アウディTT RSクーペ
最高のビートとともに 2020.12.28 アウディテクノロジーの極み RSモデルを知る<AD> スーパーカー顔負けのパフォーマンスを誇る「アウディTT RSクーペ」が、極めて優れたスプリンターなのは間違いない。そして、そのステアリングを握ったドライバーは、アウディが長年培ってきた情熱と個性にも心を動かされることだろう。目指すは究極のスポーティネス
1980年代前半のWRC(世界ラリー選手権)を舞台に、それまで悪路走破用と思われていた4WDをスポーツドライビングのためのシステムとして昇華させ、その性能を実証したアウディ。ラテン語で「4」を指す「quattro(クワトロ)」の開発を指揮したフェルディナント・ピエヒは、それを武器にドイツを代表するスポーツカーである「ポルシェ911」を打ち破るという野望も抱いていたという。
そのピエヒがフォルクスワーゲンの会長に上り詰めたのと相前後して、氏の飛躍の場となったアウディは、自動車史上に残るであろう大規模なリブランディングへと突き進むわけだが、その確たる柱として推し進められたのが、自らのスローガンでもある「Vorsprung durch Technik(技術による前進)」だ。1980年代にはクワトロやエアロダイナミクス、1990年代にはアルミスペースフレームなど、その戦略を具体化した部位的なキーワードも挙げられる。
とりわけアウディは、クワトロという財産をベースに、テクノロジーで究極のスポーティネスを表現するという目標があった。
1980年代の「スポーツクワトロ」の流れをくみながら、それを実現するグレードとして「RS」が設定されたのは1994年のことだ。当時の「アウディ80アバント」をベースに、開発および製造にポルシェも関与したそれは、最高出力315PSを発生する2.2リッター直列5気筒ターボエンジンを搭載。そのパワーをクワトロシステムで受け止め、262km/hの最高速をマークするという、当時としては異例の俊足を誇るワゴンだった。
歴史あるエンジンが味わえる
その後、RSモデルについては、アウディのモータースポーツ活動を支える子会社であるクワトロGmbHに開発機能が置かれ、その組織がアウディスポーツGmbHへと改名して今に至る。現在もRSの名がつくモデルはこのTT RSクーペも含めて、すべてがアウディスポーツGmbHのもとで開発と生産が行われている。
ピエヒがアウディの躍進に尽力した過程で生まれたのは、クワトロだけではない。直列5気筒エンジンもまた、氏の強いこだわりをもって開発され、1980年代を中心にアウディの先進性を彩ってきた技術だ。
最新テクノロジーで設計されたその直列5気筒ユニットを、TT RSクーペは搭載している。
オールアルミ化によって軽量化されたそれは、ターボで過給され最高出力400PS、最大トルク480N・mを発生。これを7段のデュアルクラッチ式トランスミッション「Sトロニック」を介し、クワトロでドライブすることで、0-100km/h加速3.7秒のパフォーマンスを発揮するという。エンジン本体は横置きながら、ソリューション的には1980年代からの血筋を感じさせてくれるRSモデルとみることもできるだろう。
TTそのものの存続にまつわるうわさも聞こえてくる昨今ではあるが、そのTT RSクーペの内外装を確認していて、あらためて実感させられたのは、デザインとユーティリティーの巧みな両立ぶりだ。
極めて貴重なパッケージ
全長4190mm、全幅1830mmというTT RSクーペのボディーサイズは、今やご立派に育ったCセグメントハッチバックよりも小さいくらいだが、それでもエンジンコンパートメントがコンパクトに抑えられているぶん、前席の足元に余裕があるだけでなく、女性や子どもなら駅までの送迎程度は我慢してくれるかな……という広さの後席も備わる。
荷室はデフォルトの状態でも広いが、後席を倒して広がるスペースは、スポーツワゴンと表しても差し支えないほど容量がありそうだ。世界的に市場で数の出るものではないかもしれないが、もう一度、こういうパッケージのスポーツモデルが見直されてもいいのではないかと思えてくる。
地表から高い部分の構造材にアルミニウムを多用したハイブリッド構造に加えて、アウターにもアルミを用いることで2代目に対して小型・軽量化を果たした3代目「TT」。それをベースとして軽量化されたエンジンを搭載するTT RSクーペの車重は1490kgと、みっちり詰まったメカニズムに相対すれば、望外に軽い。ちなみに、同じ5気筒ターボエンジンを搭載する「RS 3スポーツバック」は1590kg。重量差は100kgもある。
この差がもたらすものは、振る舞いのすべてに表れている。まずTT RSクーペはその蹴り出しからしてスカッと軽やかだ。最大トルクの発生回転域は1700rpmからということで、街なかでは2000rpmも回っていれば十分に流れに合わせた加減速が行える。試乗車はオプションの20インチタイヤ&ホイールを組み合わせていたこともあって、乗り心地はやや硬め。そして、左右に細かく揺すられることもある。しかし、控えるパワーを想像すれば、十分許容できるライドフィールともいえるだろう。
“地に足のついた”速さ
ドライブモードを「スポーツ」に切り替えると、独特の低く響き渡るエキゾーストノートが一段と強調される。
5気筒エンジンの回転フィーリングはまさに、その数字が体を表すという感じで、パリパリと伝わる4気筒のパンチ力と、シュンと吹け上がる6気筒の滑らかさを両建てしているかのようだ。6800rpmのレッドゾーンまでは何のよどみもなくスキッと吹け上がり、苦しげな様子はまったく感じられない。回転上昇とともにキッチリ伸びるエンジンサウンドは、フォーンという高音成分とブーンという低音成分が絶妙に入り交じる5気筒ならではのものだが、アウディのクールなブランドイメージには不思議と似合っているように思える。
速さだけでみれば、半ばスーパーカー的な領域に入っているくらいに凄(すさ)まじいが、その猛烈な加速を冷静に観察できる余裕がもてるあたりは、いかにもRS的だ。もちろんそこにクワトロならではのスタビリティーの高さがあってのことで、いかなる時も地に足がついているという安心感がドライバーにきちんと伝わってくる。
TT RSクーペはそこに前述の軽量な車重が独自の味わいを加えるかたちとなり、コーナリングでは踏ん張ってくれてもマスを強く感じさせず、切り返しの振る舞いもスラスラと軽やかだ。さながら路面を掘り返すようなゴリゴリのコンタクト感もRSモデルの魅力だが、挙動を味わうスポーツカー的な感覚という点でいえば、TT RSクーペの気持ちよさは他とは一線を画するものだと思う。
こだわり抜いたデザインやメカニズムをギュッと詰め込んだ、見るからにアウディらしい一台。少数派のコンパクトクーペのカテゴリーにおいても、TT RSクーペの、その選ばれる個性は今も色あせていない。
(文=渡辺敏史/写真=荒川正幸)
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車両データ
アウディTT RSクーペ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4200×1830×1370mm
ホイールベース:2505mm
車重:1490kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直5 DOHC 20バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:400PS(294kW)/5850-7000rpm
最大トルク:480N・m(48.9kgf・m)/1700-5850rpm
タイヤ:(前)255/30ZR20 92Y/(後)255/30ZR20 92Y(ピレリPゼロ)
燃費:--km/リッター
価格:1026万円