ジャガーE-LINEという選択<前編>ジャガーXE R-DYNAMIC HSE P300(FR/8AT)
エレガントに速い それが英国流 2020.03.13 ジャガーE-LINEという選択<AD> 「E-LINE」と呼ばれるジャガーのコンパクトクラスに名を連ねるのが「XE」と「E-PACE」だ。今回、両モデルをワインディングロードに連れ出し、あらためてその魅力を検証。まずは、2020年モデルで大規模なマイナーチェンジが行われた4ドアサルーン、XEのステアリングを握った。体がクルマの一部になる
ニューモデルが登場するとワッと飛びつくくせに、その後、何年かにわたって地道に施される改良に目を向けないのは、多くの自動車メディアにみられるよくないところだ。星の数ほどもある現行モデルのすべてを追いかけるのは物理的に不可能、という言い訳もできるけれど、できる限りはフォローしたい。
今回はモデル名に“E”を冠したE-LINEと呼ばれるコンパクトサイズのXEとE-PACE、2台のジャガーを連れ出してみた。道が狭い東京の下町に暮らす筆者にとってはこのぐらいのサイズ感がちょうどいいので、もともと興味がある2台だ。加えて、ジャガーという老舗がサルーンとSUVのキャラクターをどのようにつくり分けているのかというのは、かねて興味があった。
果たして久しぶりに向き合ったジャガーXEは、記憶のなかのそれよりもはるかに精悍(せいかん)な印象だった。これは記憶が間違っていたわけではない。マイナーチェンジされた2020年モデルでは、ルックスにかなりの変更が加えられているのだ。
まず前後のバンパーの形状が変更され、フロントはよりロー&ワイドに見えるようになっている。眼光が鋭くなったように感じるのは、「Jブレード」デザインのLEDヘッドライトを採用したから。Jブレードとは、ヘッドライトを取り囲むようにデイタイムランニングライトの光源を設け、向かって右側が「J」、左側が「L」を描くデザインだ。半円形のLEDテールランプを採用したこととあわせて、たたずまいがモダンになっている。クルマの印象を左右する、“光モノ”のデザインは重要だと思い知らされた。
マイナーチェンジによる変更は、ルックスよりも機能面のほうが重要であったけれど、それはおいおいお伝えしたい。ドアを開けて運転席に乗り込むと、オーダーメイドのジャケットを羽織った瞬間のように、ピタッとクルマの一部になった気がした。シートとハンドル、ダッシュボードの位置関係や、フロントガラス越しに見える景色が体になじんでいるのだ。それは自分がこの手のサルーンに慣れているという理由もあるだろうし、ジャガーがスポーツサルーンづくりにたけているという理由もあるだろう。
いずれにせよ、ジャストサイズのスポーツサルーンを“着る”ような感覚は、実に心地よい。ちなみに、マイナーチェンジによってレザーシートが全車標準装備となっている。
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ひと味違うレスポンスをトータルで実現
試乗車は、最高出力300PSを発生するインジニウムと呼ばれる2リッター直4ガソリンエンジン仕様。マイナーチェンジに伴いXEのエンジンのラインナップは整理され、過給器付きの3リッターV6ガソリンは廃止された。したがってこのエンジンがXEで最も高出力で、チューン違いの250PSの2リッター直4ガソリン、180PSの2リッター直4ディーゼルの3タイプとなる。
エンジンを始動して8段ATを操作しようとして、「あぁ、そうか」と気づく。ダイヤル式だったシフトセレクターが、レバー式に変更になっているのだ。イグニッションをオンにするとせり上がってくるダイヤル式も斬新だったけれど、スポーティーな性格のXEだけあって、直感で操作できるレバー式のほうがしっくりくる。
走りだしてすぐに気づくのは、速いとかよく曲がるとかいうことよりも、各部のタッチが繊細だということだ。例えばエンジン。簡単に言えば低回転域からトルキーで、ゼロ発進でもタイヤのひと転がり、ふた転がりの段階からグッと地面を蹴っている感じが伝わってくる。でもそれだけなら、このクラスのスポーツサルーンなら当然のようにクリアするレベルだ。ジャガーXEがひと味違うのは、アクセルペダルにほんの少しだけ力を込めるような微小な操作に対して、繊細に反応してくれることだ。
もちろん1500rpmから400N・mという大トルクを発生するエンジンのトルク特性によるところが大きいのだろうけれど、それだけではないはずだ。ZF製8段ATとのマッチングや微妙なセッティングなどに、ジャガーのちょっとしたこだわりがあるとお見受けする。さらには、アルミニウムを75%も採用して軽量化を図ったモノコックなど、車両トータルで実現した繊細なレスポンスであるとも感じる。そして同じことを、ハンドリングに関しても感じた。
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進化した運転支援システム
