【F1 2017 続報】第16戦日本GP「興ざめのアジアラウンド」

2017.10.08 自動車ニュース
F1第16戦日本GPを制したメルセデスのルイス・ハミルトン(写真右から2番目)、2位に入ったレッドブルのマックス・フェルスタッペン(同左端)、3位でレースを終えたレッドブルのダニエル・リカルド(同右端)。(Photo=Red Bull Racing)
F1第16戦日本GPを制したメルセデスのルイス・ハミルトン(写真右から2番目)、2位に入ったレッドブルのマックス・フェルスタッペン(同左端)、3位でレースを終えたレッドブルのダニエル・リカルド(同右端)。(Photo=Red Bull Racing)

2017年10月8日、三重県の鈴鹿サーキットで行われたF1世界選手権第16戦日本GP。シンガポールでは0周リタイア、マレーシアではメカニカルトラブルで最後尾から追い上げと、立て続けに勝てるレースを落としてきたフェラーリ&セバスチャン・ベッテルが、鈴鹿でも……。

今年、最多ポールポジション記録保持者となったハミルトン(写真左)。日本GPでは富士スピードウェイで2度ポールを取っているが、なぜか屈指のドライバーズサーキットとして知られる鈴鹿ではこれまで一度もポールがなかった。飛躍的にコーナリングスピードが増した今年、ようやく手に入れた予選P1に喜びもひとしおの様子だった。1分27秒319というタイムは、2006年にミハエル・シューマッハーが記録した1分28秒954を大幅に削ってのコースレコード。これでハミルトンは、今年GPが行われる20のサーキットすべてでポールを記録したことになる。(Photo=Mercedes)
今年、最多ポールポジション記録保持者となったハミルトン(写真左)。日本GPでは富士スピードウェイで2度ポールを取っているが、なぜか屈指のドライバーズサーキットとして知られる鈴鹿ではこれまで一度もポールがなかった。飛躍的にコーナリングスピードが増した今年、ようやく手に入れた予選P1に喜びもひとしおの様子だった。1分27秒319というタイムは、2006年にミハエル・シューマッハーが記録した1分28秒954を大幅に削ってのコースレコード。これでハミルトンは、今年GPが行われる20のサーキットすべてでポールを記録したことになる。(Photo=Mercedes)
レーススタートを順当に決めたハミルトン(写真)は、終盤にフェルスタッペンの猛攻にあうも、何とかしのぎ今季8勝目を飾った。フロントローに並んだ宿敵セバスチャン・ベッテルがたった4周で戦列を去り、大量59点ものマージンを築いて残り4戦に向かうことに。早ければ次のアメリカGPで4度目の戴冠が決まる。(Photo=Mercedes)
レーススタートを順当に決めたハミルトン(写真)は、終盤にフェルスタッペンの猛攻にあうも、何とかしのぎ今季8勝目を飾った。フロントローに並んだ宿敵セバスチャン・ベッテルがたった4周で戦列を去り、大量59点ものマージンを築いて残り4戦に向かうことに。早ければ次のアメリカGPで4度目の戴冠が決まる。(Photo=Mercedes)

残り5戦で、その差34点

4戦が詰め込まれた10月の初戦、1週間前の第15戦マレーシアGPでは、レッドブルのマックス・フェルスタッペンがキャリア2勝目をマーク。ポイントリーダーのルイス・ハミルトンはマシンの不調もあり優勝を逃して2位、ランキング2位のセバスチャン・ベッテルは予選でのパワーユニットトラブルに足を引っ張られるも、最後尾スタートからポディウム手前の4位まで挽回した。

十分に勝てるポテンシャルがありながら信頼性の欠如で星を落としたフェラーリ。9月の第14戦シンガポールGPでもベッテルとキミ・ライコネンがスタート直後にクラッシュを起こしリタイア、セッティングに苦労していたハミルトンに優勝をさらわれていた。

アジアラウンド前にわずか3点だったハミルトンとベッテルのポイント差は、日本GP前には34点にまで拡大した。残り5戦で獲得できるのは最大125点。ベッテルが全勝すれば自力でチャンピオンになることもできるが、赤いチームはいよいよ後がなくなってきた。

一方のメルセデスにも、コースごとにマシンのパフォーマンスが安定しないという不安要素は依然として残っていた。マレーシアでは新しい空力パーツが不発で、ハミルトンは旧型を装着して出走。新型を付けたバルテリ・ボッタスは精彩を欠き5位でゴールしていた。コンストラクターズランキングではフェラーリに大量118点もリードしている状況だったが、第3勢力のレッドブルが力をつけてきていることもあり、独走が続いた過去3年とは違った緊張を強いられていた。

