第6戦モナコGP「微妙な2人の関係性」【F1 2014 続報】

2014.05.26 自動車ニュース
メルセデスのニコ・ロズベルグ(中央)が開幕戦に次ぐ今季2勝目をマーク。モナコでは2年連続のポール・トゥ・ウィンを達成した。2位はルイス・ハミルトン(左)でメルセデスは5戦連続の1-2フィニッシュ。3位には前戦スペインGPと同じ、レッドブルのダニエル・リカルド(右)が入った。(Photo=Mercedes)
メルセデスのニコ・ロズベルグ(中央)が開幕戦に次ぐ今季2勝目をマーク。モナコでは2年連続のポール・トゥ・ウィンを達成した。2位はルイス・ハミルトン(左)でメルセデスは5戦連続の1-2フィニッシュ。3位には前戦スペインGPと同じ、レッドブルのダニエル・リカルド(右)が入った。(Photo=Mercedes)

【F1 2014 続報】第6戦モナコGP「微妙な2人の関係性」

2014年5月25日、モンテカルロ市街地コースで行われたF1世界選手権第6戦モナコGP。開幕戦ウィナーのニコ・ロズベルグがモナコで2年連続のポール・トゥ・ウィンを達成、ルイス・ハミルトンの連勝を「4」で止め、再びポイントリーダーの座に返り咲いた。6戦全勝、最速マシンを駆る、メルセデスの2人の緊張関係は、レースごとに深まりつつある。

予選に次いで重要なモナコのスタート。トップのロズベルグを先頭に2位ハミルトン、3位セバスチャン・ベッテル、4位キミ・ライコネン、5位リカルドらが続いた。(Photo=Mercedes)
予選に次いで重要なモナコのスタート。トップのロズベルグを先頭に2位ハミルトン、3位セバスチャン・ベッテル、4位キミ・ライコネン、5位リカルドらが続いた。(Photo=Mercedes)
スタートでトップを守り、チームメイトのハミルトンと僅差の攻防戦を繰り広げたロズベルグ。途中、燃費に不安を抱えたがドライビングでカバーし、地元モナコで勝利した。ハミルトンの連勝を止め、ランキング1位の座も取り戻した。(Photo=Mercedes)
スタートでトップを守り、チームメイトのハミルトンと僅差の攻防戦を繰り広げたロズベルグ。途中、燃費に不安を抱えたがドライビングでカバーし、地元モナコで勝利した。ハミルトンの連勝を止め、ランキング1位の座も取り戻した。(Photo=Mercedes)
予選最後のタイムアタックをチームメイトに邪魔された格好のハミルトンは、セッション後に仏頂面でインタビューに答えていた。そして迎えた決勝、何とかして1位ロズベルグを抜きたいハミルトンは、ピットストップのタイミングについて無線でチームに不満をぶつけた。レース中に目にゴミが入るハプニングを乗り越えての2位フィニッシュ。2008年チャンピオンの表情からは憤まんやるかたなしといった感情を読み取れた。(Photo=Mercedes)
予選最後のタイムアタックをチームメイトに邪魔された格好のハミルトンは、セッション後に仏頂面でインタビューに答えていた。そして迎えた決勝、何とかして1位ロズベルグを抜きたいハミルトンは、ピットストップのタイミングについて無線でチームに不満をぶつけた。レース中に目にゴミが入るハプニングを乗り越えての2位フィニッシュ。2008年チャンピオンの表情からは憤まんやるかたなしといった感情を読み取れた。(Photo=Mercedes)

■小さな音をめぐる騒々しい論争

日常で知覚し得ないような時間差の中で、真っ先に規定距離を走り切ったものが勝利する、というのがモータースポーツの基本だとしたら、その最高峰をうたうF1は、それを最も高次に成し遂げなければならないカテゴリーである。ドライバーの力量が問われることは言わずもがな。極限までの技術的高性能が求められることもしかりだ。

そのF1が、ある悩みを抱えているという。マシンが奏でる音、すなわちエキゾーストノートが小さ過ぎるというのだ。

昨年までの自然吸気V8エンジンから1.6リッターV6ターボ・ハイブリッドにパワーユニットが変わったおかげで、それまでのけたたましいエンジン音は耳栓不要の、グッとおとなしいものになった。
これを開幕から問題視し続けているのがF1ビジネスを牛耳るバーニー・エクレストン。たけだけしいごう音を響かせて疾走するイメージこそF1にふさわしい、と彼に同調する意見も少なくなく、この騒音ならぬ“小音”問題克服のため、前戦スペインGP終了後のバルセロナにおけるテストでは、メルセデスがある装置を試した。マシン後方上部から突き出したテールパイプに、まるでタコの口のような“メガホン”を装着してのテストは失敗に終わったと伝えられている。

音を人為的に大きくするという狙いそのものが正しくないのではないか、という意見もある。“メガホン・エキゾースト”でタイムアップが果たせるならともかく、第一義はあくまで音を増すこと。冒頭に示した「真っ先に走り切ったものが勝者である」という、このスポーツの最もベーシックな“法則”には余り関係がないことに、どれだけの労力をかければいいのだろうか。

