“E”から“F”へ 受け継がれるスポーツカーの美学
60年目の継承と進化 2021.03.10 F-TYPEに宿るジャガーのフィロソフィー<AD> ジャガーの名声を確立した世界的名車「E-TYPE」と、今日のブランドイメージをけん引するピュアスポーツカー「F-TYPE」。2台のスポーツカーの間で、半世紀以上の時を越えて受け継がれる美点とは何か。ジャガーが掲げ続けるスポーツカーのフィロソフィーを探った。スポーツカーから始まったジャガーの歴史
ジャガー・ランドローバー・ジャパンが、F-TYPEをベースにした特別仕様車「F-TYPE HERITAGE 60 EDITION」と「F-TYPE HERITAGE V6 EDITION」の受注を2021年2月1日に開始した。車名にある「ヘリテージ」や「60」は、スポーツカーのDNAを受け継いだとする往年の名スポーツカー、E-TYPEのデビュー60周年を意味している。
そもそもジャガーは、SSカーズと名乗っていた第2次大戦前から、軽量スポーツカーづくりを得意とするメーカーだった。1935年の「SS90」と、それに続く「SS100」で名声を確立し、このときから「ジャガー」のサブネームを使いだした。
戦後、1945年に社名をジャガーカーズと改め、本格的にスポーツカー製造を手がけるようになる。「XK120」(1949年)、「C-TYPE」とも呼ばれた「XK(120)C」(1951年)、それに「D-TYPE」(1954年)と立て続けに傑作を輩出し、1950年代はル・マン24時間レースで5回もの優勝をものにしている。
いっぽう、量産スポーツカーメーカーとしてジャガーの名声を(主に北米で)確立したのが、1961年のジュネーブ自動車ショーで発表されたE-TYPEだ。ジャガーの生みの親、ウィリアム・ライオンズがスタイリングスケッチを手がけ、マルコム・セイヤーが現実のかたちにつくり上げた。そのデザインは素晴らしく、英国のデザイン評論家、スティーブン・ベイリーなどは「史上最も美しいクルマ」と評するほどだ。
人気の秘訣は“速さ”と“美しさ”
直列6気筒エンジンを収めた長いノーズと、ドライバーが後輪の上に座るような、伝統的なスポーツカーのプロポーション。エンジンは当初3.8リッター6気筒でスタートし、4.2リッターへ排気量が大きくなり、後に5.3リッターV型12気筒まで用意された。どのモデルも太いトルクの上に乗るような、力強い走りが特徴的で、性能的には今の路上でも交通の流れをリードできるほどだ。
当時、エンスージアストはE-TYPEでレースに出走。直接のライバルは「フェラーリ250GTO」だった。かなりの強敵であるものの、デビュー年には英国のレースにおいて実際にフェラーリを下しており、またグラハム・ヒルのドライブでアストンマーティンがレース用に仕立てた「DB4GT」を打ち負かしたこともある。
その実力と美しいスタイルゆえ、E-TYPEはすぐに欧米の社交界で人気を呼んだ。クーペとドロップヘッド(オープン)の両方が用意されており、最初はレースカーのように素っ気なかった内装も、途中からぜいたくなものへと変わり、いってみれば文武両道のスポーツカーとなった。そのときの人気ぶりが、F-TYPEが活躍する今日まで続いているのだから、すごいことと言わざるをえない。
2012年に発表されたF-TYPEのよさは、まさにこのE-TYPEと似ている。性能的に優れ、同時に審美性が高い。そのデザインも、多くを現代的な解釈を交えつつE-TYPEから受け継いだもので、長めのフードからリアへと続くベルトラインは、リアフェンダーのあたりでキックアップして、大きな躍動感を生んでいる。いっぽうで、ぎゅっと引き締まったスタイリングは官能性を感じさせるほどだ。
幅広い要望に応える豊富なバリエーション
動力性能は高く、その根幹となるエンジンには2リッター直列4気筒ターボをはじめ、3リッターV型6気筒スーパーチャージド、5リッターV型8気筒スーパーチャージドの3種類を用意。このうち「F-TYPE R」の5リッターエンジンは、2020年の改良で最高出力が575PS(423kW)、最大トルクが700N・mにアップ。静止状態から100km/hまで、わずか3.7秒で加速する。
