アルファ・ロメオ・ジュリア スーパー(FR/8AT)
奥さまウケは万全 2018.01.15 試乗記 イタリア車の長所を伸ばし、短所をうまく補った……。「アルファ・ロメオ・ジュリア」は、ドライブした者にそんな印象をもたらすニューモデルだ。仮想敵(?)と目されるクルマを自家用車とする清水草一が、愛車との比較も交えた試乗リポートをお届けする。適度なイタ車らしさが受けている!?
フィアット・クライスラー・オートモービルズが、アルファ・ロメオブランドを再興すべく、莫大(ばくだい)な投資をして生まれたジュリア。
既報のように、ソレは「BMW 3シリーズ」を最大のターゲットとした、直球ど真ん中なFRセダンである。
別にライバルは3シリーズには限らないでしょうが、個人的に現在「320d」に乗っているせいか(激安中古)、ジュリアからは3シリーズへの強い意識をビンビン感じる。
ジュリアの事実上のボトムグレードであり、最量販グレードになるであろう「スーパー」。ボディーサイズもプロポーションも車両重量もほとんど3シリーズと同じだ。
エンジンは4気筒の2リッターターボで、トランスミッションが8段ATという点も同じ。バッテリーを後部トランク内に収めて前後重量配分50:50を実現するなど、何から何まで似ている。
価格は543万円。3シリーズの想定ライバル(18インチタイヤ同士ということで)「320i Mスポーツ」が570万円。価格もほぼガチンコだ。
フォルムも、3シリーズを猛烈に意識した……というより、正直そっくりである。特に横のシルエットは、見分けすらムズカシイ。顔も横長ヘッドライトまでは同じで、違うのはグリルだけともいえる。
従来のアルファファンは、この点に大いに失望している。まるで3シリーズだし、アルファらしい華がないということで。個人的にも、ジュリアのカッコにしびれるものはない。
しかし、一般の皆さまはそうは見ないようだ。とあるカーマニアの奥さまは、イタリア車は壊れそうでキライとのたまいつつ、ジュリアを見て「これならいいんじゃない?」。BMWに似ていることで、なんとなく信頼性が高そうに見えるのかも!
その心理を勝手に分析すると、ちょっとだけイタ車っぽいところがちょうどいいのではないか。全面的にイタ車っぽいのは、派手で目立ちすぎるしNG。周囲のドイツ車たちに溶け込みつつ、よく見るとちょっと違うところが、さりげなくオシャレさん。それならいいわ~。そんな感じでしょうか?
一般の皆さまがそうおっしゃれば、カーマニアは何も言えない。採算取れなきゃクルマは作れないんで。マルキオンネが狙ってるのはオレらじゃない、もっと広くあまねく幅広く、なのだ。中でも奥さまの賛同を得られやすいというのは(調査サンプル数=1)、日本での販売のカギを握る。勝手に納得である。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
実用的でありながら官能性も漂う
で、走りの方はどうなのかというと、実はカッコに渋々ながら納得してしまうのは、走りに納得だったからだ。
スーパーのエンジンは2リッター直噴ターボで、最高出力200ps、最大トルク330Nm。ライバルたる320iのソレは184ps/270Nm。前述のように車両重量はほぼ同じなので、ジュリアの方がパワフルだ。
実際に走ってみると、パワフルさよりも官能性の方がココロに刺さった。「クアドリフォリオ」のようなフェラーリ的炸裂(さくれつ)はないが、低い回転からかすかな快音が響くところは、かつて私が乗っていた「155ツインスパーク」(2リッター自然吸気)をもほうふつとさせる。
高回転域まで引っ張っても回転の上昇はよどみなく、快感もじわじわと高まる。決してズコーンではなくじわじわだが、あんまりズコーンと来ると、回してないとモッタイナイ症候群にかかる。ジュリア スーパーはあくまでオシャレさんな日常の足。その点を考えるとこれでよしである。
ライバルの320iのエンジンはどうかといえば、ジュリア スーパーほどの個性はない。ただ淡々と性能が出ているという印象で、エンジンの存在感自体が薄い。320iよりディーゼルの320d(最新モデル)の方が官能的ですらある。
わが自家用車の320dは2014年式につき、ディーゼルのガラガラ音がかなり強く、適度に官能的なジュリア スーパーのガソリンエンジンと比較すれば、ジャージというか野良着というか、色気のない実用車そのもの。ジュリアがとっても華やかに感じられる。
ジュリア スーパーのパワーユニットは、実用性を確保しつつ、イタリア的な官能性をほのかに感じさせるわけで、イタリア製Dセグメントセダンを世界に幅広く受け入れてもらうための最適解かもしれない。いや、だといいな~。
そういえばATはトルコンの8段で、この点も3シリーズと同じですが、アルファ得意の「D.N.A.システム」で、フィーリングを大きく切り替えることができる。
個人的には、常に「d(ダイナミック)モード」がオススメでした。dモードでパドルを使ってシフトダウンすると、鋭いブリッピングで回転を合わせてくれるし、その時響くサウンドがなんとも気持ちイイ。Dレンジに入れっぱなしでもサウンドレベルが一段上がって、ドライブ中、常にイタリア車気分を感じられる。せっかくアルファ・ロメオを買うんだから、これくらいでちょうどいいのではないか?
