ルノー・メガーヌ ルノー・スポール トロフィーEDC
奥深きスポーツモデル 2019.12.06 “最速の血統”を受け継ぐもの<PR> ルノーの高性能ハッチバック「メガーヌ ルノー・スポール(R.S.)」の、さらなるハイパフォーマンスバージョン「トロフィー」に試乗。“速い”という言葉では言い尽くせない実力派のすごみを、ワインディングロードで体感した。サーキットも守備範囲
半ば反射的に、メガーヌR.S.と聞くと、すぐに「ニュルブルクリンク北コースでの量産FF車最速記録」というキーワードが頭に思い浮かぶのは、ルノー・スポールの面々がそこで最速タイムを出したことがあるというだけでなく、常にそこに挑んでライバルの、あるいは自らの記録を更新し続けてきたからだろう。あらためて言うまでもなく、速さを磨き続けることは、たまに出てきて一発タイムを刻むより、よほど難しい。
試乗車はメガーヌR.S.トロフィー。メガーヌR.S.をベースに、より高いパフォーマンスを志向し、そしてそれを解き放てる舞台として走りの軸足をサーキットにさらに寄せたモデルである。
直列4気筒1.8リッターターボエンジンは、最高出力を21PS増の300PSへ、最大トルクを30N・m増の420N・mへとアップしている。単にブースト圧を高めただけではなく、メガーヌR.S.のスチールボールベアリングタービンに対して、よりレスポンスに優れるセラミックボールベアリングタービンに変更しているのがポイントだ。
試乗車は6段のEDCと呼ばれるツインクラッチギアボックスを組み合わせていたが、このトロフィーでは6段MTも選ぶことができる。こちらは最大トルクが400N・mとなるが、いずれにしても強力なことに変わりはない。
そんなパワーとトルクを受け止めるべく、サスペンションはノーマルの“シャシースポール”に対して、“シャシーカップ”を採用する。スプリングレートはフロントが23%、リアが35%も高められ、アンチロールバーは7%ハードなものに。ダンパー減衰力は25%増という、かなり締め上げられた仕様である。また、アルミ製ハブと鋳鉄性ディスクを組み合わせたブレーキシステムは、そのディスクがスリットの入ったものに変更されている。
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流していても気分がアガる
正直に言うと、このスペックを聞いた時点では、ストリートでこれを試してどれだけ意味があるのかと思っていた。メガーヌR.S.が、日本のワインディングロードまで走り込んだ上でシャシーのチューニングを行っている以上、フィットするのはそちら。トロフィーは本来、サーキットに持ち込むべきだと考えたからだ。
しかし、いざ実車を目の前にして、レカロ製の軽量バケットシートに体を預け、そしてエンジン始動とともに奏でられたアクティブバルブ付きスポーツエキゾーストの、バルブが閉じている普段は抑制されつつも心地よいビートを耳にしたら、取りあえず難しいことを考えるのはやめようという気持ちになった。要するに、かき立てられたのである。
実際、「Comfort」モードで、日常的に使う一般道を流しているだけでも、メガーヌR.S.トロフィーのもたらす刺激は相当に強い。サスペンションは想像通りに硬いが、ボディーもまた大理石ででもできているのかと思うぐらいガッチリとしていて、入力を力強く受け止める。しかも、4輪ハイドロリック・コンプレッション・コントロールの効果なのだろう。鋭い入力も最後の最後でカドが丸められて、ガツンッと突き上げられることはないのだ。
19インチタイヤの高いグリップ力の表れで、ステアリングホイールの操舵力は重め。わだちもうねりもある中では、しっかりと保持していなければならないが、ナパレザーとアルカンターラで巻かれたリムの高いグリップ力がそれを助けてくれて、クルマと向き合っているぞという気持ちを盛り上げる。
「よく曲がる」だけじゃない
そして何よりエンジンである。低回転域からピックアップが明らかに向上していて、かつどの回転域でもトルクがギュッと密度濃く詰まっているから、右足の動きにどこまでもダイレクトに、クルマが前に進んでいくのだ。もちろん、6段EDCの恩恵も大きいのだが、この“脳みそとトラクションが直接つながっているような感触”はたまらないものがある。それこそ渋滞の中でも、飽きずにクルマと対話していられるのだ。
十分に期待が高まったところで、「Sport」モードに切り替えて臨んだワインディングロードでは、やはり痛快な走りを思い切り味わうことができた。メガーヌR.S.が標準搭載する4輪操舵システムの「4コントロール」が、やはり効いているのだろう。「Race」モード以外は60km/hまで後輪を逆位相に切るということで、公道ではほぼここに固定されるはず。操舵した瞬間のノーズの入りはシャープだ。しかしリアが落ち着かないわけではなく、むしろしっかりとした接地感が感じられる。
先代メガーヌR.S.では、とにかく曲げるためにリアの安定性を犠牲にしてしまっていた感もあったが、新型は4コントロールによって、曲げるのと安定させるのを見事に両立している。しかも、ベースのメガーヌR.S.では比較的車体のロールを許すサスペンションと相まって、走らせるにはややコツが要るとも感じていたが、トロフィーでは姿勢変化が抑えられたことで操舵に対するリアの動き方がよりソリッドになったという印象。よく曲がる上に、狙ったラインにさらに乗せやすくなっている。
実は時々、Raceモードも試してみた。別に飛ばさなくても、この差はすぐにわかる。この切れ味、良い悪いではなく、個人的にはものすごく好みに合う味付けでうれしくなってしまった。
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“対話”ができるマシン
街中でも感じたエンジンのピックアップの良さは、高回転域まで回すとさらに切れ味が高まり、これまた快感。もちろんフルパフォーマンスを発揮させればすさまじく速いのだが、ワインディングロードで少しペースを上げて……くらいの領域でも、その恩恵はしっかり享受できる。バルブが切り替わった後のエキゾーストサウンドも良い。重低音ばかり強調したものではなく、しっかりエンジンの咆哮(ほうこう)を聞かせてくれるのだ。
ステアリングコラムに固定された大きなシフトパドルの剛性感の高い手応えもまた良し。いわゆる、意味もなく触れたくなるタイプである。
最初に思った「サーキットでなければ意味がないのでは……」というのは杞憂(きゆう)で、ワインディングロードでも十分にその走りを楽しむことができたのは、トロフィーといえどもクルマ側のパフォーマンスだけが突き抜けているわけではなく、ドライバーがそれを容易に引き出せるよう対話性が非常に重視されているからだろう。しかも、こちらがその気になれば「おいおい、そこまでか!」というぐらいよく曲がるあたりは、ドライバーを、人間を、信じているんだなと感じる。
ラップタイムはあくまで指標のひとつで、それを実現、達成するための道筋は、日本のライバルともドイツのそれとも異なる。そこに面白さがあるよな……ということを、サーキット全開ではなくあえて一般道で試すことで、リアルに感じることができた気がする。要するにメガーヌR.S.トロフィー、速いだけでなく走り込むごとに次々と発見のある、奥深さも備えたスポーツモデルだったということだ。
(文=島下泰久/写真=田村 弥)
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車両データ
メガーヌ ルノー・スポール トロフィーEDC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4410×1875×1435mm
ホイールベース:2670mm
車重:1470kg
駆動方式:FF
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:300PS(221kW)/6000rpm
最大トルク:420N・m(42.8kgf・m)/3200rpm
タイヤ:(前)245/35R19 93Y/(後)245/35R19 93Y(ブリヂストン・ポテンザS001)
燃費:12.4km/リッター(WLTCモード)
価格:499万円