【F1 2016 続報】第19戦メキシコGP「勝つか、負けない」

2016.10.31 自動車ニュース
F1第19戦メキシコGPを制したルイス・ハミルトン(右)と、2位のニコ・ロズベルグ(左)。メルセデスのスタッフを担ぎ上げ喜びをあらわした。(Photo=Mercedes)
F1第19戦メキシコGPを制したルイス・ハミルトン(右)と、2位のニコ・ロズベルグ(左)。メルセデスのスタッフを担ぎ上げ喜びをあらわした。(Photo=Mercedes)

2016年10月30日、メキシコのアウトドローモ・エルマノス・ロドリゲスで行われたF1世界選手権第19戦メキシコGP。初のタイトル獲得を目指すポイントリーダーのニコ・ロズベルグと、それを阻止したいルイス・ハミルトンの攻防戦は、1週間前のアメリカGP同様、攻める側のハミルトンの完勝に終わった。では2戦連続で2位だったロズベルグにとっては……。

ポールシッターのハミルトン(先頭)は、スタートでトップを守ったものの、ターン1への進入でタイヤスモークをあげコースオフ。マシン、タイヤに大きなダメージもなく切り抜けることができた。(Photo=Red Bull Racing)
ポールシッターのハミルトン(先頭)は、スタートでトップを守ったものの、ターン1への進入でタイヤスモークをあげコースオフ。マシン、タイヤに大きなダメージもなく切り抜けることができた。(Photo=Red Bull Racing)

タイトル決定戦、第1幕

史上最多の21戦で争われる今シーズンのF1は、19戦目のメキシコGPにやってきた。条件次第でメルセデスのニコ・ロズベルグがチャンピオンになれる「タイトル決定戦」、まずはその第1幕である。

1週間前のアメリカGPで今シーズン7勝目を飾ったルイス・ハミルトンは、ポイントリーダーでチームメイトのロズベルグとの差を33点から26点にまで縮めた。
残る3戦で手に入れられる最高点は75点。メキシコGPでロズベルグが勝利し、ハミルトンが10位以下の場合、ロズベルグが2016年チャンピオンに輝くことになる計算だった。

仮にハミルトンがメキシコ、次のブラジル、そして最終戦アブダビと連勝しても、ロズベルグが2位を2回、3位を1回取ればロズベルグのタイトルが決まる。自力でチャンピオンになれないハミルトンは、とにかく一戦一戦で勝利を収め、そしてロズベルグが少しでも下の順位でゴールしてくれることを祈るしかないのだ。

背水の陣をしくハミルトンにとっての頼みの綱は、ライバルチーム、特にレッドブルとなるだろう。アメリカGPのスタートでは、ダニエル・リカルドがポールシッターのハミルトンと予選2位ロズベルグの間に割って入り2位へ。ピットインとバーチャル・セーフティーカーのタイミングでリカルドは結果3位に終わったが、チャンピオンチーム(の少なくとも1台)に勝負を挑めるチームは今やレッドブルしかない。7月のオーストリアGP以来、レッドブルのドライバーが表彰台を逃したのはイタリアGPの1度きりだ。「ナンバー2チーム」の動向がタイトル争いに影響することも十分考えらるのだ。

初の栄冠に挑むドライバーと、奇跡の逆転を狙うドライバー。いずれにもプレッシャーが重くのしかかるラスト3レースである。

予選、決勝を通じロズベルグを上回るパフォーマンスを見せたハミルトン(写真)はアメリカ、メキシコと2連勝し、ロズベルグとのポイント差を19点まで縮めた。また通算勝利数で歴代2位のアラン・プロストと並ぶ「51勝」を記録。ミハエル・シューマッハーの91勝に次ぐ歴史に残るレコードだ。(Photo=Mercedes)
予選、決勝を通じロズベルグを上回るパフォーマンスを見せたハミルトン(写真)はアメリカ、メキシコと2連勝し、ロズベルグとのポイント差を19点まで縮めた。また通算勝利数で歴代2位のアラン・プロストと並ぶ「51勝」を記録。ミハエル・シューマッハーの91勝に次ぐ歴史に残るレコードだ。(Photo=Mercedes)

ハミルトンが連続ポール、ロズベルグは2番グリッド

23年ぶりにF1に復活した昨年のメキシコGPでは、その前のレースでタイトルを逃したばかりのロズベルグがポール・トゥ・ウィンで圧勝したが、今年は金曜日からハミルトンがロズベルグを常にリード。トップ10グリッドを決める予選Q3になると、ハミルトンは最初のアタックでたたき出したタイムで2戦連続、今季10回目、通算59回目のポールポジションを獲得してしまった。ロズベルグは1発目のタイムでマックス・フェルスタッペンとリカルドに先を越され4番手と苦戦したものの、セッション終了間際の2度目のフライングラップでなんとか2番グリッドを奪えた。

