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第2回:フォード・クーガ(高山正寛)

クーガを見ずしてSUVを選ぶなかれ 2016.06.01 「フォード・クーガ」を語り尽くす<PR> 日本からの撤退がアナウンスされたとはいえ、いや、そんな今だからこそ、もう一度しっかりとこのクルマの本質を知っておきたい。フォードのミドルサイズSUV「クーガ」の実力をあらためて確かめた。

どこまで本気だったのか

SUV市場が、グローバルではもちろん日本国内においても重要視すべきマーケットであることは、今更説明は不要だろう。昨今はパワートレインの種類や、燃費を含めた環境性能、そして先進安全装備などもクルマの販売にとっては重要なファクターだが、やはりデザインからくる「パッと見た際の第一印象」は何よりもインパクトがあり、国内外のメーカーがこのマーケットに積極的に参入している勢いは止められない。

今回とりあげるのは、そのSUV市場にフォードが投入したクーガだが、このクルマを語る前に、フォードという企業が結局日本をどう見ていたかがどうしても気になってしまう。「ブランド認知度」などという難しい言葉を使うつもりはない(言い始めるときりがないので)。とにかく、誰もが知っている世界的なブランドなのにあまりにも店舗数が少なすぎる(2016年5月現在で54店舗)。いくらこちら側が「いいクルマだ」と伝えても、直営・独立系ディーラーを合わせても日本国内をフルカバーできていたとは正直言いきれない部分もあった。

一方で、プロダクトに関していえば、ここで紹介するクーガやグローバルに高い評価を続けている「フォーカス」、そして走れば「これは面白い!」と感じる「フィエスタ」など、決してマニア向けではない優れた製品もしっかりリリースされていた。ただし、国内市場を考えれば要求したくなるのが「右ハンドル車」である。フォードの得意分野のひとつに大型SUVがあるが、それらに右ハンドル仕様が設定されなかったのも残念である。

要は、市場に対する「分かっていても手が打てなかった」というジレンマが、現在の状況を招いてしまったと考えている。やはりここまで書いておかないと、なかなかクーガの魅力を説いても理解してもらえないと思うので、あえて書かせてもらった次第だ。

第1回:ヘビーユーザーにこそ薦めたい(渡辺敏史)
→第3回:“いいクルマ”の典型(森 慶太)

→「フォード・クーガ」オフィシャルサイト

 

「フォード・クーガ」のインテリア。上級グレード「タイタニアム」には、間接照明の「アンビエント・ライティング」が装備される。
「フォード・クーガ」のインテリア。上級グレード「タイタニアム」には、間接照明の「アンビエント・ライティング」が装備される。 拡大
「タイタニアム」のレザーシート。運転席と助手席には10wayの電動調整機構とシートヒーターが備わる。
「タイタニアム」のレザーシート。運転席と助手席には10wayの電動調整機構とシートヒーターが備わる。 拡大
大きなロワグリルが特徴的なフロントまわり。フォグランプが標準装備される。
大きなロワグリルが特徴的なフロントまわり。フォグランプが標準装備される。 拡大
現行モデルの「クーガ」には、エントリーグレードの「トレンド」と上級グレードの「タイタニアム」(写真)の2種類がラインナップされる。
現行モデルの「クーガ」には、エントリーグレードの「トレンド」と上級グレードの「タイタニアム」(写真)の2種類がラインナップされる。 拡大

マイナーチェンジでエンジンを2種類に

2代目となるクーガは、2012年のジュネーブショーで公開され、日本では2013年9月に販売が開始された。導入当初の仕様は1.6リッター4気筒直噴ターボ+6段AT+フルタイム4WDのみで、装備の差によって2グレード構成としていた。初代が2.5リッターであったことからも分かる通り、この時点で世界的なトレンドであったダウンサイジング化を行っており、動力性能も十分なものであった。

しかし、ライバルとの差別化を図るためにも、よりコストパフォーマンスの高い……言い換えればお買い得感のあるグレードや、燃費性能を高めた仕様の設定などを考慮して、2015年8月のマイナーチェンジでは排気量でグレードを分ける戦略にスイッチしている。新たに設定されたのは、いずれもフォード独自の高出力ダウンサイジング戦略による「EcoBoost(エコブースト)」エンジンで、2リッターモデルである「タイタニアム」の方が出力および装備も充実しているが、1.5リッターの「トレンド」も十分なスペックでコストパフォーマンスの高さを前面に押し出せている。その点では、マイナーチェンジ時のこの戦略変更は正しかったと思っている。

