気鋭のインテリアコンサルタント CADILLAC XT4を語る
誇りは細部に宿る 2021.12.24 CADILLAC XT4に宿るモダンプレミアムの神髄<AD> アメリカを代表する高級車ブランドであり、同時に知的なグローバルブランドでもあるキャデラック。彼らが打ち立てた、新しいプレミアムの価値とはどういうものなのか。気鋭のインテリアコンサルタントである神戸アレック氏が、最新のコンパクトSUV「XT4」を吟味しながら語った。外観に宿るモダンなバランス感覚
世界の自動車ブランドのなかでも、21世紀に入ってからの変革で最も成功した存在といえばキャデラックだろう。100年以上にわたり「アメリカの高級車の代名詞」であり続けてきた彼らは、その確固たる地位はそのままにイメージを一新。巨大でゴージャスな富の象徴から、知的でクールなプレミアムブランドへと変貌を遂げた。そのエッセンスは、当然のこと最新のキャデラックXT4にも注がれている。
神戸アレック氏(以下、神戸):XT4は、とてもバランスのとれたいいデザインだと感じます。トレンドの都会派SUVで、アメリカ的なゆったりした感覚を持っている。ちょっとだけヨーロッパにも寄せていて、まさにいいとこ取りですね。今の若い人にはとても新鮮に映るんじゃないでしょうか。
神戸氏は幼少期をアメリカで過ごした。1990年代の後半には、かの地でキャデラックのセダンをよく見かけたという。
神戸:「コンコース」や「セヴィル」に乗っている人がまわりにいましたね。そのときは、どちらかというと年配の、地位のある人が乗っているというイメージでした。テールフィンの付いたモデルもまだ普通に道を走っていましたよ。
当時のキャデラックは確かにユーザーが高齢化しており、それは歴史ある高級ブランドの宿命的な課題でもあった。そこで彼らは、次世代に向けて価値の再構築に乗り出す。2003年にコンパクトなスポーティーセダン「CTS」を発売。新設計のプラットフォームを採用し、走りを鍛えたモデルだった。性能以上に衝撃を与えたのが、「アート&サイエンス」を旗印にモダンなデザインを取り入れたことだ。
神戸:1998年に日本に帰ってきて、数年後にCTSや「XLR」「DTS」といったモデルが発売されました。変わったな、と思いましたね。シンプルだけどエッジィで、新しさを感じさせる。大学生になってクルマを運転できるようになると、キャデラックはずっと気になる存在でした。
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リビングのようにくつろげる車内
神戸氏はこれまでに50台以上のクルマを乗り継いできた生粋のカーマニアだ。運転好きなのはもちろんだが、インテリアコンサルタントという職業柄、クルマのデザインにも深く関心を持ち、厳しい目を光らせる。
神戸:内装を黒で統一しているクルマ、黒を訴求カラーにしているクルマは多いですよね。高級感を持たせたりスポーティーに見せたりするのに適した手法ですから。でも、このXT4は明るい色を使っています。これは昔からキャデラックにあった色の組み合わせです。ほんの少しグレージュ寄りのライトグレーといった感じでしょうか。それをブラックやブラウンといった濃いめの色と合わせる。いかにもアメリカ人好みの内装ですね。
神戸氏が吟味するXT4は、3つあるグレードのなかでも上質さが身上の「プラチナム」。内装色は「ライトプラチナム/ジェットブラックアクセント」という仕様だ。
神戸:アメリカでは、クルマに限らず家の内装にもこうした色をよく使います。明るく飾るのが好きなんですね。ヨーロッパはもう少し暗めで、感覚が違う。はやりのグレージュもそうですが、こうした色はブラウンほど暗くならないし、ほかの色と合わせやすいところも好まれます。実用的なことを言うと、明るいけれど汚れが目立ちにくい点もありがたい。いろいろな方向にメリットがある、バランスのいい色だと思います。
神戸氏は3拠点生活を行っていて、今回訪れたのは河口湖畔の別荘だ。富士山を望む広い窓からは明るい陽光が入ってくる。木と石が素朴で柔らかな雰囲気をつくり出し、心地のよい空間だ。
神戸:この家も、キッチンの壁を張り替えたら落ち着きが出ました。アメリカだと壁紙ではなくペンキで塗ることが多いんですよ。白ベースでアクセントカラーを入れていくんです。ベッドルームの頭の側の壁だけを変えたり。ちょっとした気分転換に塗り替えることもあります。色としては、有彩色でもラベンダーとかのアースカラーが昔から人気ですね。このクルマのグレーも同じで、だから外出してもずっと家にいるような、とても落ち着いた気分になれるのでしょう。
「使える高級」という贅沢
インテリアコンサルタントの仕事でよく相談されるのが、引っ越しの際の家具選び。神戸氏のアドバイスは、お金をかけるポイントにメリハリをつけることだ。