クラス屈指のボディー剛性
シャシーのしっかり感に関しては、ヘタすると3シリーズを超えている。従来のイタ車ファンにすれば、「こんなしっかりしたボディーはイタ車じゃない!」と青くなるレベルだ。
「155」の空中分解しそうなユルユルボディーを愛した者としては、隔世の感以上の差。真剣な話、このクラスで世界一ではないでしょうか? メルセデスをも超えているように思います。
この鬼のようなシャシー剛性が、18インチタイヤを履きつつ、ドイツ車的な「ロールを抑えつつしなやかな乗り心地」を実現している。イタ車っぽくはないけれど、いいものはいい! さすがグローバル市場を狙ったアルファブランド復活戦略車。
ただし、ハンドリングもグローバル商品のレベルを大きく超えて……というより逸脱している。
コブシ1個分切っただけで、隣の車線まで吹っ飛ぶようなこのクイックさ! クアドリフォリオなら納得だが、スーパーまでもがこんなんで、奥さまは大丈夫か!?
いや、たぶん大丈夫なのでしょう。むしろ「ハンドルが軽くていいわ~」と気に入られる気がします。ちょっと切るだけでガバッと曲がるのって、パワフルなのと同じベクトルで快感なので。いやむしろ、奥さまにはパワーより、ステアリングの軽さ&クイックさが受ける気もする。
なにせジュリアは、米『モータートレンド』誌のカー・オブ・ザ・イヤーに輝いている。アルファブランドが撤退して久しかった北米市場に再参入を果たしただけでなく、早速勲章まで手に入れたのだ。北米でウケるってことは、世界中の一般の皆さまにウケるということなのではないでしょうか。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
小さな欠点を挙げるとすれば……
結論として、ジュリア スーパーは、ドイツ車以上に強固なボディーに、フェラーリのような超絶シャープな操縦性を載せているわけで、3シリーズそっくりに見えつつ、見事な差別化に成功している。
ジュリアから自分の320dに乗り換えた第一印象は「落ち着くなぁ。でもオッサンくさいな~」だった。
付け足しですが、セダンとしての実用性を申し上げますと、トランク容量は480リッターで3シリーズと同じ。ただ、後席足元はかなり狭い。「このボディーサイズでこんなもん!?」と少し驚きました。
これはひょっとして、FFなのに無駄に後席足元が狭かった「159」以来の伝統か? アルファの後席足元は狭い方がらしくていい、という考えなのか?
しかしまあミニバンじゃないんだし、かわいい欠点ということで、受け入れていただけると幸いです。
もうひとつ小さな欠点を挙げると、日本仕様のジュリアには純正ナビが搭載されておりません。ナビもオーディオ(ラジオ以外)も、スマホを介して入力するタイプなのです。これは奥さまの大不評を買いそうです。
個人的には、ナビはスマホのGoogle Maps(グーグルマップ)を使用しているので、純正ナビがなくても何らマイナスはないですが、一般の皆さまのことを考えると、なるはやな対応が必要でしょう。ちなみにiPhoneの場合、グーグルマップをナビ画面に映すことはできません(iPhoneの標準マップは映せます)。
(文=清水草一/写真=田村 弥/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
アルファ・ロメオ・ジュリア スーパー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4645×1865×1435mm
ホイールベース:2820mm
車重:1590kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:200ps(147kW)/5000rpm
最大トルク:330Nm(33.7kgm)/1750rpm
タイヤ:(前)225/45R18 91W/(後)255/40R18 95W(ピレリ・チントゥラートP7 ランフラット)
燃費:13.6km/リッター(JC08モード)
価格:543万円/テスト車=552万7740円
オプション装備:ボディーカラー<モンテカルロ ブルー:メタリック>(8万6400円) ※以下、販売店オプション ETC(1万1340円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:4506km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:270.5km
使用燃料:27.6リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:9.8km/リッター(満タン法)/10.7km/リッター(車載燃費計計測値)
