「ルノー・カングー ヴァリエテ」に宿る“プロギア”の気風
カングーの本領 ここにあり 2023.11.24 旅して体験! RENAULT KANGOO Varieteの魅力と真価<AD> 新型「ルノー・カングー」に設定された200台限定の特別仕様車「ヴァリエテ」で、秋の房総半島をドライブ。その旅で感じた“プロギア風”カングーならではの魅力とは? 走り、機能、スタイルと、多角的な視点からその真価に迫る。プロ仕様こそカングーの本流
新しいルノー・カングーの特別仕様車ヴァリエテを見ていると、ヨーロッパでのカングーの在り方を思い出す。
日本でカングーというと、生活を彩り、趣味を後押しする「ルドスパス(遊びの空間)」として親しまれているが、生まれ故郷のフランスをはじめとするヨーロッパでは、プロフェッショナルの道具として頼れる存在でもあり続けている。過酷な使用に耐える堅牢(けんろう)なつくり、ユーザーからの声を反映した使い勝手、ヨーロッパ大陸の長距離移動を快適にこなす走りなど、ワークツールとしての優れた素性が、遊びのパートナーとしても多くの人に認められているのだろう。
1997年にデビューしたカングーは、今年(2023年)9月時点で440万台以上という累計販売台数をマークしている。たしかにヨーロッパに行くと、インフラと呼んでもいいのでは? と思ってしまうほど、さまざまな場面で社会を支えるカングーを見かける。
そこに目をつけたのが日本のユーザーだった。日本で販売されるカングーは乗用車仕様だが、仕事で使いこなす人だけでなく、趣味に役立てている人からも「働くクルマっぽい仕様が欲しい」という声が出てくるようになったのだ。なにしろ日本は、「カングージャンボリー」というカングーファンが2000台近くのクルマでつめかける世界的にも珍しい巨大ミーティングが開催され、今やフランスのメディアなどから“逆取材”を受けるという、世界的にもカングー感度の高い国なのだから。
インポーターであるルノー・ジャポンの対応も早かった。現地の商用車仕様ではおなじみの、使い倒しても傷が目立たないブラックバンパーを備えた仕様を、初代の頃から「オーセンティック」などのグレードで用意するようにしたのだ。
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ワークブーツをレジャーで履きこなすように
こうした仕様が用意できる大きな理由としては、もちろん日本におけるカングー人気の高さもあるのだが、生産を担当するモブージュ工場の体制が挙げられる。フランス北東部、ベルギー国境に近いモブージュという、人口3万人ほどの小さな町にあるこの工場は、現在はカングーとその姉妹車だけをつくっている。内部には「Qストマイズ」という特装車両部門もあり、郵便局向けなどの車両を製作するほか、日本仕様の仕上げもここで行われる。
観音開きのバックドアやブラックバンパーは、現行カングーでは本来商用車仕様にしか用意されない。それが乗用の日本仕様に備わっているのは、本国のルノーが日本のカングー人気を認め、モブージュ工場が特別に仕立ててくれるおかげなのである。
今年上陸した3代目もその伝統は受け継いでいて、フルカラードの「インテンス」とともにブラックバンパーの「クレアティフ」が用意されているが、10月15日に開催されたカングージャンボリーでは、さらにプロギア風に仕立てたヴァリエテがお披露目された。
この200台限定の特別仕様車、ベースは1.3リッター直列4気筒ガソリンターボエンジンに7段の「EDC(エフィシェントデュアルクラッチ)」トランスミッションを組み合わせたクレアティフで、ボディーはスモーキーカラーの「グリ アーバン」をまとい、ホイールはブラック。ルーフにはクロスバーを内蔵したマルチルーフバー、キャビンにはスマートフォンのワイヤレスチャージャーを装備している。
こういうキャラクターのクルマなので、本来は仕事で使いこなしてみたいところだが、残念ながら僕は、モノを運んだり売ったりする職業には就いていない。さあどうしよう……と考え始めたところで、ヴァリエテ(Variété)という車名の由来に思い至った。日本語に訳せば最近よく目にする「多様性」であり、なにも仕事に使わなければいけないというわけではない。ちょうどワークブーツをアウトドアシーンで履きこなすように、プロユース仕立てのクルマを趣味などいろいろなシチュエーションで活用してほしいというメッセージが伝わってきた。
ということで、5人乗車時でも775リッターの容量をマークするラゲッジスペースに、デイキャンプのためのギアを詰め込んで、東京湾アクアラインを渡り、房総半島を目指すことにした。
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見た目的にも機能的にもお薦めしたい一品