デザインは、フォードが広範なモデルに展開している「キネティックデザイン」にそったものだ。ネーミングは人の好みだが、“KINETIC=動的”の意味が示す通り、フォードはアスリートのような躍動感をデザインに込めたと説明している。曲面を多用する昨今のSUVテイストとは大きく異なるし、それでいて北米生まれの大型SUV(トラックから派生)のような重さを感じることは皆無。要はクーガだけが持つソリッド感がうまく演出できている。

第1回:ヘビーユーザーにこそ薦めたい(渡辺敏史)
→第3回:“いいクルマ”の典型(森 慶太)

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「KUGA」のロゴが施されたフロントのサイドシルブレート。「クーガ」という車名は完全な造語で、かつてマーキュリーブランドで販売されていたクーペ「クーガー(Couger)」との関連性はない。
「KUGA」のロゴが施されたフロントのサイドシルブレート。「クーガ」という車名は完全な造語で、かつてマーキュリーブランドで販売されていたクーペ「クーガー(Couger)」との関連性はない。 拡大
エンジンは2種類。エントリーグレードの「トレンド」には182psを発生する1.5リッターの、「タイタニアム」には242psを発生する2リッターの4気筒直噴ターボエンジンが搭載される。
エンジンは2種類。エントリーグレードの「トレンド」には182psを発生する1.5リッターの、「タイタニアム」には242psを発生する2リッターの4気筒直噴ターボエンジンが搭載される。 拡大
「キネティックデザイン」とは、フォードの現行モデルに取り入れられているデザインコンセプトで、2006年に登場した「S-MAX/ギャラクシー」で初めて採用された。
「キネティックデザイン」とは、フォードの現行モデルに取り入れられているデザインコンセプトで、2006年に登場した「S-MAX/ギャラクシー」で初めて採用された。 拡大

せっかくのインフォテインメントシステムが……

インテリアに関しては基本造形に大きな変更はないが、マイナーチェンジ直後までのセンターコンソールには、フォード独自、正確に言えばMicrosoftが開発した「SYNC」と呼ばれる音声操作機能付きのオーディオユニットが装備されており、カーナビはディーラーオプション(ユニットごと交換)となっていた。

現在の「SYNC with MyFord Touch」には8インチの大型ディスプレイが採用されており、ここに各種車両情報や接続したオーディオプレーヤーの楽曲情報などを表示できるようになったのは大きな進化だ。特にカーナビはオプションという点では同じだが、このディスプレイをそのまま使えるのでスッキリとした仕上がりとなったのはもちろん、ダッシュボードの上方に設置されているので、視線移動も少なく視認性も十分と言えるまでに改善した。

海外ではこのSYNCは非常に評価も高いのだが、残念なことに基本システムの表示や使えるはずの音声認識は英語にしか対応していない。せっかくの高性能なシステムなのにローカライズされなかったのが残念でならない。

また、SUVの魅力のひとつは積載能力の高さだが、クーガの場合、荷室容量は5名乗車で406リッター、6:4の分割可倒機構付きのリアシートをすべて倒せば、1603リッターまで拡大することができる。ここまでは標準的なのだが、クーガのラゲッジスペースは非常に無駄が少ない。側面やタイヤハウスの出っ張りも少なく、タイヤハウス間の数値も1032mm、高さ方向は999mm(いずれもメーカー発表値)と「四角い箱」のようなスペースなので、標準状態でも見た目以上に荷物が積める。また上位グレードのタイタニアムのみだが両手に荷物を持っている際にリアバンパーの下に足を差し入れるとゲートの開閉ができる「ハンズフリーパワーゲート」がこのクラスで採用されている。このほかにも後席の足元に床下収納を設けるなど、ちょっとした気の利いた装備もありがたい。