今シーズンの大レギュレーション変更には、F1をより今日的な“グリーンな商品”としてスポンサーに買ってもらう狙いがある。小排気量の内燃機関+ターボ+ハイブリッドのF1マシンは、その極めて高度なエンジニアリングをもって最高峰たるゆえんを世界に知らしめようとしている。その挑戦と、従来より音が小さくなったという問題をてんびんにかけた時、果たしてどちらにいっそうの重みがあるのだろうか。

ワールドチャンピオンシップ創設前の1929年に始まり、今年で72回目を迎えた伝統のレース、モナコGP。世界で2番目に小さい国にある、追い抜きほぼ不可能ともいえる市街地コースで、今年、小さな音のレーシングマシンが覇を競い合う。眼下のコースから聞こえるエキゾーストノートに、公国の住民は何を思ったのだろうか。

スタートでこそ失敗したが、レースではベッテル、ライコネンの不運にも助けられ3位にまで戻ることができたレッドブルのリカルド。ハミルトンが視界不良と知るや終盤猛チャージをかけ、0.4秒差の3位でチェッカードフラッグを受けた。(Photo=Red Bull Racing)
スタートでこそ失敗したが、レースではベッテル、ライコネンの不運にも助けられ3位にまで戻ることができたレッドブルのリカルド。ハミルトンが視界不良と知るや終盤猛チャージをかけ、0.4秒差の3位でチェッカードフラッグを受けた。(Photo=Red Bull Racing)
フェラーリのフェルナンド・アロンソ(写真)は予選5位、決勝4位。前後に敵なしの単独走行で見せ場なくレースを終えた。チームメイトのライコネンは好スタートでレース序盤は3位を走るも、セーフティーカーラン中にマルシャに当たり、予定していないピットインを余儀なくされた。12位完走。(Photo=Ferrari)
フェラーリのフェルナンド・アロンソ(写真)は予選5位、決勝4位。前後に敵なしの単独走行で見せ場なくレースを終えた。チームメイトのライコネンは好スタートでレース序盤は3位を走るも、セーフティーカーラン中にマルシャに当たり、予定していないピットインを余儀なくされた。12位完走。(Photo=Ferrari)

ポールポジションをロズベルグが奪ったが……

最近の10年でポール・トゥ・ウィンが9回。モンテカルロでは予選順位がどこのサーキットよりも重要である。そこで勝利に最も近い場所、ポールポジションを獲得したのは、メルセデスのニコ・ロズベルグ。モナコでは2年連続、通算では1982年チャンピオンの父ケケを抜く6回目のポールとなったが、しかしその“取り方”が予選後に審議対象となってしまった。

Q3の最初の計時でトップタイムをマークしたロズベルグは、最後のフライングラップ中、ミラボー・コーナーでタイヤをロックさせコースオフ、アタックを諦めざるを得なかった。この際出されたイエローフラッグで、後方から好タイムで追い上げていた僚友ルイス・ハミルトンも(結果的に)タイプアップを断念。ロズベルグ最速のままチェッカードフラッグが振られたが、ハミルトンにとっては“幻のポール”となったのだから胸中複雑である。
セッション終了後、ロズベルグのこのコースオフが意図的だったのではないかという嫌疑がかけられた。審議された結果、スチュワードはその疑いはないとの判断を下したのだが、後味の悪さが残った。第2戦から4連勝、チャンピオンシップでも3点差でトップに躍り出たハミルトンと、チームメイトの快進撃を何とか止めたい開幕戦ウィナーのロズベルグ。激しさを増す2人のライバル関係が、この疑惑の背景にあったのではないだろうか。

メルセデス2戦連続、今年3度目のフロントロー独占の背後には、ダニエル・リカルド3位、セバスチャン・ベッテル4位とレッドブル勢、フェルナンド・アロンソ5位、キミ・ライコネン6位とフェラーリ勢がきれいに並んだ。今回ベッテルはERSにトラブルを抱え、チームメイトに0.163秒の差をつけられてしまったとはいえ、リカルドの対ベッテルの予選成績は6戦4勝、このオーストラリアンが波に乗っていることに違いはない。

トロロッソも予選で光った。ジャン=エリック・ベルニュが7番グリッド、そしてルーキーのダニール・クビアトはQ1でスピン、クラッシュを喫しながらもQ3に駒を進め初モナコで9番グリッドを獲得した。マクラーレンの新人ケビン・マグヌッセンは予選8位、そしてトップ10最後のポジションは、フォースインディアのセルジオ・ペレスの手に渡った。

