新しくなったルノー・トゥインゴを知る、試す
これぞルノーのコンパクト 2019.08.22 ボンジュール ルノー・トゥインゴ!<PR> “パリが仕立てたコンパクト”こと「ルノー・トゥインゴ」がマイナーチェンジ。人気を博した従来モデルからどのような進化を遂げたのか? 普段使いで想定されるさまざまシーンを試し、新しくなったフレンチコンパクトの出来栄えを確かめた。フロントマスクがよりシンプルに
ルノー・トゥインゴがマイナーチェンジを受けると聞いて、一刻も早く乗ってみたいと思った。クルマを2台持ちする甲斐性(かいしょう)がないために購入には至っていないけれど、トゥインゴは常に次期愛車候補のトップ3に入っている。「もしかしたらマイチェン前に買ったほうがよかったのでは……」と思うと、居ても立ってもいられなかったのだ。
で、初対面の新しいトゥインゴは、よりスタイリッシュになっていた。そう感じた最大の理由は、フロントバンパーのデザインだ。マイチェン前にはヘッドランプの下に配置されていたLEDのポジショニングランプがなくなり、すっきりとした顔つきになった。
現行の3代目トゥインゴがデビューした3年前、「パリの街をイメージしたデザインです」という説明を受けた記憶がある。ツルンとした新しいトゥインゴの顔つきはシンプルかつモダンで、パリのなかでもアーティストやファッション業界の人が多く住むといわれるセーヌ川の左岸、リブ・ゴーシュに似合いそうだ。
フロントバンパーの両端には新たにスリットが追加された。これは見せかけではなく、ここから取り入れた空気がタイヤの外側に抜けてカーテンとなり、空気抵抗を減らすという機能がある。カッコだけのデザインではなく、きちんと機能の裏付けがあるのだ。飾りではなく、目的のあるデザインであるあたりも、合理的なフランス人っぽい。
一新されたインフォテインメントシステム
開放感とシックな雰囲気を両立させるライトグレーのシートに座ってインパネを見回して、「おっ」と思う。なぜかというと、センターコンソールのインフォテインメントシステムが一新されていたからだ。「EASY LINK」と呼ばれる新しいインフォテインメントシステムはApple CarPlayとAndroid Autoに対応したもので、7インチのタッチスクリーンで操作する。
iPhoneをつなぐとApple CarPlayが立ち上がり、Googleマップにタッチすると地図が表示される。目的地を声に出せば音声認識ですぐに候補を表示するから、目的地設定は簡単で楽ちんだ。「ミュージック」をタッチすればiPhoneと同じように音楽を聴くことができる。専用カーナビのほうが優れている点ももちろんあるけれど、新しい道路やインターチェンジがすぐに反映されるのがこの手の地図のいいところだ。実際に使ってみると、比較的新しいと思われるスマートICもしっかり表示されていて便利。余談ながら、標準装備のオーディオシステムの音質がなかなかのものだったのはうれしかった。
キーを回して、リアの荷室下に搭載する0.9リッター直列3気筒ターボエンジンを始動。6段EDCをドライブにシフトしてスタート。排気量や気筒数から想像するより、発進加速が力強いと感じるのはマイチェン前から変わらない。
これは、ターボチャージャーの過給によって135N・mという最大トルクを低回転域から発生する、ドライバビリティーを考えたセッティングによるところが大きい。おじさんとしては、1970年代にルノーが初めてF1にターボエンジンを持ち込んで周囲をあっと言わせた故事を思い出すのだった。
“トゥインゴならでは”の魅力は健在
発進加速から滑らかに速度を上積みしていく過程で感じるのは、6段EDCが果たす役割の大きさだ。これはデュアルクラッチ、つまりクラッチが2つ備わり、それぞれが「1速・3速・5速」と「2速・4速・6速」を受け持つことによる。1速から2速にシフトする際、すでに2速にもギアがエンゲージされているわけで、当然ながらシフトは素早く、スムーズになる。トゥインゴは、Aセグメントと呼ばれるコンパクトカーのカテゴリーでデュアルクラッチを採用する、数少ないモデルの一台なのだ。
おもしろいのは、回転を上げると「クォーン」という気持ちのイイ音と爽やかな回転フィールでドライバーを喜ばせることだ。とても3気筒とは思えないフィーリングで、ただ加速するだけでなく、心地よく加速する。
マイチェン前には設定されていた5MTはどうなるのか、「トゥインゴGT」はまた出るのか、という点について、ルノー・ジャポンからの情報はまだない。けれども頑固なMT派を自認する筆者であっても、このパワートレインなら納得できる。
小回りが利くことと、乗り心地のよさというトゥインゴの美点は継承している。最小回転半径は4.3mで、都内の路地から地方の農道まで、取り回しのしやすさに何度もうなった。それもそのはず、売れスジの軽自動車の最小回転半径を調べると、大体が4.5mから4.7m。軽よりはるかに小回りが利くのだ。ためしにハンドルをロックするまで切ってみると、フロントタイヤの切れ角を邪魔するエンジンがないぶん、「ここまで切れるか!?」というほどタイヤが切れる。
市街地での取り回しのよさや、「こんなところでUターンできるの!?」という点に感心した後で、高速道路に上がる。
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ルノーの魅力が凝縮されている
試乗日は台風の影響で強い横風が吹いていたけれど、トゥインゴはしっかりと直進する。
リアにエンジンを積んで後輪を駆動するRRというレイアウトの弱点として、以前は直進安定性に劣るとかコーナリング時にオーバーステアになりやすいといったことが挙げられた。けれども、技術の進歩によってそうしたネガが消され、ハンドルが切れることで小回りが利くとか、ゆったりとした室内空間を確保できるといったポジティブな面が強調されるようになった。今や道路脇の吹き流しが真横を向いているような風のなかでも、どっしりと走る。
高速道路でもエンジンのパワーに不満を感じることはなく、前述したように6段EDCの出来のよさも相まって、活発に走ることができる。またトゥインゴには燃費性能を考慮したセッティングとなる「ECO」モードが備わっており、一定速で走る高速巡航では有効な機能だと感じた。
コンパクトでありながら高速道路で安心して走ることができるのは、シートやステアリングフィールなど、直接体に触れる部分のタッチがいいという理由もある。シートは特に凝った形状には見えないし、実際、体のどこかをことさらサポートしているようにも感じない。けれども、どれだけ座っても疲れないし、コーナーでは点ではなく、シート全体の面でしっかりと体を支えてくれる。
ステアリングフィールも、タイヤがどこを向いているのかをはっきりと伝えてくれる。シートやステアリングフィールなど、体に触れる部分のタッチのよさを大事にするのはルノーの特徴で、高価なモデルからコンパクトカーまで一貫している。定価およそ200万円のトゥインゴでもそこはケチらないあたり、本当の意味でユーザーフレンドリーであり、そんな姿勢には好感が持てる。
というわけで、マイナーチェンジを受けた後もトゥインゴはルノーの美点が凝縮されたモデルであり、次期愛車候補のトップ3の座は揺るがなかった。
(文=サトータケシ/写真=荒川正幸)
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車両データ
ルノー・トゥインゴEDC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3645×1650×1545mm
ホイールベース:2490mm
車重:1020kg
駆動方式:RR
エンジン:0.9リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:92PS(68kW)/5500rpm
最大トルク:135N・m(13.8kgf・m)/2500rpm
タイヤ:(前)165/65R15 81H/(後)185/60R15 84H(グッドイヤー・エフィシエントグリップ パフォーマンス)
燃費:16.8km/リッター(WLTCモード)
価格:195万円
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