第3戦バーレーンGP 唯一にして最大のライバル

2014.04.07 自動車ニュース
2戦連続でメルセデス1-2フィニッシュ。激しい優勝争いの末、ルイス・ハミルトン(右)は2連勝を飾り、開幕戦ウィナーのニコ・ロズベルグ(左)は2位でレースを終えた。(Photo=Mercedes)
2戦連続でメルセデス1-2フィニッシュ。激しい優勝争いの末、ルイス・ハミルトン(右)は2連勝を飾り、開幕戦ウィナーのニコ・ロズベルグ(左)は2位でレースを終えた。(Photo=Mercedes)

【F1 2014 続報】第3戦バーレーンGP「唯一にして最大のライバル」

2014年4月6日、バーレーン・インターナショナル・サーキットで行われたF1世界選手権第3戦バーレーンGP。ワールドチャンピオンシップ900戦目の記念レースは、2台のメルセデスによる激しいマッチレースに。シルバーアローに敵なし。唯一にして最大のライバルは、同じチーム内にいた。

スタートでは、2番グリッドのハミルトン(先頭)がポールシッターのロズベルグ(その右)を抜きトップに躍り出た。(Photo=Mercedes)
スタートでは、2番グリッドのハミルトン(先頭)がポールシッターのロズベルグ(その右)を抜きトップに躍り出た。(Photo=Mercedes)
ライバルをまったく寄せつけなかったメルセデス勢は、ハミルトン(写真手前)とロズベルグ(同後ろ)がスタートからゴールまで手に汗握る攻防戦を繰り広げた。最後はセーフティーカー導入で10周のスプリントレースに。トップのハミルトンに度々襲いかかるロズベルグだったが、同じマシンを操るチームメイトを攻略できなかった。(Photo=Mercedes)
ライバルをまったく寄せつけなかったメルセデス勢は、ハミルトン(写真手前)とロズベルグ(同後ろ)がスタートからゴールまで手に汗握る攻防戦を繰り広げた。最後はセーフティーカー導入で10周のスプリントレースに。トップのハミルトンに度々襲いかかるロズベルグだったが、同じマシンを操るチームメイトを攻略できなかった。(Photo=Mercedes)

■“チーム・ブラックリー”の快進撃

オーストラリア、マレーシアとメルセデスの2連勝で始まった2014年のF1だが、実は5年前も、“このチーム”は開幕から破竹の勢いで快進撃を続けていた。

2009年は、空力面で大きな改変が行われ、溝のないスリックタイヤが復活。そして“電気ブースト”たる「KERS」が初めて採用された年だった。各陣営が新しい規定にマシンや戦略を合わせ込んでいる中、レギュレーションの盲点を突いた「ダブルディフューザー」を武器に連勝したのは「ブラウンGP」、ほんの数カ月前まで「ホンダ」と呼ばれていた、英国ブラックリーに本拠を置くチームである。
ジェンソン・バトンが開幕から7戦で6勝。後半はまったく勝てず、同じく新興のレッドブルの逆襲を受けることになるが、貯金を切り崩しながら戦ったバトンとブラウンは、見事チャンピオンとなった。

この年の11月、ドイツの巨人メルセデスがこのチームを買収。1930年代と50年代に一時代を築いたシルバーアローの復活である。一度引退したミハエル・シューマッハーを呼び戻し、若手ニコ・ロズベルグと組ませた最初の2年は未勝利に終わったものの、2012年にロズベルグが初優勝し、翌年にはシューマッハーに代わる気鋭のルイス・ハミルトンが1勝、ロズベルグ2勝と着実に力をつけてきた。

そしてレギュレーションが一新された今シーズン、メルセデスは冬のテストから絶好調。ホンダ時代からチームを率いてきたロス・ブラウンが去り、元ウィリアムズのトト・ウォルフをビジネス面の代表に、元F1チャンピオンのニキ・ラウダを非常勤の会長に、そして元マクラーレンのパディ・ロウを技術面の長に置き、さらには元ルノーのボブ・ベル、元フェラーリのアルド・コスタ、元ホンダのジェフ・ウィリスといった綺羅(きら)星のごときテクニカルスタッフをそろえた。
今季型「W05」はこのオールスターの生み出した作品である。完成度の高いマシンに同じスリーポインテッドスターの強力なパワーユニットを搭載。昨年足を引っ張られたタイヤとの相性も、ピレリが硬めになったことで改善されたようだ。

前戦マレーシアGPはハミルトン優勝、ロズベルグ2位で、1955年イタリアGP以来、59年ぶりとなるメルセデス1-2となった。ホンダからブラウン、そしてメルセデスへと変貌と遂げた“チーム・ブラックリー”が、5年ぶりの戴冠に向けて、まっしぐらにシーズンを駆け抜けようとしている。

