マツダCX-3 XDツーリング Lパッケージ(FF/6AT)
頼れる5ドアクーペ 2015.04.30 試乗記 マツダが自信を持って送る、ディーゼルのコンパクトクロスオーバーモデル「CX-3」。果たして、その実力は? FFのAT車で試した。あくまで前席優先
新しいCX-3は、マツダの「今」を濃~く煮詰めた力作。コンパクト系のSUVやクロスオーバーが流行する中心を直撃する、ヒット作になる可能性は高い。すでに「CX-5」で好評を博しているデザイン、さっくり素直な走行感覚など、誰でもすぐ好きになれそうな仕上がりだ。
全長4275mm、全幅1765mmと小柄なのは、「デミオ」のプラットフォームを基本として開発されたためで、前後のオーバーハングと幅方向だけ少し拡大してある。全高1550mmは、立体駐車施設も使えるように配慮した親切設計だ。
ただし、2570mmのホイールベースはデミオのままなので、後席のスペースは広くない。身長173cmのドライバーが楽な運転姿勢を取った後ろでは、膝の前にげんこつ半分ほどの余裕しかない。5人乗りの多用途車というより、あくまで前席優先。むしろ多様に使い分けられる大きなラゲッジスペースをフル活用し、どこへでも神出鬼没する行動派の、頼れるパートナーとしての5ドア「クーペ」と解釈したい使い勝手だ。
“力”と“音”に驚かされる
ところでCX-3の最大の特徴は、ほかのマツダ車と異なってディーゼル仕様のみという割り切り。マツダの新世代ディーゼルは従来の常識を覆す低圧縮比(14.8)などで、並外れたスムーズさと静かさを誇る。
特にCX-3に搭載される新開発のSKYACTIV-D 1.5は、基本となったデミオ用ディーゼルと共通の1498ccに可変ジオメトリーターボで最高出力105ps/4000rpmだが、最大トルクは2.0~5.1kgm太って27.5kgm/1600-2500rpm(普通の自然吸気ガソリンエンジン車なら2.7リッター級に匹敵する怪力)を生む。
それに加え、今回ここに登場のテスト車(XDツーリング Lパッケージ)には「ナチュラルサウンドスムーザー」が組み込まれ、エンジン音が一段と上質に進化した。ンゴ~ッという低いうなりこそディーゼルそのものでも、その裏に潜む雑みがみごとに削り取られている。ピストンピンとコンロッドの間に挟み込まれた小さな慣性ダンパーがその肝で、この部分で出やすい3500Hz前後のカラカラ乾いた金属ノイズを効果的に減衰している。
これは減速時にエネルギーを回収する「i-ELOOP(アイ・イーループ)」と組み合わせて6万4800円のセットオプションだが、最先端ディーゼルの恩恵を味わうためにはぜひとも選びたい。そのためにはFF車、4WD車とも「XDツーリング」か「XDツーリング Lパッケージ」のAT仕様がお薦めだ。
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納得の燃費性能
このエンジンによる走行感覚は余裕の塊。クルマとしてもそうだが、ドライバーの気持ちにもゆとりが生ずる。スロットルペダルを気ままに深く踏まず、右足を浮かせる感じで、せいぜい2500-3000rpmで自動的なシフトアップを促すようにいくと最も美味いポイントが出るし、燃費もよい。
あらゆる熱機関の中で最高の熱効率を誇るのがディーゼルだけに、CX-3もJC08モードでFFのATが23.0km/リッター、MTが25.0km/リッター(4WDは21.0km/リッターと23.4km/リッター)と伸びるし、実用燃費も高速巡航で22.0km/リッター、市街地で13.0km/リッター以上、平気でいけた。300kmを超えるテスト中の総平均18.2km/リッターなら、次の給油まで900km近くも走れる計算になる。カタログ上で30.0km/リッターや35.0km/リッターもの驚異的な数値を叫べるわけではないが、マツダのパワートレイン開発を担当する人見光夫 常務執行役員が「実用燃費でハイブリッド車にもプラグインハイブリッド車にも負けない」と豪語するのも当然だろう。
できるだけ回転を抑え、低回転でのトルクを生かすのも、クロスオーバーとして走るための絶好のBGMになる。やたらピュンピュン滑らかすぎる最近のガソリンエンジンより、ちゃんと空気を吸っては吐くレシプロらしい息づかいが頼もしい。ここを考えると、CX-3の全車種で選べる6段MT(シフトの手応えは最高)を駆使するのも、決定的な意味は薄いような気がする。
