三菱アウトランダーPHEVという選択
プラグインハイブリッド車のトップランナー 2016.12.08 プラグインハイブリッドでGO!<PR> デビュー以来着実に改良を重ねてきた、充電可能な三菱のSUV「アウトランダーPHEV」に試乗。国内外でプラグインハイブリッドモデルに注目が集まりつつあるいま、モータージャーナリストの森口将之が、あらためてその実力を確かめた。日欧で確かな販売実績
ヨーロッパでプラグインハイブリッド車の人気が高まっている。きっかけはEU(欧州連合)が打ち出した優遇策だ。EUでは2013年、2021年までに1km当たりのCO2排出量を95g以下に抑えるという規制値を発表した。しかし電気自動車の開発があまり進んでいないヨーロッパの自動車メーカーが、この数値をクリアするのは難しい。そこで同時に、プラグインハイブリッド車についての係数が用意された。その係数とは、25÷(25+電動走行距離)というものだ。例えば50kmの電動走行が可能なプラグインハイブリッド車は、従来の測定方法では150gだったものが、係数をかけることで一挙に50gにまで減る。
これを受けて、ヨーロッパのメーカーが一気にプラグインハイブリッド車攻勢に出た。それらの一部が日本にも上陸していることはご存じのとおりだ。でもここまで読み進めてきた方は、これはトレンドではなく、ヨーロッパが仕組んだ戦略という側面が強いことを理解するだろう。背景に日本が主導権を握るハイブリッド車への対抗心があるのは明らかだ。どうやら、クルマを発明したヨーロッパ諸国は、東洋の島国に主導権を握らせまいという気持ちが強いらしい。
そんな中、孤軍奮闘に近い状況で、ヨーロッパ車と互角以上の戦いを演じている国産車がある。それが三菱アウトランダーPHEVだ。世界の電気自動車/プラグインハイブリッド車のデータを扱うウェブサイト『EV sales』によれば、2015年にヨーロッパで販売された電気自動車/プラグインハイブリッド車で最も売れており、2位の1.5倍以上という、圧倒的な実績を残しているのである。
もちろん日本でも、アウトランダーPHEVは根強い支持を受けている。先のEV salesでは日本のデータも公開しているのでチェックすると、2015年は電気自動車/プラグインハイブリッド車でアウトランダーPHEVがトップで、プラグインハイブリッド車に限れば2位の「トヨタ・プリウスPHV」の約7.5倍という、驚異的なシェアを記録しているのだ。他の多くの国産ブランドがハイブリッド車を主流に据え、プラグインハイブリッド車はリース販売にとどめるなど脇役に据える中、アウトランダーPHEVはガソリン車と同じように、普通の量販を続けてきた。それが日本を代表するプラグインハイブリッド車という地位を築き、プラグインハイブリッド車の主役は自分たちだと豪語するヨーロッパ車を販売台数で上回るという実績を打ち立てている。日本で、そして世界で、プラグインハイブリッド車のトップランナーとして着実な歩みを進めているというのが事実なのである。
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質感の上がった内外装
2013年に日本で発売したアウトランダーPHEVは、2015年7月に大がかりなマイナーチェンジを実施している。実はこれも、日本やヨーロッパの幅広いユーザーがプラグインハイブリッド車の代表としてこのクルマに注目する中で、富裕層などから要望があったためだという。
マイナーチェンジ後のアウトランダーPHEVに乗るのは2度目だ。実車に対面すると、まずは新しいデザインコンセプト「ダイナミックシールド」を採用したフロントマスクに目がいく。テスト車のボディーカラーはホワイトパールで、ブラックのグリルとのコントラストが鮮烈。フォグランプホルダー周辺がひし形になっているのは、“スリーダイヤ”を意識した造形なのかもしれない。
SUVに対しては、世界的に力強いデザインが求められる傾向にあり、アウトランダーPHEVのフェイスリフトもそれにならったものといえる。この顔なら、個性派ぞろいのヨーロッパの道でも、ひと目で見分けがつくし、従来モデルよりも格が上がったように見えるだろう。それにしても、マイナーチェンジ前の滑らかなフロントマスクから、ボディーサイドは変えずに、よくぞ違和感のない造形にまとめたものだと感心する。
テスト車は最上級グレードの「Gプレミアムパッケージ」であり、インテリアのクオリティーアップも目についた。グレーのステッチを入れたブラックのレザーシートや、漆塗りを思わせるピアノブラックのセンターコンソールが効いている。シートの座り心地もしっとりしていて快適だ。