メキシコの予選でも2列目はレッドブルが占め、フェルスタッペン3位、リカルド4位。フォースインディアのニコ・ヒュルケンベルグの5位に次いだのはフェラーリの2台で、キミ・ライコネンが6位、セバスチャン・ベッテルは7位に沈んだ。ウィリアムズ駆るバルテリ・ボッタスが8位、引退まで3レースとなったボッタスの僚友フェリッペ・マッサは9位、そしてトップ10最後にはトロロッソのカルロス・サインツJr.が入った。

必要にして十分な順位である2位を受け入れたロズベルグ。残る2戦を2位、3位で終わっても初タイトルを獲得できる余裕からか、レース後も比較的落ち着いた表情を見せていた。しかしメキシコGPのスタートではマックス・フェルスタッペンと接触、運が悪ければ2位すらも危うかったかもしれない。ブラジル、そして最終戦アブダビと、かつて経験したことのないプレッシャーに打ち勝つことができるか?(Photo=Mercedes)
必要にして十分な順位である2位を受け入れたロズベルグ。残る2戦を2位、3位で終わっても初タイトルを獲得できる余裕からか、レース後も比較的落ち着いた表情を見せていた。しかしメキシコGPのスタートではマックス・フェルスタッペンと接触、運が悪ければ2位すらも危うかったかもしれない。ブラジル、そして最終戦アブダビと、かつて経験したことのないプレッシャーに打ち勝つことができるか?(Photo=Mercedes)
レース終盤に丁々発止とやりあったレッドブルの2人とフェラーリのベッテル。3位でチェッカードフラッグを受けたフェルスタッペン(左)は、コースをはみ出して4位ベッテルを抑えたことで、レース後5秒加算のペナルティーを受けた。ベッテルは5位リカルド(右)の抑え方が危険だとして10秒プラス。結果、5位でゴールしたリカルドが3位、フェルスタッペンは1つ下がり4位、表彰式に出たベッテルは5位というリザルトになった。この順位変動で、リカルドの今季のドライバーズランキング3位が確定した。(Photo=Red Bull Racing)
レース終盤に丁々発止とやりあったレッドブルの2人とフェラーリのベッテル。3位でチェッカードフラッグを受けたフェルスタッペン(左)は、コースをはみ出して4位ベッテルを抑えたことで、レース後5秒加算のペナルティーを受けた。ベッテルは5位リカルド(右)の抑え方が危険だとして10秒プラス。結果、5位でゴールしたリカルドが3位、フェルスタッペンは1つ下がり4位、表彰式に出たベッテルは5位というリザルトになった。この順位変動で、リカルドの今季のドライバーズランキング3位が確定した。(Photo=Red Bull Racing)

メルセデス、スタートで辛くも1-2を守る

メキシコのコースはスタートしてからターン1までが約900mと長く、スタートの出来、不出来で順位が大きく変動する可能性が高かった。そこで2列目のレッドブルは、蹴り出しはいいが長持ちしないスーパーソフトタイヤをスタートタイヤに選択、対する1列目のメルセデスはライフが長めのソフトタイヤを履き71周レースに臨んだ。

シグナルが消えると、ハミルトンがトップを守るもターン1手前でタイヤスモークをあげコースオフ。幸いマシン、タイヤに大きなダメージもなく切り抜けることができたが、ノーポイントは是が非でも避けたいハミルトンはヒヤリとしたに違いない。
一方、その後ろのロズベルグにも一瞬緊張が走った。ストレートでフェルスタッペンがロズベルグに並びかけ、ターン1で2台は接触。ロズベルグははじき出されるようにコースを外れたのだが、こちらも大事に至らず2位のままコースに戻った。

後続のマシンがクラッシュしたことで早々にセーフティーカーが出動。4周目に再開すると、上位のポジションは1位ハミルトン、2位ロズベルグ、3位フェルスタッペン、4位ヒュルケンベルグ、5位ライコネンとなった。4位スタートのリカルドはセーフティーカーのタイミングでタイヤをミディアムに替える賭けに出ており、またベッテルのフェラーリはマッサに抜かれ8位に後退していた。

1位ハミルトンは調子よくタイムを刻み、10周で2位ロズベルグを4秒突き放した。3位フェルスタッペンはといえばメルセデスを追い切れず、13周目にはスーパーソフトタイヤに見切りをつけミディアムに替え追撃を再開。17周目には首位ハミルトン、20周目には2位ロズベルグもタイヤ交換に踏み切り、ミディアムに換装した。

最初の、そして多くにとって唯一のピットストップが終わると、1位ハミルトン、2位ロズベルグ、3位フェルスタッペン、4位リカルドというオーダー。レースも折り返しが近づく頃になると、3位フェルスタッペンが2位ロズベルグに接近、レッドブルはメルセデスにプレッシャーをかけた。
50周目、1秒以下まで近づいたフェルスタッペンがいよいよロズベルグを抜きにかかろうとするが、レッドブルは勢い余ってコースを外れてしまい、順位は変わらなかった。

