アルカナE-TECHエンジニアードでロングドライブへ
新時代のハイブリッド 2023.04.28 日々の生活を豊かにするルノーの“フルハイブリッド”SUV<AD> 日ごろからハイブリッド車に親しんでいる人にほどフルハイブリッドの「ルノー・アルカナ」に乗ってみることをお勧めしたい。まずは走りのよさに驚き、次いで「この走りでこの燃費!?」と2度驚くはずだ。新グレード「E−TECHエンジニアード」の魅力をリポートする。ルノーの電動化をリードする
2022年、ルノーは日本においてフランス車販売ナンバーワンの座を射止めたという。しかも主力の「カングー」が世代交代の端境期でほぼ不在というなかでの達成だ。その原動力となったのがハイブリッドパワートレインの充実だと日本法人は分析している。
その口火を切るかたちになったのがアルカナの投入だ。ファストバッククーペフォルムのSUVという、所有感と実用性を両立するスタイリングにして、搭載されるのは脳内で幾重もの歯車をつなげられるエンジニアの英知が詰まったユニークな2モーターのフルハイブリッドシステムだった。後に1モーターのマイルドハイブリッドシステムを搭載したグレードも追加されるなど、アルカナはルノーのパワートレインの電動化をけん引するという側面もある。
今回試乗したのは、2モーターフルハイブリッドのほうだ。E-TECHエンジニアードというグレード名は初見だが、従来の「R.S.ラインE-TECHフルハイブリッド」と置き換わるかたちになるという。R.S.すなわちルノー・スポールの事業をアルピーヌ側に統合するという計画のなかでの商号の見直し、その一環的な動きなのだろう。
グッとシックな印象に
E-TECHエンジニアードの装備的な面はR.S.ラインE-TECHフルハイブリッドに準拠するが、デザインの特徴であるフロントのインテークに配される「F1ブレード」やリアのエキゾーストフィニッシャーなどの加飾が「ウオームチタニウム」と呼ばれる薄金色に変更されている。また、内装でも一部加飾にこの薄金色を反映。併せてグリルやエンブレムなどがブラックアウトされた。ちなみに設定されるボディーカラーは白、黒、ガンメタと、これらの差し色を生かすかのように無彩色的なラインナップだ。濃紺やワインレッドなど、もう少し色味があっても似合うかなとも思うが、ともあれかなりシックな印象となった。
個性的なデザインながら、運転環境にその割を食ったような癖が見受けられないのもアルカナの美点だろう。Aピラーは適度に立てられていて死角は少なく、前から側方の見通しも悪くない。他のルノーのモデルと同様、物理スイッチが多めかという印象はあるが、そのぶん操作に戸惑うことはない。
車格はCセグメント級SUVにほど近いが、クーペSUVのファストバックフォルムもあって、後席の着座環境は身長181cmの筆者には頭上まわりがやや窮屈だ。480リッターの荷室はデッキボードの高さを調節して普段使わない小物を床下に収納できるなどのギミックを備える。容量や形状はごく平均的で、ワシワシ積んでゆったり乗れるというタイプではないが、子育て中のファミリーカーとしても十分対応できるユーティリティーというところだろうか。
足りないものは何もない
先進運転支援システムやインフォテインメント系については、今日的なものがひと通りは標準で備わる。7インチのタッチモニターを軸とする「イージーリンク」は「Android Auto」や「Apple CarPlay」に対応しており、スマートフォンの多彩な機能を車内に反映することが可能だ。そのアウトプットとなるオーディオはBOSEのプレミアムサウンドシステムを搭載する。安全系ではソナーと360度カメラで駐車時などの死角認識をサポートするほか、後退時に後方の通過車両を検知するリアクロストラフィックアラートも標準装備。もちろん全車速対応のアダプティブクルーズコントロールとレーンキープアシストの連携からなる「ハイウェイ&トラフィックジャムアシスト」も備わるなど、後付けを要するのはETCとドラレコくらいというほどの充実ぶりだ。
それでも、アルカナのハイライトとなるのはやはり輸入車唯一のフルハイブリッドをうたうそのパワートレインだろう。1.6リッター4気筒自然吸気ユニット+4段ギアと駆動用モーター+2段ギアの間をドッグクラッチが取り持ちながら、エンジンの始動・停止や回生エネルギーの回収、そしてドッグクラッチのリンケージ時に駆動源との回転を合わせて飛び込みのショックを軽減するなどの役割を高電圧のスターター兼ジェネレーターが担う……というのがその基本的な仕組みだ。
言葉にすると大仰だが、例えばトヨタのハイブリッドシステム=「THS」にほど近いパワーマネジメントを、それよりもシンプルな既設のメカでできるうえ、変速機を介してエンジン回転数に比例した駆動力がもたらされるというのがその特徴といえるだろうか。少なくともルノーの開発陣はそういうところを狙っているはずだ。
走りがいいのに燃費もいい
その狙いはおおむね達成されている。最も感心するのはまさにダイレクトな駆動伝達感で、特にワインディングロードのようなシチュエーションでは、アクセル操作に逐一クルマがついてくる、その応答感が心地よい。一方で普通に走っているときは、モーターのカバレッジが想像以上に幅広いことに感心させられる。アクセル操作に気遣いながら適切なタウンスピードで走る限り、半分近くは電動走行しているのではないかというのが実感だ。この、電動走行域やドッグクラッチの制御などのパラメータが変わったという正式なアナウンスはないが、今回の試乗の印象では登場時のそれよりもひときわ洗練されたようにも思えた。
SUVならではの大径タイヤや200mmの最低地上高を確保したサスのセットアップはちょっと張りが強いところがあって、個人的にはもう少しフランス車らしい柔らかさが際立ってくると魅力が一層高まると思う。が、そのぶん高負荷域ではカチッと上屋の動きが定まった、安心感の高いハンドリングがもたらされるのもまた確かだ。そうやってあらゆる場面を走ってみて、最後に驚くのは燃費だ。ワインディングもしっかり楽しめるそのパフォーマンスに鑑みれば、その効率はハイブリッドに慣れ親しんだ日本のユーザーにも十分納得のいくものだろう。
(文=渡辺敏史/写真=郡大二郎)
車両データ
ルノー・アルカナE-TECHエンジニアード
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4570×1820×1580mm
ホイールベース:2720mm
車重:1470kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:電子制御ドッグクラッチマルチモードAT(エンジン用4段AT+モーター用2段AT)
エンジン最高出力:94PS(69kW)/5600rpm
エンジン最大トルク:148N・m(15.1kgf・m)/3600rpm
メインモーター最高出力:49PS(36kW)/1677-6000rpm
メインモーター最大トルク:205N・m(20.9kgf・m)/200-1677rpm
サブモーター最高出力:20PS(15kW)/2865-1万rpm
サブモーター最大トルク:50N・m(5.1kgf・m)/200-2865rpm
タイヤ:(前)215/55R18 95H/(後)215/55R18 95H(クムホ・エクスタHS51)
燃費:22.8km/リッター(WLTCモード)
価格:469万円