メガーヌ ルノー・スポール
スバラシすぎる 2019.01.17 実力検証! 新型メガーヌR.S.<PR> “最速のFF車”を目指して開発された、ルノーのハイパフォーマンスモデル「メガーヌ ルノー・スポール」。その走りを、第一線で活躍するレーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? ワインディングロードにおける印象を報告する。(語り=谷口信輝/まとめ=大谷達也<Little Wing>/写真=小林俊樹)
本当によく曲がる
メガーヌ ルノー・スポール(以下、R.S.)といえば、「ああ、『ホンダ・シビック タイプR』や『フォルクスワーゲン・ゴルフGTI』とニュルブルクリンクでのFF最速の座を賭けて競い合った、あのスポーツモデルね?」と、『webCG』読者の皆さんならピンとくるはずだ。
新型ではまだニュルブルクリンク・チャレンジは行われていないため、どの程度のタイムをたたき出すかはわかっていないが、今回はそのメガーヌR.S.国内の峠道へと連れ出し、谷口信輝に試乗してもらった。
そんな新型メガーヌR.S.から降り立った途端、まだ私がなにも尋ねていないのに、谷口は自ら進んで「もう、サイコーです!」と宣言したのだった。
「いやあ、素晴らしい運動性能ですね」
谷口の言葉は止まらない。
「エンジンパワーも結構あるし、旋回性能が高くてすごくよく曲がる。前輪駆動なのに、アクセルを踏んだままグイグイと曲がっていけるところもすごい。ドライビングモードの切り替えでは、ノーマルより1段階上のスポーツが一番いいですね。それより上のレースにすると電子デバイスがほとんど効かなくなって、より高いドライビングスキルが要求されるようになります。例えば、前輪に無理にパワーをかけたらトルク・アンダーステアになるし、限界付近ではリアもちょっとふらつき気味になったりする。まあ、サーキットでちょっと無理をさせながら走るときにはレースモードが都合いいのかもしれないけれど、公道を走るんだったらスポーツがちょうどいいでしょうね。それにしても、このスポーツとレースのすみ分けがきっちりできているところも、素晴らしいと思います」
谷口は、ここまでの言葉をほとんど一気にまくしたてたのである。それどころか、話したいことがもっともっとありそうな感じだったが、聞き手としてはもっと掘り下げたい部分もあったので、まずは「スポーツモードが気に入ったということは、スタビリティーコントロールの介入の仕方がイヤじゃなかったという意味ですね?」と逆に質問してみることにした。
→「ルーテシア ルノー・スポール トロフィー アクラポヴィッチ」の記事を読む
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すべてがバツグンにいい
すると谷口は「全然イヤじゃないです。むしろ、いい感じで助けてくれるのでありがたいくらい。オン・ザ・レール感覚で気持ちいいですよ」と答えたのである。
では、谷口がクルマのリニアリティーを説明するときに用いる“数字の並び”はどうだったのか?
「もう、バツグンですよ。バツグン。乗って走りだした瞬間から、目の前に見えるあのカーブに向けて加速するだけでエンジンのパワーの出方が素晴らしいことがわかったし、ギアレシオも申し分ありません。さらに、そこからステアリングを切り込んでいったときのリニアリティーもいいし、タイヤの縦グリップと横グリップをどう配分するかも自由自在です」
このコメントを理解するには、おなじみの「フリクションサークル」について知っておく必要がある。フリクションサークルとは、タイヤのグリップ力を360度について計測したときのグラフが円に似ていることからつけられた言葉である。つまり、タイヤに加速だけの仕事をさせれば縦グリップは100%で横グリップは0%、逆にコーナリングだけの仕事をさせれば横グリップは100%で縦グリップは0%となることを意味する。
その間も縦グリップと横グリップのバランスは刻々と変化していき、例えばコーナリング中に減速すれば横グリップと縦グリップが半々という状態も起きうることになる。
「例えば、『いま縦に70%使っているから横は30%』とか、『今度は横に60%使っているから縦は40%』みたいな配分をコントロールするのが、バツグンにやりやすい」(筆者注:谷口はわれわれにわかりやすいように縦と横の和を100%として説明しているが、厳密には「縦と横の二乗の和の平方根が100%」と説明するのが正しい)
「これって、つまりはステアリングなどから伝わってくるタイヤのインフォメーションが正確で、それに対するドライバーの操作がタイヤを介して正確に路面に伝えられるから実現できること。言い換えれば、クルマとのキャッチボールがしやすいわけで、これこそ、まさに僕が理想とするドライビングです」
開発者のすごさが伝わる
「僕が理想としているのは、クルマと会話しながら、もしくはクルマとキャッチボールしながらドライビングすること。それはつまり、クルマからドライバーに正確に情報が伝わると同時に、ドライバーからクルマにも正確に情報が伝わることでもあります。これがメガーヌR.S.は飛び抜けてよくできている。おそらく、このクルマをまとめている人が優秀なんでしょうね」
