第16戦インドGP「6連勝で4連覇」【F1 2013 続報】

2013.10.28 自動車ニュース
8月末のベルギーGPから6連勝、今季10勝目をあげ4年連続のワールドチャンピオンとなったレッドブルのセバスチャン・ベッテル(中央)。メルセデスのニコ・ロズベルグ(左)は2位、ロータスのロメ・グロジャン(右)は3位でインドGPを終えた。(Photo=Red Bull Racing)
8月末のベルギーGPから6連勝、今季10勝目をあげ4年連続のワールドチャンピオンとなったレッドブルのセバスチャン・ベッテル(中央)。メルセデスのニコ・ロズベルグ(左)は2位、ロータスのロメ・グロジャン(右)は3位でインドGPを終えた。(Photo=Red Bull Racing)

【F1 2013 続報】第16戦インドGP「6連勝で4連覇」

2013年10月27日、インドはニューデリー近郊のブッダ・インターナショナル・サーキットで行われたF1世界選手権第16戦インドGP。前戦日本GPから続くチャンピオン決定戦の「第2幕」でも、レッドブルのセバスチャン・ベッテルが他者を圧倒、6連勝で4連覇を達成した。

 

ポールポジションから完勝したベッテルは、ビクトリーラップを終えると、多くの観客の前でドーナツターンを披露し4連覇の喜びをあらわした(その後このイレギュラーな行為でスチュワードからおとがめを受けることになった)。ベッテルは残り3戦で勝利すると、アルベルト・アスカリが1952年から翌年にかけて記録した最多9連勝に肩を並べることに。さらにミハエル・シューマッハーが保持する最多年間勝利数「13」(2004年に記録)にも手が届く。(Photo=Red Bull Racing)
ポールポジションから完勝したベッテルは、ビクトリーラップを終えると、多くの観客の前でドーナツターンを披露し4連覇の喜びをあらわした(その後このイレギュラーな行為でスチュワードからおとがめを受けることになった)。ベッテルは残り3戦で勝利すると、アルベルト・アスカリが1952年から翌年にかけて記録した最多9連勝に肩を並べることに。さらにミハエル・シューマッハーが保持する最多年間勝利数「13」(2004年に記録)にも手が届く。(Photo=Red Bull Racing)

■条件は「5位以上」

前戦日本GPでは鮮やかな逆転劇で5連勝を飾るも、フェルナンド・アロンソが4位でゴールしたことでタイトルを決め切れなかったセバスチャン・ベッテル。しかしここインドでは、他人の順位を気にすることはない。残り4戦=100点満点で、アロンソに対しちょうど90点差をつけていたベッテルは、仮にフェラーリのエースが優勝したとしても、自身が5位以上でフィニッシュしさえすれば、4年連続でワールドチャンピオンになれる計算だった。

15戦して9勝、勝率6割を誇るベッテルは、リード中にメカニカルトラブルでリタイアした6月の第8戦イギリスGP以外すべてのレースで得点しているばかりか、今季これまでの最下位は4位。さらに、過去のインドGPでは無敵といっていい戦績を残している。2011年の初レース以来2戦2勝。2回ともポールポジションからスタートして、全周をトップで周回しており、ファステストラップも1回記録している。ブッダで5位以上という条件は、たやすいことといえた。

レッドブルにとっても、4年連続となるコンストラクターズチャンピオンの決定が目前。現行レギュレーション最後の年に、もっとも成功したドライバーとチームが、有終の美を飾ろうとしていた。

レッドブルは4年連続でコンストラクターズチャンピオンに。この活躍の立役者、チーフ・テクニカル・オフィサーのエイドリアン・ニューウェイが壇上に上がった。(Photo=Red Bull Racing)
レッドブルは4年連続でコンストラクターズチャンピオンに。この活躍の立役者、チーフ・テクニカル・オフィサーのエイドリアン・ニューウェイが壇上に上がった。(Photo=Red Bull Racing)

■ポールポジションはベッテル、レッドブル勢は作戦を分ける

実際、金曜日からレッドブルが各セッションを席巻した。金・土の3回のフリー走行すべてでレッドブルは1-2で、いずれもベッテルがトップ。そして予選に入るとベッテルは今季7回目のポールポジションを奪ってしまうのだが、ここでレッドブルは2台で別々の作戦を用意してきた。

Q3でベッテルは、速さに勝るがライフの短いソフトタイヤを履き、最初のアタックで1分24秒119という最速タイムをたたき出した。結局このタイムを破る者はあらわれず、0.752秒差でニコ・ロズベルグが2位、ルイス・ハミルトンが3番グリッドにつき、メルセデス勢が上位に食い込んだ。
レッドブルのウェバーはといえば、トップから0.928秒差の4位。だが彼は、より長寿命なミディアムタイヤでこのタイムを出していた。レースになれば、ソフトタイヤ勢は早々にピットへ飛び込むはず。ミディアムならより長い第1スティントを走ることができ、その間ソフト勢に対してリードを広げられるだろう。日本GPで今年初ポールから2位に終わったウェバーは、予選順位より作戦上のメリットを選んだのだ。

