新型ルノー・ルーテシアの実力を体感
美味なるフレンチ 2020.12.25 欧州でルーテシアが選ばれる理由<AD> 強力なライバルがひしめく激戦の欧州Bセグメント市場で、販売台数6年連続No.1に輝く「ルノー・ルーテシア」。プラットフォームやパワーユニット、そして内外装までを一新したフルモデルチェンジによって、フレンチコンパクトハッチはいかなる進化を遂げたのか。キリリと締め上げられた足まわり
3000rpmを超えるとキィーンという高周波音がボンネットの下から聞こえてくる。フロントに搭載する排気量1333ccの直列4気筒直噴ターボエンジンは、最高出力131PSを5000rpmで、最大トルク240N・mを1600rpmという低回転で生み出す。
ぶ厚い中低速トルクを利して、ふだんはとても静かな実用ユニットとして振る舞う。 その一方、積極的に踏んでやると、冒頭に記したようなクールな金属音を発し、レッドゾーンの始まる6500rpmまでスムーズに回り切る。排気音はごく控えめで、こもり音とか雑音の類いがない。音が澄んでいる。ロードノイズが低いこともさることながら、クールに速い! と感じるのはそのためだ。
ステアリングホイールの9時に位置するパドルでシフトダウン。デュアルクラッチ式の7段オートマチックトランスミッションがヴオンッと回転を上げ、電光石火の変速を完了する。2020年秋に上陸した新型ルノー・ルーテシアは、ルノースポールでもないのに、まるでルノースポールみたいなスポーティーさを持っている。
乗り心地はキリリと締め上げられている。はっきり硬めだ。でも、硬すぎではない。日本独特の目地段差をほとんどショックなしで通過するしなやかさを備えている。205/45R17という低偏平大径サイズのタイヤなのに暴れたりしない。そういうところもルノースポールそっくりだと筆者は思う。
ステアリングはクイックで、レスポンスがよい。ステアリングのギア比が先代の15.2から14.4に低められていることもある。入力に対して、俊敏に反応する。ボディーがしっかりしていて、足まわりにもユルさがない。
ワインディングロードに至ると、ルーテシアがひときわ輝きを増す。運転モードに、「マイセンス」「スポーツ」「エコ」の3種類がある。マイセンスモードは個別設定が可能なカスタマイズモード(初期設定モード)で、電動パワーステアリングのアシスト力を好みの特性に変えることができる。
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シャシーとパワーが調和している
スポーツモードを選ぶと、ギアを1段落として、高回転まで引っ張り、ステアリングが若干重くなる。エンジンのレスポンスが明瞭に変わり、積極的にトルクを膨らませる。スロットルの求めに応じて、同じ数値とは思えぬほどのてんこ盛りにして差し出してくる。全体にクルマがギュッとタイトに感じられるようになり、気合を入れて走りたいときには好適だ。ロールは常に控えめで、コーナーに安定した姿勢で入っていける。
性能が高すぎないことがこの場合は肝要で、最高出力131PSで車重1200kgは適度なスポーティネスを味わうのにピッタンコ。いや、場合によっては息を飲むほど速い。最大トルクが240N・mもあって、しかもそれが低回転から湧き出てくるので、7段デュアルクラッチ式トランスミッション任せにしていても、エンジンを自在に操ってその性能を余すところなく引き出してくれる。
そんなことができるのは、新開発のプラットフォームがスグレモノだからだ。最新のルーテシアが初採用モデルとなったルノー・日産・三菱のアライアンスによる「CMF(Common Module Family)-B」は、先代のプラットフォーム比で約50kgの軽量化を実現しつつ、高い剛性を確保しているという。軽量・高剛性。それは人類がつくり出してきた石器から宇宙ロケットに至るまで、永遠の技術テーマに違いない。新しいプラットフォームが新型ルーテシアをプラットフォーム(基盤)から刷新している。
直噴ターボエンジンもまたルノー・日産・三菱のアライアンスにより開発されたもので、先代の1197ccユニットのストロークを延ばして1333ccに排気量を増やしている。デュアルクラッチ式ギアボックスは、先代の6段から7段に多段化。「メガーヌGT」などで使用されている「7EDC」をベースに、ギヤ比などをルーテシア用に専用開発した。湿式ということもあって、まるでトルクコンバーター式ATのように滑らかに走る。