第1回:ヘビーユーザーにこそ薦めたい(渡辺敏史)
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「クーガ」には音声やタッチスクリーンで各種機能を操作するインフォテインメントシステムが装備される。(写真をクリックすると、各機能の画面表示が見られます)
「クーガ」には音声やタッチスクリーンで各種機能を操作するインフォテインメントシステムが装備される。(写真をクリックすると、各機能の画面表示が見られます) 拡大
空調には「トレンド」「タイタニアム」ともに左右独立温度調整機構付きのオートエアコンを採用。音声やタッチスクリーンに加え、センタークラスターのコントロールパネルでも操作ができる。
空調には「トレンド」「タイタニアム」ともに左右独立温度調整機構付きのオートエアコンを採用。音声やタッチスクリーンに加え、センタークラスターのコントロールパネルでも操作ができる。 拡大
最大で1603リッターの空間が得られる荷室は、張り出しの少ないスクエアな形状による使い勝手のよさも特徴となっている。(写真をクリックすると、シートの倒れる様子が見られます)
最大で1603リッターの空間が得られる荷室は、張り出しの少ないスクエアな形状による使い勝手のよさも特徴となっている。(写真をクリックすると、シートの倒れる様子が見られます) 拡大
「クーガ」の日本仕様には助手席側の側方を監視するサイドビューカメラが標準装備される。
「クーガ」の日本仕様には助手席側の側方を監視するサイドビューカメラが標準装備される。 拡大

両グレードともに高い操縦安定性を披露

今回は、最初にあえて2リッター車のタイタニアムに試乗した。ここで乗った印象をもとに1.5リッター車に乗れば、どれだけ走りのフィーリングが「下がる」かが明確に分かるからだ。2リッター車の感想としては、もともと車両重量のあるSUVだが、低速域から十分以上のトルク感が得られるし、何よりも「もう少し加速したい」という際に高回転域への伸びが気持ち良かった。ここで1.5リッター車に乗り換えると、その「伸び」はやや鈍くなるし、登坂路でのトルク不足も感じてしまう。しかしアクセルに対するエンジンのピックアップは鋭く、何よりも全域で扱いやすい。

また1.5リッター車にはオートストップ/スタート、いわゆるアイドリングストップ機構や空気抵抗を減らすためにエンジンの冷却状況に応じて作動する「アクティブ・グリルシャッター」も搭載、十分なパワーと省燃費性能を際立たせた、「単なる下のグレード」ではない立ち位置も評価できる。

そして一番褒めたいのはやはりシャシー性能である。足まわりはストロークを十分に確保しつつ引き締まっており、タイヤの接地感なども含めたクルマの動きは、SUVにありがちな重心高の高さによる人間の体のブレをうまく抑えこんでいる。このあたりはフォーカスに代表される欧州仕込みの味付けをうまく感じる部分であり、排気量が異なっていても本質の部分では同じ走りが楽しめる。

ただひとつ文句を言えば、1.5リッター車は装着されていたタイヤのせいか、ロードノイズの多さに加え、ステアリングの切り始めやセンターに戻した際の横方向の微妙な挙動が気になった。これが2リッター車ではピシっと抑えこまれていたので、トレンドについては購入後のタイヤ変更も視野に入れておきたいと感じた。

第1回:ヘビーユーザーにこそ薦めたい(渡辺敏史)
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「クーガ」の駆動方式は「トレンド」「タイタニアム」ともにフルタイム4WDとなる。(写真=荒川正幸)
「クーガ」の駆動方式は「トレンド」「タイタニアム」ともにフルタイム4WDとなる。(写真=荒川正幸) 拡大
タイヤサイズは「トレンド」が235/55R17、「タイタニアム」(写真)が235/50R18となっている。
タイヤサイズは「トレンド」が235/55R17、「タイタニアム」(写真)が235/50R18となっている。 拡大
JC08モード計測での「タイタニアム」(写真)の燃費は10.0km/リッター。「トレンド」は、アイドリングストップ機構などの採用もあり、12.7km/リッターとなっている。
JC08モード計測での「タイタニアム」(写真)の燃費は10.0km/リッター。「トレンド」は、アイドリングストップ機構などの採用もあり、12.7km/リッターとなっている。 拡大