1987年の初開催から30年、今年も鈴鹿サーキットにF1サーカスがやってきた。レギュレーション変更で大幅にダウンフォースを増した2017年型マシンが、「S字」や「デグナー」「スプーン」「130R」といった名物コーナーをいかに速く駆け抜けるか。ドライバーたちの一挙手一投足を見逃さんと、思い思いの手作りコスチュームを身にまとったファンたちが熱い視線を送った。

前戦マレーシアGPのウィナーであるフェルスタッペン(写真)は、4番グリッドからオープニングラップで2位に躍進。レース終盤には僅差でハミルトンを追い詰めるも、周回遅れを抜く際に時間を要してしまい、最終的にハミルトンに1.2秒の差で逃げられた。「今日のメルセデスは強かったから、バックマーカーがいなくても抜けなかっただろう」とはレース後の弁。(Photo=Red Bull Racing)
前戦マレーシアGPのウィナーであるフェルスタッペン(写真)は、4番グリッドからオープニングラップで2位に躍進。レース終盤には僅差でハミルトンを追い詰めるも、周回遅れを抜く際に時間を要してしまい、最終的にハミルトンに1.2秒の差で逃げられた。「今日のメルセデスは強かったから、バックマーカーがいなくても抜けなかっただろう」とはレース後の弁。(Photo=Red Bull Racing)
バーチャルセーフティーカー明けにエステバン・オコンのフォースインディアをオーバーテイク、3位表彰台をものにしたリカルド(写真)。残り数周、バルテリ・ボッタスのメルセデスが速いスーパーソフトタイヤで迫ってきたが、0.9秒差で抑え切った。意外にも鈴鹿では初ポディウムとなる。(Photo=Red Bull Racing)
バーチャルセーフティーカー明けにエステバン・オコンのフォースインディアをオーバーテイク、3位表彰台をものにしたリカルド(写真)。残り数周、バルテリ・ボッタスのメルセデスが速いスーパーソフトタイヤで迫ってきたが、0.9秒差で抑え切った。意外にも鈴鹿では初ポディウムとなる。(Photo=Red Bull Racing)

ハミルトン、コースレコードを塗り替え鈴鹿初ポール

高温多湿の東南アジア2連戦でペースが伸び悩んだメルセデスは、秋の日本で速さを取り戻した。金曜日のフリー走行1回目を2位で終え「いつもの調子に戻ったね」と表情を緩ませたハミルトンは、大雨で5台しか走らなかった2回目でトップ、曇天の土曜日に行われた3回目でもボッタスに次ぐ2位と、まずまずの感触を得て予選へと向かった。

Q1で1位、Q2ではコースレコードを塗り替えて1位、そしてQ3ではさらにタイムを縮めてきたハミルトンに敵はなく、今シーズン10回目、通算71回目のポールを獲得。意外にも、今季最多ポールポジション記録を更新したハミルトンにとって鈴鹿での初ポールとなった。ボッタスが0.332秒遅れで2番手につくも、ギアボックス交換のペナルティーで6番グリッドに降格。3番手タイムのベッテルが繰り上がり、フロントローにはチャンピオン争いを繰り広げる2人が並んだ。

2列目にレッドブルの2台、ダニエル・リカルド3番グリッド、フェルスタッペン4番グリッド。ライコネンは6番手タイムだったが、フリー走行でのコースオフでマシンを壊しギアボックスを替えざるを得ず、10番グリッドに落ちた。

フォースインディアはエステバン・オコン5番グリッド、セルジオ・ペレス7番グリッド、ウィリアムズのフェリッペ・マッサは8番グリッドからのスタート。マクラーレンのフェルナンド・アロンソは健闘しQ3に進出するも、パワーユニット交換で最後尾となり、チームメイトのストフェル・バンドールンが繰り上がって9番グリッドから3連続入賞を目指すことになった。

