オールシーズンタイヤにも“賢い選択”を NEXEN N’Blue 4Seasonの真価に迫る
“オールシーズン”と侮るなかれ 2023.10.30 2023-2024 Winter webCGタイヤセレクション<AD> 自動車の本場・欧州で高い評価を得ているネクセン。そんな彼らがラインナップするオールシーズンタイヤが、「エヌブルー4シーズン」だ。突然の雪にも対応できる全天候性に加え、高いドライ性能も持つとされるその実力に、モータージャーナリストの山田弘樹が迫る。環境にも優しい新たな選択肢
いま自動車が直面している喫緊の問題は、ご存じのとおり、二酸化炭素の排出量をどれだけ抑えられるかということだ。そしてその視点から見ると、オールシーズンタイヤは、低燃費タイヤで燃費を稼ぐのと同じかそれ以上に、エコな選択になりうる。なぜなら、冬場にスタッドレスタイヤを履く必要がなくなれば、それだけタイヤの製造本数と廃棄本数を減らせるからだ。国産メーカーにとってスタッドレスタイヤは大きな市場だが、ミシュランなどは「クロスクライメート2」を登場させたことで、既にこの考え方にシフトし始めている。そして非降雪地域の消費者にとっては、それがコストをはじめとしたさまざまな負担の低減にもつながる。
かくいう筆者も昨年から、わが家のクルマ(2011年式「シトロエンDS3スポーツシック」)でオールシーズンタイヤをテストしている。まだ冬タイヤもストックしているからコスト的に見れば割高の極みだが、昨シーズンはまったくスタッドレスタイヤに履き替えることなく冬を越すことができた。そして、このままスタッドレスタイヤの消費期限(消耗度合いにもよるが、コンパウンド性能だけで考えても4年といわれている)が過ぎれば、そこからはオールシーズンタイヤのみの態勢にシフトする気がしている。
そんな風にオールシーズンタイヤの便利さを強く実感している筆者だったから、ネクセンのエヌブルー4シーズンの試乗は、とても楽しみだった。彼らの製品はプレミアムサマータイヤ「エヌフィラSU1」も確認済みで、その実力はある程度わかっているつもりだったからだ。
ネクセンは1942年にフンアゴム工業として創立したタイヤメーカーであり、1987年にはミシュランタイヤと技術提携を開始し、同社のタイヤを生産していた歴史を持っている。また1991年には、オーツタイヤ(現住友ゴム工業)とも技術提携。2000年にNEXEN TIRE(ネクセンタイヤ)に社名を変更し、今から7年前の2016年に、ネクセンタイヤジャパンとして日本法人がつくられた。
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第一印象はとにかく快適
さてプロダクトに話を戻そう。エヌブルー4シーズンはオールシーズンタイヤだから、皆さんが一番気になるのは当然冬場の性能だろう。しかし、残念ながら今回の試乗路に雪はない。あいにくなことに全行程ドライ路面での試乗だった。ちなみに雪上路面での性能は、ネクセンのホームページで島下泰久さんと飯田裕子さんがインプレッションしてくれているから、そちらを参考にしてほしい。
今回の試乗車は現行「フォルクスワーゲン・ゴルフ」の「eTSIアクティブ」。タイヤサイズは純正と同等の205/55R16だ。走り始めた瞬間に感じたのは、乗り心地のよさだった。昨今では転がり抵抗が小さい反面、硬い(タイヤが変形しにくい)低燃費タイヤが普及しており、それもエヌブルー4シーズンの快適な印象を強めているのかもしれない。
逆に言えば、このエヌブルー4シーズンを常用すれば、低燃費タイヤが純正装着となるeTSIの19.1km/リッター(WLTCモード)という燃費性能も、多少は落ちるかもしれない。ただ乗った印象としては、エヌブルー4シーズンの転がり感も決して悪くなかった。そして燃費で比べるなら、スタッドレスタイヤに履き替える冬季も含めてトータルで比べない限りは、どちらが本当に“低燃費”かは結論づけられないだろう。
とにもかくにも、エヌブルー4シーズンを履いた現行ゴルフの乗り心地は、快適さが際立っていた。その理由は、作動温度領域が広いタイヤが持つゴムと構造のしなやかさが理由だが、上級グレードのようなマルチリンクを持たないゴルフeTSIアクティブのリアサスペンションでも、車体のピッチングが大幅に低減されたことは事実として記しておきたい。
ワインディングロードも存外に楽しめる
この乗り心地のよさに対して、走行安定性に関しては、当初は高速巡航にステアリングセンターの据わりが曖昧だと感じた。オールシーズンタイヤが、トレッドパターンの一部(特に中央部)をスタッドレスタイヤと同じデザインとするのは常とう手段で、このエヌブルー4シーズンにも、雪上路面の凹凸を捉えるための「マルチシーズンサイプ」が採用されている。だから筆者は、最初はこの細かな3Dサイプがムービングして、直進時にゆらいでいるのだろうと感じたのだ。