乗り心地も快適で奥が深い。路面の凹凸を正直に拾いはするものの、どこまでも柔らかく吸収してくれる。上下動はデミオのようにピシッとしたソリッド感よりフニャッとしているが、不整面を通過した次の瞬間ピタリと収まる。
コーナリングも素直。普通に走る限り、常に予想通りの反応を示してくれるので安心感も大きい。着座位置が高いぶんロールが気になることもあるが、実際にオーナーになってしまえば、慣れるのに時間はかからないだろう。
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ディーゼル車ならではのネガもある
ただしハンドリングに関しては、ディーゼルであることが原因の一部と思われる弱点もあり、開発陣が叫ぶ「人車一体」を味わいきれない。普通の状態を超え、緊急回避などに直面した時、曲がるにつれて鼻先が大きく膨らみかけ、慌ててもっと切り増さなければならないのだ。デミオの例で見ると、ガソリンとディーゼルの前輪荷重は最低でも50kgは違う。もしCX-3にガソリン仕様があれば、そのぶん鼻先が軽くなるはずで、旋回時にフロントに働く遠心力も小さくなり、もっと素直に曲がってくれるかもしれない。
それに、ディーゼルは基本的にイニシャルコストがかさむから、ガソリン仕様を作れば、25~30万円は安くできるはず。あまり走行距離が多くない大多数のユーザーはディーゼルならではの良さも享受しにくいだろうから、やがてガソリン仕様が追加されることも望んでおきたい。
それはそれとして、こんなに程よく仕上がった優等生であることを認めながら、気持ちの片隅に引っ掛かるものもある。エンジンをはじめ変速機から車体まで根底から見直すスカイアクティブ路線を完遂した技術陣の努力と精進は、あくまでも「今」のこと。それを超えた「未来」を感じにくいというより、かなり20世紀的な価値観を引きずっているように思えてしまう。キッと鋭いまなざし、かみつくようなグリル、長く見せるボンネットなど、どれも前世紀にもてはやされた手法ばかりではないか。
まあ、それも無理からぬことかもしれない。しばらく苦しい経営が続いてきたマツダにとっては、取りあえず物作りの大変革だけでも命懸けだったはず。そのうえで商品企画の考え方まで一気に次世代に突っ走るのは、危険すぎたと言えなくもない。まずよく知られた成り立ちで世の中を安心させて支持を集め、それから新しい境地に踏み出すことになるのだろう。だとすれば、すでに研究開発が始まっていそうな「スカイアクティブの次」がどうなるか、新たな興味と期待をもって見守りたい。
(文=熊倉重春/写真=田村 弥)
テスト車のデータ
マツダCX-3 XDツーリング Lパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4275×1765×1550mm
ホイールベース:2570mm
車重:1270kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:105ps(77kW)/4000rpm
最大トルク:27.5kgm(270Nm)/1600-2500rpm
タイヤ:(前)215/50R18 92V/(後)215/50R18 92V(トーヨー・プロクセスR40)
燃費:23.2km/リッター(JC08モード)
価格:280万8000円/テスト車=297万円
オプション装備:CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(フルセグ)(3万2400円)/Boseサウンドシステム+7スピーカー(6万4800円)/イノベーションパッケージ<i-ELOOP+ナチュラルサウンドスムーザー>(6万4800円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:2534km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:312.9km
使用燃料:18.7リッター
参考燃費:16.7km/リッター(満タン法)/18.2km/リッター(車載燃費計計測値)

熊倉 重春
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