触れて実感 走って納得! BRIDGESTONE BLIZZAK VRX3の真価と実力
氷の道も それ以外でも 2022.10.24 2022-2023 Winter webCGタイヤセレクション<AD> SUV向けサイズも追加されたブリヂストンのスタッドレスタイヤ「ブリザックVRX3」を、なんと都市部のドライ路でインプレッション! 本領以外でも質の高い走りを示すVRX3からは、どんなシーンにも柔軟に対応する、これからのスタッドレスのあるべき姿が感じられた。氷上・雪上性能だけが求められる時代ではない
今回のブリヂストン・ブリザックVRX3の取材で最も驚いたのは、スタッドレスタイヤであるにもかかわらず、氷雪路ではなく、東京都内の舗装路面でインプレッションを行うとした点だ。しかも取材した日は、時に晴れ間ものぞいた空模様はともかく、初秋とは思えないほどの陽気で、日中の気温は30度に達していた。
僕自身は非降雪地の東京住まいではあるものの、過去に何度か所有車両にスタッドレスタイヤを履かせたことがある。しかし最近の事例でも、気温が30度ぐらいになると、高速道路での直進安定性に不安を覚えるなどの経験をした。「そんな時期までスタッドレスタイヤを履くべきではない」という意見を投げかける人もいるだろう。ごもっともである。しかし、昨今の気候変動により、そういう原理原則が通じにくくなっているのも事実。首都圏で4月に雪が降ったかと思えば、初春にいきなり真夏のような陽気がやってくることもある。
善かれあしかれ、今日ではクルマも、そしてタイヤも、こうした気候に柔軟に対応できる性能が求められている。それを考えれば、今回のテストドライブは納得できる企画だった。ブリザックVRX3は、2021年9月に発売され、今年はSUV向けにサイズラインナップが拡大された。そこで今回の取材では、フォルクスワーゲンのコンパクトSUV「Tロック」にVRX3を装着し、その実力を確かめることにした。
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機能の追求が生んだ美しいトレッドパターン
「実際に乗ったらどうなのか?」を早く知りたい読者は多いと思うが、僕がまず興味をひかれたのは、実はデザインだった。長年グッドデザイン賞の審査委員としてタイヤを見てきた立場も影響しているが、なによりもブリザックVRX3のトレッドパターンが美しかったからだ。
スタッドレスタイヤは凍結路や圧雪路に加え、まだ雪が踏み固められていない積雪路を走る場合もある。そんなシーンに備えて、ミゾは広め、ブロックは粗めとすることが多く、ブリザックも初期の製品はそうだった。そんなイメージを持っていただけに、VRX3のスマートなトレッドパターンに引き寄せられたのだ。
開発者に話を聞いたところ、VRX3では“トレッド面を摩耗させない性能”も重視したという。そのためには接地圧を均一とすることが重要であり、ブロックのサイズをいずれも同じようにして、全体の剛性を一定に保つことを目指したという答えが返ってきた。もちろんこれは、氷上接地面積をしっかり確保することにもつながっているとのことだ。
近年の道路状況の変化についての言及もあった。昔は先に述べたような深い積雪路が多かったが、近年では除雪が行き届き、それが踏み固められてアイスバーンになるなど、圧雪路、凍結路の比率が高くなっているという。そうした路面をより安心して走れることへのニーズが高まっているのだ。
しかもブリヂストンは、SUV向けのスタッドレスタイヤとしてすでに「ブリザックDM-V3」を用意しており、ウインターレジャーなどで積雪路を走る機会が多いユーザーにはこちらを薦めている。それを含めて考えれば、VRX3のスマートな見た目には納得がいく。近年、SUVを街乗りで使う人が多くなったことは周知のとおりだが、そういうユーザーが選ぶスタッドレスタイヤとして、主張しすぎないビジュアルのVRX3は最適ではないかと思った。
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苦手なシーンにも柔軟に対応
試乗ルートは、お台場から首都高速道路・中央自動車道を使い、小平にあるブリヂストン技術センターまでだった。都心側は出発してすぐに首都高速に乗ることになる。前にも書いたように、この時点で気温は30度近くに達していた。
最初に感じたのは、いい意味でスタッドレスらしさが全然伝わってこないこと。とにかく操舵に対する反応がカチッとしていて、コーナリング中のわずかな修正などにもリニアに応えてくれる。静粛性もサマータイヤに準じるという印象で、リラックスした雰囲気のなかで距離を重ねていける。
ミゾが太かったりブロックが大きかったりすると、手応えが曖昧になり、ノイズに悩まされがちになる。先ほど紹介したトレッドパターンはロングライフだけでなく、こうした面でも効果を発揮しているのではないかと思われた。
中央自動車道に入って速度を上げていっても、ぐにゃぐにゃした感触は一切ない。ハンドルに力を込めなくてもスーッと真っすぐ進んでくれるので、より安心してクルージングできるし、たまに現れるコーナーでも腰砕け感はなく、普通の感覚で曲がっていってくれた。
SUVのTロックは、同クラスのハッチバックである「フォルクスワーゲン・ゴルフ」に比べて重心の高いボディーを持ち、それを支えるタイヤサイズは215/60R16と偏平率が高く、エアボリュームも大きい。つまりダイナミクス性能では必ずしも有利とはいえないスペックを持つ。なのに、ブリザックVRX3とのコンビが、ここまでリニアでシュアな走りを味わわせてくれることに感心した。
こうしたあたりには、タイヤ断面のイン側とアウト側の形状を変えた、VRX3の非対称サイド形状が貢献しているのではないかと感じる。アウト側でしなやかな接地感を出しつつ、イン側で安定感を出していることが、五感を通して伝わってきたからだ。
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氷雪路での性能を高めつつ+αの価値を提供する
高速道路を降りて一般道を走りはじめると、今度は乗り心地もサマータイヤと大きな差はないことに気づかされた。乗り心地は良好なのだが、一部のスタッドレスタイヤで感じるヨレ感のようなものがなく、Tロックが本来持つソリッドなフィーリングをそのまま堪能することができた。
今回の試走では、残念ながら本来のフィールドである氷雪路でのインプレッションはできなかった。しかし、ブリヂストンのスタッドレスタイヤの実力なら経験上知っている。自動車メーカーの雪上試乗会でも、ブリザックが数多く採用されているからだ。そうしたイベントで毎度のごとく感じるのは、歩くのさえ苦労するツルツルの路面でも、しっかりと発進し、旋回し、停止することだ。
SUVの試乗会では、そうした走りもともすれば4WDシステムやスタビリティーコントロールなどの効能と捉えてしまいがちだが、それらが能力を発揮できるか否かも、最終的にはタイヤが路面に力を伝えられるかどうかにかかっている。スタッドレスタイヤは、ウインタードライブで最も大事な部分を担う存在であるのだ。
そのうえでブリザックVRX3は、暑い日のドライ路面でも不安のない性能を発揮し、またデザインからは機能美を感じさせる。氷上性能を極めつつ、それだけでは終わらないモノづくりに、日本を代表するタイヤメーカーの意地を感じた。
(文=森口将之/写真=荒川正幸、ブリヂストン)
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KUMHO SOLUS 4S HA32
YOKOHAMA iceGUARD 7
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車両データ
フォルクスワーゲンTロックTSIアクティブ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4250×1825×1590mm
ホイールベース:2590mm
車重:1320kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150PS(110kW)/5000-6000rpm
最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/1500-3500rpm
タイヤ:(前)215/60R16 95Q/(後)215/60R16 95Q(ブリヂストン・ブリザックVRX3)
燃費:15.5km/リッター(WLTCモード)
価格:394万3000円