拡大 |

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
モト・グッツィV7スポルト(6MT)【レビュー】 2026.3.18 イタリアの名門、モト・グッツィのマシンのなかでも、特に歴史を感じさせるのがロードスポーツの「V7」だ。ファンに支持される味わい深さはそのままに、よりスポーティーにも楽しめるようになった最新型の実力を、上級グレード「V7スポルト」に試乗して確かめた。
-
トヨタRAV4 Z(4WD/CVT)/RAV4アドベンチャー(4WD/CVT)【試乗記】 2026.3.17 「トヨタRAV4」が6代目へと進化。パワートレインやシャシーの進化を図ったほか、新たな開発環境を採用してクルマづくりのあり方から変えようとした意欲作である。ハイブリッドの「Z」と「アドベンチャー」を試す。
-
アストンマーティン・ヴァンキッシュ ヴォランテ(FR/8AT)【試乗記】 2026.3.14 英国の名門、アストンマーティンの旗艦車種「ヴァンキッシュ」に、待望の「ヴォランテ」が登場。5.2リッターV12エンジンを搭載した最上級コンバーチブルは、妥協のないパフォーマンスと爽快なオープンエアのドライブ体験を、完璧に両立した一台となっていた。
-
プジョーE-3008 GTアルカンターラパッケージ(FWD)【試乗記】 2026.3.11 「プジョー3008」の電気自動車版、その名も「E-3008」が日本に上陸。新しいプラットフォームに未来感あふれるボディーをかぶせた意欲作だが、その乗り味はこれまでのプジョーとは明らかに違う。ステランティスのような大所帯で個性を発揮するのは大変だ。
-
ジープ・アベンジャー アップランド4xeハイブリッド スタイルパック装着車(4WD/6AT)【試乗記】 2026.3.10 「ジープ・アベンジャー」のラインナップに、待望の「4xeハイブリッド」が登場。既存の電気自動車バージョンから、パワートレインもリアの足まわりも置き換えられたハイブリッド四駆の新顔は、悪路でもジープの名に恥じないタフネスを披露してくれた。
-
NEW
あの多田哲哉の自動車放談――マツダ・ロードスターSレザーパッケージVセレクション編
2026.3.19webCG Moviesトヨタで「86」や「スープラ」といったスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんが、日本を代表するスポーツカーのひとつである「マツダ・ロードスター」に試乗し、クルマづくりについて語ります。 -
NEW
ホンダがまさかの巨額赤字に転落 米国生産車の日本導入への影響は?
2026.3.19デイリーコラム本田技研工業の「Honda 0サルーン」を含む、電気自動車3車種の開発・販売中止に関連する巨額赤字転落という衝撃的なトピックに埋もれてしまった感のある米国生産車2モデルの日本導入計画。その導入予定車両の特徴と、同計画の今後を分析する。 -
NEW
ジープ・ラングラー アンリミテッド ルビコン(4WD/8AT)
2026.3.19JAIA輸入車試乗会2026今も昔もジープブランドの支柱となっている「ラングラー」。悪路にフォーカスし、舗装路では手ごわい挙動を示す一台だが、偏屈なリポーターは「これこそ自動車の本質である!」と強弁するのだった。JAIA輸入車試乗会より、孤高の一台の走りを報告する。 -
NEW
第953回:「黄金のGT-R」と宅配便ドライバーになりかけた話
2026.3.19マッキナ あらモーダ!イタリア在住のコラムニスト、大矢アキオが1年ぶりに日本を訪問。久々の東京に感じた世相の変化とは? 廃止されたKK線に、街を駆けるクルマの様相、百貨店のイベント。さまざまな景色を通じて、「中からは気づけないこの国の変化」をつづる。 -
NEW
ホンダN-ONE e:L(後編)
2026.3.19あの多田哲哉の自動車放談ホンダらしい軽EVと、ちまたで評判の「N-ONE e:」。初めてステアリングを握った元トヨタの多田哲哉さんが、その良かった点と気になった点について、エンジニアの視点で熱く語る。 -
ホンダの「スーパーONE」はどんなカスタマーに向けたBEVなのか?
2026.3.18デイリーコラムホンダが2026年に発売を予定している「スーパーONE」は「N-ONE e:」をベースとした小型電気自動車だ。ブリスターフェンダーなどの専用装備でいかにも走りがよさそうな雰囲気が演出されているが、果たしてどんなカスタマーに向けた商品なのだろうか。



















































