第8戦オーストリアGP「そして、いつものマッチレース」【F1 2014 続報】

2014.06.23 自動車ニュース
11年ぶりに復活したオーストリアGPで、メルセデスが今季6度目の1-2フィニッシュ。今シーズン3勝目を記録しポイントリードをさらに広げたニコ・ロズベルグ(右)と、2位に終わったルイス・ハミルトン(左)。(Photo=Mercedes)
11年ぶりに復活したオーストリアGPで、メルセデスが今季6度目の1-2フィニッシュ。今シーズン3勝目を記録しポイントリードをさらに広げたニコ・ロズベルグ(右)と、2位に終わったルイス・ハミルトン(左)。(Photo=Mercedes)

【F1 2014 続報】第8戦オーストリアGP「そして、いつものマッチレース」

2014年6月22日、オーストリアのレッドブル・リンク(4.326km)で行われたF1世界選手権第8戦オーストリアGP。高速コースでストレートが速いウィリアムズが伏兵として現れたが、レースは中盤を過ぎると、常勝メルセデス軍団の2台によるいつものマッチレースとなった。

レッドブルのオーナーである富豪ディートリッヒ・マテシッツのおかげでオーストリアGPはよみがえった。チームと同名のコースで奮起が期待された、前戦カナダGPウィナーのレッドブルだったが、初優勝の勢いに乗りたかったダニエル・リカルドは8位入賞、セバスチャン・ベッテルはリタイアと寂しい結果に。(Photo=Red Bull Racing)
レッドブルのオーナーである富豪ディートリッヒ・マテシッツのおかげでオーストリアGPはよみがえった。チームと同名のコースで奮起が期待された、前戦カナダGPウィナーのレッドブルだったが、初優勝の勢いに乗りたかったダニエル・リカルドは8位入賞、セバスチャン・ベッテルはリタイアと寂しい結果に。(Photo=Red Bull Racing)
予選とレース序盤こそウィリアムズ勢に先行を許したが、中盤を過ぎればメルセデス2台のいつものマッチレースに。ロズベルグ(前)、ハミルトン(後ろ)ともブレーキや燃費をケアしながら、ゴール直前では激しい攻防を繰り広げた。(Photo=Mercedes)
予選とレース序盤こそウィリアムズ勢に先行を許したが、中盤を過ぎればメルセデス2台のいつものマッチレースに。ロズベルグ(前)、ハミルトン(後ろ)ともブレーキや燃費をケアしながら、ゴール直前では激しい攻防を繰り広げた。(Photo=Mercedes)

■“ディディ”さまさま

1970年チャンピオンのヨッヘン・リント、1975年、1977年、1984年に世界制覇を成し遂げたニキ・ラウダ、そしてF1通算10勝のゲルハルト・ベルガーらを輩出したオーストリアに、11年ぶりにGPが戻ってきた。

同GPの初開催は1964年。飛行場を使った仮説コース、ツェルトベクでのレースは1度きりに終わったものの、その近くに常設コースとしてエステルライヒリンクが造られると、1970年から毎年開催となった。まるで絵はがきのような牧歌的な丘陵地に横たわるコースは起伏に富み、超高速サーキットとしてドライバーたちから人気を得たのだが、多重クラッシュの起きた1987年を最後に、いったんはカレンダーから姿を消した。

1997年、改修を受けA1リンクに名前を変えた同コースで復活するも、2003年のレース後再び消滅。浮き沈みの激しいかの地で三度F1開催のチャンスが与えられたのは、同郷の大富豪、ディートリッヒ・マテシッツのおかげ。いまや世界企業として知られるレッドブルの、創業者のひとりであり、過去4年ダブルタイトルを獲得した強豪チームのオーナーであり、A1リンクからレッドブル・リンクへと改称したこのコースを“救った”男である。

中東やアジアといったF1新興国がもてはやされる昨今、ヨーロッパのオールドコースが復活するのは異例なこと。すべてはマテシッツの財力と政治力の成せる業だ。今年タイトルまっしぐらのメルセデスの首脳であるラウダも、同じくこのドイツの雄を率いるトト・ヴォルフも、レッドブルでアドバイザーを務めるヘルムート・マルコも、あるいはトロロッソの代表であるフランツ・トストも、この国のモータースポーツファンを含めた“オーストリア・ファミリー”が“ディディ”(マテシッツの愛称)には頭が上がらないわけである。

