乗って知る キャデラックXT4に宿るモダンラグジュアリーの本質
いまどきのプレミアム 2022.02.11 CADILLAC XT4が体現する“くつろぎ”というプレミアム<AD> モダンで知的な、真のアメリカンラグジュアリーを体現する今日のキャデラック。その最新モデルがコンパクトSUV「XT4」だ。虚飾を排し、プレミアムSUVとしての本質を追求したXT4には、今という時代にふさわしい“くつろぎ”という新しい価値が宿っていた。品があり、機能性に優れる
「エスカレード」を頂点に4つのモデルで構成されるキャデラックのSUVラインナップ。それは、かの地(=アメリカ)の話……のみならず、実は日本でも同様だ。正規輸入車として本国と同じ選択肢が用意されるそのなかで、XT4は車格的にもお値段的にも最もコンパクトなモデルということになる。
コンパクトとはいえ、そこはアメリカ車。サイズ感は日欧のDセグメント系に限りなく近い。全長や全幅はそうしたライバルに比肩し、かつ長めのホイールベースでパッケージにひと工夫を加えている。
そんなわけで車格の割にゆとりを感じる室内空間を彩るのは、キャデラックの冠に恥じないしつらえだ。オーナメントには本杢(ほんもく)、メタルインサートには本物の金属材を用い、ステッチには一針ごとに人の手間が費やされる。
もちろん、これはキャデラックに限らず他のプレミアムブランドでも唱えられている話だ。が、内装意匠の大枠がひねりを加えずすっきりと仕上げられているからこそ、加飾の本物ぶりがより引き立てられる。そういうシナジーをキャデラックのデザイナーはうまく使いこなしている感じがする。
後席の居住性はXT4の隠れた美点だ。単に前席シートバックからのニースペースが広いというだけでなく、SUVならではの室内高を無駄にせず着座位置をしっかりとアップライト側にふっていて、そのシアターポジションのおかげで前席越しの前方見通しがすっきりと抜けている。背もたれの長さもしっかりとられているし、それを倒せばほぼフラットな荷室となるあたりは、XT4の設計の真面目さをよく表しているといえるだろう。
機能の拡充に乗じて肥大化してきた操作モノを、タッチパネルに押し込めることが当然になりつつある今日このごろ、その操作性ときたら「機能があるだけありがたく思え」といった様相だが、かたやXT4は今も大半のファンクションを物理スイッチで扱わせてくれる。それでも見た目に古さを感じないのは、クリーンな内装にうまくインサートされているからだろう。おかげでライバルよりボタンは多いものの、画面の中から掘り起こしてくるよりはアクセスや操作性には利がある。
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快適で頼りがいのある走り
搭載するエンジンは最新世代の2リッター4気筒直噴ターボで、最高出力は230PS、最大トルクは350N・mを発生。特に最大トルクは発生域が1500rpmからとなっており、その数値からは欲張ってピーク値を追い求めたチューニングではなく、扱いやすさを重視したものであることが伝わってくる。組み合わせられるトランスミッションはゼネラルモーターズ自社製の9段AT。幅広いトルクバンドとギアレシオのワイド化で機敏さと効率を両建てする設定だ。
メカニカル面でのXT4のユニークポイントは搭載されるトランスファーシステムだ。100:0~50:50の前後駆動配分となる4WDシステムは、「ツーリング」「AWD」「スポーツ」「オフロード」と、4つのドライブモードに応じて駆動設定が変わる仕組みだが、これとは別にクラッチを介して後輪側の左右駆動配分を可変するトルクベクタリング機能も搭載している。走行状況に応じて、スタビリティー側にもコーナリングフォース側にも駆動を積極的に活用しようというわけだ。
走り始めてまず気づくのは、静粛性の高さだ。エンジンを上まで回せば4気筒特有のザラみのある音が聞こえるものの、普通に走る限りは9段ATが低回転域を積極的に用いるため、相対的にエンジンノイズは抑えられている。加えて走行時のロードノイズや風切り音のレベルも低いが、これはサイドウィンドウをラミネート化するなど、ひとクラス上の遮音対策を施している効果だろう。
前述のとおりDセグメントに比肩する車格もあって、XT4の車重は1.7tを超えるが、エンジンはパワー的にもトルク的にも不足はない。低回転域からじっくりと力強く速度を乗せていく。回すほどに高ぶるような類いのものではないが、6000rpm手前まできっちり仕事をこなす実直なタイプといえるだろう。特に、低回転域での力感やその扱いやすさは雪道や悪路での走りやすさにも関わってくる大事なポイントだ。そういうシチュエーションを走るうえでは、変速のつながりや駆動の伝達が滑らかなトルコンATの美点が光るに違いない。
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オーセンティックな魅力がある
高速巡航時の乗り心地は至って穏やかだ。なにかが際立つわけでもないが、なにかが気に障るわけでもなく、車内はのんびりと時が流れていく。延々と法定速度を維持し続けることにストレスを感じないというのはアメリカ車に共通する特徴だが、アーキテクチャー的には最も日欧のライバルに近いXT4にも、そういう鷹揚(おうよう)さがちゃんと備わっていた。
加えて、今日びはそういうシチュエーションで先進運転支援システム(ADAS)のお世話になる場合も多いと思うが、その要となる追従型クルーズコントロールが上出来なのもまた、XT4の特長である。車間保持の応答のきめ細かさや、滑らかながらもメリハリのある加減速など、各制御が至って実践的にしつけられていて、積極的に使いたくなる。
山道ではスポーツモードで凝ったドライブトレインの効果をチェックしてみたが、あからさまに後ろ脚で地面を蹴って、無理やりにでもクルマを曲げていくような“分かりやすさ”は感じられなかった。それゆえ、せっかくのトルクベクタリングを生かせていないと物足りなく感じる人もいるかもしれない。しかし、必要以上の刺激を嫌うXT4の趣を思えばこれも納得のいく調律だろう。一事が万事で、見ても走ってもXT4の端々からは、過剰な装飾やとっぴな挙動を抑えようとするフシがうかがえる。
キャデラックといえばきらびやかな満艦飾の巨大クルーザー……的なブランドイメージは遠い昔の話だ。とかくそういう期待値を背負わされがちなエスカレードでさえ、ドイツ勢よりトラッドでオーセンティックではないかと思うこともある。いわんやXT4は、最も幅広い地域と層を想定するキャデラックの入り口として、とにかく人当たりのよさを一生懸命考えてつくられているのではないだろうか。結果的に、空間の居心地も柔らかく、乗っても優しい。「コージー」とか「チル」とか、昨今折につけクローズアップされるそういうキーワードに、現在のキャデラックのくつろぎは近いのではないかと思う。
(文=渡辺敏史/写真=荒川正幸)
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