アウディQ2 1.0 TFSIスポーツ(FF/7AT)
若者のためのアウディ 2017.08.07 試乗記 アウディのSUV製品群である「Q」シリーズの末っ子こと「Q2」。“ポリゴン”をモチーフにしたという、ユニークなスタイリングが目を引くニューフェイスの出来栄えを、中間グレードの「1.0 TFSIスポーツ」で試した。キュビズム絵画を思わせる面構成
最初は好きじゃなくて、でもなぜだか気になって、やっぱり好きなんだと気づくケースが人間に対してのみならず、クルマに対しても時々ある。最近ではアウディQ2がそう。日本発売前にドイツで初めて見かけた際、変だなと思った。けれどクルマというのはある程度時間をかけて見て触れて乗って、そしてできれば関係者の話を聞いてからでないと判断してはいけない。Q2はそのことを思い出させてくれた。経験上、好きじゃない→あれ?→やっぱり好きというプロセスを経た相手は、ひと目ぼれした場合よりも好きが深く、長続きするような気がするが、Q2はどうだろうか。中間グレードの1.0 TFSIスポーツに試乗した。
テレビCMで“型破る”と繰り返している通り、Q2のスタイリングはユニークだ。面が多い。例えば、ヘッドランプ後端から始まる1本のショルダーラインがフロントドアの手前で上下2本に分かれ、リアドアの途中で再び1本に戻り、リアコンビランプへと続く。2本のラインに囲まれた部分はまるでカンナで削ったような平面になっている。この部分が間近で見ても、遠くから見てもクールなのだ。Cピラーにかぶせるパネルは、最廉価モデルはボディー同色のみ、それ以外のモデルはシルバーかグレー、またはボディー同色から選べる。
ほかにも多くの線が交錯し、それによって囲まれた多くの面がある。ポリゴンアウディだ。20世紀はじめにパブロ・ピカソとともにキュビズム絵画を流行させたジョルジュ・ブラックが生きていたら激賞するのではないか。そして上下左右が互い違いに凹凸になっているフロントグリルなんてパウル・クレーの……いや、背伸びして絵画に例えるのはよそう。ともあれ、ありそうでなかったグッドデザインだ。
メインターゲットは若者!?
デザイナーは上流の石を意識したそうだ。川の上流の石はまだ角が取れていない。下流の石は転がって丸くなっている。ものわかりがよくなったことを“丸くなった”と表現することがあるが、デザイナーはこのクルマをカクカクさせることで、まだ丸くなっていない若々しさを表現したのだという。
つまりQ2は若者を獲得するミッションを課せられたクルマなのだ。若者向けのスタイリングをまとっても、売り手が消費者の属性をコントロールするのがなかなか難しいということは、「日産ジューク」や「トヨタC-HR」におじさんおばさんがたくさん乗っているのを見ればわかる。ただしメーカーとしては、若者向けのクルマを選ぶヤングアットハートな皆さんにウケたなら、それはそれでOKだろうし、いくらかはあらかじめそれを狙ってもいるのではないか。とはいえ装備を簡略化した最廉価モデルを299万円と設定したように、若者に“も”乗ってほしいのは事実だろう。
フォルクスワーゲングループ肝いりのMQBプラットフォームを用いて開発されたQ2は、車体に不満は何もない。ギャップを通過してもボディーが頼りなく揺れるようなことはないし、コーナリングでは、車体ではなくサスペンションが動いているなというのがよくわかる。「A3」や「Q3」だと前輪駆動(FWD)でもリアサスが独立式になるのだが、Q2は「A1」と同じトーションビームという、一般的には廉価とされる半独立式となる。けれど乗り心地には満足できる。ラゲッジルーム容量が405リッターもあるので、動力性能はA1並みで十分だが、パッケージング面で厳しいと考えていた人にうってつけだろう。
クワトロを導入できない理由を考える
アウディといえばクワトロ(4WD)。しかしこのクルマの本国仕様には設定があるものの、日本仕様では選べない。Q2にクワトロを設定してしまうと兄貴分のQ3が売れなくなってしまうという事情もあるのだろう。ただでさえさほどサイズが変わらず、設計が新しく、価格の安いQ2が出たわけだから。しかもQ2は、衝突軽減システムの「アウディプレセンスフロント」やアダプティブクルーズコントロール(ACC)が備わるグレードが設定されるほか、Q3には設定のない「トラフィックジャムアシスト」(0-65km/hの範囲で先行車に追従するだけでなく、車線を逸脱しないようステアリングもアシストしてくれる機能)も選べる。4WDじゃなくてよいのならどうしたって新しいQ2がまぶしく見えるというものだ。
この仕事をしていると、アウディを検討する方々に限らず、「4WDのほうがいいんですか?」と質問されることが少なくない。答えるのが難しいが「高い保険に入ったほうがいいんですか?」という質問に似ているような気がしている。いざというときに選んでおいてよかったと思うだろうが、普段から楽しいとかうれしいというものではない。悪路や雨の高速道路を飛ばすのでなければ、FWDでもなんの不都合もない。ほかのほとんどのクルマと一緒というだけだ。ただし4WDイメージの強いアウディの場合、4WDのほうが下取りが多少なりとも高いはずだから、仮に走りで恩恵を受けずとも完全に掛け捨てということにはならないはずだ。
1リッター直3ターボは、最高出力116ps、最大トルク200Nmと十分なスペックを持つことに加え、デュアルクラッチ・トランスミッションの7段Sトロニックが効率が高い回転域を維持するため、実直によくはたらいてくれる。一般道は言うにおよばず、高速道路や山道でもパワー不足を感じさせない。車両重量1310kgに対し、JC08モード燃費は19.8km/リッター。十分だと思うが、もうこの程度ではエコカー減税を獲得できない。ただしこのクルマはリッターカーなので自動車税が年2万9500円と安いから、維持しやすい輸入車の部類に入るのは間違いない。
若いなりの楽しみ方がある
今回試乗した1.0 TFSIスポーツの車両本体価格は364万円。テスト車には6万円の特別なボディーカラー、35万円のナビゲーションパッケージ(8スピーカーなど含む)、5万円の「バーチャルコックピット」が付いていた。このうちバーチャルコックピットはオススメ。メーターナセル内一面が液晶画面で、速度計、回転計を必要最小限のサイズに縮小し、できたスペースに地図画面を大きく表示させることができる。見やすいし楽しい。視線移動が少なく安全運転にも寄与するはず。5万円ならなんとか……と一瞬思うのだが、当然ナビゲーションパッケージを付けていないと地図画面を表示することはできない。となると400万円超え……実に悩ましいのであった。