レース後「自分のキャリアのなかで最も特別な結果のひとつ」と語ったのは、3位表彰台を獲得したセルジオ・ペレス(右)。昨年、マクラーレンで戦闘力のないマシンと悪戦苦闘し散々な結果に終わったメキシカンは、たった1年でチームを追われることになってしまった。新天地を求めフォースインディアに移籍、わずか3戦目で、自信回復につながるポディウムを勝ち取った。ニコ・ヒュルケンベルグも5位入賞を果たし、チームは現在コンストラクターズランキング2位。代表のビジェイ・マリヤ(左)もご満悦。(Photo=Force India)
レース後「自分のキャリアのなかで最も特別な結果のひとつ」と語ったのは、3位表彰台を獲得したセルジオ・ペレス(右)。昨年、マクラーレンで戦闘力のないマシンと悪戦苦闘し散々な結果に終わったメキシカンは、たった1年でチームを追われることになってしまった。新天地を求めフォースインディアに移籍、わずか3戦目で、自信回復につながるポディウムを勝ち取った。ニコ・ヒュルケンベルグも5位入賞を果たし、チームは現在コンストラクターズランキング2位。代表のビジェイ・マリヤ(左)もご満悦。(Photo=Force India)

■ロズベルグが、今季初ポールポジション

砂漠のサーキット、サキールで行われるバーレーンGPは10回目を迎え、今年からスタート時間を遅らせ、シンガポール、アブダビに次ぐ、人工照明の下でのナイトレースとなった。

金曜、土曜の3回のフリー走行ではいずれもハミルトンがトップ、ロズベルグ2番手で案の定メルセデス勢が席巻。その後の予選では、今度はロズベルグがチームメイトをリードする展開でセッションが進んだ。
トップ10グリッドを決めるQ3、最初のアタックでロズベルグが1位、ハミルトンは0.279秒遅れの2位。3連続ポールを狙ったハミルトンだったが、2回目のフライングラップでコースをはみ出しタイムアップならず、結果ロズベルグが今季初、自身通算5回目のポールポジションを決めた。

開幕前の予想を上回る健闘を見せているレッドブル。過去2戦で味方してくれた雨がなくても、ダニエル・リカルドがロズベルグから0.866秒遅れの3番手タイムをマークした。しかし、前戦ピットレーンで危険な再スタートを切ったことにより10グリッド降格というペナルティーを受け、せっかくの好位置を諦めなければならなかった。

代わって2列目に入ったのは好調ウィリアムズのバルテリ・ボッタス。だがポールタイムからは1秒以上離されており、本家メルセデス勢とのパフォーマンスギャップは大きかった。ウィリアムズ同様、パワフルなメルセデス・ユニットを搭載するフォースインディアのセルジオ・ペレスが4番グリッド。キミ・ライコネンのフェラーリを間に挟み、マクラーレンのジェンソン・バトン、ウィリアムズのフェリッペ・マッサ、マクラーレンのルーキー、ケビン・マグヌッセンと“メルセデス・パワー”が続いた。

フェルナンド・アロンソのフェラーリは9番グリッド、そして今季3戦目にして2度目のQ2敗退となったチャンピオン、セバスチャン・ベッテルのレッドブルが繰り上がりで10番グリッドを得た。

レッドブルのダニエル・リカルドは、予選で3番手タイムをマークしながら、前戦マレーシアGPでチームが起こした、ピットレーンでのアンセーフリリースのペナルティーで10グリッド降格、13番グリッドからスタートした。レースでは中盤までにポイント圏内に顔を出し、セーフティーカー後にはフレッシュなソフトタイヤを履き善戦。チームメイトのセバスチャン・ベッテル、そしてパワフルなメルセデス・ユニットを背負うヒュルケンベルグをも抜き、3位に終わったペレスには0.4秒差にまで詰め寄った。開幕戦2位で失格、2戦目のマレーシアではリタイアと踏んだり蹴ったりだったオージーにとって今季初入賞となる4位フィニッシュ。(Photo=Red Bull Racing)
レッドブルのダニエル・リカルドは、予選で3番手タイムをマークしながら、前戦マレーシアGPでチームが起こした、ピットレーンでのアンセーフリリースのペナルティーで10グリッド降格、13番グリッドからスタートした。レースでは中盤までにポイント圏内に顔を出し、セーフティーカー後にはフレッシュなソフトタイヤを履き善戦。チームメイトのセバスチャン・ベッテル、そしてパワフルなメルセデス・ユニットを背負うヒュルケンベルグをも抜き、3位に終わったペレスには0.4秒差にまで詰め寄った。開幕戦2位で失格、2戦目のマレーシアではリタイアと踏んだり蹴ったりだったオージーにとって今季初入賞となる4位フィニッシュ。(Photo=Red Bull Racing)
当初から苦戦は予想されたものの、結果にはやはりがっかり、といったところ。フェラーリはバーレーンで極めて地味な週末を過ごした。フェルナンド・アロンソ(写真手前)は9番グリッドから9位。キミ・ライコネン(同後ろ)は5位と好位置からのスタートながら接触などもあり後退し、10位ゴール。レース後のライコネンは、メルセデス・エンジン組との大きな差を認めざるを得なかった。(Photo=Ferrari)

