全方位進化! 新型ルーテシアの魅力に迫る
うそみたいなコンパクトカー 2022.03.11 クラスを超えた実力派 ルノー・ルーテシア<AD> 小型車のニーズが高い欧州において、絶大な支持を得ている「ルノー・ルーテシア」。最新型のステアリングを握ってドライブに出かけたなら、誰もがその完成度の高さに驚くに違いない。本場でも大人気
2021年、フランスでは「ルノー・クリオ」というBセグメントのコンパクトカーが販売ランキングの2位を獲得した。全乗用車販売に占めるシェアは5.1%というから、クルマが20台売れればそのうち1台以上はクリオとなる計算。なかなかの人気っぷりである。しかも、その年間販売台数は8万8013台でトップとの差は3000台もなかったのだから、“僅差”での2位なのだ。
またクリオは、2021年の欧州28カ国(EU加盟国+イギリス、ノルウェー、スイス)の販売ランキングにおいても4位に入っている。トップである「フォルクスワーゲン・ゴルフ」との差はわずか9000台。欧州というコンパクトカー激戦区でも、クリオは高い人気を得ているのだ。
そんな人気車クリオだが、日本でその車名を知る人は少ないかもしれない。なぜなら日本では大人の事情(某国産メーカーがディーラー名としていた登録商標なので使えない)により、クリオとは異なる車名で販売されているから。そのクルマこそが「ルーテシア」である。
ちなみにルーテシアはフランスの首都であるパリの古い呼び名に由来するそうで、知ったかぶりが得意な筆者はこれまで漠然と「東京で言うところの江戸のようなものか」と思っていた。しかし今回あらためて調べたらパリに改称されたのは西暦212年だそうで、江戸よりもずっとずっと昔の話だというから驚いた。うむ。知ったようなふりだけで、真実にはたどり着いていなかったようだ。
それにしても、母国フランスで販売上位となるクルマの実力はいかほどなのか? 春を求めて出かける小旅行のパートナーとして、最新のクリオならぬルーテシアをドライブに連れ出してみた。
見ているだけで惚れ惚れ
ルーテシアについておさらいしておくと、フルモデルチェンジした現行型は、日本では2020年11月に発売された。
少し離れて見れば、何を隠そう先代ルーテシアのオーナーである筆者自身も新型だと気がつかないくらいデザインはキープコンセプトだが、プラットフォームは一新され、20mm短くなった全長を含めプロポーションも変化した。パワートレインは新設計された1.3リッターの4気筒直噴ターボエンジンに、従来型に対して1段増えて7段となったデュアルクラッチ式トランスミッションを組み合わせる。車体もパワートレインもすべて刷新されているのだから、走りの進化に対する期待も高まろうというものだ。先代オーナーとして言わせてもらえば、前のも相当良かったけれど。
デザインとは主観的なものであり、好みに大きく左右されるものである。……とはいうものの、それを踏まえたうえで声高に言いたいのはルーテシアのスタイリングはかなり魅力的だということ。筆者自身、先代ルーテシアを選んだ大きな理由のひとつがデザインであり、そのテイストが生かされている新型もまた、美しい姿に惚(ほ)れてしまいそうになる。
なにより注目したのは曲線と曲面がもたらす色気である。真骨頂は肉感的なリアフェンダーの膨らみで、空間効率を求めるコンパクトカーにおいて、キャビンを絞ることをいとわずここまでダイナミックに立体感をつくり込むのはまれだ。そこに込められているのは「単に実用的なコンパクトカーという枠におさめたくはない」というルノーの強い意志にほかならない。そのうえで全体のプロポーションだってしっかり整っているから、街でたたずむ姿も存在感があって美しい。ひときわ目を引くクルマに思えるのは、決してルーテシアびいきの視点で見ているからではない……はずだ。
ルノーのデザイン部門のトップであるローレンス・ヴァン・デン・アッカー氏は、かつてルーテシアのデザインのキーワードは「恋に落ちる」であると語っていたが、このデザインなら欧州の多くの人が一目惚れするのも当然であると(先代オーナーとしては)思う。
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常識を変えるインテリア
そんなデザインコンシャスなクルマだったら、室内が狭いのでは? と疑問を持つのは当然のことだろう。でも、それに関しては「そうじゃない」と断言できる。むしろ、このクラスの欧州ライバル勢に比べれば前後席のスペースが広く確保されていることが、ルーテシアのすごさなのだ。そのバランス感覚は、絶妙というよりも、もはやライバルとは別次元といっていいレベルである。