フェラーリのフェリッペ・マッサは5番グリッド、そして来季フェラーリをドライブするロータスのキミ・ライコネンが6番グリッドに並んだ。5戦連続でQ3進出を果たしたザウバーのニコ・ヒュルケンベルグが予選7位、そしてウェバー同様ミディアムスタートに賭けたフェラーリのアロンソ8位。トップ10の最後はマクラーレンが占め、セルジオ・ペレス9位、ジェンソン・バトンは10位からレースを組み立てることになった。

厄介者のソフトタイヤの扱いを巡り作戦が割れた今回、最初にソフトを履いてスタートしたベッテルらが結果的に上位でフィニッシュ。最初のスティントでミディアムを選んだマーク・ウェバーやフェルナンド・アロンソには不運も重なり、ウェバーはリタイア、アロンソは11位無得点に終わった。(Photo=Red Bull Racing)
厄介者のソフトタイヤの扱いを巡り作戦が割れた今回、最初にソフトを履いてスタートしたベッテルらが結果的に上位でフィニッシュ。最初のスティントでミディアムを選んだマーク・ウェバーやフェルナンド・アロンソには不運も重なり、ウェバーはリタイア、アロンソは11位無得点に終わった。(Photo=Red Bull Racing)

2番グリッドからスタートでフェリッペ・マッサに出し抜かれたメルセデスのロズベルグ。最初のピットストップでフェラーリを抜き返すことに成功したことが2位表彰台につながった。今季2勝しているロズベルグにとって、8戦ぶりの表彰台となった。(Photo=Mercedes)


    2番グリッドからスタートでフェリッペ・マッサに出し抜かれたメルセデスのロズベルグ。最初のピットストップでフェラーリを抜き返すことに成功したことが2位表彰台につながった。今季2勝しているロズベルグにとって、8戦ぶりの表彰台となった。(Photo=Mercedes)

■レース中盤にレッドブル1-2、しかし……

迎えた決勝日。スタートで出足やや鈍めのベッテルは、トップの座を守ったものの、60周レースの2周を終えるや早々に脆(もろ)いソフトタイヤを捨て、ミディアムに履き替えて16位から追撃をはじめた。

一方で作戦を異にするチームメイトのウェバーは、シグナルが変わりターン1を抜けると、ライコネンとやり合う間に後ろのアロンソと接触してしまう。幸い無傷だったものの、ウェバーは4位からオープニングラップで7位に。アロンソはノーズ交換を余儀なくされ一気に20位までダウン、手負いのマシンでポイント圏外をさまようこととなってしまった。アロンソはこの日11位でレースを終え、ベッテルのタイトル獲得に地味に貢献することとなった。

ソフトでスタートしたドライバーはほんの数周で最初のタイヤ交換に踏み切り、レース序盤はウェバーを先頭にして、タイヤ未交換のミディアム勢が上位を占めた。その間もベッテルは着実にポジションを上げ、21周目にはペレスを抜き2位に。その後もファステストラップを連発し、少しずつ、しかし確実に首位ウェバーとの差を縮めていった。

この時点でピットストップを考慮すると、2位走行中のベッテル(既に1ストップ)が実質1位となり、まだタイヤ交換をしていない1位ウェバーが2位。レッドブル1-2の後ろでは、6位マッサと彼を追うメルセデスの2台の間で表彰台の最後の一角が争われるという、見た目では分かりづらい展開となっていた。

レース半ばの29周目、1位ウェバーがようやく最初のピットストップでミディアムからソフトに交換。しかしわずか4周で再びミディアムに履き替えた。いかにソフトタイヤが厄介者だったかが分かる作戦だった。
ベッテルも32周目に新しいミディアムを装着し2ストップを完了。ベッテル1位、ウェバー2位という理想的なフォーメーションのまま、ダブルタイトル決定となるかと思われたが……。

アロンソは予選をミディアムで戦い8番グリッドからスタート。しかしウェバーと接触しフロントウイングにダメージを負ったことで歯車が狂い出し、手負いのマシンでポイント圏外をさまようことに。結果11位完走。ベッテルのタイトル獲得を地味に手助けしたかっこうとなった。(Photo=Ferrari)
アロンソは予選をミディアムで戦い8番グリッドからスタート。しかしウェバーと接触しフロントウイングにダメージを負ったことで歯車が狂い出し、手負いのマシンでポイント圏外をさまようことに。結果11位完走。ベッテルのタイトル獲得を地味に手助けしたかっこうとなった。(Photo=Ferrari)

