カンナム・スパイダーF3-T(MR/6AT)
一味違うオープンエア 2017.04.24 「カンナム・スパイダー」で風を楽しむ <PR> 持ち味は、クルマやバイクとは一線を画すドライブフィールと存在感! カナダ発の三輪バイク「カンナム・スパイダー」で東京から逗子までを往復し、オープンカーもかくやという爽快なツーリングを満喫した。四輪とも、二輪とも違う
カンナム・スパイダーという乗り物をご存じだろうか。カナダのBRP(ボンバルディア・レクリエーショナル・プロダクツ)という会社で作られる、三輪の、いわゆる“トライク”だ。『webCG』では2016年のJAIA二輪車試乗会の特集で一度紹介されているので、覚えている方もいるかもしれない。
航空機や鉄道車両の分野でも知られるボンバルディアの歴史は、1942年に世界で初めてスノーモービルを発表したところから始まる。その後、水上バイク、ATV(オールテレインビークル)と分野を広げ、2003年にこれらを手がけるBRPが独立したのである。今回のカンナム・スパイダーを含め、日本ではBRPジャパンが輸入販売を行っている。
トライクには前2輪と後2輪とがある。カンナム・スパイダーはすべて前者だ。ツーリングタイプの「RT」シリーズとスポーティーな「F3」シリーズがあり、2017年モデルでは前者が「RT」「RT-S」「RTリミテッド」の3車種、後者が「F3」「F3-T」「F3リミテッド」の3車種となっている。このほかにも、限定車としてスポーツ性を極めた「F3-Sデイトナ500」がある。今回乗ったのはF3-Tだ。
エンジンはすべてオーストリアのロータックス製で、1.3リッターの水冷直列3気筒を横置きし、ベルトで後輪を回す。最高出力は117ps、最大トルクは130Nmと、特に前者は同排気量の四輪車用ダウンサイジングターボに匹敵する数字だ。
独特の存在感がある
全長×全幅×全高=2596×1497×1241mmというボディーサイズは、二輪車を基準とすれば大きいけれど、最新の四輪車を例に出せば「スマート・フォーツー」より小さい。取り回しのよさは抜群だ。車両重量は430kgと、排気量では約半分となる「ケータハム・セブン160」をも下回る。
一方で、見た目の存在感は寸法に比例しない。なによりも前2輪、後1輪というレイアウトが効いている。
ラジエーターを内蔵したフロントノーズと両側の前輪が織り成す顔つきの上には、モーターサイクル風のデュアルヘッドランプとミラー内蔵ウインカー、スクリーンがあり、そこから後ろはモーターサイクルとほぼ同じ。似た乗り物を探すのが難しいほど、独自の姿をしている。
同時にノーズの内側にはヘルメットが格納可能なスペースを備え、F3-Tではリアの両サイドにも荷物を収められる。独特のスタイリングをスマートに乗りこなせる配慮も備わっているのだ。
操作系も独特だ。スロットルはモーターサイクルと同じように、右側のグリップをひねることで開け閉めする。しかし多くの二輪車と異なり、そのハンドルにはブレーキレバーがなく、右足で踏むペダルで減速する。こちらはクルマに近い。これならペダル踏み間違えによる暴走事故は起こらないはずだ。
ハンドルの付け根にあるキーをひねり、ブレーキを踏みながら右グリップ脇のスタータースイッチを押してエンジンを掛ける。3気筒ならではのハスキーなサウンドが体を包み込む。
クルマとは一線を画す爽快感
ギアは左足でレバーを操る多くの二輪車とは違い、左グリップのシフトパドルで操作するセミオートマチックだ。シフトアップは手動で行うが、シフトダウンは自動で行ってくれるので、一時停止のたびにギアを落としていく必要がない。これは楽だ。しかもシフトアップ時のショックやタイムラグがほとんどなく、スムーズな加速が味わえる。
エンジンは流れに乗って走る限り、2000~3000rpmあたりまで回せばすむ。この回転数では音も低く抑えられているので、標準装備のオーディオを楽しむこともできた。USBポートもあるので、スマートフォンに入ったお気に入りの音楽も聞くことができる。
右手を大きくひねれば、かなり強烈な加速が味わえる。しっかりハンドルを握ってないと、体ごと後ろに持っていかれそうなほどだ。それでいて80km/hで流す高速道路でのクルージングは安楽そのもの。スクリーンのおかげで上体にはほとんど風が当たらず、予想以上に快適だった。
カンナム・スパイダーは日本では普通自動車免許で運転することになり、ヘルメットの装着義務もないが、周囲の車両からの跳ね石などを考えればかぶるべきだろう。それでも開放感は絶大だ。
顔に直接風が当たることはないけれど、首から下はボディーの中に収まるクルマとは違い、ライダーの体がむき出しとなるので、全身で風を受けながら走る感覚はモーターサイクルと同じ爽快さなのである。
でも三輪なので止まるたびに足を着く必要はないし、バランスを崩して転倒する心配もない。バックギアも備わっているから、後ろへ下がる際に車体を手で押すことも不要。機動性についてはクルマに近い。
唯一無二のドライブフィール
僕がカンナム・スパイダーに乗るのはこれが3度目。人より少しだけ経験豊富だからこそ気付くこともあった。シャシーが熟成されていたのだ。
もともとカンナム・スパイダーは、乗り心地についてはかなり快適だったけれど、以前乗ったモデルでは、三輪特有の斜め方向の揺れが終始気になった。ところが最新のF3-Tは、ザックス製の大径ショックアブソーバーを組み込んだおかげもあり、揺れが効果的に抑えられている。クルーズコントロール(!)をセットしてのクルージングは限りなく四輪車に近かったのである。
ではハンドリングはどうか、この点は二輪とも四輪とも異なる、独自の世界があると感じた。
車体が二輪車のように傾かないので、ハンドルを切って曲がることになるのだが、そのハンドルは“ギア比1対1”なので、四輪車と比べれば圧倒的にダイレクトだ。そのうえで内側のステップに重心を掛け、上体をコーナーの内側に入れていくと、安定感が増す。
つまり手足だけを動かしてコーナーを曲がるクルマとは違い、全身を使って旋回していく。でも安定感や安心感はモーターサイクルの比ではない。見た目だけではない。乗り味もまた唯一無二なのである。
僕は二輪車にも四輪車にも乗るので、両方の視点からカンナム・スパイダーに接することになる。ライダーとして見ると車体が傾かないことに違和感を覚えるが、ドライバーとしてはハンドルを使って曲がるのは自然なことだ。そのうえで、全身で風を切って走る爽快感やダイレクトに伝わるエンジンの鼓動や音など、プラスアルファの部分をいくつも感じる。
モーターサイクルを知らないクルマ好きのほうが、カンナム・スパイダーに引かれるのではないか。3度目の試乗で、そんな結論に至った。
(文=森口将之/写真=荒川正幸)
車両データ
カンナム・スパイダーF3-T
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2596×1497×1241mm
ホイールベース:1709mm
車重:430kg
駆動方式:MR
エンジン:1.3リッター直3 DOHC 12バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:117ps(86kW)/7250rpm
最大トルク:130Nm(13.3kgm)/5000rpm
タイヤ:(前)MC165/55R15 55H(ケンダラジアルKR31-T3)/(後ろ)225/50R15 76H(ケンダラジアルKR21A-D4)
燃費:--km/リッター(JC08モード)
価格:277万2000円
→「カンナム・スパイダーF3-S デイトナ500エディション」の試乗記も読む
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