だとしたら、いっそ299万円のベースグレードを選び、スマホを固定してカーナビ代わりに使うなどするのが一番このクルマらしい使い方のように思える。ベースグレードだと装備はいろいろ省かれ、ホイールサイズも小さく地味に見えるが、このクルマの最大の魅力である味わい深いデザインは堪能できる。色違いのCピラーも手を尽くせば再現できるはずだ。そうやって足りない部分を工夫して(正規モノに限らずサードパーティー製品なども駆使して)補いながら楽しむのが若さ、あるいは若い気持ちというものではないだろうか。
(文=塩見 智/写真=尾形和美/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
アウディQ2 1.0 TFSIスポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4200×1795×1500mm
ホイールベース:2595mm
車重:1310kg
駆動方式:FF
エンジン:1リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:116ps(85kW)/5000-5500rpm
最大トルク:200Nm(20.4kgm)/2000-3500rpm
タイヤ:(前)215/55R17 94W/(後)215/55R17 94W(ミシュラン・プライマシー3)
燃費:19.8km/リッター(JC08モード)
価格:364万円/テスト車=410万円
オプション装備:オプションカラー<ベガスイエロー>(6万円)/ナビゲーションパッケージ<MMIナビゲーションシステム+8スピーカー+スマートフォンインターフェイス>(35万円)/バーチャルコックピット(5万円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:2228km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:243.5km
使用燃料:18.2リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:13.4km/リッター(満タン法)/13.8km/リッター(車載燃費計計測値)

塩見 智
-
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【試乗記】 2026.3.4 メルセデス・マイバッハから「SL680モノグラムシリーズ」が登場。ただでさえ目立つワイド&ローなボディーに、マイバッハならではのあしらいをたっぷりと加えたオープントップモデルだ。身も心もとろける「マイバッハ」モードの乗り味をリポートする。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.3.3 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。
-
ドゥカティ・モンスター(6MT)【海外試乗記】 2026.3.2 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。
-
フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)【試乗記】 2026.2.28 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。
-
スズキ・キャリイKX(4WD/5MT)【試乗記】 2026.2.27 今日も日本の津々浦々で活躍する軽トラック「スズキ・キャリイ」。私たちにとって、最も身近な“働くクルマ”は、実際にはどれほどの実力を秘めているのか? タフが身上の5段MT+4WD仕様を借り出し、そのパフォーマンスを解き放ってみた。
-
NEW
実力検証! SUV向けプレミアムタイヤ「ブリヂストンALENZA LX200」を試す
2026.3.62026 Spring webCGタイヤセレクション<AD>目指したのは、人気車種となっているSUVとのベストマッチ。ブリヂストンが開発した新プレミアムタイヤ「ALENZA(アレンザ)LX200」は、どんな乗り味をもたらすのか? モータージャーナリスト石井昌道が試乗を通して確かめた。 -
NEW
BYDシーライオン6(FF)
2026.3.6JAIA輸入車試乗会2026“中国の新興ブランド”BYDにあこがれは抱かずとも、高コスパの評判が気になる人は多いだろう。では、日本に初導入されたプラグインハイブリッド車のデキは? 初めて触れたwebCGスタッフがリポートする。 -
NEW
実に3年半ぶりのカムバック 「ホンダCR-V」はなぜ日本で復活を果たしたのか?
2026.3.6デイリーコラム5代目の販売終了から3年半のブランクを経て、日本での販売が開始された6代目「ホンダCR-V」。世界的なホンダの基幹車種は、なぜこのタイミングで日本復活を果たしたのか? CR-Vを再販に至らしめたユーザーの声と、複雑なメーカーの事情をリポートする。 -
NEW
「ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド」発表会の会場から
2026.3.5画像・写真ジープブランドのコンパクトSUV「アベンジャー」に、4WDのハイブリッドバージョン「アベンジャー4xeハイブリッド」が追加された。その発表会(2026年3月5日開催)の場に展示された同モデルの外装・内装を写真で紹介する。 -
スバル・トレイルシーカーET-HS プロトタイプ(4WD)【試乗記】
2026.3.5試乗記スバルから本格的な電気自動車の第2弾となる「トレイルシーカー」が登場。前後のモーターから繰り出すシステム最高出力はドーンと380PS。ただし、それをひけらかすような設定にはしていないのがスバルらしいところだ。スノードライブの印象をお届けする。 -
ホンダ・インサイト
2026.3.5画像・写真4代目はまさかの電気自動車(BEV)! ハイブリッドからBEVへ、4ドアセダンからSUVへと変身して、「ホンダ・インサイト」が復活を遂げた。ドアトリム/ダッシュボードヒーターにアロマディフューザーと、新たな快適装備を満載したその姿を、写真で紹介する。












































