第172回:いよいよ反撃ののろしが上がる
ホンダの次世代ハイブリッド「i-MMD」を大解剖
2013.03.25
エディターから一言
第172回:いよいよ反撃の狼煙が上がる ホンダの次世代ハイブリッド「i-MMD」を大解剖
各メーカーがしのぎを削るハイブリッドカーの開発競争。ライバルと伍(ご)して戦うために、ホンダからついに「IMA」の後継を担う次世代ハイブリッドが登場した。この夏にも市販化されるという、そのシステムの詳細をリポートしよう。
車格に応じた「松」「竹」「梅」
トヨタの「THS」を筆頭に、ホンダの「IMA」、日産の1モーター2クラッチ式ハイブリッド、「三菱アウトランダーPHEV」のプラグインハイブリッド……。思い起こしてみると、日本車には本当に多くのハイブリッドシステムが存在している。そういえば日産には「Sハイブリッド」なんて変わり種もあったっけ。
突き詰めると、みんながみんな「トランスミッションとモーターを一体化したシングルモーター式」に行きつく欧州勢とはえらい違いだ。どちらが良いか、悪いかは別にして。
普段からメーカーのニュースやカタログに接する機会の多い私だが、これらすべてのシステムを完璧に説明できるかというと、もうお手上げ。戦う前から白旗である。しかし、こちらが白旗を揚げているというのに、さらに3つも新しいハイブリッドシステムが登場しようとしている。ホンダが「SPORTS HYBRID(スポーツハイブリッド)」の総称のもとに開発を進めている「i-DCD」と「i-MMD」「SH-AWD」だ。
おおざっぱに説明すると、i-DCD(Intelligent Dual Clutch Drive)はデュアルクラッチ式7段セミATにモーターを1つ組み込んだもので、主にコンパクトカー向けのシステムだ。一方、i-MMD(Intelligent Multi Mode Drive)は、モーターとは別に発電専用のジェネレーターを搭載した中型車向け。大型車、および高性能車向けのSH-AWD(Super Handling All-Wheel-Drive)は、i-DCDと同じくモーターを組み込んだトランスミッションに加え、リア(ミドシップの「NSXコンセプト」ではフロントだったが)に2基のモーターを搭載。左右輪のトルクを制御し、低燃費とともに優れたハンドリング性能を追求したものとなっている。
これらのうち、ミドルクラス向けのi-MMDは2013年初夏に発売される新型「アコード」に搭載され、いよいよ日本にも登場するとのこと。日本に「も」と表現したのは、北米ではすでにこのシステムを搭載したアコードがデビューしているからだ。海外で先に導入されたことには、複雑な気持ちを抱かないでもないが、低燃費に資する新しい技術が登場するのはもちろんウエルカム。今回そのシステムについて詳細な説明を聞く機会を得たので、早速リポートしよう。
拡大
|
|
拡大
|
拡大
|
状況に応じて走行モードを使い分け
先述の通り、このi-MMDは今年の夏に発売予定の新型アコードに搭載されるもの。ボンネットの下にはアトキンソンサイクルを採用した2リッター直4DOHCエンジンとモーター、それにジェネレーターが収まっている。バッテリーは1.3kWhのリチウムイオン式で、DC-DCコンバーターとともに、キャビンの後方に搭載される。
トランスミッションはない。配布された資料には「トランスミッションは『電気CVT』」という記載があったが、CVTと聞いて想像するような「ベルト(もしくはチェーン)を2枚のプーリーで挟んだ変速機構」が存在しているわけではなく、そこにあるのはモーターとジェネレーター、そして動力軸とエンジンをつないだり切ったりする湿式・多板式クラッチだけだ。
このシステムに備わる走行モードは「EV DRIVE」「HYBRID DRIVE」「ENGINE DRIVE」の3種類。
EV DRIVEは、読んで字のごとくバッテリーの電力のみで走るモード。HYBRID DRIVEも読んで字のごとしなのだが、重要なのは燃料を駆動力の発生に一切使わないこと。エンジンが発電に専念し、その電力で走行するという、いわゆる「シリーズ式ハイブリッド」なのだ。