“買い得感”が高く、グレード選びに悩む

少々辛めに評価した点もあるが、マイナーチェンジ後のクーガのコストパフォーマンスは、どちらのグレードも高い。タイタニアムとトレンドの価格差は60万円だが、この中にはエンジンスペックの違い(トランスミッションのギア比は同じ)のほか、先進安全装備である「アクティブ・シティ・ストップ」や「BLIS(ブラインドスポット・インフォメーション・システム)」、バイキセノンHIDヘッドライト、デュアルパネルサンルーフ(フロント電動開閉式)、フルレザーシート、運転席/助手席シートヒーター、そして前述したハンズフリーパワーゲートなどが含まれている。ざっくりとだが装備表を見ると60万円以上の内容を持つ。より充実した快適性や走りのよさを求めるのであればタイタニアムがオススメとなる。

一方で、トレンドも前述した燃費向上のための専用装備はもちろんだが、何よりもこの価格でフルタイムAWDが手に入る点がすごい。実際、ライバル車と比較してもこの価格帯では二輪駆動車しか購入できないケースが多いからだ。また見落としがちだが、トレンドにもタイタニアム同様、運転席10wayパワーシートやベーシックな安全装備が同じように設定されている。自分が楽しみたいアクティビティーにAWDがあったほうがいい、と考える人にとってトレンドという選択肢は非常に魅力的。意外と言っては失礼だが、「こんないいクルマがここにあったんだ」という気付きがある。乗れば分かる良さ、と言ってしまうと無責任に思われるかもしれないが、このクラスのSUVの購入を考えているのであれば、ちょっと足を伸ばしてディーラーに足を運ぶ価値はある。クーガを知らずしてSUV選びを終わらせてしまうのはあまりにももったいないのである。

(文=高山正寛/写真=向後一宏)

第1回:ヘビーユーザーにこそ薦めたい(渡辺敏史)
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両手がふさがっている状態でもテールゲートを開けられる「ハンズフリーパワーゲート」。キーを持った状態で車体下部に足を差し入れると、ゲートが自動で開口する。
両手がふさがっている状態でもテールゲートを開けられる「ハンズフリーパワーゲート」。キーを持った状態で車体下部に足を差し入れると、ゲートが自動で開口する。 拡大
「タイタニアム」には自動緊急ブレーキや、自車の後側方を監視する「BLIS(ブラインドスポット・インフォメーション・システム)」 などが備わる。
「タイタニアム」には自動緊急ブレーキや、自車の後側方を監視する「BLIS(ブラインドスポット・インフォメーション・システム)」 などが備わる。 拡大
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4540×1840×1705mm。国産車でいえば「マツダCX-5」や「スバル・フォレスター」などに近い大きさで、日本の道路事情でも痛痒(つうよう)を感じることはない。(写真=荒川正幸)
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4540×1840×1705mm。国産車でいえば「マツダCX-5」や「スバル・フォレスター」などに近い大きさで、日本の道路事情でも痛痒(つうよう)を感じることはない。(写真=荒川正幸) 拡大
フォード・クーガ タイタニアム
フォード・クーガ タイタニアム 拡大

車両データ

フォード・クーガ タイタニアム

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4540×1840×1705mm
ホイールベース:2690mm
車重:1720kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6AT
最高出力:242ps(178kW)/5500rpm
最大トルク:35.2kgm(345Nm)/2000-4500rpm
タイヤ:(前)235/50R18 101V/(後)235/50R18 101V(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5)
燃費:10.0km/リッター(JC08モード)
価格:424万円

フォード・クーガ トレンド(写真は「タイタニアム」)
フォード・クーガ トレンド(写真は「タイタニアム」) 拡大

フォード・クーガ トレンド

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4540×1840×1705mm
ホイールベース:2690mm
車重:1640kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6AT
最高出力:182ps(134kW)/6000rpm
最大トルク:24.5kgm(240Nm)/1600-5000rpm
タイヤ:(前)235/55R17/(後)235/55R17
燃費:12.7km/リッター(JC08モード)
価格:364万円

第1回:ヘビーユーザーにこそ薦めたい(渡辺敏史)
→第3回:“いいクルマ”の典型(森 慶太)

→「フォード・クーガ」オフィシャルサイト