前戦マレーシアGPでの相次ぐメカニカルトラブルに激怒したとされる大ボス、セルジオ・マルキオンネ会長兼CEOの大号令で、チーム品質部門の改革が行われることになったフェラーリ。シンガポール、マレーシアと勝てるレースを落として迎えた日本GPでは、再びメルセデスのハミルトンが息を吹き返し圧倒されることに。さらにベッテル(写真)は2番グリッドという好位置を得ながら、スタート直前にスパークプラグの異常が見つかり、たった4周してリタイア。悪夢のようなアジアラウンドを終えた。(Photo=Ferrari)
前戦マレーシアGPでの相次ぐメカニカルトラブルに激怒したとされる大ボス、セルジオ・マルキオンネ会長兼CEOの大号令で、チーム品質部門の改革が行われることになったフェラーリ。シンガポール、マレーシアと勝てるレースを落として迎えた日本GPでは、再びメルセデスのハミルトンが息を吹き返し圧倒されることに。さらにベッテル(写真)は2番グリッドという好位置を得ながら、スタート直前にスパークプラグの異常が見つかり、たった4周してリタイア。悪夢のようなアジアラウンドを終えた。(Photo=Ferrari)
コンストラクターズランキング7位のルノーを追いかけていた同8位のハースは、ケビン・マグヌッセン(写真前)8位、ロメ・グロジャン9位と鈴鹿でダブル入賞を果たし、ルノーを1点差で逆転した。本拠地のアメリカGPに、最良のお土産を持って帰ることになった。(Photo=Haas)
コンストラクターズランキング7位のルノーを追いかけていた同8位のハースは、ケビン・マグヌッセン(写真前)8位、ロメ・グロジャン9位と鈴鹿でダブル入賞を果たし、ルノーを1点差で逆転した。本拠地のアメリカGPに、最良のお土産を持って帰ることになった。(Photo=Haas)
シンガポール、マレーシアとストフェル・バンドールンが2戦連続して7位入賞と調子を上げてきていたマクラーレンは、ホンダとともに戦う最後の日本GPでいい結果を残したかった。しかしフェルナンド・アロンソ(写真)は、パワーユニットに油圧系トラブルが見つかり、ターボチャージャーやハイブリッドシステムを交換し35グリッド降格、Q3に進出したものの最後尾に。レースではウィリアムズのフェリッペ・マッサを抜けず、惜しくもポイント圏外の11位に終わった。バンドールンはアロンソのペナルティーで9番グリッドと好位置から出走するも、スタートで出遅れ14位完走。(Photo=McLaren)
シンガポール、マレーシアとストフェル・バンドールンが2戦連続して7位入賞と調子を上げてきていたマクラーレンは、ホンダとともに戦う最後の日本GPでいい結果を残したかった。しかしフェルナンド・アロンソ(写真)は、パワーユニットに油圧系トラブルが見つかり、ターボチャージャーやハイブリッドシステムを交換し35グリッド降格、Q3に進出したものの最後尾に。レースではウィリアムズのフェリッペ・マッサを抜けず、惜しくもポイント圏外の11位に終わった。バンドールンはアロンソのペナルティーで9番グリッドと好位置から出走するも、スタートで出遅れ14位完走。(Photo=McLaren)

フェルスタッペンが2位へ、ベッテルは早々にリタイア

決勝日は気持ちよく晴れわたり、気温は26度、路面温度も43度に上昇。ハミルトン対ベッテルの火花散る直接対決に期待も高まったが、スタート前からフェラーリ陣営はパニックに陥っていた。グリッド上でベッテルのマシンに問題が発覚。どうやらスパークプラグに異常があるらしいが、直す時間はない。

赤いチームの焦りをよそに、定時に53周のレースは幕を開けた。ハミルトン先頭、2位ベッテル、3位フェルスタッペンでターン1に進入。しかしベッテルにスピードはなく、ヘアピンでフェルスタッペンにかわされ3位、その後一気に6位にまで後退してしまう。オープニングラップ中にカルロス・サインツJr.がコースアウトしたことで、セーフティーカーが導入された。

4周目にレース再開。順位は1位ハミルトン、2位フェルスタッペン、3位オコン、4位リカルド、5位ボッタス、6位ベッテル。速さをともなわないベッテルのマシンはすぐさまペレスにかわされ7位、続いてマッサにも抜かれ8位。ベッテルはフェラーリのピットに呼ばれ、アジアラウンド3戦目にして2度目のリタイアを喫した。

またもやライバルの自滅で楽な展開となったトップのハミルトン。マレーシアでは若武者フェルスタッペンを抑え切れなかったが、鈴鹿では序盤に4秒以上のマージンを築き、レースをコントロールした。

8周目、マーカス・エリクソンのザウバーがデグナーで飛び出し、バーチャルセーフティーカー(VSC)の指示が10周目まで出された。VSCが明けると、リカルドがすかさずオコンをオーバーテイクし3位、続いてボッタスもフォースインディアをかわした。1位ハミルトン、2位フェルスタッペン、3位リカルド、4位ボッタスと、このレースのトップ4フィニッシャーはこの時点で決まっていた。

オープニングラップのスプーンコーナーではじき出され15位まで順位を落としていた唯一のフェラーリ、ライコネンは、1台また1台とオーバーテイクを繰り返し、20周目には5位に上昇。しかし勢いはそこまでで、結局このポジションのままチェッカードフラッグを受けることになった。

