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最新のアクティブサスペンション搭載のアウディA8を試す

本物だからできること 2020.01.14 先進の技術がかなえる世界<PR> 高平 高輝 アウディのフラッグシップセダン「A8」は、ただの高級車ではない。どんなドライバーも、ひとたびステアリングを握ったならば、このブランドが長きにわたって磨いてきた自動車技術の到達点に感じ入ることだろう。

揺るぎないスローガン

クールでスマート、端正で洗練されたカッコ良さだけがアウディの特長ではない。そのスーパーエリートな雰囲気は極めて高度で精密なエンジニアリングに裏付けされている、というのが以前からの私の意見だが、そんな最新技術はさりげなく黒子に徹するのが現代流だから、どうしても見た目だけが話題になりがちだ。

実はそれこそ、日本でアッパーミドルクラス以上のアウディがいまひとつ人気がない理由なのではないか。もちろんこれも個人的な意見である。審美的といえるほど美しく、精度の高い出来栄えに文句がある人はいないはずだが、あまりにカッコ良く、そしてカッコ良さを強調する宣伝広告を見ると、ビスポークスーツを着ていない自分にはちょっと無理、と引いてしまう人が多いのではないかと考えるのである。だがそんなオヤジ世代にこそ、アウディの神髄はひたむきな技術信奉にあると伝えたい。

日本語では「技術による先進」と訳されているあの有名なブランドスローガン「Vorsprung durch Technik」は、初代「80」が発売される前の1971年からもう半世紀近く、一貫して使われている。メルセデスでさえ一時は「最善か無か」の社是を取り下げたというのに、である。グループBによるWRC時代の最後に引っかかっている私は、魔物の咆哮(ほうこう)のような轟音(ごうおん)とともに加速する「スポーツ クワトロ ラリーカー」を間近で見たことがある。勝利のためにはあらゆることを犠牲にしてもいいという、あの荒々しく凶暴な野性は、クールでスマートな現代のアウディの遺伝子の中にも刻まれていると信じている。

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アウディのフラッグシップサルーン「A8」。その歴史の中で、常に最新技術を採用しながら、新たな高級車像を提案してきた。
アウディのフラッグシップサルーン「A8」。その歴史の中で、常に最新技術を採用しながら、新たな高級車像を提案してきた。拡大
上質なレザーで仕立てられた「コンフォートスポーツシート」。前席(写真)にはマッサージ機能も備わっている。
上質なレザーで仕立てられた「コンフォートスポーツシート」。前席(写真)にはマッサージ機能も備わっている。拡大
広々とした室内は、水平基調の洗練されたデザインにより、さらなるゆとりが感じられる。
広々とした室内は、水平基調の洗練されたデザインにより、さらなるゆとりが感じられる。拡大
「A8」の最新型は、1994年に誕生した同名のファーストモデルから数えて4世代目、前身となる「アウディV8」を含めると5世代目にあたる。
「A8」の最新型は、1994年に誕生した同名のファーストモデルから数えて4世代目、前身となる「アウディV8」を含めると5世代目にあたる。拡大

本当のアクティブサスペンション

アウディのスローガンを象徴するのがフラッグシップモデルたるA8である。4世代目(「アウディV8」から数えると5代目)の新型A8は2018年、日本に導入されたが、その際には間に合わなかった「プレディクティブ・アクティブサスペンション」が2019年後半からオプションで選べるようになった。プレディクティブとは「予測できる」という意味だが、実はこのシステムこそ新型A8が満載する最新技術の真打ちともいえるものである。

もともとA8には可変制御ダンパー付きのアダプティブ・エアサスペンションが標準装備されるが、それに加えて4輪のスタビライザーリンクに装備された電動モーターによって、ホイールストロークも個別にコントロールされる。最大1100N・mという強力なトルクを生み出すモーターはマイルドハイブリッド用48V電源で駆動される。アクティブサスペンションという名前自体は以前から使われているし、例えば「メルセデス・ベンツSクラス」の一部車種にも「MBC(マジックボディーコントロール)」と称するシステムが採用されている。A8のシステムは、Sクラス同様カメラで前方の路面状態を検知するタイプだが、サスペンションが油圧作動となるメルセデスに対して、電動駆動ゆえの素早く緻密な制御が特長だ。

