第1回 新グレード「TSIエレガンスライン」を試す
想像以上のクオリティー 2016.11.22 最新Passatの進化を探る<PR> 装備が見直されるとともに、ラインナップが改められたフォルクスワーゲンのセダン「パサート」に試乗。新グレード「TSIエレガンスライン」をメインに、その仕上がりを詳しく報告する。より上質になった内外装
2015年に8代目が日本上陸したパサート。デビューから1年がたち、新グレードの追加や機能・装備の充実が図られた。中でも見逃せないのが新たに登場したパサートTSIエレガンスライン。「TSIコンフォートライン」の後継車と位置づけられ、今後販売の主力となる重要なグレードだ。その注目のモデルに早速触れることができた。
初めてお目にかかるTSIエレガンスラインは、これまでの端正さと上質さにさらに輪をかけた印象だ。エアインテークフレームやドアの下部、そしてリアのモールディングがボディー同色からクロームに変わったことが大きいのだろう。おかげで、例えばプレミアムなホテルやレストランなどにクルマで出掛けるときにも、その上質さが際立ち、ちょっと誇らしい気持ちでクルマを止めることができるはずだ。リアのサイドにはダークティンテッドガラスが採用され、見た目のよさだけでなく、プライバシーや強い日差しにも配慮されている。また、LEDヘッドライトが標準装着となったことで、フロントマスクがより精悍(せいかん)になっている。これによりデザインだけでなく、夜間のドライブをより安全かつ快適にサポートしてくれるのはいうまでもない。
インテリアのアップグレードはさらに顕著で、ファブリックシートに代えて装着されたアルカンターラ&レザーシートと、アルミニウムのデコラティブパネルがパサートのキャビンをこれまで以上に上質かつスタイリッシュに仕立て上げている。これなら、ドライバー自身も常に心地よい時間を過ごすことができるし、大切な家族やゲストに対してもおもてなしの気持ちを表せるに違いない。個人的にも、アルカンターラとブラッシュトアルミに弱いだけに、TSIエレガンスラインのコックピットがひと目で気に入ってしまった。
早速センターコンソールのスタートボタンを押してエンジンを目覚めさせる。TSIエレガンスラインには、最高出力150ps、最大トルク25.5kgmの1.4リッター直列4気筒ターボと、デュアルクラッチギアボックスの7段DSGが搭載される。「この組み合わせで、余裕あるサイズのパサートを十分に走らせることができるのか?」と思う人もいるだろう。しかし、心配は無用である。
軽快な走りに驚く
いまやミッドサイズクラスは4気筒の小排気量エンジンが常識となっているが、“ダウンサイジングコンセプト”の名のもとに、そのトレンドをリードしてきたのがフォルクスワーゲンである。
実際に走らせてみると、パサートTSIエレガンスラインは、動き出しから思いのほか軽快だ。これは2000rpm以下の低回転域でも豊かなトルクを発生する1.4 TSIエンジンに加えて、効率よくトルクを伝えるDSG、さらに、現行「ゴルフ」から始まった「MQB(モジュラー・トランスバース・マトリックス)」モジュールの採用により軽量化を実現したことによるところが大きい。
緩い加速が必要な場面でアクセルペダルを少し踏み増すようなときも、右足の動きに即座に反応するため、ドライバーはストレス知らずだ。一方、追い越しなどの際には、アクセルペダルを大きく踏み込むことで6000rpmの高回転まで爽快に吹け上がるこのエンジンが、素早い加速を見せてくれる。しかも、この1.4 TSIエンジン、アクセルペダルを軽く踏んで巡航するようなシチュエーションでは2気筒運転を行い、ガソリンの消費をセーブ。高速中心のドライブであればJC08モード燃費の20.4km/リッターを超えるのは難しいことではない。
その走りも、期待を裏切らない。ボディーサイズから想像する以上にパサートの動きは軽い一方、乗り心地は落ち着いており、ミッドサイズセダンにふさわしい快適さを提供するのだ。スピードを上げたときのフラット感も上々である。ちなみに、TSIエレガンスラインには17インチの「モビリティタイヤ」が装着されている。これはトレッド面にくぎやネジなどが刺さっても、タイヤ内部のシーラント剤によりパンク穴をふさいでくれるというもの。ランフラットタイヤと異なり、乗り心地への影響がほとんどないのがうれしいところだ。
安心できる装備も充実
ドライバーの安全運転をサポートするさまざまな機能が用意されるのもパサートの見どころだが、歩行者検知対応のプリクラッシュブレーキシステム「フロントアシスト」をはじめ、レーンキープアシスト、レーンチェンジアシスト、アダプティブクルーズコントロール「ACC」といった機能がすべて標準装着されるのは見逃せない。さらに、パサートでは、ACCとレーンキープアシストを組み合わせることで、渋滞時にも一定の車間距離を保つとともに、車線の維持支援を行う渋滞時追従支援システム「トラフィックアシスト」を搭載。この半自動運転機能のおかげで渋滞に巻き込まれてもドライバーの負担は少なく、一度使うと手放せなくなる。
ところで、この日は機能・装備が進化したTSIハイラインにも試乗することができた。TSIエレガンスと同じ1.4 TSIエンジンを搭載するTSIハイラインだが、従来よりも1インチアップの18インチタイヤを装着することで接地感が向上し、より安定した走りを実現している。さらに「XDS」と呼ばれるトルクベクタリング機能が搭載された試乗車では、コーナリング時のアンダーステアが明らかに抑えられ、スポーティーな走りを楽しむことができた。さらにTSIハイラインには、このXDSに加えて、アラウンドビューカメラやデジタルメータークラスター、駐車支援システム、ダイナミックライトアシストがセットになった「テクノロジーパッケージ」がオプション設定されており、さまざまなシチュエーションでドライバーをサポートしてくれるのがうれしいところだ。
短い試乗ではあったが、TSIエレガンスライン、TSIハイラインともに、これまでのパサートが誇ってきた優れた走行性能に加えて、デザインのグレードアップや機能・装備の充実により、さらに魅力的なクルマに進化していることが確認できた。輸入ミッドサイズセグメントといえば競合がひしめく激戦区だが、このパサートは、価格の高いライバルに引けを取らない走りやパッケージング、装備を誇るとともに、最新のテクノロジーを盛り込むことで価格以上の価値を有しているのは確か。本当の価値を見抜く力がある人に、ぜひ知っておいてほしい一台である。
(文=生方 聡/写真=田村 弥)
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→ 第2回 「フォルクスワーゲン・パサート」に乗るということ
「パサート」ってどんなクルマ?