当初から苦戦は予想されたものの、結果にはやはりがっかり、といったところ。フェラーリはバーレーンで極めて地味な週末を過ごした。フェルナンド・アロンソ(写真手前)は9番グリッドから9位。キミ・ライコネン(同後ろ)は5位と好位置からのスタートながら接触などもあり後退し、10位ゴール。レース後のライコネンは、メルセデス・エンジン組との大きな差を認めざるを得なかった。(Photo=Ferrari)

■ハミルトン対ロズベルグの手に汗握る攻防戦

レースでは、メルセデスの2台による優勝を目指した攻防戦が、スタートからチェッカードフラッグまで続いた。
シグナルが変わると、2番グリッドのハミルトンがポールシッターのロズベルグを抜きトップ奪取に成功。しかしロズベルグもやすやすとリードを明け渡したわけではなく、2台は1.5秒程度の間隔で、ほぼ同じようなタイムを刻みながら57周レースの序盤を戦った。

この優勝争いには2つのポイントがあった。ひとつ目は、最初のピットストップ目前。1位ハミルトンと2位ロズベルグの差が1秒以下に縮まり、19周目にはロズベルグが一瞬チームメイトを抜き、すかさずハミルトンがその座を奪い返す一幕が見られた。
続く最初のピットストップで両者は違う戦略を選択。最初に動いたハミルトンはソフトからソフト、その2周後にピットへ飛び込んだロズベルグはソフトからミディアムへとタイヤを変えたのだった。ハミルトンはより速いペースで走れるソフトでこのままチームメイトを突き放し、またロズベルグはレース終盤にフレッシュなソフトで勝負を挑む考えだった。

2つ目のポイントは41周目に訪れた。ロータスのパストール・マルドナドとザウバーのエステバン・グティエレスが接触。ザウバーは宙を舞い1回転してクラッシュ、コース上にマシンを止めたことで、バーレーンではめずらしいセーフティーカーが導入された。
これで、第2スティントでロズベルグを10秒近く離すことに成功していた首位ハミルトンは、アドバンテージを一気に帳消しにされてしまった。さらにこの徐行走行中に最後のタイヤ交換を済ませると、真後ろから追うロズベルグはソフト、防衛する立場のハミルトンはミディアムと、ハミルトンは不利な状況に追い込まれた。

チームメイト対決の激化をおそれたメルセデスは、再スタート前にチーフのロウ自身が「2台そろってゴールしてほしい」とドライバーに無線で伝えたが、チームオーダーは出さず2人に自由なレースをさせた。そして残り10周のスプリントレースは、手に汗握る戦いとなったのである。

同じ銀色のマシンによる、激しいつばぜり合いでは、ロズベルグがハミルトンを抜き一瞬トップを奪うのだが、すかさずハミルトンが抜き返す展開が何度も見られた。しかし最後まで順位は変わらず、結局ハミルトンがロズベルグを1秒差で抑え切り2連勝を飾ることとなった。

小林可夢偉のバーレーンGPは、18番グリッドから2ストップで15位完走。レース終盤は燃費を抑えた走行に切り替えざるを得ず、前を走る14位パストール・マルドナドには25秒もの差をつけられてしまった。結果は後ろから3番目だが最善は尽くした。(Photo=Caterham)
小林可夢偉のバーレーンGPは、18番グリッドから2ストップで15位完走。レース終盤は燃費を抑えた走行に切り替えざるを得ず、前を走る14位パストール・マルドナドには25秒もの差をつけられてしまった。結果は後ろから3番目だが最善は尽くした。(Photo=Caterham)

■独走メルセデスの後ろでは

最後の10周でハミルトンとロズベルグの差はわずか1秒だったが、3位はなんと23秒も後方に追いやられていた。この日のメルセデスの独走ぶりがうかがえる数字である。

レース序盤は、7番グリッドのマッサが好スタートで3位に躍り出て、チームメイトのボッタスとともにウィリアムズが表彰台の最後の一角を争っていたが、セーフティーカーとピット戦略が合わず後退。代わってフォースインディアのペレスとニコ・ヒュルケンベルグ、そして猛チャージを仕掛けるレッドブルのリカルドがポディウムを目指ししのぎを削った。

最後にソフトタイヤを残したリカルドは、チームメイトのベッテル、ヒュルケンベルグをオーバーテイクするといよいよ照準をペレスに合わせたが、ペレスは何とか抑え切り0.4秒の僅差で3位の座を守ることに成功した。マクラーレンを追い出され、フォースインディアに移籍したメキシコ人にとっては自信を取り戻すポディウム、またフォースインディアにとっては、2009年ベルギーGPでジャンカルロ・フィジケラが記録した2位に次ぐ2度目の表彰台となった。

独走メルセデスに敵なし。唯一にして最大のライバルは、同じガレージで隣り合うチームメイト同士。今シーズンは、コース上でもチャンピオンシップでも、ハミルトンとロズベルグの対決を中心に進むことはほぼ間違いないだろう。首位をひた走るシルバーアローとの、あまりに大きなパフォーマンスギャップを前に、挑戦者たちはこれからどのような勝負を挑むのだろうか? 次戦中国GPは、4月20日に決勝を迎える。

(文=bg)

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