スポーツセダンで味わう「KUMHO ECSTA PS71」の神髄
パフォーマンス第一主義 2024.06.21 世界が認めたKUMHOのパフォーマンス<PR> クムホの「ECSTA(エクスタ)PS71」はスポーツタイヤとして第一級のグリップ力を持ちながら、それとは相反するはずの高い快適性も備わっている。この優れた二面性が武器だ。「スバルWRX S4」でドライブした印象をリポートする。本気で攻められるクムホのスポーツタイヤ
ポルシェのスポーツモデルのオーナーにはサーキットに赴いて積極的にスポーツ走行を楽しむ向きも多い。なぜポルシェかといえば、車両のパフォーマンスを出し切るにはクローズドしかあり得ないことを筆頭に、さまざまな理由がある。でも皆々が共通して挙げるのは、持ち前のタフさだ。
他銘柄では走り込むほどに冷却系やブレーキ等が音を上げるところを、ポルシェは日常的なメンテナンスで相当なところまでツルシのまま走り込むことができる。結果的に速さの割にコスパが高い。そういうことを身をもって実感しているだろう本気組は、僕の周りにも幾人かいる。
そういう方々が好んで履き始めたことでスポーツタイヤのメジャー銘柄へと成長したのがクムホの「V700」だ。Sタイヤと遜色ないとも評されるグリップ力や熱ダレの強さ、ブロック倒れの小ささなどが評判となり、実質後継の「V730」が登場した今も一部車種向けに一定の人気を得ている。
すべてはタイヤで決まる
クローズドでの走行も想定したこのV700やV730は、クムホのスポーツ系タイヤ全般を指すエクスタシリーズに属している。そのエクスタシリーズにおいて、販売面でのコア的な存在となるのがPS71だ。分類的にはヨーロピアンスポーツタイヤと位置づけられ、車種的にはスポーティーなセダンやステーションワゴンが推奨される。一方で、サイズや特性をミニバンやSUV向けに最適化した「PS71 SUV」という派生シリーズもあり、サイズ的には16~22インチと車種的なカバレッジもエクスタシリーズのなかでは最も広い。
クムホは2000年代以降、海外OEMとの関係を深めている。フランスはプジョー・シトロエンやルノー、ドイツではBMW、メルセデス・ベンツ、アウディやフォルクスワーゲン、アメリカではゼネラルモーターズやフォード、日本では日産など、今やタイヤを供給するのは過半のメーカーと言っても過言ではない。シビアな性能追求という点では、2代目「MINI」の最もスポーティーなグレード「ジョンクーパーワークスGP」が前述のV700を全量採用。当時のニュルブルクリンクではBセグメントFFクラスで最速となるだろう8分23秒台をマークした。
クルマの性能的雌雄を決する最後のポイントはタイヤだからして、OEMはさまざまな無理難題をタイヤメーカーに投げつける。グリップだけならまだしも、乗り心地、燃費、騒音、重量……と、なんなら完成車の調整弁的な役割を担わせたうえで、しまいには思いっきり仕切り値を絞られるのが定めだ。が、その折衝を通じてタイヤメーカーが鍛えまくられるのもまた確かで、日本のメーカーも1990年代にはこぞって欧州ブランドとのタッグの道を選んできた。
深溝でもノイズは最小限
クムホの看板商品たるPS71には、彼らのそういう経験のあらかたが詰め込まれている。そう評しても大げさではないだろう。では果たして、その乗り味はいかなるものか。用意された試乗車はスバルWRX S4のトップグレード「STI Sport R EX」。ZF製の可変ダンピングシステムも備えるアシ自慢のグレードでもあるから、タイヤの癖もより明瞭に映し出すだろう。
乗り始めてまず気づくのは音の面での健闘ぶりだ。トレッドパターンを見るに質実剛健な深溝は、いかにもパターンノイズを引き立ててしまいそうだが、中高速域でもシャーやヒィーンといった中高音系のノイズはきれいに封じ込められていた。それでいて低音系のロードノイズもレベルは小さく、舗装サーフェスの変化に対しても柔軟性が高い。ノイズや乗り心地にバチバチにフォーカスを絞って高級感をうたうタイヤのような質感ではないが、総じてノイズレベルは丸く上質にまとめられているといえるだろう。
こうなると気になってくるのは日常域での乗り心地だ。舗装の継ぎ目やマンホールのフタといった、主に低速域で出くわすささいな凹凸の乗り越えは穏やかだが、中高速域になってくると舗装面のひび割れやへこみ、橋脚のジョイントなどの段差でカツッとやや強いリアクションが見て取れる。スポーツタイヤとして見れば目くじらを立てる話ではないが、もうひと声、タイヤの縦バネでまろやかにいなせればさらによくなりそうだ。
路面にかみつくグリップ力
そんなことを考えながら高速移動からワインディングロードへと場面が変わると、PS71のもうひとつのキャラクターがぐっと浮き立ってきた。まず試乗車が四駆のWRX S4ということを差し引いても、イニシャルのグリップレベルが相当高い。右へ左へと向きを激しく変えるつづら折れで追い込んでみても、操舵応答のズレもなければきしみも泣きもうかがえない。ピタッとつかんでいるというよりも、ガチッとかんでいる、そんな類いの感触が路面から舵に伝わってくる。
その印象をさらに強めているのがトレッド面やケースの剛性感の高さだ。特にトレッドは、今どきでは珍しいほどの幅広+深溝だが、ブロック倒れの気配も見せずに横力をしっかりと受け止めて踏ん張っていく。ノイズや転がり抵抗へのオーダーが厳しい昨今にあって、ここまでの深溝パターンを採用する理由はもちろん排水性能を重視しているがゆえで、耐候性が抜群に高いWRX S4との組み合わせなら、豪雨の多くなる梅雨から夏の時期でも相当頼りがいがありそうだ。しかし皮肉にも試乗の間、お山の天気は終始上々でウエット環境を試すことはできなかった。
PS71はキャラクター的にはけっこうバンカラというか、八方美人ではないけれど走るという仕事はきっちり果たす、そういう類いのタイヤではないかと思う。でも実直なだけではなく、総合的なバランス感覚も持ち合わせている点からいえば、確かに現代の欧州や日本のスポーツセダン系、それも走りをきっちり押し出したモデルとの相性がよさそうだ。とかくコスパにフォーカスされがちな銘柄だが、この性能本位の正直さを、一度試してみるのも悪くないと個人的には思う。
(文=渡辺敏史/写真=郡大二郎)
車両データ
スバルWRX S4 STI Sport R EX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4670×1825×1465mm
ホイールベース:2675mm
車重:1610kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.4リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:275PS(202kW)/5600rpm
最大トルク:375N・m(38.2kgf・m)/2000-4800rpm
タイヤ:(前)245/40R18 97Y/(後)245/40R18 97Y(クムホ・エクスタPS71)
燃費:10.8km/リッター(WLTCモード)