そのうえで、ラゲッジルームの容量は391リッターと、ひとクラス上のCセグメントハッチバックに相当するゆとりがある。Bセグメント同士ということで、フランスの有力ライバルの265リッター、パッケージングに定評のあるドイツの定番ライバルの351リッターと比べてみれば、その優位性は明らかだ。ルーテシアは見た目だけでなく実用性も優れているのである。
室内では、もうひとつ誇れることがある。上質感だ。
ルーテシアは先代からインテリアのクオリティーの高さに定評があった。しかし、新型はその上をいく。例えばダッシュボードをはじめトリムのほとんどにはソフトパッドがあしらわれ、ドアトリムやシフトレバーの周囲まで肌触りの柔らかい素材で覆っているのだから明らかにクラスを超えている。スイッチ類だって上質な仕立てで、こんなBセグメント車は、ちょっとほかには思いつかないほどだ。ルノーの辞書に「妥協」とか「手加減」なんていう文字はないに違いない。ちょっとやりすぎだと思うくらい、クラスの水準を大きく超えている。
今回試乗した特別仕様車「インテンス プラス」はレザーシートを標準採用しているので、上質さはさらに高められている。そのうえシートヒーターやステアリングヒーターまで付いているから寒い日でもポカポカと快適。寒冷地のドライバーにも、今回のような早春のドライブでも、うれしい。
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驚くほどの走りっぷり
快適といえば、先進の運転サポート機能も充実している。渋滞中の停車保持まで行うストップ&ゴー機能付きのアダプティブクルーズコントロール(ACC)や、車線の中央をなぞるようにステアリング操作をアシストしてくれる車線中央維持支援機能など、インテンス プラスは標準で備わっている機能のレベルが高いのだ。それで268万9000円という価格は、控えめに言ってもお得ではないだろうか。
とはいえ、クルマへの思い入れが深いであろう皆さんが欧州のコンパクトカーに期待するのは、なんだかんだ言っても“走り”だろう。その点についても、もちろん心配はいらない。
フットワークの良さに関してはいまさら説明するまでもないだろう。なによりお伝えしておきたいのは、ひとまわりもふたまわりも大きなクルマに乗っているかのような高速走行時の安定感。コンパクトなのにここまで? というくらい直進安定性が良く、細かなハンドル修正がいらないのは驚きだし、とにかくロングドライブでも疲れない。加えて路面の凹凸を乗り越えた時などの衝撃のいなし方が見事。それらは最新プラットフォームのレベルの高さが効いているのだろう。
いっぽうでワインディングロードでは軽快な身のこなしをみせ、スポーツカーのように思いどおりのコーナリングを楽しめる。安定感とキビキビ感という、2つの顔の両立はなかなかだ。
そして忘れてはいけないのはエンジン。その実力も想像以上。そもそも自然吸気ガソリンで言えば排気量2.4リッターに相当するトルクをわずか1600rpmから発生する“トルク重視の特性”としたことで、日常域での加速感は1.3リッターであることを疑いたくなるほどだ。そのうえで、このクラスのライバルは3気筒が一般的なのに対して4気筒としているから、エンジンの滑らかさや振動の小ささなどについてもライバルに対してアドバンテージがある。この点も、ひとクラス上の感覚といえる。
ルーテシアはどんなクルマか? ひとことで言うなら、「車体サイズと価格以外はひとクラス上」だ。実用性も上質感も走りもすべてがクラスを超えた実力なのだ。うそみたいだけれど、本当に。
もしもルーテシアに対して「普通の欧州コンパクトカーでしょ」なんてわかったような気持ちになっているのであれば、本当の実力を知って、きっと驚くに違いない。ルーテシアの由来となったかつてのパリの名に、「江戸くらいの感覚」なんて間違ったイメージを抱いていたボクのように。
(文=工藤貴宏/写真=小林俊樹)
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テスト車のデータ
ルノー・ルーテシア インテンス プラス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4075×1725×1470mm
ホイールベース:2585mm
車重:1200kg
駆動方式:FF
エンジン:1.3リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:131PS(96kW)/5000rpm
最大トルク:240N・m(24.5kgf・m)/1600rpm
タイヤ:(前)205/45R17 88H/(後)205/45R17 88H(コンチネンタル・エココンタクト6)
燃費:17.0km/リッター(WLTCモード)
価格:268万9000円