この2つのモードに対して、いささかややこしいのがENGINE DRIVE。言葉だけを見ると「エンジンだけで走るモードか」と読み取れそうだが、実は違う。これ、よそで言うところの「パラレル式ハイブリッド」なのだ。
ENGINE DRIVEは高速巡航時に起動するモードで、確かに低負荷時にはエンジンの力のみで走行している。しかしドライバーがアクセルを踏み込むと、モーターが駆動してエンジンをアシストする。
ここでさらにアクセルが踏み込まれると、エンジンは動力軸から切り離され、発電に専念するHYBRID DRIVEとなる。
高負荷時にエンジンを走行に使わず、動力を一回電気に変換してからモーターに送り込むという作業は煩雑でロスが大きい気もするのだが、ホンダの技術者いわく、「そうした状況下では、エンジンが発電した電気はバッテリーを介さずに直接モーターに送り込むので、ロスは少ない」とのことだった。
拡大
|
拡大
|
拡大
|
ここからの追い上げに期待したい
このように、ホンダのi-MMDは既存のどんなハイブリットシステムともずいぶん違う。
強いて挙げるなら、「三菱アウトランダーPHEVから、リアモーターを抜いた感じ」と言えなくもない。両者はシステムの構成や動力と電力の伝達経路、走行モードの中身などが(他のシステムよりは)近いからだ。「動力源に使うのは高速巡航時だけ」というエンジンの使い方も似ている。
ここでくしくも比較対象として三菱アウトランダーPHEVを挙げたが、実はこのi-MMDにもプラグインハイブリッドが用意されている。ホンダが「i-MMDはプラグインに適したシステム」と言っている通り、通常のi-MMDとハイブリッド版である「i-MMD Plug-in」との差は少ない。システム上は、リチウムイオンバッテリーの容量が6.7kWhに拡大しているほか、充電リッド、オンボードチャージャーが追加されているだけだ。
このi-MMD Plug-inは、i-MMDとともに新型アコードに採用。まずは法人や官公庁向けにリース販売されるという。ちなみに、北米市場に先行導入されているアコードのハイブリッド版も、じつはi-MMD Plug-in採用のPHV。通常のHVについては、日本より一足遅れて、今年秋に発売の予定となっている。
「ようやくホンダからもPHVがデビューか」と拍手を送りたいところだが、私たちが購入できるのはまだまだ先。その一方で、すでにトヨタ、三菱、GM(ゼネラルモーターズ)などはPHVの一般販売を始めている。
ライバルに若干リードを許した感は否めないが、ここからの追い上げにぜひ期待したい。
今回取り上げたHVやPHVはもちろんだが、昨今は電気自動車や水素燃料電池車の開発競争も風雲急を告げている。
もし創業者の本田宗一郎さんがご存命だったら、「これからの時代は電気だ! ガソリンなんかやめて、電気にリソースを集中しろ!」と叫んでいたかもしれない。……というのは自動車評論家の熊倉重春さんの受け売りだが、とにかくホンダが、斬新なアイデアとここ一発の瞬発力で私たちを驚かせてきたこと、そして、最近ちょっとおとなしい気がすることは事実。
チラホラとうわさが流れているF1復帰も結構だが、そろそろこの分野でも、私たちをビックリさせてほしい。
(webCG 堀田)
拡大
|
拡大
|
拡大
|

堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
-
第866回:買った後にもクルマが進化! 「スバル・レヴォーグ」に用意された2つのアップグレードサービスを試す 2026.4.17 スバルのアップグレードサービスで「レヴォーグ」の走りが変わる? 足まわりを強化する「ダイナミックモーションパッケージ」と、静粛性を高める「コンフォートクワイエットパッケージ」の効能を、試乗を通して確かめた。
-
第865回:ブリヂストンが新タイヤブランド「フィネッサ」を発表 どんなクルマに最適なのか? 2026.3.13 ブリヂストンが2026年1月に発表した「FINESSA(フィネッサ)」は、同社最新の商品設計基盤技術「ENLITEN(エンライトン)」を搭載する乗用車用の新タイヤブランドである。高いウエットグリップ性能と快適な車内空間の実現がうたわれるフィネッサの特徴や走行時の印象を報告する。
