ノー・トゥインゴEDCキャンバストップの仕上がりを試す
賢くつくり込まれたベーシックカー 2020.02.06 暮らしをシンプルに彩る ルノー・トゥインゴ!<PR> フランス車ならではの個性的なスタイリングとRRレイアウトがもたらすファン・トゥ・ドライブで人気の「ルノー・トゥインゴ」のモデルラインナップに、屋根が開く「キャンバストップ」と5段MTの「S」という2つの“個性”が仲間入り! キャンバストップを街に連れ出し、日本の使用環境との親和性をチェックした。初代から変わらぬ愛されキャラ
待ち合わせ場所の路上にとまったルノー・トゥインゴの姿があまりに愛らしかったので、一定の距離を保ったまましばらく眺めた。車内でスタッフが待っているのはわかっていたが、眺めるのも取材だ。
3代目となる現行トゥインゴにはこれまでに何度か試乗したことがある。その度にいいなと思う。サイズが今の僕の用途に合わないので買うには至っていないが、かれこれ20年ほど前の独身時代には初代トゥインゴを買って愛用していた。初代と3代目とでは、なりたちもレイアウトも、それに当然技術レベルもまるで異なるが、人々からのかわいがられ方は変わらないような気がする。トゥインゴの魅力の根源を探るべくあらためて試乗した。
初代と2代目は小型車の定番であるFFレイアウトを採用したが、3代目はエンジンをリアに置き、後輪を駆動するRRレイアウトを採用する。マイクロカーを含むスマートと機構を共有するためにこうなったのだが、このことが3代目トゥインゴのスタイリングとパッケージングを決め、ユニークな小型車たらしめている。
シートへのこだわりはルノーの伝統
全長3645mm、全幅1650mmのコンパクトハッチバックのリアにエンジンを搭載したらトランクなんてないのではないかと心配になるが、立派に存在している。確かにフロアが高く、同クラスのコンパクトカーに比べて容積は小さめだが、スーパーで買い込む1週間分の食材程度であれば楽々入れることができる。ただ、注意しなければならないのは、その下にエンジンがあるのでフロアがほんのり温かいところだ。冷凍・冷蔵食品には向かない。その代わりフロントにエンジンがないのだからラゲッジスペースがあるのかと思いきや、ない。もともとのクルマのサイズが小さいので、フロントも補機類で埋まっているのだ。
そういう意味でトゥインゴはユーティリティー最優先のクルマではない。ただし、キャビンには大人4人が乗るのに不満のないスペースが確保されている。小型車の場合、スペースが確保されていてもシートの出来がよいとはいえないために長時間乗車するのがつらいモデルもある。だがトゥインゴはスペースのみならずシートの掛け心地も良好だ。トゥインゴのシートといえば雲の柄でふかふかだった初代のシートを思い出す。3代目のそれはあそこまで柔らかくはなく、もう少しコシがあって、コーナリング中の体のホールド性も確保されている。停車中も走行中も快適だ。シートに金がかかっているというフランス車の、とりわけルノーの伝統が残っていてうれしい。
快適な移動にとって大切な要素である静粛性も、トゥインゴの得意分野だ。3気筒エンジンがキャビンとつながったトランクの直下に板1枚を隔てて搭載されているため、うるさいのではないかと心配されるかもしれないが、実際には車内とエンジンルームとはしっかりシーリングされた板で隔てられており、全然うるさくない。フロントエンジン車よりもドライバーとエンジンとの距離が遠く離れていることも有利に働いている。
RRならではの上質な走り
RR化によって得た最大の価値は走行性能の高さだ。まず取り回しのよさが圧倒的。左右前輪の間にエンジンがないから前輪がよく切れる。ステアリングを切り込んでいって、よく切れるなぁと感じたところからさらに切ることができる。ステアリングの切れ角が大きいということはクルマが小さいのと同じこと。トゥインゴの場合、ボディーサイズが小さい上によく切れるから取り回しは最高だ。人気の高い時間貸し駐車場にもかかわらず、非常にとめにくい一番奥だけ空いていたりすることがままあるが、そういう局面でもトゥインゴならラッキーとばかりに利用したくなるはずだ。
取り回しのよさに加え、RRならではの、ひたすらに素直なハンドリングにも感心する。一般的に高級車が後輪駆動を採用する例が多いのは、前輪に操舵も駆動も担わせるよりも、前輪には操舵、後輪には駆動と仕事を分担させたほうが、それぞれが無理なくよい仕事をするからだ。トゥインゴは決して高級車ではないが、後輪駆動なのでステアリングフィールがよく、またトラクション性能も高いため、乗り味はどこか高級だ。上質というべきか。この点だけでもコストをかけてRRを開発した意味があるというもの。もしかしたらその価値は万人受けするものではないかもしれないが、そうした利点に価値を見いだす人たちにとってトゥインゴはこの上なくお買い得だ。新車の「ポルシェ911」がいくらするかを考えたらわかるというもの。トゥインゴも911も本質的価値は同じだ!
必要なものを必要なだけ
0.9リッター3気筒ターボのパワーは必要にして十分といったところ。毎回鋭いスタートダッシュを決めたい人には向かないものの、一般的に見れば不満のない動力性能が備わっているといえる。6段のデュアルクラッチトランスミッション「EDC」もよくしつけられていて、ほとんど変速ショックを感じることがなく“フツーのAT”として使うことができる。また、マイナーチェンジを機に姿を消していた自然吸気エンジン+5段MT仕様をこの2月から再び選ぶことができるようになったのもポイント。自分でコキコキ操りたいという人には朗報だ。
このクルマのよい部分をつらつらと書き連ねたが、結論づけるならこのクルマは高級ではないが上質ということになる。例えばヘッドランプユニットを見ると、外枠を縁取るようにLEDが配置されているが、ヘッドランプそのものは昔ながらのハロゲンランプだ。懐かしくもあるし、クルマに「これでなんか困ることある?」と問われているようでもある。実際、明るさは十分で困ることはない。
カーナビは設置されないが、Apple CarPlayやAndroid Autoに対応しているので、持っているスマホをつなげれば誰でもナビ機能を使うことができる。最近ではApple CarPlayやAndroid Autoに対応するクルマは少なくないが、そういうクルマにはたいていカーナビも備わっている。それって考えようによっては無駄だ。トゥインゴはさまざまな工夫によって価格上昇が抑えられつつも、本質的な魅力はきちんと盛り込まれている。愛らしいスタイリングだけでなく、ベーシックカーとして思慮深くつくり込まれていることこそがトゥインゴの魅力の根源なのではないか。
(文=塩見 智/写真=郡大二郎)
車両データ
ルノー・トゥインゴEDCキャンバストップ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3645×1650×1545mm
ホイールベース:2490mm
車重:1040kg
駆動方式:RR
エンジン:0.9リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:92PS(68kW)/5500rpm
最大トルク:135N・m(13.8kgf・m)/2500rpm
タイヤ:(前)165/65R15 81H/(後)185/60R15 84H(グッドイヤー・エフィシエントグリップ パフォーマンス)
燃費:16.8km/リッター(WLTCモード)
価格:210万6000円