雪道で本領発揮! 三菱デリカミニ 冬の箱根をゆく
道を選ばぬオールラウンダー 2024.02.28 雪で輝け! デリカdeウインタードライブ<AD> “カッコかわいい”デザインでもって人気を博す「三菱デリカミニ」だが、“デリカ”の名を名乗る以上は、走りだってナマクラではないはず。目指すは冬の箱根山! 4WDの大家、三菱が鍛えた軽スーパーハイトワゴンは、雪上でどんな走りを見せるのだろうか?ターゲットユーザーじゃなくても気になる存在
もしいま自分で軽自動車を買うなら? 筆者は断然、時代遅れのセダンを選ぶ。ハイトワゴンまでは許しても、スーパーハイトは選ばない。なぜなら、規定される軽自動車枠、それに準じた足まわりの構造に対して、その重心が高すぎると常々感じているからだ。そもそも筆者には、小さな子供はいない。後部座席で着替えをさせたり、塾帰りの自転車を後ろに積んだりする必要もない。そしていまや両親を後ろに乗せることもなくなったから、スライドドアと天井の高さは必要ない。
かように軽自動車のメインストリームに背を向け、理屈ばかりを並べる筆者でも、ちょっと気になる存在がある。それが今回試乗する三菱デリカミニだ。それもFWDではなく、4WDがいいと思っている。
というわけで目の前にいるのが、「デリカミニ Tプレミアム」の4WDである。快適装備を満載した223万8500円の車体に、アダプティブLEDヘッドライト(7万7000円)と専用色「サンシャインオレンジメタリック×ブラックマイカ」(8万2500円)を組み合わせた仕様だ。目指すは雪の箱根山。東名高速道路の海老名サービスエリアで落ち合ったそのデリカミニは、足元にブリヂストンの最新世代のスタッドレスタイヤ「ブリザックVRX3」を装着していた。
ドアを開け、ひょいと乗り込む。最低地上高160mmの車体は確かにちょっと高床で、見た目も含めて“乗り込む感”が楽しい。よっこらしょ! と飛び込めば、肉厚なシートがふわっと心地よい。座面はベンチタイプだが左右は独立しており、中央の表皮が滑り止めタイプのモケットでタフな印象。張り出したサイドサポートを合皮で包んだ、掃除しやすそうなシートである。
高めのアイポイントは、確かに快適。大きすぎるヘッドクリアランスがやっぱりちょっと気になるけど(笑)、室内に対して車幅はタイトで見切りもよく、楽しい旅が始まる予感がする。
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自然な加速感が心地いい
サービスエリアの合流レーンから、速度を乗せて本線へ。パワーユニットは最高出力64PS、最大トルク100N・mの0.66リッター直列3気筒インタークーラー付きターボに、2.7PS、4.1N・mの交流モーターを組み合わせたマイルドハイブリッド。トランスミッションはパドルシフト付きのCVTだ。フル加速に際してアクセルをいっぱいに踏めば、エンジンはバーン! とうなる。だがTプレミアムの4WD車は車重が1060kgとシリーズで一番重たいから、加速に目を見張るものなど、なにもない。ほんと「なにもない」のだが、嫌じゃない。
なぜならその加速に、必死さがないのだ。ターボゆえにサウンドそのものが低めであることに加え、インパネまわりの防音・防振性も高いのだろう。いわゆる“乾いた3気筒サウンド”を車内にまき散らすことはなく、着実にトルクを乗せて加速する。
CVTの制御も自然で、気になるようなところはない。クルーズさせればエンジン回転を低く抑えるし、今回はスタッドレスタイヤだけれど、アクセルオフ時のコースティング走行も良好。そこから再び加速しても、加速力は軽自動車なので相応だが、応答遅れは感じない。
もちろん、スピードを求めればエンジンはうなる。それに乗じてエンジン回転が高まれば、CVTのラバーバンドフィールもチョイチョイ顔を出す。しかし、こうした運転のほとんどはドライバーの加速が無計画なせいだ。いま走っているのが登り坂の少ない東名高速道路ということもあるが、平均速度が低い日本の道路環境なら、まわりを先読みしていればかなり静かに走れるはず。そもそもデリカミニのソフトな乗り味には、せかせかした運転は似合わない。
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快適な乗り心地、おだやかなハンドリング
また高速巡航では、4WDのメリットがじわりと体感できる。フルタイム4WDゆえ常時後輪にトルクがかかるから、その乗り味がかなり落ち着いている。大きなトラックがスピードを出して横を通り過ぎれば横風は食らうが、それでもFWDのハイトワゴンより断然安定感が高い。
加えて、後部座席の乗り心地が、軽自動車のスーパーハイトワゴンとしてはかなりいい。4WD車はリアのドライブトレインの重みが後輪の突き上げを抑えてくれるし、専用開発のショックアブソーバーもしなやか。かつリアサスペンションの形式がトルクアーム式3リンクになっているからか、つなぎ目にも強い。