電気の力で快適に乗れる
街中では基本的に、ほぼモーターだけで走る。カタログデータによる電動走行可能距離は、60km以上。実際にも過去の経験から、約50km近くをエンジンを回さないまま走れることを確認している。ちなみに現在、PHEVの電動走行可能距離は、50kmあたりが平均的な尺度になっている。アウトランダーPHEVがこのカテゴリーのベンチマーク的存在であることがわかる。
しかも発進停止は滑らかであり、ロードノイズを含めて遮音性は高い。電動走行のメリットを享受しつつ、デメリットはほとんど感じない。三菱の豊富な電動車両経験が生きているといえる。高速道路に乗り入れてアクセルペダルを深く踏み込むとエンジンが始動するものの、こちらも音や振動は抑えてあって存在を忘れるほど。パワートレインは最初からプレミアムレベルにあったことが再確認できた。
今回の試乗では、箱根まで足を伸ばした。自分のアウトランダーPHEV体験では最長記録になる。その中で新たな発見がいくつかあった。
ひとつは乗り心地のまろやかさ。穏やかにショックを吸収するサスペンションと、ふっかりした着座感なのに要所をしっかり支えるシート、安定しきった直進性、的確に作動するアダプティブクルーズコントロールなどのおかげで、どこまでも行けそうな気になる。
その感想は、後席に移っても変わらない。路面からのショックはやや直接的になるものの、シートの心地よさのおかげで安楽に過ごせる。しかも身長170cmの僕なら足が組めるほどの広さを持つのだ。
先進技術が支える走破性
走りながら充電するチャージモード、バッテリーを温存するセーブモードもありがたい。目的地が山奥なので排ガスを出したくない、帰宅が深夜になるので周囲に迷惑をかけたくないなど、自己充電可能な大容量バッテリーを持つアウトランダーPHEVは、クルマの活躍の機会が広がるからこそ、社会への配慮も大事になる。それに合わせて電気の管理ができるのは、電動車両を知り尽くしたブランドらしい配慮である。
そして山道では、バッテリーを床下に積んだことによる重心の低さ、ツインモーター4WDと、「ランサー エボリューション」譲りの電子制御4輪制御システム「S-AWC」による安定したグリップが頼りになる。さらに、パドルを使って回生ブレーキを6段階調節できる点も重宝する。特に下り坂では、安心して速度を制御できることに加え、回生によって電力を蓄えることもできるので、一挙両得。ステアリングホイールから手を離すことなく、そうしたきめ細かい調節ができるのは、アウトランダーPHEVならではのうれしいメリットだ。
オフロードでは、4WDロックモードを選べば、前後の駆動力配分を一定にキープしてくれるので、確実な駆動力が手に入る。このあたりは「三菱ジープ」や「パジェロ」などでオフロード車開発に長い経験を持ち、ダカールラリー総合優勝などの輝かしい実績も備えたブランドならではの技といえる。
急ごしらえのプラグインハイブリッド車ではない、電気自動車や4WDについての豊富な経験が生きている。それが、日本はもとより、自動車を生み育てたヨーロッパでの高い評価につながっているのだろう。アウトランダーPHEVに乗れば、エコカーの本命は自分たちのすぐそばにいることに気づくはずだ。
(文=森口将之/写真=郡大二郎)
テスト車のデータ
三菱アウトランダーPHEV Gプレミアムパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4695×1800×1710mm
ホイールベース:2670mm
車重:1880kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
エンジン最高出力:118ps(87kW)/4500rpm
エンジン最大トルク:19.0kgm(186Nm)/4500rpm
フロントモーター最高出力:82ps(60kW)
フロントモーター最大トルク:14.0kgm(137Nm)
リアモーター最高出力:82ps(60kW)
リアモーター最大トルク:19.9kgm(195Nm)
タイヤ:(前)225/55R18 98H/(後)225/55R18 98H(トーヨーA24)
燃費:19.2km/リッター(ハイブリッド燃料消費率/JC08モード)
価格:459万円/テスト車=482万5596円
オプション装備:有料色<ホワイトパール>(3万2400円) ※以下、販売店装着オプション フロアマット(3万0396円)/トノカバー(2万1600円)/ラゲッジマット(1万0800円)
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