エクリプス クロスPHEVの軽快な走りを味わう
うれしい選択肢 2022.07.29 電気の力を自在に使う三菱のPHEV<AD> 三菱が電動車で追求する動力性能と環境性能の考え方はどのモデルでも通底している。例えばプラグインハイブリッド車(PHEV)なら、注目度では新しい旗艦「アウトランダー」だが、「エクリプス クロス」でも本質的に同じ上質さが味わえる。いまあらためて連れ出してみた。待たずに乗り換えられる
2021年12月に登場した三菱アウトランダーPHEVは、同社が長年取り組んできたプラグインハイブリッド技術を用い、最新の車台と大容量バッテリー、S-AWCを組み合わせた話題のクルマであり、乗っても実際素晴らしい。同社をイメージと利益の両面でけん引するフラッグシップモデルだ。ただしこのご時世、注文してもなかなかクルマがやってこない。自動車メーカーの責任ではなく、コロナ禍、戦争、半導体不足と、さまざまな不確定要素がすべて自動車生産に不利な状況となった結果だ。ほぼすべてのメーカーが計画どおり生産できていない。
しかし三菱にはアウトランダーPHEVだけじゃなくエクリプス クロスPHEVもある。2018年にガソリンエンジン搭載モデルのみで登場した後、2019年にディーゼルモデルが追加された。2020年のマイナーチェンジを機に現在のスタイリングとなったほか、ディーゼルモデルが販売終了となり、入れ替わるかたちでPHEVが追加された。同社によれば、エクリプス クロスPHEVの納車待ち期間はアウトランダーPHEVのそれよりも短い傾向にあるという。待たずにPHEVに乗り換えたいという人にとって、エクリプス クロスPHEVは、いわば“その手があったか系”PHEVといえる。あらためて試乗した。
モーター駆動ならではの身のこなし
エクリプス クロスPHEVは、フロントに最高出力128PS(94kW)、最大トルク199N・mの2.4リッター直4ガソリンエンジンを搭載し、前車軸に同82PS(60kW)、同137N・m、後車軸に同95PS(70kW)、同195N・mのモーターが組み込まれる。そして前後車軸間のフロア部分に総電力量13.8kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーが配置される。エンジンが発電した電力はバッテリーを介して前後モーターに供給されてモーター駆動する。バッテリーの電力が十分に残っている場合にはエンジンは停止し、EV走行が中心となる。高負荷時にはエンジンが発電した電力+バッテリーにある電力を同時に使って大パワーを獲得する。いっぽうで一定速度での巡航時にはエンジンが生み出す動力で直接駆動するケースもある。
時にアクセルをグイッと踏み込んで活発な走行を求めたり多人数乗車をしたりしておきながら低燃費も求める欲張りな(!?)ユーザーのため、状況に応じて駆動の仕組みを目まぐるしく変化させる。走行中にその様子をメーター内のインジケーターで確認すると、思わずシステムに「ごくろうさまです」と声をかけたくなる。
動力性能は前後モーターが発生するシステム出力と車両重量(試乗車は1920kg)の関係で決まってくるのだが、低回転域から力強さを発揮するモーター駆動車の特徴によって、エクリプス クロスPHEVは2t近いクルマとは思えぬ俊敏な身のこなしを見せる。S-AWCは4輪を個別にコントロールすることで、加減速と旋回において、常にドライバーの意図をくんだ動きを保ってくれる。加速時には4WDであることを生かして駆動力を漏れなく路面に伝え、減速時にはモーターの回生を利用してスムーズにスピードを落としてくれる。
想定したとおりのラインを走れる
そして旋回。三菱は長きにわたるWRC参戦などを通じ、車両の旋回能力向上に社を挙げて取り組んできたメーカーと言っても過言ではない。本来4WDは特性上旋回が苦手だが、三菱は“よく曲がる4WD”づくりのノウハウをどこよりももっている(たぶん)。高い速度で曲がれるからすごいと言っているわけではない。高い速度で曲がれるノウハウを活用し、普段使いにおいてもスムーズに、ドライバーが思ったとおりに曲がれるのがすごいのだ。分かりやすいのはブレーキによる「AYC(アクティブヨーコントロール)」。旋回時に遠心力で外側へ膨らみがちな車両を、内輪にのみブレーキをかけることで(ステアリング操作などから判断した)ドライバーが想定したラインをキープしてくれる。
と、ここまでエクリプス クロスPHEVの印象を書いたところで、これってアウトランダーPHEVの原稿に書いた内容じゃないかと気づく。あらためて見比べると、両車の構成は近い。発電を担うエンジンの基本設計は共通で、前後2モーターで駆動する4WDという点も共通だ。異なるのは、各モーターの最高出力&最大トルクとバッテリーの総電力量だ。アウトランダーPHEVはフロントに最高出力116PS(85kW)、最大トルク255N・m、リアに同136PS(100kW)、同195N・mのモーターと、20kWhの大容量バッテリーを搭載する。そのぶんWLTCモードのEV走行可能距離もエクリプス クロスPHEVの57.3kmに対し、アウトランダーPHEVは83kmと長い(「P」グレード同士の比較)。その代わり車両サイズとバッテリー容量が大きく、3列シートを備えるために車両重量も同じグレードで比べると190kg重い(一部2列シート車もある)。
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本質が同じのお買い得モデル
車台の世代が異なるのと、アウトランダーPHEVは三菱の最上級モデルということもあって、乗り心地の洗練度はエクリプス クロスPHEVをやや上回る。また全車速追従機能付きのレーダークルーズコントロールシステム[ACC]と車線維持支援機能[LKA]は両車に備わるが、ナビリンク機能(ナビゲーションの地図情報を活用してカーブや分岐などで適切な車速に自動調整する)はアウトランダーPHEVのみといった違いはある。ナビリンク機能がないというだけで、エクリプス クロスのACCとLKAは確実な挙動でドライバーをサポートしてくれる。
そして、三菱がPHEVで追求する高い動力性能と低燃費の両立という点では両車は共通だ。お財布の話をすれば、PHEVに適用される国からの55万円の補助金、東京都の45万円をはじめとする地方自治体からの補助金も同額となっている(補助金は毎年の予算が決まっているのでご注意を)。車両価格が約80万円安いぶん、エクリプス クロスPHEVのほうが相対的にお得とも言える。加えて車両重量の軽さからくる軽快な挙動、わずかながらアウトランダーPHEVを上回るWLTC燃費(16.4km/リッター)などを考えると、総合的な実力においてエクリプス クロスPHEVはアウトランダーPHEVに負けていない。注目度では登場したばかりのアウトランダーPHEVに軍配が上がるが、エクリプス クロスPHEVを詳しく見ていくと、その手があったかと膝を打つことは請け合いだ。
(文=塩見 智/写真=郡大二郎)
車両データ
三菱エクリプス クロスPHEV(Pグレード)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4545×1805×1685mm
ホイールベース:2670mm
車重:1920kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:128PS(94kW)/4500rpm
エンジン最大トルク:199N・m(20.3kgf・m)/4500rpm
フロントモーター最高出力:82PS(60kW)
フロントモーター最大トルク:137N・m(14.0kgf・m)
リアモーター最高出力:95PS(70kW)
リアモーター最大トルク:195N・m(19.9kgf・m)
タイヤ:(前)225/55R18 98H/(後)225/55R18 98H(ブリヂストン・エコピアH/L422プラス)
ハイブリッド燃料消費率:16.4km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:57.3km(WLTCモード)
交流電力消費率:213Wh/km(WLTCモード)
価格:451万円