ヨーロッパを旅すると、思いのほかパサートをよく目にする。それもそのはず、パサートはゴルフに並んで高い人気を誇るモデルで、例えばドイツにおける2015年の販売台数は9万7000台あまりと、ゴルフに次ぐセールスを誇るモデルなのだ。ヨーロッパ以外でもその人気は高く、総生産台数ではゴルフを上回る。2013年には世界中で110万台を超えるパサートが顧客のもとに届けられている。
パサートは、フォルクスワーゲンの上級モデルとして、1973年に登場。それは初代ゴルフが登場する1年前のことで、初代パサートはフォルクスワーゲンが自社開発した最初の前輪駆動モデルだった。
現在のパサートは2015年に登場した8代目で、フォルクスワーゲングループの横置きエンジン用プラットフォーム「MQB」を採用することで、優れた走行性能と高い安全性を実現するとともに、ミッドサイズセグメントならではの余裕あるサイズのボディーにより、広い後席やラゲッジスペースを確保している。ボディーバリエーションは、端正なスタイルが特徴のセダンと、“ヴァリアント”と呼ばれるステーションワゴンが設定されている。
「フォルクスワーゲン・パサート」グレード解説
セダン、ヴァリアントともに、パサートには「TSIトレンドライン」「TSIエレガンスライン」「TSIハイライン」「2.0 TSI R-Line」、そして、プラグインハイブリッド車の「GTE」が用意される。
TSIトレンドライン、TSIエレガンスライン、TSIハイラインは、1.4 TSIエンジンを搭載する基本グレード。スタンダードのTSIトレンドラインであっても、プリクラッシュブレーキシステム「フロントアシスト」をはじめ、レーンキープアシスト、レーンチェンジアシスト、アダプティブクルーズコントロール「ACC」などの機能はすべて標準装着である。TSIエレガンスラインは、LEDヘッドライトやクロームモールディングの多用、アルカンターラ&レザーシートの採用など装備の充実を図ったグレード。さらにTSIハイラインではナパレザーシートの採用や、コネクティビティー/テレマティクス機能の標準装着により上質さと機能性を高めている。TSIハイラインには、アラウンドビューカメラやデジタルメータークラスター、駐車支援システム、ダイナミックライトアシスト、電子制御式ディファレンシャルロックのXDSをセットにした「テクノロジーパッケージ」もオプション設定される。これを選べば、日常のさまざまな場面でドライバーを支援するテクノロジーを手に入れることが可能になる。
内外装をスポーティーに仕立てた2.0 TSI R-Lineは、最高出力220psのハイパワーを誇る2.0 TSIエンジンを搭載し、さらに余裕ある走りを実現する。GTEは、156psの1.4 TSIエンジンと専用の6段DSG、116psの電気モーター、そして大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載するプラグインハイブリッド車で、バッテリーの電気だけで最高速は130km/h、航続距離は最大51.7kmを達成。また、電気が少ない状況でもハイブリッド車として、力強く高効率な走行が可能である。
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テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・パサートTSIエレガンスライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4785×1830×1465mm
ホイールベース:2790mm
車重:1460kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150ps(110kW)/5000-6000rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1500-3500rpm
タイヤ:(前)215/55R17/(後)215/55R17
燃費:20.4km/リッター(JC08モード)
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フォルクスワーゲン・パサートTSIハイライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4785×1830×1470mm
ホイールベース:2790mm
車重:1460kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150ps(110kW)/5000-6000rpm
最大トルク:25.5kgm(250Nm)/1500-3500rpm
タイヤ:(前)235/45R18/(後)235/45R18
燃費:20.4km/リッター(JC08モード)
→「フォルクスワーゲン・パサート」のオフィシャルサイトはこちら