■ウェバーはリタイア、ロータス勢は1ストップに賭ける

40周目、2位走行中のウェバーに「マシンを止めろ」というチームからの無線が飛んだ。「止めろ?」と聞き返すウェバー。ドライバーは感知できていなかったかもしれないが、ピットはレッドブルの昔からの“持病”ともいえるオルタネーターの異常をつかんでいた。間もなくF1を去るオージーはおとなしくマシンを止め、スクーターをつかまえてピットへと帰っていった。
実はレース後、ウェバーのマシン同様の、トラブルの予兆がベッテル車にもあり、レッドブルは予防策を講じていたことが明らかになるのだが、なぜか致命傷にまで発展するのはいつもウェバーの方である。

代わって2位を走るのはライコネン。ロータス勢は、予選で計算を誤りQ1敗退17位となったロメ・グロジャンも4位までポジションを上げていたが、2台ともまだ1回のタイヤ交換を済ませたのみ。彼らはお得意の1ストップ作戦で上位を狙っていたのだ。

しかし8周目から走行を続けてきたライコネンのタイヤは既に寿命を迎えており、さらにブレーキのオーバーヒートにも悩まされていた。ゴールまで9周、ロズベルグに2位の座を明け渡したライコネンは程なくしてチームメイトにも抜かれ、たまらず2回目のタイヤ交換に飛び込み7位でゴールした。

これで1位ベッテル、2位ロズベルグ、3位グロジャンというポディウムが確定。ロズベルグは6月のイギリスGP以来の登壇、見事1ストップで走り切ったグロジャンは3戦連続3位、今年5回目の表彰台にあがった。

ベッテルとは違う作戦でミディアムスタートを選んだウェバー。ソフトタイヤ勢が早々にピットストップを行うとトップに躍り出たが、レース半ばには猛追するベッテルに抜かれ2位に。レッドブル1-2フィニッシュの夢は40周目にメカニカルトラブルに襲われたことでついえた。レッドブルの“持病”、オルタネーターの問題だった。(Photo=Red Bull Racing)
ベッテルとは違う作戦でミディアムスタートを選んだウェバー。ソフトタイヤ勢が早々にピットストップを行うとトップに躍り出たが、レース半ばには猛追するベッテルに抜かれ2位に。レッドブル1-2フィニッシュの夢は40周目にメカニカルトラブルに襲われたことでついえた。レッドブルの“持病”、オルタネーターの問題だった。(Photo=Red Bull Racing)

■4連覇達成は史上3人目

チェッカードフラッグを受け、ビクトリーラップを終えたベッテルはパルク・フェルメには戻らず、多くの観客が見守るメインスタンド前で派手なドーナツターンを披露した。16戦で10勝目、6連勝で4連覇。その感想を聞かれて「言葉にならない」と返すベッテルの表情は、その事実の重みに大きな衝撃を受けているようだった。

2000年代のF1はまさに“ドイツ人の時代”である。最多7度のタイトルを獲得したミハエル・シューマッハーが2000年から5年連続チャンピオンとなっており、今回4連覇を達成したベッテルと合わせると、2000年代の14シーズンで実に9回もドイツ人が王座についたことになる。
この2人の前に4年連続の戴冠を成し遂げたのはたった1人だけ。F1黎明(れいめい)期の1950年代にマセラティ、メルセデス、フェラーリを渡り歩き、合計5度チャンピオンとなった“伝説のドライバー”、ファン・マヌエル・ファンジオまでさかのぼる。つまり、これだけ勝ち続けることができたドライバーは、1950年から続くF1の歴史上、わずか3人しかいないのである。
また4冠となれば、ファンジオ、アラン・プロスト、シューマッハーに次いで4人目となる。

フェラーリで絶頂期を迎えたシューマッハーが既に30代に突入していたのに対し、ベッテルはまだ26歳。この独壇場がいつまで続くのかを考えるとライバルでなくとも空恐ろしくなるが、2014年は、2.4リッターV8 NAエンジンから1.6リッターV6ターボに変わる大変革の年、これまでのパワーバランスが崩れる可能性がある。いくらベッテルでも、そう簡単に5連覇を目指せるわけではなさそうだ。

逆をいえば、ベッテルの活躍は当然ながらマシンの圧倒的なパフォーマンスに支えられてきた。レッドブルも4年続けてコンストラクターズタイトルを獲得したという事実は、マシンとドライバーのコンビネーションが絶妙だったことを物語る。
レッドブルのチーフ・テクニカル・オフィサー、エイドリアン・ニューウェイが、来季どんなマシンを生み出すか。ベッテルとレッドブルの未来は、その出来に大きく左右されるだろう。

2013年もあと3戦。次戦は1週間後の11月3日、アブダビGPとなる。

(文=bg)

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