マクラーレンにとっては第2戦マレーシアGP以来となる久々の入賞。ジェンソン・バトン(写真)は予選で12位と出遅れ、オープニングラップではセルジオ・ペレスとの接触でセーフティーカーを誘発。その後はポイント圏内に食い込み、最後はニコ・ヒュルケンベルグを攻め立てたが抜けず6位でゴールした。チームメイトのケビン・マグヌッセンは予選8位、決勝10位でチームはダブル得点。(Photo=McLaren)
マクラーレンにとっては第2戦マレーシアGP以来となる久々の入賞。ジェンソン・バトン(写真)は予選で12位と出遅れ、オープニングラップではセルジオ・ペレスとの接触でセーフティーカーを誘発。その後はポイント圏内に食い込み、最後はニコ・ヒュルケンベルグを攻め立てたが抜けず6位でゴールした。チームメイトのケビン・マグヌッセンは予選8位、決勝10位でチームはダブル得点。(Photo=McLaren)

メルセデスが後続を引き離す

今回ピレリが持ち込んだタイヤはソフトとスーパーソフト。いずれも持ちは悪くないということで、1ストップが取るべき作戦であるというのがレース前の大方の見方だった。順位変動の少ないモナコ、チャンスはスタートか、1回だけかもしれないピットストップのいずれかといえた。

シグナルが変わると、1位ロズベルグ、2位ハミルトンはそのまま1コーナーへ。1つ順位を上げ3位にベッテル、抜群の出だしだった6番グリッドのライコネンは4位、一方3番グリッドのリカルドは鈍い加速で5位にダウンし、アロンソは6位からレースを始めることとなった。

オープニングラップ中、中団グループのペレスとジェンソン・バトンが接触し、フォースインディアが狭いコースをふさいで止まったためセーフティーカーが導入。4周目に再スタートが切られると、3位ベッテルがズルズルと下がり始め、チャンピオンはパワーユニットのトラブルで早々にリタイアを喫した。

レース序盤からメルセデスの2台が後続を引き離す予想通りの展開。トップのロズベルグと2位ハミルトンの間には12周目に1秒以上となってからは2秒と開かず、ハミルトンと3位にアップしていたライコネンとの差は、21周目には10秒以上にもなっていた。

26周目、エイドリアン・スーティルのザウバーがトンネル出口でクラッシュ、この日2度目のセーフティーカーが呼ばれ、ちょうどピットストップのタイミングを迎えていた各車は次々とピットへなだれ込んだ。この徐行走行中、3位ライコネンはマルシャの1台に当てられて余計なタイヤ交換を余儀なくされ、つかみかけた表彰台を失った。そしてポディウム圏内にはリカルドが戻ってきた。

ケータハムの小林可夢偉は予選21番手、グリッド順は他車のペナルティーでひとつ上げ20位。決勝ではスタートでジャンプアップし、15位、14位、13位、12位と順調にポジションを上げていたが、ジュール・ビアンキとの接触でダメージを負い後退。それでもしぶとく走り切り13位でレースを終えた。接触したビアンキのマルシャは9位でチーム初得点。グリッド後方から抜け出したいケータハムは、ライバルに差をつけられてしまった。(Photo=Caterham)
ケータハムの小林可夢偉は予選21番手、グリッド順は他車のペナルティーでひとつ上げ20位。決勝ではスタートでジャンプアップし、15位、14位、13位、12位と順調にポジションを上げていたが、ジュール・ビアンキとの接触でダメージを負い後退。それでもしぶとく走り切り13位でレースを終えた。接触したビアンキのマルシャは9位でチーム初得点。グリッド後方から抜け出したいケータハムは、ライバルに差をつけられてしまった。(Photo=Caterham)

■ハミルトン、視界不良でリカルド迫る

31周目に再々スタート。よほどのことがないかぎり、もうタイヤを交換する必要はなくなったトップを争う2本のシルバーアローは、互いにファステストラップを更新し、1秒前後で攻防を繰り広げた。

78周レースの半ばを過ぎ、首位ロズベルグには燃料をセーブするようにとの無線がたびたび飛び、ロズベルグはギアを上手に使い悪化していた燃費をケア。そんな中、付かず離れずのトップ2台の差が一気に4秒まで広がったのが終盤の66周目のことだった。
目にゴミが入り時折目を閉じなければならないという、ガードレールに挟まれたモナコでは考えられないようなドライビングを強いられていたハミルトン。ロズベルグとの差は拡大し、一方で3位リカルドは目にみえて差を詰めてきた。

74周目、いよいよ3位リカルドが2位ハミルトンの真後ろへ。しかしモンテカルロでオーバーテイクは至難の業だ。結局、ロズベルグは9.2秒ものギャップを築き、モナコ2連勝。2位ハミルトンは0.4秒差でリカルドを抑え切ることに成功した。

メルセデスの圧倒的優位は揺るぎないが、同じ最速マシンを駆るロズベルグとハミルトンの緊張関係は増すばかり。予選でのロズベルグのコースオフしかり、レース中のピットストップのタイミングしかり、今回ハミルトンはチームメイトやチームへの不満を態度や言葉であらわしていた。

チャンピオンシップでは、2週間前のスペインで逆転した順位がまたひっくり返り、ロズベルグが4点差で首位に戻った。次はハミルトンが得意とするカナダGP。2014年のF1は、この微妙な2人の関係を軸に進行中である。次戦決勝は6月8日に行われる。

(文=bg)

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