まず、ステアリングのフィールが抜群にいい。このご時世、多くのコンパクトカーのようにFF車だからといってハンドルの手応えが悪いとか、トルクステアを感じるようなことはほとんどない。どれも普通に走る。けれども、「普通に走る」と「気持ちよく走る」では大違いだ。ジャガーXEは前輪へのトルクの干渉がない、FR車らしいすっきり爽やかなステアリングフィールで乗り手の心を潤してくれる。
乗り心地はちょっと不思議だ。市街地でのタウンスピードではコンパクトなクルマのように、路面の不整をタタタンと軽快にクリアしていく。決して路面からの突き上げが強いというわけではなく、スニーカーを履いて街を歩く時のように気分は軽い。一方、高速道路に入って速度を上げると、ひとクラス上のモデルのように、懐の深い重厚な乗り心地となる。車内の静粛性が高いこととエンジンのパワーにゆとりがあることと合わせて、長距離の自動車旅行にうってつけだと感じる。
高速道路で特に強く感じるのは、ボディーがしっかりしていることだ。ハイスピードでちょっとした路面の不整に遭遇しても、レーンチェンジしても、ボディーは巌(いわお)のようで、みしりともしない。ボディーがねじれないから、サスペンションやタイヤが常に正しい仕事をしてくれる。4本のタイヤの位置取りが路面に対して適切だと感じるのも、このボディーの強さに起因する。
高速道路では、このクルマのモダンな一面にも触れることができた。車両がフラついて車線をはみ出しそうになった時にハンドル操作をアシストしてくれるレーンキープアシストが全グレードで標準装備となったのだ。ちなみに、カメラが交通標識を読み取るトラフィックサインレコグニションも標準装備となっている。先行車両に追従するアダプティブクルーズコントロール(ACC)は、さらに加減速がスムーズになっているように感じる。安全・運転支援装置が日進月歩で進化していることを肌で知ると同時に、これなら長距離ドライブの帰りに渋滞に遭遇してもストレスを低減してくれると感じた。
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美しいコーナリングフォーム
長距離を走りながら気に入ったのは、10インチと5インチの大小2つの液晶画面を組み合わせた、「Touch Duo Pro」と呼ばれるインフォテインメントシステムだ。上段の10インチ画面でカーナビやオーディオを、下段の5インチ画面で空調をコントロールするという配置だ。画面デザインは好みにカスタマイズできるようになっており、直感で操作できるインターフェイスのよさとともに、インテリアがすっきりしたという視覚上の効果も感じられる。
高速道路も快適だったけれど、箱根のワインディングロードも楽しい。こういう場面でこそ、「タッチのよさ」というこのクルマ最大の美点が明確に感じられるからだ。エンジンのレスポンスについてはすでに述べたけれど、ドライブモードを「ダイナミック」に入れると、パワートレイン全体がギュッと引き締まったように感じる。
ただし、パワーに任せてクルマをねじ伏せようという気にさせないところがジャガーXEの美点だ。アクセル、ブレーキ、ステアリング、いずれの操作に対する反応も繊細だから、丁寧に運転したくなるのだ。あくまで感覚的なことであるけれど、タイヤを鳴らすような運転は、ちょっと向いていないかもしれない。コーナーでは早めにステアリングを切り始めて、多少のロールを感じながら大きな弧を描くように操作すると、美しいコーナリングフォームで駆け抜ける。速いクルマはいくらでもあるけれど、このクルマはエレガントに速い。
レザーシートやインテリアの手触りも含めて、タッチを楽しめるのがこのクルマだ。だから自動車マニアはもちろん、しなやかな感性をお持ちの方にはそのよさがわかるはずだ。1950年代の「ジャガー・マーク2」にまでさかのぼるつもりはないけれど、やはりジャガーは、スポーツサルーンづくりに関して一日の長があると思わざるを得ない。
(文=サトータケシ/写真=花村英典)
→【後編】ジャガーE-PACE R-DYNAMIC HSE P300の魅力を探る
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車両データ
ジャガーXE R-DYNAMIC HSE P300
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1850×1415mm
ホイールベース:2835mm
車重:1660kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:300PS(221kW)/5500rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/1500-2000rpm
タイヤ:(前)235/35R20 92Y/(後)265/30R20 94Y(ピレリPゼロ)
燃費:12.9km/リッター(JC08モード)
価格:736万円