第1回:検証“2リッター・カマロ”の魅力と実力
アメリカ車の神髄 ここにあり 2018.06.29 シボレー・カマロに宿るモダンアメリカンの魅力<PR> 50年を超える歴史を持つ、アメリカを代表するスペシャリティーカー「シボレー・カマロ」。その魅力を探るべく、2リッターの高出力ターボエンジンを積んだコンバーチブルでツーリングを実施。今どきのアメリカ車だけに許された、豊かな味わいに触れた。特別な愛着をもって語られる存在
華美を極めたクローム&フィンの50年代から一転、冷静さを取り戻した60年代のアメリカ車を代表するカテゴリーといえば、「インターミディエイト」だろう。
それはキャデラックやリンカーンのようなフルサイズ級よりもひと回り小さい、文字通り中間サイズの車台を使ったモデル群で、「シボレー・ノバ」や「フォード・ファルコン」「ダッジ・コロネット」といった往時のビッグ3を代表する銘柄が登場したのはこの時期だ。
そして、そのインターミディエイト級の車台にオリジナルデザインのボディーを組み合わせたパーソナルクーペが登場するや一世を風靡(ふうび)したのも60年代の話であり、ゼネラルモーターズ(GM)を代表する銘柄となった「シボレー・カマロ」が登場したのも1967年と、この時期にあたる。
程よいサイズと手頃な価格、そして大排気量のV8 OHVを押し込んでマッスルカーの一翼を担ったグレードもイメージをけん引し、カマロは当時の若者に人気を博した。昔のアメリカ映画を見ているとひょっこりカマロに出くわすことが多いのも、それが当時のカルチャーを表現するに外せないものだからだろうし、それを見て育った僕らのようなオッさん世代もまんまと染められているから、カマロという名前には愛着を抱いている。
イメージは継承、中身は刷新
21世紀に入ってからのGMは、リセッションの波を受けて民事再生法を適用されるなど経営的には苦しい時期を迎えたわけだが、それを契機としての抜本的な構造改革が奏功し、絵に描いたようなV字回復を果たした。2009年に7年のブランクを経て復活した5代目カマロが、同じシボレーの電動車「ボルト」と共に、その再生イメージを図らずもけん引することになったのは、華あるクーペであるがゆえだろう。
また、5代目カマロは映画『トランスフォーマー』の劇中車として採用されたこともあり、世間の、特にお子さま方の認知が非常に高い。初代のハードトップスタイルをモチーフとしたスタイリングは多くの人にとってのカマロのかたちということになるのだろう。6代目となる現行型は中身の激変ぶりとは裏腹に、デザインはこの流れを強く意識したものとなっている。
現行型の中身の激変ぶりとしてまず挙げられるのは、5代目に対しての小型軽量化だ。オーバーハングなどの無駄を削っただけでなく、ホイールベースから短縮されているところをみるに、しっかりと運動性能に配慮したことがうかがえる。アーキテクチャーは同門の「キャデラックCTS」などにも用いられるもので、設計時点から、軽く強くあることが織り込まれていることもあって、このコンバーチブルであっても車重は先代のV6クーペより軽い。
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V8モデルにも心引かれるものの……
そのライトウェイトデザインゆえ、現行型カマロには2リッター直4直噴ターボエンジンがメインユニットとして搭載されている。もちろん伝統であるV8 OHVも設定されるが、販売的主流は今やご当地においても前者の側だ。アメリカのユーザーは僕らが想像するよりも価格や維持費も含めた選択の合理性にシビアだし、何が何でもV8という時代ではないことも知っているのだろう。
それでも僕は、このクルマに好事家として趣味性を託すのならV8という選択はありだと思う。プッシュロッドエンジンが醸すぬめりっぽい回転質感やドスの利いたサウンドは、アメ車ならではのグルーブ感を演出してくれる大事な要素であり、過去との連続性も強く感じさせてくれる。日本の正規輸入グレードでもクーペにはその用意があるが、V8が選択肢にあることはオッさんたちにとっては幸せなことだ。
が、それほど強い憧憬(しょうけい)をかなえるには、車両代以外にもさまざまなお金がかかる。日本的な話をすれば11万円余の自動車税だけでお財布には大打撃だ。対する2リッターは4万円以下。うまく乗れば10km/リッターくらいの生涯燃費も望めるだろう。
アーキテクチャーを共有するキャデラックCTSはもちろん、「メルセデス・ベンツEクラス」だって「トヨタ・クラウン」だって2リッターターボで十分に走る時代だ。275psのカマロもアクセルを踏み込めば額面通りの速さはきっちり感じさせてくれる。パワーはフラットに乗っていく印象だが、高回転域での頭打ち感は最小限にとどめられているから、回しても意味がないという類いのエンジンではない。そして組み合わせられる8段ATは変速マネジメントの巧(うま)さもあって、必要な加速もそのための適切なキックダウンもアクセルひとつで引き出すことができる。
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ゆったり流すのがたまらなく楽しい
このように、かつてのV6グレード相当の動力性能は確保し、その上でノーズまわりのマスははっきりと小さいわけだから、その振る舞いを名前や車格からの先入観を覆す“軽快さ”という言葉で評しても不自然ではない。
それでも2リッターを積むカマロの最大の魅力は“低速力”にあるのではないかと思う。粘っこくて厚みのある低回転トルクのエンジンとレシオカバレッジの広い8段ATの組み合わせによって、アクセルペダルを踏み込まずともうっすらと触っているだけでトントンとスピードを乗せていく、ターボを上手に使ったその振る舞いは排気量をまったく感じさせない。まわりのスピードに合わせて走るに2500rpm以上は使わないという印象だ。
この柔軟性に歩を合わせているのが、ささいな凹凸など気に留めさせずスルッと丸め込んでしまう足まわりの鷹揚(おうよう)さだ。限界域のところは欲張らず、日常域プラスアルファにおいしさを合わせこむ、これもまたカマロの低速力のなせるところだろう。
露天風呂のようにゆったりしたキャビンにつかるように座り、ゆるゆると街の流れに身を任せて走ることがまったく苦にならない、どころか実に楽しい。ネオンまばゆい日本の繁華街の車窓でさえ、そのままレンタカーで走ったロスやハワイの思い出とシンクロする。ある意味「どこでもドア」的なご当地感をこれほど感じさせてくれるのは、今やアメリカ車だけではないだろうか。ドライブとトリップをたちまち同義にできる、自分だけのちょっとした治外法権気分。それがカマロの美点だ。
(文=渡辺敏史/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
シボレー・カマロ コンバーチブル
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4780×1900×1350mm
ホイールベース:2810mm
車重:1670kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:275ps(202kW)/5500rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/3000-4000rpm
タイヤ:(前)245/40R20 95V/(後)245/40R20 95V(グッドイヤー・イーグルF1アシンメトリック3)
燃費:--km/リッター
価格:602万6400円
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