「インディアン・チャレンジャー」に宿るアメリカンクルーザーの神髄
継承と革新の体現者 2021.11.04 新しい潮流 Indian Challengerのすべて<AD> アメリカンクルーザーの世界的な潮流となっている“Bagger/バガー”。そこにインディアンが投入したのが、高いパフォーマンスを秘めた新世代モデル「CHALLENGER(チャレンジャー)」だ。アメリカの老舗が放つ新しいツアラー。その魅力を、開発に深く携わるデザイナーが語った。新しいカスタマーのための新しいバガー
2019年11月、インディアンモーターサイクル(以下インディアン)は自社初の水冷エンジンを搭載したチャレンジャーを発表。翌年から世界中で販売を開始した。アメリカを中心に、欧州や日本でも高い人気を誇るアメリカンクルーザーのマーケットにおいて、大型のフロントカウルとリアサイドケースを持つ車両はバガーと呼ばれ、特に人気が高い。
「バガーには、大きく分けて2種類のカスタマーがいる。ひとつはトラディショナルカスタマーだ。彼らはオールドスクールなスタイルを好み、さほどパフォーマンスを重要視しない。それよりも伝統的な空冷エンジン、クロームパーツやハイクオリティーなペイントなどといった“美しさ”に価値を見いだす、まさに古典的嗜好(しこう)のカスタマーだ。そしてもう一方は、プログレッシブなカスタマー。彼らはパフォーマンスを求め、ハンドリングも重視する先進的な嗜好を持つ。ロングツーリングにも出かけるが、そのペースはとても速い。チャレンジャーはこのプログレッシブカスタマーのために開発したモデルだ」
そう語るのは、インディアンのデザイン部門の責任者であるオラ・ステネガルド氏だ。チャレンジャーの誕生以前にも、すでにインディアンは「チーフテン」や「ロードマスター」といったクラシックスタイルのバガーモデルをラインナップしていた。しかしエンジンパフォーマンスに限らず、高いサスペンション性能やブレーキ性能、さらにはスポーツバイク的な運動性能をも求めるプログレッシブカスタマーは、年を追うごとに存在感を増していた。
そこでインディアンは、トラディショナルカスタマー向けとプログレッシブカスタマー向けとで車両のプラットフォームを分け、市場的にもプロダクト的にも大きな可能性を秘めていた、プログレッシブカスタマーを満足させられる新しいモデルをつくる決断を下した。それがチャレンジャーだった。
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パフォーマンスの追求がデザインを変える
チャレンジャーの登場により、ブランドの復活以降、インディアンのイメージをけん引してきた空冷の「サンダーストローク」エンジンを使ったモデルについては、トラディショナルカスタマーに注力してマシン開発を行うことが可能になった。そこから誕生したのが、このほどデビュー100周年を機に代替わりを果たした新型「チーフ」だ。プラットフォームを分けたことでともに妥協する必要がなくなったことは、インディアンにとって非常にプラスになった。
無論、その恩恵はチャレンジャーの側にもみられる。チャレンジャーと他のインディアンのクルーザーモデルとの大きな違いは、フレームマウントしたフロントカウルにある。クラシックスタイルのクルーザーに見られる、フロントフォークに装着されるカウルは、その重量や走行風圧をフロントの足まわりで受け止める必要があり、ハンドリングをスポーティーに仕立てることが難しい。そこでカウルをフレームマウントすることで問題を解消。同時にこれが、先進的なスタイリングにも貢献したという。
パフォーマンスの追求によって行き着いたチャレンジャーの造形について、ステネガルド氏はこう語る。
「デザインモチーフはアメリカンカルチャーにある。特にアメリカンマッスルカーからは多くのインスピレーションを得た。また、すでにラインナップしているインディアンの各モデル、特に新しいインディアンのイメージをつくり上げた『スカウト』シリーズや『FTR』シリーズからも着想を得ている。この2つのモデルは、ともに水冷エンジンを持ち、デザインもシャープだ。それでいてアメリカンモーターサイクルらしい荒々しさも秘めている」
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フレームもエンジンも新設計
チャレンジャーのフロントカウルは、机上での解析と風洞実験に加え、テストライダーや、ときには開発スタッフ自らが長距離を実走して、高いウインドプロテクション効果とスタイリングをつくり上げた。
同時に、そのカウルをマウントするフレームの開発も徹底して行われた。チャレンジャーの車体はエンジンをストレスメンバーとして利用しており、メインのアルミバックボーンフレームは、エンジンの上方に、ステアリングヘッドからスイングアームピボットプレートまで弧を描くようにレイアウトされている。
またスイングアームやリアフレーム、それらとメインフレームをつなぐスイングアームピボットプレートといったフレームの後半セクションは、チーフテンやロードマスターなど、大型のサイドバッグを持つ既存のモデルから技術を応用している。したがってフレームは、新しい技術と考え方を用いたフロントセクションと、今までの経験を生かしたリアセクションをミックスした構成となる。