2019年までの開催契約といわれるオーストリアGP。残念ながらオーストリア人の現役F1ドライバーはいないが、前戦カナダGPでレッドブル駆るダニエル・リカルドが初優勝を飾ったことは何よりの土産となったであろう。

 
キャリア2年目、ウィリアムズ駆るバルテリ・ボッタスが3位に入り初表彰台にのぼった。予選2位から好走を続けたがメルセデスにはかなわず。惜しむらくは、メルセデスに反応し2度目のピットストップを速やかに行えなかったこと。温厚そうなフィンランド人は、レース後「私のベストな週末」と語った。(Photo=Williams)
キャリア2年目、ウィリアムズ駆るバルテリ・ボッタスが3位に入り初表彰台にのぼった。予選2位から好走を続けたがメルセデスにはかなわず。惜しむらくは、メルセデスに反応し2度目のピットストップを速やかに行えなかったこと。温厚そうなフィンランド人は、レース後「私のベストな週末」と語った。(Photo=Williams)
フェラーリ在籍中の2008年ブラジルGP以来となる、自身通算16回目のポールポジションを獲得したフェリッペ・マッサ(中央)。ウィリアムズ移籍は“都落ち”の感が否めなかったから、このポールには感慨ひとしおといったところか。しかしレースではスタート後にトップを守るもピットストップで後退、チームメイトのボッタスにも抜かれ4位でフィニッシュ。(Photo=Williams)
フェラーリ在籍中の2008年ブラジルGP以来となる、自身通算16回目のポールポジションを獲得したフェリッペ・マッサ(中央)。ウィリアムズ移籍は“都落ち”の感が否めなかったから、このポールには感慨ひとしおといったところか。しかしレースではスタート後にトップを守るもピットストップで後退、チームメイトのボッタスにも抜かれ4位でフィニッシュ。(Photo=Williams)

■ウィリアムズ、まさかのフロントロー独占

2週間前のカナダでは、トップ独走のメルセデスの2台がトラブルに見舞われ予想外の展開となったが、今回も予選でまさかの事態が起きた。
Q1、Q2と順当にメルセデスが速さを見せ、ポールポジション争いも当然のことながら今季最速のシルバーアローが火花を散らすだろうと思われていたが、一番速かったのは、何とウィリアムズ・メルセデスのフェリッペ・マッサ。フェラーリ在籍中の2008年ブラジルGP以来となる、自身通算16回目のポールポジションを獲得したのだった。さらに驚きは続き、マッサのチームメイト、バルテリ・ボッタスが2番手に入り、ウィリアムズが2003年ドイツGP以来となるフロントロー独占に成功した。

常勝メルセデスに何が起きたのか? ルイス・ハミルトンはQ3最初のアタック中にコースを規定以上はみ出したことでタイムが認められず、また最後のフライングラップでは突如マシンが挙動を乱しスピン、計時されずにセッション終了。結果9番グリッドと後方からのスタートとなってしまった。
ポイントリーダーのニコ・ロズベルグは、最後の計測中にハミルトンのスピンのとばっちりを受けたことで、タイムアップを果たせず3番手どまりとなったが、最大のライバルであるチームメイトの不運もあり、記者会見での表情には余裕すら感じられた。

フェラーリのフェルナンド・アロンソは今季ベストグリッドタイとなる予選4位、カナダGPウィナーのリカルドは5番手、マクラーレンのケビン・マグヌッセン6番手と続き、トロロッソのダニール・クビアトが自身最高位の7番グリッドを得た。
8番手タイムはフェラーリのキミ・ライコネン。トップ10の最後は、ハミルトンとフォースインディアのニコ・ヒュルケンベルグというノータイムの2人が並んだ。

予選で今季ベストタイの4位に入ったフェルナンド・アロンソのフェラーリ。レースではオープニングラップで早くもハミルトンに抜かれ、結果的にこの時の順位、5位のままゴールを迎えた。1位から4位まで占めた“メルセデス・ユニット”勢に、スクーデリアは歯が立たないでいる。(Photo=Ferrari)
予選で今季ベストタイの4位に入ったフェルナンド・アロンソのフェラーリ。レースではオープニングラップで早くもハミルトンに抜かれ、結果的にこの時の順位、5位のままゴールを迎えた。1位から4位まで占めた“メルセデス・ユニット”勢に、スクーデリアは歯が立たないでいる。(Photo=Ferrari)