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存在感のあるフロントデザインが印象的な新型「アウディA8」。ドレスアップオプションを選択した試乗車は、スポーティーなテイストが一段と強められている。
存在感のあるフロントデザインが印象的な新型「アウディA8」。ドレスアップオプションを選択した試乗車は、スポーティーなテイストが一段と強められている。拡大

「A8」のさまざまな先進装備の中でも注目されるのが、かつてない姿勢制御を可能とする「プレディクティブ・アクティブサスペンション」。制御レベルは強・弱・オフから選べる。


	「A8」のさまざまな先進装備の中でも注目されるのが、かつてない姿勢制御を可能とする「プレディクティブ・アクティブサスペンション」。制御レベルは強・弱・オフから選べる。
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“5Vスポークスターデザイン”と名付けられた20インチホイール。繊細な意匠とアンスラサイトブラックのカラーリングが特徴。
“5Vスポークスターデザイン”と名付けられた20インチホイール。繊細な意匠とアンスラサイトブラックのカラーリングが特徴。拡大
リアは、横一文字のテールランプが目を引く。車体の外側に向かって光源が流れるように光る「ダイナミックターンインジケーター」も備わる。
リアは、横一文字のテールランプが目を引く。車体の外側に向かって光源が流れるように光る「ダイナミックターンインジケーター」も備わる。拡大

マジックカーペットとはこのこと

実際の乗り心地は、まさに魔法のじゅうたんのようだ。従来の「アクティブサスペンション」とは次元が違う。普通のA8は、スピードが増せば増すほどしなやかさとフラット感が強調されるタイプでもちろん快適だが、低速では路面の凸凹をコツコツと、革底の靴で大理石の床の上を歩くような硬質な感触で伝えてきた。だがこのクルマは、特にドライブセレクトに加わった乗り心地最優先の「ショーファーモード」を選ぶと、低速でもこれまでに経験したことがないほど滑らかに路面の不整をやり過ごす。遠くでストトンとかすかに聞こえるぐらいだ。いっぽうダイナミックモードではコーナリング時にはまるで逆ロールしているかのように(実際に一定条件下では“カーブチルティング”が作動するという)、しかも違和感なくフラットな姿勢を維持する。

A8にはこのアクティブサスペンションを利用した安全装備も加えられている。車両全周を監視する各種センサーが側面衝突の可能性を検知した場合には、衝突される恐れのあるボディー側の車高が80mm上昇、サイドシル部分で衝撃を受け止めダメージを軽減するという。さらにドアを開けるとおよそ40mm持ち上がって、乗り降りしやすくする機能も付いている。ゆっくりスイーッとではなく、スッと上がるので最初はびっくりするほどだが(下がる時はゆっくり)、反応の速さは電動式ならではだ。

ちなみに、カメラとミリ波レーダーに加えて、フロントグリル下に備わるレーザースキャナーのデータを“フュージョン”することで、60km/h以下でのレベル3相当の自動運転を実現しようとしたのがA8の大きなトピックだったのだが(現状でも隣のレーンから急に割り込まれるような場合にレーザースキャナーは威力を発揮する)、ご存じの通り、本国ドイツでも市場投入に至る環境が整っておらず、実現していない。むしろ日本の方が他の国に先駆けてこれを認める方向での法改正が既に行われており、今春には実証実験が始まる見通しだ。ただし、アウディは慎重な姿勢を崩していない。要素技術の準備は整っていても、ユーザーに誤解を与えては元も子もないという先進技術の実用化に対する姿勢の表れだろう。