9月のイタリアGP以来の表彰台にのぼったベッテル(写真)。しかしレース終盤、リカルドからポジションを守る際に危険なドライビングをしたとして、ポディウムセレモニーの後、10秒のペナルティーが加算され5位に転落した。コースをはみ出してなお3位を走行し続けたフェルスタッペンには怒りを爆発させ、無線で(下品な言葉を交えながら)猛アピール。レース後、その言動を受けた19歳のフェルスタッペンは、4度チャンピオンとなった先輩ドライバーに「大人げない」とコメントした。(Photo=Ferrari)
9月のイタリアGP以来の表彰台にのぼったベッテル(写真)。しかしレース終盤、リカルドからポジションを守る際に危険なドライビングをしたとして、ポディウムセレモニーの後、10秒のペナルティーが加算され5位に転落した。コースをはみ出してなお3位を走行し続けたフェルスタッペンには怒りを爆発させ、無線で(下品な言葉を交えながら)猛アピール。レース後、その言動を受けた19歳のフェルスタッペンは、4度チャンピオンとなった先輩ドライバーに「大人げない」とコメントした。(Photo=Ferrari)
マクラーレンは2台ともQ2に進出するもフェルナンド・アロンソ11位、ジェンソン・バトン(写真)13位とトップ10に食い込めず。レースではポイント圏が遠く、バトン12位、アロンソ13位完走。(Photo=McLaren)
マクラーレンは2台ともQ2に進出するもフェルナンド・アロンソ11位、ジェンソン・バトン(写真)13位とトップ10に食い込めず。レースではポイント圏が遠く、バトン12位、アロンソ13位完走。(Photo=McLaren)

ざわつく後方集団をよそに

順位が膠着(こうちゃく)する中、各車は1ストップでミディアムタイヤのままゴールまで走り切るか、それともフレッシュなタイヤで巻き返すかの選択を迫られていた。上位の大勢が前者を選んだのに対し、後者に賭けたのがリカルドとベッテルだった。

とはいえ2周目からミディアムを履いていたリカルドに選択の余地はなく、51周してソフトタイヤを履いてコースに戻ると、表彰台を目指し追撃を再開した。
ベッテルは、スタートから32周もの間ソフトタイヤで周回をこなしてからミディアムに替えていた。レース終盤、3位フェルスタッペンに照準を合わせたベッテル。フェルスタッペンのタイヤは、ベッテルに比べて20周分使い古された状態だった。

残り4周、ターン1のアウト側から抜くそぶりを見せたベッテルにフェルスタッペンが反応。レッドブルはタイヤから白煙を上げグリーンにはみ出すも再びコースに戻り、3位のまま周回を続け、このままゴールするのであった。
フェルスタッペンのこのドライビングに納得いかないのがベッテルだ。ポジションを守るためコースを外れ、3位に居座り続けるとは何事かと無線で怒りをあらわにした。

フェルスタッペン、ベッテル、そしてリカルドが数珠つなぎとなる中、今度は5位リカルドがベッテルに勝負を挑んだ。残り2周、インに飛び込むリカルドとアウト側のベッテルはラインを交錯させながらターンを抜けた。結局この3台は順番を変えることなくチェッカードフラッグが振られたのだが、レース終了直後に審議結果の出たフェルスタッペンには5秒加算のペナルティーが言い渡されポディウムから脱落。繰り上がって3位表彰台にあがったベッテルにも、リカルドとの一件の責任を問われ程なくして10秒プラスの裁定が下され、3位はリカルド、4位フェルスタッペン、5位ベッテルでリザルトがかたまった。

ざわつく後方集団をよそに、メルセデスは余裕の1-2フィニッシュを決めた。ハミルトンは通算勝利数を「51」とし、歴代2位のアラン・プロストの記録に肩を並べた。また何より重要な、自身4度目のタイトルに向けて絶対に必要な勝ち点「25」を加えることができた。
予選、決勝を通じ2位に甘んじたロズベルグだったが、彼には「ハミルトンに勝つ」こと以外に、必要にして十分なポジションでよしとする「勝たずとも負けない」というオプションもある。レース後のロズベルグの表情が落ち着いていたのもこのアドバンテージのおかげなのだろう。

しかし、19点差で残り2戦に突入する2人のどちらが優位かは、数字だけでは語り得ないのも事実。のしかかる重圧という強敵をはねのけ、ライバルを倒すことができるのは、失うものはない挑戦者ハミルトンか、受けて立つロズベルクか? 次戦ブラジルGP決勝は11月13日に行われる。

(文=bg) 

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