■ウィリアムズ勢を追うメルセデスの2台

まるでジェットコースターのような上り下りが連なる全長4.3kmにコーナーが9つ(実質7つ)しかなく、ターンの先が読みづらいという難しいハイスピード・サーキットで、71周の戦いの火ぶたが切られた。

スタートでトップを守ったマッサ。蹴り出しのよいロズベルグが一瞬2位に上がるも、その先でボッタスがすかさず抜き返し、ストレートスピードに勝るウィリアムズは1-2を堅持した。オープニングラップを3位で終えたロズベルグの後ろには、瞬く間にポジションアップを果たした9番グリッドのハミルトン。序盤はウィリアムズ、メルセデスの4台が1秒前後の間隔で周回を重ね、5番手のアロンソ以下を突き放していった。

12周目、3位ロズベルグが最初のピットイン。14周目にハミルトン、翌周にマッサ、16周目にボッタスらトップ集団が続々とタイヤ交換を終えると、アウトラップが速かったロズベルグがウィリアムズ2台をアンダーカットすることに成功。ロズベルグ、ボッタス、ハミルトン、マッサと順位が変動した。

その間、15番手スタートのフォースインディア駆るセルジオ・ペレスがノンストップで走行を続け、ロズベルグの鼻面を抑えたため、メルセデス・ユニット搭載の上位5台が数珠つなぎ状態に。均衡が崩れたのはレース3分の1を過ぎた27周目で、ロズベルグとボッタスが、翌周ハミルトンが、それぞれペレスをオーバーテイクしていった。

前戦のペナルティーで5グリッド降格の憂き目にあったフォースインディアのセルジオ・ペレス(中央)。15番グリッドから変則的な作戦で一時はトップを走り、レースでもトップ6まで挽回するのだから侮れない。コンストラクターズランキング4位のフォースインディアに、マクラーレンが2点差で迫っている。(Photo=Force India)
前戦のペナルティーで5グリッド降格の憂き目にあったフォースインディアのセルジオ・ペレス(中央)。15番グリッドから変則的な作戦で一時はトップを走り、レースでもトップ6まで挽回するのだから侮れない。コンストラクターズランキング4位のフォースインディアに、マクラーレンが2点差で迫っている。(Photo=Force India)

■そして、いつものマッチレース

レース中盤でようやく首位に立ったロズベルグだったが、2位ボッタス、3位ハミルトン、やや離れて走る4位マッサらを振り切れない。そんな中、メルセデスが先手を打った。40周して3位ハミルトンが2度目のタイヤ交換。続いてロズベルグがピットに入ったのだが、ウィリアムズのボッタスは42周目までタイヤを変えなかった。その間フレッシュタイヤで飛ばしたメルセデスが、1-2フォーメーションを形成することに成功した。

その後しばらく、1位ロズベルグ、2位ハミルトンの間は1.5秒前後で落ち着いていたが、いよいよゴールが近くなり、タイヤやブレーキ、燃費の心配がほぼなくなると、覇を競う2人はいつものように互いに激しいマッチレースを繰り広げ、チームもそれを許した。
ファイナルラップ、ロズベルグがタイヤをロックさせるミスをおかしたが、ハミルトンはそれをものにできず、万事休す。ロズベルグは開幕戦オーストラリア、第6戦モナコに次ぐ今季3勝目をあげた。

2位に甘んじたハミルトンだったが、はじまりが9番グリッドだったのだからダメージは最小限に抑えられたというべき。ポイントはさらに7点広がり、1勝分を超え29点差となったものの、シーズンはまだ11レースも残っているのだから焦ることはない。

晴れやかなポディウムで明暗が分かれたメルセデス勢の横には、3位ボッタスの姿。24歳のフィンランド人は、ポールシッターだったベテランのチームメイトを上回り、キャリア2年目にして自身初表彰台にのぼった。牧歌的なオーストリアの景色に、純朴そうな北欧男子の、はにかんだ笑顔が妙にマッチしていた。

7月は、およそ1カ月間の夏休み前の、駆け込み3戦が待ち構えている。次戦イギリスGP決勝は7月6日に行われる。

(文=bg)

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