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フラッグシップにふさわしい体格の「A8」だが、アルミやカーボンを多用した軽量・高剛性ボディーの採用により、優れた運動性能を実現している。
フラッグシップにふさわしい体格の「A8」だが、アルミやカーボンを多用した軽量・高剛性ボディーの採用により、優れた運動性能を実現している。拡大
サスペンションの調節機構により乗降性を高める機能も備わる。写真は下が標準の状態で、上が車高を上げて乗り降りをしやすくした状態。
サスペンションの調節機構により乗降性を高める機能も備わる。写真は下が標準の状態で、上が車高を上げて乗り降りをしやすくした状態。拡大
後席用のヒーターやランバーサポートもオプションで用意される。試乗車にはBang & Olufsenのサウンドシステムも備わっており、高級サルーンならではの快適性を堪能することができた。
後席用のヒーターやランバーサポートもオプションで用意される。試乗車にはBang & Olufsenのサウンドシステムも備わっており、高級サルーンならではの快適性を堪能することができた。拡大
ドライブモードの選択画面。快適な乗り心地が得られる「ショーファーモード」を含む全5種類が選べる。
ドライブモードの選択画面。快適な乗り心地が得られる「ショーファーモード」を含む全5種類が選べる。拡大
「プレディクティブ・アクティブサスペンション」を効かせた状態で緩い左コーナーを駆け抜ける。写真からも、アウト側のサスペンションが伸びて、車体のロールが抑えられているのがわかる。
「プレディクティブ・アクティブサスペンション」を効かせた状態で緩い左コーナーを駆け抜ける。写真からも、アウト側のサスペンションが伸びて、車体のロールが抑えられているのがわかる。拡大
先進のライティングシステム「HDマトリクスヘッドライト」は、先行車両や対向車を幻惑させることなく、優れた配光により夜間の運転をサポートする。
先進のライティングシステム「HDマトリクスヘッドライト」は、先行車両や対向車を幻惑させることなく、優れた配光により夜間の運転をサポートする。拡大
「HDマトリクスヘッドライト」をオンにして夜道を行く「A8」。広く前方を照らしつつも、先行車には光があたらないよう配光されているのがわかる。
「HDマトリクスヘッドライト」をオンにして夜道を行く「A8」。広く前方を照らしつつも、先行車には光があたらないよう配光されているのがわかる。拡大
量産車で初めて、近距離にある障害物を広範囲で検出可能なレーザースキャナーを採用した「A8」。23個のセンサー・カメラ類を活用し安全な運転をサポートする。
量産車で初めて、近距離にある障害物を広範囲で検出可能なレーザースキャナーを採用した「A8」。23個のセンサー・カメラ類を活用し安全な運転をサポートする。拡大

一度経験したら手放せない

先進的なライトシステムもアウディが以前から重視してきたものだ。伊豆の山道で生き物のように照射範囲を自動的に制御するマトリクスLEDヘッドライトの光に見とれていたら、ルマン24時間レースでの話を思い出した。アウディのレーザーヘッドライト(夜間走行では抜群の効果を発揮したという)を見たトヨタの某ドライバーが、自分たちのレーシングカーにも装着してほしいと訴えたが、コストを理由に却下されたという。

A8には片側32個のセグメントで構成されるHDマトリクスLEDヘッドライトが備わるが、このクルマにはオプションでそのレーザーライト・パッケージ(レーザーライト+OELDリアライト)が装備されている。すなわち、70km/h以上で他の車両を幻惑しない状況では、その光は普通のハイビームの2倍、およそ600m先まで届くという。

以前、照明がほとんどない東北道で経験したが、スパーッとヘッドライトの光が伸びていく様子はまるでヤマトの波動砲のようだ。マトリクスLEDヘッドライトをオートにしておけば、たとえ前走車がいてもその部分だけを切り欠くように、しかもクルマが移動するにつれてそれを追いかけるように、自由自在に照射範囲が変化し、切り替えに気を遣う必要はない。一度経験したらもうそれなしでは満足できないほど素晴らしい装備である。

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アウディが長きにわたって磨いてきたフルタイム4WDシステムを搭載する「A8」。その走行安定性の高さは、ドライバーに大きな安心感をもたらす。
アウディが長きにわたって磨いてきたフルタイム4WDシステムを搭載する「A8」。その走行安定性の高さは、ドライバーに大きな安心感をもたらす。拡大
3リッターV6ターボエンジンは500N・mもの大トルクを1370rpmという低回転域から発生。2tオーバーの車体を軽々と走らせる。
3リッターV6ターボエンジンは500N・mもの大トルクを1370rpmという低回転域から発生。2tオーバーの車体を軽々と走らせる。拡大
全面液晶タイプのメーターパネル。アウディは、この先進装備もこれまで積極的に採用してきた。
全面液晶タイプのメーターパネル。アウディは、この先進装備もこれまで積極的に採用してきた。拡大
機械式のスイッチを極力排し、タッチパネル式としたセンターコンソール。インテリアの洗練されたイメージが強調される。
機械式のスイッチを極力排し、タッチパネル式としたセンターコンソール。インテリアの洗練されたイメージが強調される。拡大
ボディーカラーは全11色。それ以外のカラーオーダーもオプションとして用意されている。
ボディーカラーは全11色。それ以外のカラーオーダーもオプションとして用意されている。拡大

