マツダCX-5 25S Lパッケージ(4WD/6AT)
あえて言わせてもらうなら…… 2015.02.27 試乗記 内外装デザインから走り、そして安全性能にいたるまで大幅な改良を受けた「CX-5」。確かに進化して熟成の度合いを深めているが、そこをあえて言わせてもらうなら……。ガソリン仕様の最上級グレード「25S Lパッケージ」に試乗した。「人馬一体」に上質さを
マツダの成功作というと、記憶に新しいせいか、どうしてもまず「デミオ」を思い出してしまう。しかし近年、マツダを成功へと導いた立役者といえば「アテンザ」であり「CX-5」である。
その2台が2014年11月、大規模なマイナーチェンジを受け、さらなる進化を遂げたのはご承知のとおり。CX-5といえばディーゼルエンジン搭載車が主役というイメージがあると思うが、聞けば、国内販売比率は引き続きディーゼルが約8割を占めているという。それならば……と選んだのは、ガソリンモデルの最上級グレード「25S Lパッケージ」。ディーゼルが8割を占めるということよりも、ガソリンがなぜ2割なのか? ということに興味を抱いたワケである。
なお今回のマイナーチェンジではディーゼル、ガソリンを問わずエンジンそのものには特に変更がないようで、内外装デザインの変更と先進安全技術の「i-ACTIVSENSE(アイ・アクティブセンス)」の進化、そして乗り心地や遮音など快適性の質感向上などが主な内容となっている。
ちなみに、CX-5は2013年の時点で新構造のリアダンパーを採用して乗り心地の改善を図ったが、今回はさらに前後のダンパーを見直し、それに加えてサスペンションの構成パーツにも手を入れてきた。その目的はマツダの十八番(おはこ)である「人馬一体」のハンドリングフィールに上質さを加えるためだったそうだ。
さらに滑らかでリニアに
今回のマイナーチェンジにおける改善点を、まずは足まわりから見ていくと、フロントスプリングのシート位置が最適化されている。これは仮想キングピン軸(簡単にいうと、フロントサスペンションの転舵<てんだ>回転中心軸)に対してスプリングを最適な位置へ配置することにより、サスペンションが伸び縮みする際にダンパーへ負担がかからないようにするのが目的だ。
また前後ダンパーのトップ部(ダンパーのふた)にゴムブッシュを配置した。こうすることでダンパーロッドとの接触部分が共振しなくなり、ノイズやバイブレーションを減らせるのだという。
通常であれば、しゅう動部分のフリクション(摩擦)を減らすことがエンジニアリングの王道であり、見せどころだろう。しかし、わざとそこにフリクションを持たせる(フリクションを最適化する、とマツダは表現していた)ことで低級な振動がダンピングされ、乗り味が上質になるというのだから面白い。
さらにフロントロワアームのブッシュの形状を変更している。高速道路の段差などで、斜めに入ってくる衝撃を吸収・緩和しつつ、ハンドリングにもリニアリティーを与えているという。
確かに乗り心地はスムーズだが……
実際にこれらの変更は、乗り心地に改善をもたらしていた。2月初旬、早朝6時からの試乗でもダンパーはスムーズに動き、起き抜けの体に優しい乗り味が実現されていた。路面からの細かなノイズはカットされ、路面からのザラザラ感も伝わってこない。
ただこのスムーズな動きが、余計なアラまで暴いてしまった感もある。乗り味がスッキリした分だけ、フロア剛性(もしくはフロントサブフレーム自体か、その連結剛性)の不十分なところまでもがわかるようになってしまったのだ。
それは本当に微少なフィーリングなのだが、微少であるがゆえに余計に気になるというか、そこはかとないボディーの弱さ(これは質感の低さにつながりかねないものだ)を感じてしまう。だから乗り心地はいいのに、どこかふわっとしたつかみどころのなさを覚えてしまうのだ。
高速巡航ではそれがハンドリングにも表れた。パワーステアリングの操舵力自体はそこそこの重さがあるのに、いわゆるステアリングセンター付近の“N感”というヤツに乏しい。だからステアリング切り角の少ない高速道路では、全体的に手応えが曖昧になってしまうのである。ここがもっとどっしりと座っていれば「高いクルマに乗ってる感じ」がすると思うのだが……。
しかしCX-5は、コーナリングが気持ちいいからまいってしまう。ステアリングを切り込んでいくと穏やかにコーナーにノーズが入り、クルマ全体がロールして、素直に旋回していく。ロールスピードはゆっくりとしているから、背の高いSUVなのに怖くない。
これはSUVならではの、たっぷりとしたサスペンションストロークがもたらす恩恵だ。ストロークの中間領域からはダンパーも粘り強さを増し、人馬一体の楽しさが「じわり」と出てくる。つまりある程度の荷重を掛けてしまえば、グッと座りが出てくるハンドリングなのだ。
いいところとイマイチなところが混在していて、評価を混乱させる。悪いところはない。なんとなーく楽に運転できて、なんとなーく乗り心地もいい。曖昧な言い方で恐縮だが、そんな印象なのである。
もう一味「何か」がほしい
2.5リッターのガソリンエンジンはシャープな切れ味を持っている。2リッターでは不足しがちな低中速トルクを補いながら、高速域ではきれいに吹け上がる。
また、その好印象の名脇役として6段ATの存在は無視できない。キックダウン時の変速遅れがなく、必要なパワーを必要なときに引き出しやすい。スロットルペダルに足をのせた状態から軽く踏み込むような、パーシャル領域でも細かくギアを変速して、適度にトルクを引き出してくれる。
ただそういったエンジンとドライブトレインの洗練されたマナーも、見方を変えればあまりにそっけないともいえる。だから「これにターボが付けばもっといいのに」などと要らぬことを考えてしまうし、そうなるとディーゼルの方が個性があってよいのではないか? あっちの方が燃費もいいし……などと考えてしまう。女子がいうところの「いい人」と「好きな人」は違う、というヤツに似ている気がしないでもない。
今回の試乗を通じて、CX-5はよくできたクルマだと感心した。ただ、あえて言わせてもらうなら、その乗り味には「何か」が足りない気がする。それが個性なのか、主張なのかは判然としない。融通の利かない昭和世代(筆者のことだ)からすると、ちょっともどかしいこの乗り味は、きょうびの日本らしい(?)気もする。
でもこれは、きっと簡単なことで解決できてしまうだろう。フロントのボディー剛性をきちんと出せばいいのだ。クルマも人間も、やっぱり芯が大切。そう思った次第である。
(文=山田弘樹/写真=小林俊樹)
テスト車のデータ
マツダCX-5 25S Lパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4540×1840×1705mm
ホイールベース:2700mm
車重:1570kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:184ps(135kW)/5700rpm
最大トルク:25.0kgm(245Nm)/4000rpm
タイヤ:(前)225/55R19 99V/(後)225/55R19 99V(トーヨー・プロクセスR36)
燃費:14.6km/リッター(JC08モード)
価格:309万9600円/テスト車=326万1600円
オプション装備:特別塗装色(ソウルレッドプレミアムメタリック)(5万4000円)/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(フルセグ)(2万7000円)/Boseサウンドシステム(AUDIOPILOT2+Centerpoint2)+9スピーカー(8万1000円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:2750km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:209.2km
使用燃料:22.8リッター
参考燃費:9.2km/リッター(満タン法)/9.3km/リッター(車載燃費計計測値)
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山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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