メガーヌR.S.のまとめ役といえば、ルノー・スポールのスゴ腕テストドライバーとして有名なロラン・ウルゴン氏だろう。谷口はウルゴン氏の名前を知らなくても、彼の存在をメガーヌR.S.のハンドリングから感じ取ったようである。
「僕が言うのもおこがましいですけど、そのウルゴンさんがとにかく素晴らしいというか、完璧な人なんでしょうね。もう、これから出るルノーのクルマは、全部そのウルゴンさんにチューニングしてほしいくらいです」
「メガーヌR.S.にだってもちろんクルマとして完璧でない部分はあります」と谷口。
「例えば、発進するときに1速でフルスロットルにすればトラクションが不足してカタカタってホイールが細かく上下したりする。2速にシフトアップしても、最初はちょっとモヤモヤとしてからギューンと加速し始めるとかはありますよ。でも、これって排気量は1.8リッターでしょ? そりゃあ、探せば苦手なところは出てきますよ。ただし、普通に走っている限り、そんなことはまったく問題にならないと思います」
同じパワートレインでもギアボックスは大いに気に入った様子だった。
「走っている途中で、一度マニュアルシフトを試したんです。でもね、マニュアルだと忙しくて仕方ない。だから、すぐにシフトセレクターを右側に倒してオートマチックモードに戻しちゃいました。そのくらい、メガーヌR.S.のオートマチックモードは賢いですね。例えば、オートマチックのままでもクルマが勝手にどんどんシフトアップしたりしないから、シフトアップしてはキックダウン、またアップしてダウンってことが起きない。もう、オートマチックのままで全然問題ありませんよ」
クラス最良の一台
乗り心地はどうか?
「全然、硬さを感じませんよね。僕はこのくらいしなやかな感じ、大好きです。それでもスタビリティーが素晴らしいから、箱根のワインディングロードを走っていてもまったく怖くない。この辺はニュルブルクリンクをターゲットにおいて開発している強さでしょうね」
続いてエクステリアに関する印象を語ってもらった。すると、最初は「うーん、あんまりグッとこないなあ」と気乗りしない様子だったのに、やがて「うーん、でも、結構かっこいいかも。このフロントフェイスがなんともいいですね」とその評価を一変させた。乗った印象がいいと、デザインまでよく見えてくるのが谷口流なのだ。
ただし、インテリアについては気になるところもあったようだ。
「フロントシートはホールドも掛け心地もいいんですが、ダッシュボード周りのこの殺風景な感じはいただけませんね。シンプルな仕上げはいいんですが、それだったら例えばカーオーディオのバング&オルフセンみたいに『シンプルだけど質感が高い』みたいなデザインにする手もあったんじゃないかと思います。あと、このディスプレイの下にあるロータリースイッチとか、手を支える場所がどこにもないので走行中は扱いにくい。スペースの話をすれば、後席に僕が腰掛けると膝がフロントシートにぶつかっちゃうし、ヘッドルームもギリギリでした」
もっとも、それらは「あえて言えば」というレベルの話。メガーヌR.S.が谷口にとって極めて魅力的なクルマであることは間違いないようだ。
「メチャクチャいいですよ、このクルマ。これ1台あれば何にでも使えるでしょうし、走りの性能も文句の付けどころがない。ウチにはいま、たまたま『A45 AMG』があるからすぐには買わないでしょうが、2リッタークラスのスポーティーカーを探している人には絶対お薦め。いや、本当に魅力的なクルマです」
谷口がここまで絶賛するクルマは本当に珍しいというべきだろう。
【編集部より】
この記事は、スマートフォン版『webCG』のプレミアム会員向けに制作され、2018年12月公開されたものですが、今回ルノー・ジャポンの協力により、非会員の皆さまにも広く読んでいただけるよう再掲載いたしました。なお、内容については、前述のプレミアム会員向け記事と変わりありません。
テスト車のデータ
メガーヌ ルノー・スポール
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4410×1875×1435mm
ホイールベース:2670mm
車重:1480kg
駆動方式:FF
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:279ps(205kW)/6000rpm
最大トルク:390Nm(39.8kgm)/2400rpm
タイヤ:(前)245/35R19 93Y XL/(後)245/35R19 93Y XL(ブリヂストン・ポテンザS001)
燃費:13.3km/リッター(JC08モード)
価格:440万円
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:8950km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:213.6km
使用燃料:17.6リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:12.1km/リッター(満タン法)/9.6リッター/100km(約10.4km/リッター、車載燃費系計測値)
→「ルーテシア ルノー・スポール トロフィー アクラポヴィッチ」の記事を読む
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