現行カングーにはすでに何度か試乗しているので、特別な期待は抱かずに東京都内で取材車と対面したのだが、グリ アーバンのボディーにブラックのバンパーやホイールの組み合わせを目の当たりにして、自分にとっての理想のコーディネートはこれかもしれないと思ってしまった。
モダンでクールな現行カングーのスタイリングには、ダークなトーンが似合っているというのが持論だった。実際、ボディーカラーのグリ アーバンはしっくりきていると感じたし、ブラックのバンパーやボディーが必要以上に自己主張せず、さりげなく働くクルマらしさをアピールしているのも好ましい。これこそベストコーディネートという感想を抱く人は、多いのではないだろうか。
インテリアは、スマートフォンのワイヤレスチャージャー以外はクレアティフと同じだが、試乗車はヴァリエテの発売を記念して、1932年からワークブーツをつくり続けている老舗ブランド、DANNER(ダナー)とのコラボレーションによるCABANA製専用シートカバーを装着していた。ダナーのコーポレートカラーであるグリーンが、モノトーンのコーディネートに彩りをプラスしているし、ビニールレザーなのでぬれたままでも気兼ねなく乗り込める。
ちなみに、カングー ヴァリエテとダナーのコラボレーションはこのシートカバーだけでなく、グリ アーバンのボディーカラーをモチーフにしたワークブーツもあるそうで、それぞれ期間限定の受注生産で販売するという。プロフェッショナルのギアという点で、カングーとダナーには共通項がある。だからしっくりくるのだろう。願わくは、ワークブーツのほうも試してみたかった。
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あらためて感じるカングーのすばらしさ
現行カングーではガソリンエンジンとディーゼルエンジンのいずれかが選べるけれど、ヴァリエテが搭載するのは前者の1.3リッターガソリンターボエンジンのほうで、小排気量ながらも十分な力が得られる。最高出力は131PS、最大トルクは240N・mと、特にトルクは1.5~1.6リッターターボ級のアウトプットを実現しているうえ、7段EDCが機を見るに敏な変速をしてくれるのだ。
このあたりはすでに体験済みではあったが、今回の取材では新たな発見もあった。東京都心を出発して、首都高速道路から東京湾アクアラインに入る。トンネルを抜けて橋を渡り始めたときのこと。横風が強かったことは吹き流しで確認できたのに、進路を乱されることがなかったのだ。背が高くてサイドの面が広く、見た目は横風に弱そうなのに、なにごともないように真っすぐ進み続ける。ルノーならではの優秀な直進安定性もさることながら、悪天候にあっても安全・快適な移動を提供できるよう、空力対策をしてあることに感心した。
さらに現行型は、アダプティブクルーズコントロールが装備されたおかげで、持ち前の安楽なクルージング能力にさらに磨きがかかっている。それもただ付いているというだけではない。発売前に日本で5000kmほどの実走行テストをしたそうで、たしかに日本の道路状況に合ったセッティングだった。
現行カングーの乗り心地は、先代に比べて引き締まった感じがする。でもそれは街なかを流すようなシーンで、速度を上げて60km/hぐらいになると、しっとりした上下動を織り交ぜながら基本はフラットという、ルノーらしい乗り味になっていく。
そして房総半島のカントリーロードでは、この足まわりが確実かつ安定したハンドリングを生み出すためであることを知る。背の高さからは想像できないほどの身のこなしを披露するのは、初代からの良き伝統だったけれど、新型はプラットフォーム刷新のおかげもあって、数段のレベルアップを果たしていた。
ラゲッジスペースにキャンプギアを積んでいることもあって、ハードな走りはしなかったけれど、妥協知らずのパフォーマンスは日常的なシーンでもしっかり伝わってくる。なのに見た目は働くクルマ。カングー ヴァリエテでは、このギャップに引き込まれてしまうのである。
(文=森口将之/写真=荒川正幸/撮影協力=Hangar eight)
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車両データ
ルノー・カングー ヴァリエテ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4490×1860×1860mm
ホイールベース:2715mm
車重:1570kg
駆動方式:FF
エンジン:1.3リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:131PS(96kW)/5000rpm
最大トルク:240N・m(24.5kgf・m)/1600rpm
タイヤ:(前)205/60R16 96H XL/(後)205/60R16 96H XL(コンチネンタル・エココンタクト6)
燃費:15.3km/リッター(WLTCモード)
価格:419万円