また、マニュアルシフト操作時によりクイックなレスポンスを示す「クイックシフト・トランスミッション」や、改良されたスプリングとアンチロールバー、アダプティブダイナミクス対応の連続可変ダンパーを組み合わせたサスペンションシステムなどで、スポーティーな走りを実現している点も、F-TYPE Rのセリングポイントとなっている。
バリエーションも豊富で、駆動系には後輪駆動と全輪駆動を用意。サーキットで楽しみたいひとは後輪駆動がいいかもしれないし、「安定した走りでロングツーリングを」というひとは全輪駆動が選べる。ボディータイプもクーペとコンバーチブルが設定されていて、内装もスポーティーなものからぜいたくなものまで、仕様による振り幅をあえて大きくしている。高級とは選択肢がゆたかなことも意味する。その点においてもE-TYPEと同じく、F-TYPEは幅広い層へアピールする。
ディテールにみるヘリテージへの敬意
そこにあって、冒頭で述べたF-TYPE HERITAGE 60 EDITIONは、ジャガーのヘリテージに敬意を抱く層に、より深く訴えかけるモデルとなっている。
ジャガーの中にあって、特殊な高性能モデルやコレクターズエディションの開発を担うデザイナー、エンジニア、テクニシャンによるスペシャリストチーム「SVO(スペシャル・ビークル・オペレーションズ)」が、最上位グレード「F-TYPE RクーペP575」をベースにさらに手を入れたもので、生産台数はグローバルでわずかに60台。日本での販売台数は6台のみとなっている。
特に目を引くのが濃緑色のボディーで、1960年代以降使用されてこなかったE-TYPEのオリジナルカラー「シャーウッドグリーン」を採用。ジャガーの歴史的スポーツカーに対するオマージュの強いクルマに仕上がっている。
さらに、インテリアにはカタログモデルでは設定のない「キャラウェイ/エボニー」のデュオトーンウィンザーレザーを採用。ヘッドレストにはE-TYPEの60周年記念ロゴがエンボス加工されている。60台分の1台であることを表した「SV BESPOKE ONE OF SIXTY」というプレートも誇らしげで、コレクターズアイテムとしての価値の高さを視覚的にアピールする。
半世紀の時を越えて
同時に発売されるF-TYPE HERITAGE V6 EDITIONは、3リッターV6の「F-TYPE R-DYNAMIC P380」をベースに、「非日常感、特別な空間、エモーショナルなサウンドにフォーカス」したとうたわれる30台限定の特別仕様車。タン色のレザー内装をはじめ、アクティブスポーツエキゾーストシステムや、英メリディアンのサラウンドサウンドオーディオシステムなどがおごられている。
さらに、日本で販売されるジャガーとしては、このモデルが最後の3リッターV6スーパーチャージド搭載車となる。音はもちろん、最高出力380PS、最大トルク460N・mの力強い走りもオーナーを魅了することだろう。
価格は、F-TYPE HERITAGE 60 EDITIONが1961万円、F-TYPE HERITAGE V6 EDITIONが1398万円となっている。
2013年5月にF-TYPEが日本に導入された際、ジャガー・ランドローバー・ジャパンのラッセル・アンダーソン社長(当時)は「ジャガーがスポーツカー市場に“帰ってきた”ことを示す一台である」と語った。実際、E-TYPE以降のジャガーはスポーツセダンやグランドツーリングカーに傾注し、市販のスポーツカーからは距離をおいている。
ただ、その間に輩出された「XJ」や「XJ-S」「XK」には、確かにスポーツカーづくりを起源とするジャガーならではのスポーティネスが宿っており、ならばこそ「ジャガーが今、生粋のスポーツカーをつくったらどんなクルマになるだろう?」という期待をあおり続けてきた。
そして、E-TYPEから50余年の時を経て誕生したF-TYPEは、自ら高めたハードルを越え、ファンの留飲を下げるに十分なクルマに仕上がっていた。すなわち、美しく、速く、ラグジュリアスネスを求める向きも納得させる文武両道のスポーツカー。60年の時を経て今日に受け継がれるのは、“アルファベット+TYPE”という車名だけではないのだ。
(文=小川フミオ/写真=ジャガー・ランドローバー、神村 聖)