MT車は“ホビーの対象”に?

クルマを運転するジェネレーションの変化もある。イタリアでは第2次大戦中、アルバニアなど戦地において地雷で足を失った人が多かった。そのため、戦後長きにわたってAT車はハンディキャップのある人のためのクルマという印象が強かった。それはボクが住み始めた1990年代末まで続いていて、ATの中古車を探すと、かなりの確率で、障害のある人が前オーナーというクルマが見つかったものだ。そして、そうしたことも過去のものとなりつつあるのだ。

いかがでしたか?(←最近のキュレーションサイト風)

「イタリア車やフランス車はマニュアルじゃなきゃダメざんす」などという知ったかぶりは、本場では通用しなくなりつつある。一方で、MT車が希少になってくると、逆にある一定の人気が高まるのでは? とボクは見ている。

アナログレコードやカセットテープがそうであるように、MT車も現役時代を知らない世代からの支持を獲得するかもしれない。

特に、「シトロエン2CV」や「ルノー4」といった、トランスミッション部分も含め各部の修理が容易なMT車たちは、お金のかからぬホビーの対象として、人気を博す可能性が高い。

そこで思い出すのは、2015年にシトロエン2CVの国際ミーティング「2CVフレンズ」を取材するため、ポーランドを訪れたときのことである。多くの若者たちが、ほほを紅潮させて語った。「ちょっとやそっとじゃ故障しないし、壊れても自分でなんでも修理できる。このクルマなら地球の果てまで走っていけるんだよ」と。

そうした彼らに「ダブルクラッチ!」とか「2速をなめる(注:シンクロメッシュがない時代のクルマで1速に入れるとき、2速に軽くシフトし、滑らかにギアチェンジする術)って、知ってるか?」などと自慢げに講釈を垂れる迷惑なオッサンにはなるまいと、今から自分に言い聞かせている。

(文=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>、プジョー・シトロエン、ルノー/編集=関 顕也)

2016年のパリモーターショーでデビューした新型「プジョー3008」。搭載されるATは、アイシン・エィ・ダブリュ製の6段「EAT6」だ。
2016年のパリモーターショーでデビューした新型「プジョー3008」。搭載されるATは、アイシン・エィ・ダブリュ製の6段「EAT6」だ。
オランダの「ダフ46」。「バリオマチック」と名付けられたATは、イタリアでハンディキャップのある人にも歓迎された。なおダフは1970年代前半、段階的にボルボに吸収され、ブランド名も消滅した。写真は、2003年ミラノで。
オランダの「ダフ46」。「バリオマチック」と名付けられたATは、イタリアでハンディキャップのある人にも歓迎された。なおダフは1970年代前半、段階的にボルボに吸収され、ブランド名も消滅した。写真は、2003年ミラノで。
2015年の「2CVフレンズ・ポーランド大会」にて。写真の3人は、オランダからやってきた若き「2CV」のファンたち。
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