しかし、どうやらこれに関しては、タイヤの“なじみ”のほうが影響が大きかったようだ。というのも、試乗も半ばに差しかかり、ワインディングロードを往復するようになるころには、ステアリングレスポンスがきちんと定まってきたからである。ちなみに、新装着のタイヤがホイールになじむまでに要する走行距離は、おおよそ300kmくらいが目安といわれており、編集部が前日に都内でタイヤを交換してからこの試乗を終えるまでが、大体その距離に当てはまった。
とはいえオールシーズンタイヤのコンパウンドが“しなやか系”であるのは事実であり、高速巡航路では教科書どおりに、基準値よりもコンマ10~20kPa程度、内圧を高めたほうが安定感は増す。
また乗り心地はかなりコンフォートだが、ロードノイズは標準的。細かいパターンを持つわりには高周波がカットされており、そのしなやかさからロードノイズも割と上手に抑え込んでいたが、溝の中を空気が通るパターンノイズは聞こえてきた。
ワインディングロードでは、実に穏やかで懐の深いタイヤだという印象を持った。もちろんスポーツタイヤではないから、踏ん張り感はあまりない。操舵の初期に、タイヤの倒れ込みによって旋回が始まってしまうときもある。またグリップの立ち上がり方も穏やかだ。しかし、荷重がかかったあとのコーナリングフォースは、かなりきっちり出ている。だからタイヤのたわみを感じ取ってステアリングを切っていけるドライバーであれば、ワインディングでもかなり楽しい走りができるはずである。
……あれっ。これって昔のミシュランに似ていない? と思ったが、つまりはそういうことなのだろう。オールシーズンタイヤ特有のしなやかさもあるけれど、タイヤを路面に接地させるセオリー、そのルーツが一緒なのだと思う。
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ドライもしっかり走れてこその“オールシーズン”
ちなみに、操舵した瞬間から踏ん張り感を出したいなら、左右非対称のパターンでアウト側ブロックの面積を増やし、剛性を高めるのが手っ取り早い。しかしエヌブルー4シーズンのトレッドパターンは左右対称で、なおかつ冬系タイヤでは定番の“Vシェイプ”を採用している。エヌブルー4シーズンがこの「V-Type グルーブ」を採用する理由は、ずばり排水性の向上だ。Vシェイプの切っ先が水膜をかき分ける性能は、ストレートグルーブよりもずっと高いのだという。今回は、その性能を確かめることはできなかったけれど、その接地性のよさから考えても、ウエットグリップ性能はよさそうだ。そう思って資料を見たところ、ドライ性能と同等レベル(社内基準で「Excellent」レベル)と評価されていた。
走り終えてエヌブルー4シーズンのトレッドを見てみたが、エッジ部分にはささくれもなく、中央のブロックも面構えがきれいだった。作動温度領域が広いオールシーズンタイヤは、確かにそのコンパウンドをソフトにせざるを得ないが、それでもこのタイヤが偏摩耗しないのは、ゴムの混練にインターメッシュ方式を採用することで、シリカが均等に攪拌(かくはん)されているからだという。
総じて、ネクセン・エヌブルー4シーズンのドライ性能は、かなり高いレベルにまとめられていた。国産メーカーはオールシーズンタイヤにあまり積極的ではないが、その間隙(かんげき)を縫って、新参のネクセンが高いコストパフォーマンスをもって小回りを利かせてきたと感じた。
今のところ、スノーフレークマークが付いたオールシーズンタイヤが販売されるのは、ほぼ欧州のみ。アジアでは日本だけで売られていて、その日本でのマーケットもまだ小さい。しかし、こうしたタイヤが知られるようになれば、これから伸びていく気がする。
(文=山田弘樹/写真=荒川正幸)
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GOODYEAR VECTOR 4SEASONS GEN-3
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車両データ
フォルクスワーゲン・ゴルフeTSIアクティブ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4295×1790×1475mm
ホイールベース:2620mm
車重:1310kg
駆動方式:FF
エンジン:1リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:110PS(81kW)/5500rpm
最大トルク:200N・m(20.4kgf・m)/2000-3000rpm
タイヤ:(前)205/55R16 91H M+S/(後)205/55R16 91H M+S(ネクセン・エヌブルー4シーズン)
燃費:19.1km/リッター(WLTCモード)
価格:358万5000円