進化したフリード モデューロXを試す
風を味方に 2020.07.10 モデューロXの最新モデルを味わう<AD> ベースとなる「ホンダ・フリード」のマイナーチェンジに合わせ、「フリード モデューロX」も最新モデルにアップデート。日常的な速度域でも体感できる“実効空力”を高めるべく、新開発のエアロバンパーが備わっている。その効果を試すべく、新旧モデルを同時に連れ出した。こだわりのコンプリートカー
日本のミニバンでは必須アイテムの、3列のシートレイアウトとリアのスライドドアを当然のごとく採用。その上で、全幅を日本固有の5ナンバー規格内に収め、全長も同規格の上限である4.7mまで50cm近くの余裕を残し、“コンパクトミニバン”として根強い人気を誇るのがホンダ・フリードだ。
シリーズ中に設定されたスペシャルモデルのモデューロXを手がけたのは、四輪車用純正アクセサリーを扱う、ホンダの100%子会社であるホンダアクセス。専用のカスタマイズパーツを装着したこだわりのコンプリートカーである。この名を冠するモデルは、現時点では「S660」「ヴェゼル」「ステップワゴン」、そしてこのフリードの全4車種がラインナップされている。
開発陣の中では“II型”と呼ばれている、2020年5月末に発売された新バージョンは、「ベース車のマイナーチェンジ(2019年10月)を受けて登場した、改良型のモデューロX」ということになる。
1.5リッターエンジンをCVTと組み合わせた純エンジン仕様と、やはり1.5リッターエンジンをモーター組み込み型の7段DCTと組み合わせたハイブリッド仕様という2タイプのパワーパックを用意するのは、従来の“I型”と同様。FF車のみのラインナップというのも同じだ。
すなわち最新のフリード モデューロXは、2つのパワーパックと、そのそれぞれに用意される2列目がキャプテンシートのタイプ(6人乗り)と2列目がベンチシートのタイプ(7人乗り)の、合計4タイプをラインナップ。今回は6人乗りの純ガソリン仕様の、I型とII型を同時にテストドライブへと連れ出した。
空力性能を追求したフロントフェイス
そもそも今回のマイナーチェンジではベースモデルもリアビューには目立った変更を受けておらず、モデューロXの場合も新旧を並べてみても、「非点灯時のハイマウントストップランプのカラーがレッドかクリアか」というくらいしか大きな識別点が見当たらないが、空力性能向上を狙って専用リアロアースカートの形状が若干変更されているという。
一方、標準車のフリードでもマイナーチェンジの前後で大きく表情が変化しているうえに、モデューロXではさらにその違いが歴然としているのがフロント側のデザインだ。
一般的にマイナーチェンジでは、見た目の新鮮さを演出するためのフェイスリフトが中心となることが多い。しかし、今回のフリード モデューロXの場合は「主に空力性能強化による走行性能の向上」が主題。これがフロントフェイスの変化に大きな影響を及ぼしている。
ボディーカラーにもよるものの、フォグライト周辺部分のピアノブラックとのコントラストがより明瞭になっており、「X」をモチーフとしたグラフィックが特に際立つ。「モデューロXであること」を示すとともに、より低重心感が強調されるのが、新しいフロントマスクの特徴だ。
さらに、フロントのバンパーサイドには小さな突起も設けられている。「エアロフィン」と名付けられたこのアイテムには、「旋回姿勢へのスムーズな移行」と「ホイールハウスから発生する気流の乱れの抑制によるしなやかで上質な旋回の実現」という効用がある。
見えないところで効いている
エアロフィンがすぐに目につくのに対して、さらにマニアック(?)なリファインのポイントが、「エアロスロープ」と称するバンパー下の中央に設けられた左右対称の箱状の突起と、その左右にレイアウトされた「エアロボトムフィン」と呼ばれる小さな連続する7つの突起だ。どちらもフロア下をのぞき込むようにしないと確認できない2つのデバイスである。
前者は「車体下中央に速い空気の流れをつくり、あたかも“風のレール”に沿うかのような安定感のある走り」を生み、後者は「フロントホイールハウス内の圧を下げると同時に風の流れをスムーズにすることで、サスペンションのより良い動きと乗り心地向上に貢献」と説明されている。つまりは空力による操縦安定性アップが図られているのだ。
こうして涙ぐましいまでに細やかなファインチューニングが施せるのは、まさにこのモデルが「自動車メーカー直系チューナーの作品」だからにほかならない。
フリードだけでなく、モデューロX全車に採用されるエアロパーツ類は、ホンダ本体が所有する実車風洞でのテストに加えて、鷹栖にあるホンダのテストコースにおけるホンダアクセスの開発者とモデューロ開発アドバイザーである土屋圭市氏による過酷な実走テストを繰り返したのち、実際に「効用アリ」と判断されたものに限られる。そもそも“見た目のアクセサリー”としての効果を狙うのであれば、わざわざ見えないところに装着しないだろう。
説明が長くなったが、日常的な速度域でも体感できる空力効果を“実効空力”と定義し、主に新しい“実効空力デバイス”の採用にフォーカスした今回のリファインは、まさにモデューロXの実直なまでの開発姿勢の発露といえる内容だ。そしてなるほど、その効果は走りだして間もなく、高速道路に乗る前の段階で早くも実感できるものだった。
まさにモデューロならでは
実は今回のフリード モデューロXは、専用サスペンションと専用アルミホイール、さらにタイヤも従来型をキャリーオーバー。実際、新旧両車のフットワークの基本テイストはすこぶる近い。極低速域では「これは“目隠しテスト”だったらちょっと分からないかもナ」という印象を受けたことも事実ではあった。
したがって、4輪の接地感の高さや操舵の正確性、大きな入力時のボディーの動きを一発で収める収斂(しゅうれん)性の高さなどは、いずれも「従来型と同様」といえる美点。エコタイヤを履きながら「ここまで走れてしまうんだ!」と感心するフットワーク全般の印象も、まさにモデューロXを名乗る各車に共通する特筆すべきポテンシャルである。
その上で、最新モデルであらためて感心したのは、端的に言うと「ミニバンらしからぬ直進性の高さ」だった。それは60km/h程度でも実感できる“修正舵要らず”という印象に始まる。そしてこの感覚は速度が高まるにつれて確実に強くなるのである。
「空力なんて100km/h以上でのハナシ」……。そんな意見を持つ人もいるかもしれないが、例えば自転車に乗る人であれば、たかだか30km/h程度でも“空気の力”が無視できないものであることを身をもって体験をしているはず。これ見よがしなデザインを見せつけることなく、ひそかに空気を味方につけたこのモデルのエアロパーツは、まさにモデューロならではのアイテムなのだ。
ミニバンでありつつも空力の制御では世界最先端をいく――。ライバルとは一線を画すそんな大きな特徴を身につけたフリード モデューロX。“本当にいいモノが分かる人”にこそ乗ってほしい一台である。
(文=河村康彦/写真=小林俊樹)
車両データ
ホンダ・フリード モデューロX Honda SENSING(6人乗り)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4290×1695×1710mm
ホイールベース:2740mm
車重:1370kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:129PS(95kW)/6600rpm
最大トルク:153N・m(15.6kgf・m)/4600rpm
タイヤ:(前)185/65R15 88S/(後)185/65R15 88S(ダンロップ・エナセーブEC300)
燃費:--km/リッター
価格:295万0200円
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