-
第864回:冬の北海道で「CR-V/ZR-V/ヴェゼル」にイッキ乗り! ホンダ製4WDの実力に迫る 2026.3.9 氷雪に覆われた冬の北海道で、新型「CR-V」をはじめとするホンダのSUV 3兄弟に試乗。かつては実力を疑われたこともあるというホンダ製4WDだが、今日における仕上がりはどれほどのものか? 厳しい環境のもとで、そのコントロール性を確かめた。
-
第863回:3モーター式4WDの実力やいかに!? 「ランボルギーニ・テメラリオ」で雪道を目指す 2026.3.3 電動化に向けて大きく舵を切ったランボルギーニは、「ウラカン」の後継たる「テメラリオ」をプラグインハイブリッド車としてリリースした。前に2基、リアに1基のモーターを積む4WDシステムの実力を試すべく、北の大地へと向かったのだが……。
-
第862回:北極圏の氷上コースでマクラーレンの走りを堪能 「Pure McLaren Arctic Experience」に参加して 2026.2.25 マクラーレンがフィンランド北部で「Pure McLaren Arctic Experience」を開催。ほかでは得られない、北極圏のドライビングエクスペリエンスならではの特別な体験とは? 氷上の広大な特設コースで、スーパースポーツ「アルトゥーラ」の秘めた実力に触れた。
-
NEW
ディフェンダー110 X-DYNAMIC HSE P300e(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.20試乗記本格クロスカントリービークルの「ディフェンダー」にプラグインハイブリッド車の「P300e」が登場。電気の力を借りて2リッターターボとしては格段にパワフルになった一方で、カタログ燃費はなかなか悲観的な数値を示している。果たしてその仕上がりは? -
NEW
ポルシェジャパンのイモー・ブッシュマン社長に聞く 日本での展望とスポーツカーの未来
2026.4.20デイリーコラム2025年8月に着任した、ポルシェジャパンのイモー・ブッシュマン新社長。彼の目に日本はどう映り、またどのような戦略を考えているのか? 難しい局面にあるスポーツカーや電気自動車の在り方に対する考えを含め、日本における新しいリーダーに話を聞いた。 -
スバル・ソルテラET-HS(前編)
2026.4.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバル&STIでクルマを鍛えてきた辰己英治さんが、“古巣”スバルの手になる電気自動車「ソルテラ」に試乗。パワートレインの電動化以外にも、さまざまな試みが取り入れられた一台を、ミスター・スバルはどう評価するのか? -
第57回:スズキはなぜインドに賭ける? 変わらず牛が闊歩するインドの最新工場を小沢コージが直撃
2026.4.18小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ小沢コージがインドへ。日本の自動車ファンにとってインドといえばスズキのイメージだが、実はスズキは現在、インドへの大型投資の真っ最中だ。なぜスズキはインドでこれほどまでに愛されるのか。最新工場を見学して考えた。 -
ボルボXC90ウルトラT8 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.18試乗記2016年に上陸した2代目となるボルボのフラッグシップSUV「XC90」の最新アップデートモデルに試乗。パワフルなプラグインハイブリッドシステムを採用する3列シートSUVの走りを、先にステアリングを握った「V60」や「XC60」との比較を交えながら報告する。 -
谷口信輝の新車試乗――ディフェンダー・オクタ編
2026.4.17webCG Moviesブーム真っ盛りのSUVのなかで、頂点に位置するモデルのひとつであろう「ディフェンダー・オクタ」。そのステアリングを握ったレーシングドライバー谷口信輝の評価は……? 動画でリポートします。





























