームメイトとは対照的に母国で力走を披露。レース終盤、ルーキーらしからぬマグヌッセンの激しい追い上げにその座を脅かされたが、それもしのぎ切った。

だがレース後数時間して、リカルドのレッドブルにレギュレーション違反が発覚。
今季から導入された「燃料流入量100kg/h規制」に反し燃料がより多く流れていたということで、リカルドはレース失格を言い渡され、3位マグヌッセン以下は1つポジションが繰り上がった。チームはアピールする構えだが、せっかくの好走に思わぬケチがついてしまった。

チャンピオンチーム移籍後の初レースで2位表彰台、しかも母国の観衆の前で──ダニエル・リカルドの夢のオーストラリアGPは、レース後のレギュレーション違反による失格で一気に悪夢に変わってしまった。「燃料流入量100kg/h規制」に反して多くの燃料が流れていたとレーススチュワードが判断。しかしチームは異を唱(とな)えており、アピールする姿勢を示している。(Photo=Red Bull Racing)

■マクラーレンの復活、ボッタス&ウィリアムズの健闘

リカルドの失格でデビュー戦を2位で終えることとなったマグヌッセンは、初めて表彰台に上ったデンマーク人に。その後ろ、4位でチェッカードフラッグを受けたチームメイトのバトンは繰り上がりで3位となった。2009年チャンピオンは、セーフティーカー導入の機会を逃さずにすかさずピットへと飛び込み9位から6位に上昇。次のタイヤ交換ではヒュルケンベルグ、アロンソを飛び越して4位のポジションを奪った。まずまずの速さに加え戦略上の妙という武器も持っていたマクラーレンは、繰り上がりで2ー3フィニッシュとなり、コンストラクターズランキングではトップについた。

パッとしなかったのはフェラーリ勢だ。アロンソはヒュルケンベルグに鼻っ面を抑えられる展開に終始し、ピットストップを遅らせることで何とかフォースインディアを抜き5位でレースを終えた(リザルト上は4位)。ライコネンはといえばタイヤの不調で8位(同7位)。今後の挽回が待たれる状態である。

ウィリアムズのボッタスは健闘が光った。15番グリッドから瞬く間にポイント圏内に返り咲き、勢い余ってホイールを壁にぶつけてしまったものの、運よくセーフティーカーで痛手を最小限にとどめられた。ボッタスとウィリアムズは6位フィニッシュ(繰り上がり5位)という幸先よいスタートを切った。

新時代F1の初戦は、どのチームもドライバーも暗中模索状態。最速メルセデスとてトラブルに見舞われ、また気になる燃費問題も1周減算とセーフティーカー導入で状況的にだいぶ楽な展開となった。全19戦で争われる2014年のF1、その全容が明らかになるのは、もう少し先になるだろう。

第2戦マレーシアGPは、3月30日に決勝スタートを迎える。

(文=bg)

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