予選終了後、ルノーはジョリオン・パーマー(写真)が日本GPを最後にチームを去ることを発表。空いたシートには、カルロス・サインツJr.がおさまることになった。元F1ドライバーのジョナサンを父に持つジョリオンは昨シーズンにルノーでGPデビュー。今季はチームメイトのニコ・ヒュルケンベルグの陰に隠れ、ヒュルケンベルグ34点に対し8点といい結果が残せていなかった。パーマーの来季については未定。サインツJr.の離脱によりトロロッソではダニール・クビアトが復活、前戦マレーシアGPから出場している新人ピエール・ガスリーと組むことになった。(Photo=Renault Sport)
予選終了後、ルノーはジョリオン・パーマー(写真)が日本GPを最後にチームを去ることを発表。空いたシートには、カルロス・サインツJr.がおさまることになった。元F1ドライバーのジョナサンを父に持つジョリオンは昨シーズンにルノーでGPデビュー。今季はチームメイトのニコ・ヒュルケンベルグの陰に隠れ、ヒュルケンベルグ34点に対し8点といい結果が残せていなかった。パーマーの来季については未定。サインツJr.の離脱によりトロロッソではダニール・クビアトが復活、前戦マレーシアGPから出場している新人ピエール・ガスリーと組むことになった。(Photo=Renault Sport)
鈴鹿サーキットが世界屈指の名コースなら、鈴鹿にやってくる熱心な観客も屈指のユニークさを誇る。趣向を凝らした“コスプレ”は、毎年ドライバーや関係者の注目の的となり、その精巧さ、斬新さは世界に類を見ない。鈴鹿サーキットでの初開催から30年。F1は日本の地で、独自のスタイルを持つ文化として根付いているということだろう。(Photo=McLaren)
鈴鹿サーキットが世界屈指の名コースなら、鈴鹿にやってくる熱心な観客も屈指のユニークさを誇る。趣向を凝らした“コスプレ”は、毎年ドライバーや関係者の注目の的となり、その精巧さ、斬新さは世界に類を見ない。鈴鹿サーキットでの初開催から30年。F1は日本の地で、独自のスタイルを持つ文化として根付いているということだろう。(Photo=McLaren)

差を詰めてきたフェルスタッペン&ボッタス

レース前半こそハミルトン優勢で進んだが、後半になるとフェルスタッペンが徐々に差を詰めてきた。

22周目、2位フェルスタッペンがピットに入り、翌周には首位ハミルトンもスーパーソフトからソフトに履き替えた。優勝に最も近い2人の差は2秒。タイヤ交換後のフェルスタッペンは快調なペースで周回を重ね、28周目にはハミルトンとの差が1秒を切った。

ここでメルセデスは、ハミルトンにボッタスという“援軍”を出した。まだピットストップを行っていないボッタスを、ハミルトンとフェルスタッペンの間にうまく入れたのだ。30周目にようやくボッタスにピットインのサインが出ると、1位ハミルトンと2位フェルスタッペンのギャップは3秒にまで広がっていた。

「タイヤは最高な状態」と無線で報告したのは2位フェルスタッペン。一方トップを走るハミルトンはバイブレーションに悩まされての走行だった。両車のギャップは35周目には2.5秒まで縮まるも、その後しばらくは膠着(こうちゃく)した。

ゴールまで数周となった時点で、レースが慌ただしくなった。48周目にランス・ストロールのウィリアムズがS字でコースアウトし、再びVSC。残り4周で再開されると、1位ハミルトンと2位フェルスタッペンは1.5秒差に接近することに。さらに4位ボッタスもスーパーソフトタイヤを履き、3位リカルドに僅差で迫ってきた。

52周目、ハミルトンの真後ろにつけたフェルスタッペン。しかしここでも周回遅れのマシンという援軍がハミルトンを優勝へと後押しした。結果的にハミルトンはフェルスタッペンを1.2秒引き離してチェッカードフラッグが振られ、リカルドも鈴鹿初表彰台を守った。

「マックス(フェルスタッペン)が楽をさせてくれなかったよ」と表彰台の頂点で満面の笑みを浮かべるハミルトン。第12戦ベルギーGPからの5戦で4勝、残る1戦も2位と、今季後半戦の戦績はほぼパーフェクトに近く、宿敵ベッテルとのポイント差は大量59点にまで拡大した。この圧倒的なポジションは、王者メルセデスの底力というより、フェラーリからのプレゼントと言った方がふさわしいだろう。

メルセデスに対抗し、シーズン前半戦を盛り上げたのがフェラーリなら、最も重要な後半戦を盛り下げてしまったのもフェラーリ。赤いコスチュームに身を固めたファンのみならず、トップドライバーとチームによる激戦を期待していたモータースポーツファンとしてもがっかりな、やや興ざめのアジアラウンドだった。

次のアメリカGPで赤いチームの奮起なるか。決勝は10月22日に行われる。

(文=bg)

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