神戸:家の中でも、長い時間を過ごす場所がありますよね。そういうところに重点を置くのがいいでしょう。手が触れるところは大事です。ダイニングセットと椅子にはお金をかけたほうがいい。合板に木目パネルを貼っただけのテーブルは確かに安いですが、傷がついたら修理できません。愛着がわきませんよね。しっかりした木製ならば、表面を削ってオイルを塗ると新品同様になります。クルマの場合、内装というのはどこも手が触れるわけですから、なるだけ本物の素材を使うべきなんです。
キャデラックでは、インテリアの要所はすべて本物の素材を使って仕上げられている。シートやドアトリム、ダッシュボードなどは高品質な本革製で、ウッドパネルは本杢目(ほんもくめ)材、メタルインサートも本物の金属製だ。
神戸:人間は本能でニセモノってわかるんだと思います。特に手が触れるところはごまかしが利きません。XT4の内装に使われている本革は上質ですが、柔らかすぎる神経質な素材ではないところがいいですね。触ることが前提になっています。「使える高級」というのが、逆に贅沢(ぜいたく)だと思いますよ。
大事なのは機能的で実利があること
家の中と同じ安らぎを得られるXT4の室内は、くつろいで音楽を楽しむのにも適している。アクティブノイズキャンセレーションが備わっているから、静粛性のレベルが高いのだ。オーディオには「BOSE(ボーズ)サラウンドサウンド13スピーカーシステム」が搭載されていて、リアルな音響空間をつくり出す。
神戸:BOSEはポピュラーミュージックを聴くには最適ですし、ラジオのパーソナリティーの声がはっきりと響きます。実は、アメリカ人はこういう装備に結構うるさい。家でもエアコンとか冷蔵庫とかはこだわって選びます。そういうお国のプレミアムブランドが使い続けているんだから、それなりの理由があるんですね。最近はBOSE以外にもさまざまなブランドのカーオーディオがありますが、いいチョイスだと思います。それに、前席にマッサージ機能まで付いているのには驚きました。
そのように語りながら、神戸氏はおもむろに自前のタンブラーを取り出した。
神戸:ああ、よかった。ちゃんとドリンクホルダーに挿さりますね。クルマによってはホルダーのサイズが小さかったり形が合わなかったりして、入らない場合があるんです。アメリカだとファストフードの大きな紙カップを挿したりするので、こうした装備が“形だけ”だと受け入れられないのでしょう。こまごました収納もちゃんとしていて、助かりますね。
こうした点も、プラグマティックな、かの国のクルマの美点といえるだろう。スマートフォンのワイヤレスチャージャーもきちんとスマホホルダーに設けられるなど、要所を押さえたかっちりとしたつくり込みは、昔ながらのアメリカ車のイメージが拭えない人には想像できないほどかもしれない。
プラグマティックといえば、今や当たり前ともいえるインフォテインメントシステムと携帯端末との連携機能、例えばApple CarPlayやAndroid Autoなどのミラーリングも、先鞭(せんべん)をつけたのはゼネラルモーターズだった。さすがはIT大国のメーカーともいえるが、そもそも実利のある装備、実際に使える機能に対する、アメリカ人のセンスは高いのだ。
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気品を感じさせるプレミアムSUV
それもあって、XT4は先進安全装備に関しても万全だ。カメラやレーダーが前後左右の状況を認知し、必要に応じてドライバーに危険を知らせる。被害軽減ブレーキは歩行者にも対応する最新型。アダプティブクルーズコントロールも「付いていますよ」というだけでなく、交通状況に応じて素早く加速・減速し、もちろん完全停止までをカバー。現実に、痛痒(つうよう)なく使えるものとなっている。
キャデラックは1912年に世界初となるセルフスターターを採用しており、シンクロメッシュ機構、ダブルウイッシュボーン式前輪独立懸架、パワーステアリングなどの技術を、いち早く取り入れてきた。目新しいから使うのではなく、ユーザーに利益があるから先進技術を取り入れる。その姿勢は、今も変わらない。
神戸:アメリカ人って、なにより快適さを好むし、楽をしたがる人々なんです。長距離移動が多いから、安楽に運転できることが大切。クルーズコントロールが最初に普及したのはアメリカですから、こういうところは手を抜きません。
最後に「このクルマの装備は、どれがオプションなんですか?」と問われたので、日本仕様のプラチナムでは全部が標準である旨を伝えた。価格は670万円で、運転支援システムもプレミアムオーディオも、サンルーフも本革内装もそこに含まれる。少なくとも私には、これ以上必要なものは思い浮かばない。
クルマを離れ、縁側のテーブルセットからXT4を見やる。
神戸:こうして、あらためてエクステリアを眺めると、ボディー下部に大きく樹脂パーツを使っているのに、都会的に仕上がっているところに巧みさを感じます。攻撃的で押しの強いデザインのSUVが増えているなかで、XT4の気品のあるたたずまいは貴重ですね。装備や実用性にもスキがない。アメリカの最良の部分が詰まったクルマだと思います。
(文=鈴木真人/写真=荒川正幸)
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