こうして、革新と継承によってつくり上げられた車体に加え、チャレンジャーでは心臓部もこのモデルのために新たに開発された。それが108cu.in(1767cc)の排気量を持つ、挟角60°の水冷V型2気筒SOHC 4バルブエンジン「パワープラス」だ。
発表当時、このエンジンには「排気量が小さすぎるのではないか?」という意見が多かったという。インディアンの他のクルーザーが採用する空冷のサンダーストロークエンジンは116cu.in(1890cc)の排気量を持っており、またライバルとなるハーレーダビッドソンが2016年に発表した第9世代の空冷ビッグツイン「ミルウォーキーエイト」には、107cu.in(1745cc)に加えて114cu.in(1868cc)のものが用意されていたからだ。しかし水冷エンジンは、空冷エンジンと比べて同排気量でも高い出力を発生でき、108cu.inの排気量でも、求めていたパフォーマンスを十分に得ることができたという。
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大事なのは“アメリカンフィーリング”
そのパワープラスエンジンは、サーキットでも優れたパフォーマンスを発揮する。かの地ではバガーマシンによるロードレース選手権「キング・オブ・バガース」という、いかにもアメリカンなレースが開催されているが、インディアンはこのチャレンジャーをベースにファクトリーマシンを仕立てて、そこに参戦。開催初年度の2020年には圧倒的速さでシリーズタイトルを獲得。2年目となる2021年はハーレーダビッドソンと熾烈(しれつ)な首位争いを展開し、シリーズ2位となった。そのエンジンの仕様は、「レース仕様のカムと排気系を採用し、その特性に合わせてマッピングを変えただけ」という、ライトチューニングにとどめられている。それでいながら、パワープラスはあの巨体をレーシングスピードで走らせることができたのだ。
しかしステネガルド氏は、こうした走りのパフォーマンスに加えて、そのパフォーマンスの内にある“アメリカンフィーリング”こそが、チャレンジャーというモデルの核になっていると語る。
「チャレンジャーを理解するには“アメリカンフィーリング”、アメリカ的な“感覚”を理解しなければならない。それはきらびやかなクロームパーツやペイント、分厚いレザーなどで表現されることもあるが、われわれが焦点を当てているのはメンタリティー、考え方だ。アメリカは開拓者精神によって建国された。不可能なことなどなく、自分たちが思い描く世界を実現するためにアタマとカラダを動かし続けた。そのためには“力”が必要なときが数多くあった。そして、その力こそがアメリカンフィーリングを生んだのだ」
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走りと造形に宿るモーターカルチャーの神髄
加えて、アメリカのモーターカルチャーを理解するには、アメリカでクルマやバイクがどんな走りをしているかを知る必要があるという。
「アメリカンモビリティーにとってエンジンのトルクは、最も重要な要素だ。広大な大地を延々と走り続けるためには、大きな車体と強大なエンジンのトルクが必要だ。また“On Ramp Acceleration”と呼ぶ、アメリカ特有の短い助走区間しかない高速道路での合流で、その巨体を一気に加速させるのもトルクだ。それらは非常にアメリカ的な価値観だが、誰もが憧れる不思議な魅力にあふれていて、それがアメリカンモビリティーの核になっている」
「私はデザインを考えるとき、そんなアメリカンフィーリングの歴史を振り返り、過去と現在の類似点を浮き彫りにする。それは非常に興味深く、われわれのプロダクトにとって、とても重要だ。チャレンジャーにはエンジンの振動があり、強力なトルクがあり、多くのハンドメイドパーツがあり、本物のキャスティングや溶接があり、鉄製の燃料タンクがある。それらはまさに、アメリカンフィーリングのアイコンであり、チャレンジャーの特徴となった」
チャレンジャーに宿る、アメリカの文化と風土が育んだアメリカンフィーリング。それは太平洋の向かい側に住まう私たちにも理解できるものなのか。そうした疑問に対するステネガルド氏の回答は明快だった。
「日本人は、ときにアメリカ人よりもアメリカンフィーリングを深く理解していると感じる。デニムやレザージャケットをあんなにも深く研究し、クラシックバイクやクラシックカーの分野には世界屈指のビルダーや愛好家がいる。そしていまやアメリカをしのぐ技術と知識と情熱をもって、それらを楽しんでいる。バガーシーンはアメリカンカルチャーに根ざしているものの、とても新しく、しかし大きな可能性を持っている。われわれがつくり上げたチャレンジャーを通して、アメリカンフィーリングにあふれたバガーモデルの楽しさを、日本のライダーも深く広く理解してくれると信じているよ」
(文=河野正士/写真=インディアンモーターサイクル)
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