窮地でこそ輝く

そしてアウディの技術の代名詞といえるのがクワトロシステムだ。このA8から導入された新しい呼称法によって、最高出力340PS(250kW)/5000-6400rpmと500N・m(51.0kgf・m)/1370-4500rpmを発生する3リッターV6ターボを積むモデルは「55 TFSIクワトロ」(55は最高出力245~320kWを表す)というネーミングになる。同じ55 TFSIクワトロでも、3リッターV6ターボ+7段Sトロニックの「A6」と8段ATのA8では4WDのシステムが異なり、例えばA6はSUVの「Q5」同様、センターデフの代わりの電子制御カップリングに加えてプロペラシャフトの前端に後ろの駆動系を切り離せるAWDクラッチを備えるタイプだ。もちろんFWDで走行している場合もさまざまなパラメーターからあらかじめ必要性を判断し、いざという場合には0.2秒で4WDに復帰するというが、A8はトルセンデフの進化型セルフロッキングセンターデフを使う正統派のクワトロだ。

通常時は前後40:60(状況に応じて最大70:30~15:85まで可変制御)の駆動力配分で常時4輪が結ばれている“フルタイム4WD”システムの長所は、コンディションが厳しくなるほど明らかになる。例えば、突然路面の片側に溶け残ったシャーベット状の雪が現れた場合でも(しかも反射的にスロットルを緩めるはずだ)、A8は何事もなかったかのように安定して走り抜ける。駐車場からの脱出や上り坂での発進ぐらいなら簡便な“スタンバイ4WD”でも問題ないが、ある程度のスピードで雪道を走行している場合の直進性や外乱に対する安定性はレベルが違う。豊富な経験に支えられた本物のクワトロシステムによるスタビリティーは絶大なのである。

「技術による先進」を掲げながらも技術を過信しないアウディのフラッグシップセダンは、タフな状況になればなるほどその真価を発揮する。カメラ(悪天候に弱い)にミリ波レーダー(天候に左右されないが対象物認識に限界あり)、さらにレーザースキャナー(同じく悪天候に弱い)のデータを統合して(計23個ものセンサーを装備するという)周囲を認識する運転支援システムを搭載するのはそのためだ。悪天候でも夜間でも遠くまで走らなければならないドライバーならば、1172万円の本体価格にアクティブサスペンション(84万円)とレーザーライト・パッケージ(48万円)を加えても決して高いとは感じないはずだ。スマートで端正なたたずまいのA8は、実は嵐の中でこそ輝く頼もしい相棒なのである。

(文=高平高輝/写真=荒川正幸)

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車両データ

アウディA8 55 TFSIクワトロ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5170×1945×1470mm
ホイールベース:3000mm
車重:2040kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:340PS(250kW)/5000-6400rpm
最大トルク:500N・m(51.0kgf・m)/1370-4500rpm
タイヤ:(前)265/40R20 104Y/(後)265/40R20 104Y(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック3)
燃費:10.5km/リッター(JC08モード)
価格:1172万円

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アウディA8 55 TFSIクワトロ
アウディA8 55 TFSIクワトロ拡大

飛行機の操縦かんを思わせるデザインのシフトレバー。ピアノブラックのセンターコンソールと相まって、洗練されたイメージが演出されている。


	飛行機の操縦かんを思わせるデザインのシフトレバー。ピアノブラックのセンターコンソールと相まって、洗練されたイメージが演出されている。
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トランクルームの容量は505リッター。開口部は広く、中央奥にはスキーホールも備わっており、利便性は極めて高い。
トランクルームの容量は505リッター。開口部は広く、中央奥にはスキーホールも備わっており、利便性は極めて高い。拡大
スマートなたたずまいを見せながらも、厳しい走行環境をものともしない先進技術が満載された「A8」。まさに、現代における至高のサルーンである。
スマートなたたずまいを見せながらも、厳しい走行環境をものともしない先進技術が満載された「A8」。まさに、現代における至高のサルーンである。拡大