スーパーハイトワゴンはリアの居住性の高さを売りにしているが、その実、簡素なリアサス構造となるFWDでは、乗り心地がよいと思えるものは数少ない。多少燃費が悪くても4WDを選べば雪道以外でも走安性が高まるし、ファミリーカーとしてもより快適だという知識は持っていてもいいと思う。
いっぽうで、気がついた点をひとつ挙げるとしたら、ハンドリングレスポンスがややおだやかであることだろうか。ダンパーがそのスピードを適切にコントロールしてくれるから、ロールの大きさは気にならない。しかし切り始めのレスポンスがスローなぶんだけ、姿勢づくりがワンテンポ遅れがちになる。もちろん、このクルマがスタッドレスタイヤを履いているのも理由のひとつに挙げられるが、基本的にはリフトアップしたスーパーハイトワゴンで安全性を確保するため、操舵レスポンスを攻めすぎず、重心の移動速度をバランスさせている面があるのだろう。そして「デリカ」の血を引くオフローダーとしては、この“緩さ”がキャラに合っている。
もしデリカミニの電動パワーステアリングがさらにアップデートされ、「アウトランダー」のごとくリニアな操縦性としなやかな乗り心地を両立させたとしたら最高だ。ただ、現状でも高速道路では直進性も高いし、手前、手前からハンドルを切り始めれば車線変更も問題なく、カーブも素直に曲がれる。またブレーキングでフロント荷重を高めながら、カーブをきれいに曲がるひと手間も悪くない。全体的にうまくまとまっているクルマだといえるだろう。
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雪道での心強さに目を見張る
ハイライトは、なんといっても雪上路だ。ブリザックVRX3とフルタイム4WDのカップリングは強力で、新雪が数cm積もった程度の路面では、頼もしさばかりが目についった。
折しも試乗コースには小高い丘があり、ならばと斜面を登ってみたが、これもなかなかの走破力だ。クロカン4WDのようにゴリゴリと路面を掘るようなトラクションではないが、小さなヨンクは誠実に4輪で雪上路面を捉えて、登坂路面をスイスイ登っていく。うねりに対しては4つのサスがよく伸びて、そのロール具合からプロペラシャフト軸を中心に4つのタイヤが、なるべく地面と平行になろうとしているのがわかる。
左右の路面μ(ミュー)が大きく異なる場面でも、グリップコントロールが駆動輪を果敢にブレーキ制御して“グッグッ”と空転を防ぐ。横滑りしても舵を切り、多少無理やりにでもアクセルを開けていくと、斜めに進みながらもデリカミニは力強く頂上を目指す。そんなちょっとアグレッシブな走りが、この小さなボディーでできてしまうことにうれしくなる。
気をよくしてより厳しい登坂路にチャレンジしたら、途中からロールが深くなって、ちょっと怖くなった。ハタと思いついてヒルディセントコントロールボタンを押してみたら、ブレーキを利かせながらゆっくりとバックできた。面白くなって今度は前から降りてみたが、最初スーッとタイヤが転がり出したあと、ギューッと減速してゆっくり下まで降りてくれた。
生活に密着したスーパーハイトワゴンで、これだけ雪上性能が頼もしいのは、かなりの好印象。小さなボディーにわんぱく顔のデリカミニ、見た目に恥じないタフさである。
総じて4WDのデリカミニは、軽自動車のスーパーハイトワゴンのなかでもベストな選択のひとつだと思う。オフロード性能の高さがオンロードでの快適性にリンクしており、制約の多い軽自動車枠のなかでも、クルマとしてのトータルバランスを保っている。
本当は軽自動車枠も、そろそろ変わってほしいと思う。エンジンはこのままでもいいとして、リッターカー程度にまでサイズを広げてくれたら、市場の4割近いユーザーたちにもっと安全と快適を提供できる。それができない現状にあって、デリカミニの4WDは乗り味がとても“まとも”だ。加えて、これで車幅を広げたリッターカー仕様をつくったら、もっとのびのびと三菱の実力が発揮できてステキだろうとも思った。
(文=山田弘樹/写真=荒川正幸)
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車両データ
三菱デリカミニ Tプレミアム(4WD)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1830mm
ホイールベース:2495mm
車重:1060kg
駆動方式:4WD
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:64PS(47kW)/5600rpm
エンジン最大トルク:100N・m(10.2kgf・m)/2400-4000rpm
モーター最高出力:2.7PS(2.0kW)/1200rpm
モーター最大トルク:40N・m(4.1kgf・m)/100rpm
タイヤ:(前)165/60R15 77Q/(後)165/60R15 77Q(ブリヂストン・ブリザックVRX3)
燃費:17.5km/リッター(WLTCモード)
価格:223万8500円