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フランス人はLOVEに生きている
エクステリアデザインは先代モデルを継承している。それは先代がヨーロッパでセグメント第1位、全モデルの中でも第2位の販売台数を記録したベストセラーで、しかもモデル末期になっても人気が衰えなかったからだ。
とはいえ、フロントマスクはひと目で新型だとわかる。最近のルノーのアイデンティティーであるLEDヘッドランプと、Cシェイプのデイタイムランニングランプが装着されているからだ。ひとつ上のクラスの「メガーヌ」と、顔だけ見ていると間違えそうな上質さを醸し出している。
ルノーのひし形マーク「ロザンジュ」は大型化されてフロントを飾り、そのロザンジュからフロントスクリーンに向けて放物線が2本、ボンネットに描かれている。これがマンガの描線のように、止まっていてもダイナミックな動きを表現している。
ドアを開ければ、インテリアは一新されている。コックピットはドライバーオリエンテッドで、ドライビングポジションはスポーツカーのそれに近い。運転席と助手席のあいだにセンターコンソールが設けられている。居心地のよさを意識したタイトな空間がつくられているのだ。
内装の素材は吟味され、「知覚品質」と呼ばれる考え方が導入されている。最近のフランス車におけるインテリアの質感向上は目覚ましい。
後席は大人3人が乗れないことはないけれど、5ドアクーペだと理解したほうがつくり手の意図と合う。5代目ルーテシアはファミリーカーではない。デザイン全体を貫くテーマは、先代同様“LOVE”である。「デートカー」、あるいは「スペシャルティーカー」と、日本語に変えると、わかりやすい。コンパクトカーを、愛するふたりのためのクルマに仕立てちゃうのだから、フランス人はLOVEに生きている!? う〜む。なんてフランスらしい。
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まさにFFのコンパクトスポーツカー
ボディーはちょっぴり先代よりコンパクトになっている。全長×全幅×全高=4075×1725×1470mmは、先代比で20mm短くて、25mm狭い。2585mmのホイールベースは15mmとはいえ、短くなっている。
このわずかな違いによって、空気抵抗を減少させ、車重を軽く仕上げて、燃費向上につなげている。低燃費とCO2削減はいまや最大のテーマだから、ヨーロッパではもはや、これ以上クルマは大きくならないに違いない。新型ルーテシアはそうしたトレンドをけん引しているのだ。
フランス車は技術的に遅れた、一部のマニアのためのクルマだ。このような認識はいまや大間違いで、即座に改められるべきである。フランス車は技術的なトピックにもあふれている。
新型ルーテシアを見よ! クラス最高レベルの先進運転支援システムを備え、安全性においてユーロNCAP最高ランクの5スターを獲得してもいる。ヨーロッパではハイブリッドが発売になってもいる。
そのうえでオリジナリティーの高いデザインと、楽しいハンドリング、快適な乗り心地、スポーティーなドライバビリティーを実現している。本来ルーテシアはベーシックなクルマだったはずなのに、こんなにもスポーティーでスペシャルなデートカーへと進化したのはなぜなのか? 繰り返しになるけれど、いまのフランス人にとってLOVEこそベーシックだからでしょう。
(文=今尾直樹/写真=郡大二郎)
テスト車のデータ
ルノー・ルーテシア インテンス テックパック
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4075×1725×1470mm
ホイールベース:2585mm
車重:1200kg
駆動方式:FF
エンジン:1.3リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:131PS(96kW)/5000rpm
最大トルク:240N・m(24.5kgf・m)/1600rpm
タイヤ:(前)205/45R17 88H/(後)205/45R17 88H(コンチネンタル・エココンタクト6)
燃費:17.0km/リッター(WLTCモード)
価格:276万9000円