ルーテシア ルノー・スポール トロフィー アクラポヴィッチ
雨が教えてくれた 2019.01.11 サーキットで試すルーテシアR.S.の真価<PR> ルノーの高性能ハッチバック「ルーテシア ルノー・スポール(R.S.)」に、台数100台の限定モデル「R.S.トロフィー アクラポヴィッチ」が登場。定評のある走行性能に刺激的なエキゾーストサウンドをプラスした特別なR.S.の走りを、雨のサーキットで確かめた。アクラポヴィッチとは何者か?
チューニングメーカーのみならず、今や世界の自動車メーカーからも熱い視線が注がれる、日本を代表する自動車イベントとなって久しい「東京オートサロン」。毎回“満員御礼”が報じられるこのイベントの会場で、いつもホットな話題を提供してくれるのがルノーだ。今年も期待にたがわぬ粒ぞろいとなった出展車両の中から、ここに紹介するのは本年1月発売の限定車、ルーテシアR.S.トロフィー アクラポヴィッチである。
全長4.1mほどにすぎないコンパクトなボディーとは裏腹に、走りのポテンシャルの高さにかけてはすでに定評があるルーテシアR.S.。そこに加えられるアクラポヴィッチなるネーミングが示すものは、実は1991年に設立されたスポーツマフラーのメーカー名だ。
フジツボやHKS、はたまたブリッツなどなら知っているけれど、”アクラポヴィッチ”とは一体何者? という声もあがりそうだが、それも無理はないだろう。前述のようにこのブランドはまだ比較的若いことに加え、当初はモーターサイクルのマフラーに軸足を置いてきたのだ。
それでも最近は、メルセデス・ベンツやBMW、アウディ、ポルシェといったドイツ勢を筆頭に、フェラーリやシボレー、さらには「三菱ランサーエボリューションX」や「日産GT-R」といった日本車と、名だたる四輪スポーツモデル向けにアイテムを積極投入。そもそもはレースでの高評価から多くの二輪ワークスチームに採用されて名声を高め、昨今は四輪の世界でもその知名度を急速に高めつつあるのがアクラポヴィッチというブランドなのだ。
ベース車はサーキット向けの上級グレード
そんなアクラポヴィッチが得意とするチタンとステンレスのコンポジットマフラーを装着していることこそが、最大の見どころであるルーテシアR.S.トロフィー アクラポヴィッチ。ベース車のルーテシアR.S.は、2017年7月にマイナーチェンジでフルLED式のヘッドライトや、チェッカードフラッグを想起させるグラフィックによるデイタイムランニングライトが新採用されている。
同じルーテシアR.S.でも、よりベーシックな「シャシーカップ」用に比べると、「トロフィー」用の足まわりは「フロントが20mm、リアが10mmローダウンされた、サーキット走行によりふさわしい低重心シャシー」と紹介される。トロフィー アクラポヴィッチに採用される足まわりは、タイヤ/ホイールのセットを含めてそんな通常のトロフィー用から変更ナシと報告されている。
さらに、トロフィーのノーマル仕様とアクラポヴィッチ仕様との見た目上の違いは、リアゲートに装着されるエンブレムなど、外装の一部がブラックであるという点のみ。かくして、ためつすがめつ眺めた末に、初めてその違いに気が付くことができる玄人好みの限定車(?)が、アクラポヴィッチ仕様であるということになる。
ヘビーウエットでも恐怖を感じることはない
そんな限定モデルを富士スピードウェイのショートサーキットでテストドライブした。ただし、短時間の占有で予定されていた走行時間帯は、あろうことか冷たい雨が降る朝一番というあいにくのコンディション。そんな条件ゆえの悪い予感は的中し、早速走り始めてみると、全く温まっていないタイヤの、しかもぬれて汚れた路面上でのグリップ力は驚くほどに低く、まさに“薄氷を踏む思い”の連続ということに。率直なところ、秘めた走りのポテンシャルを引き出すには、ほど遠い状況となってしまった。
シャシーカップ用の220psに対し、アクラポヴィッチマフラーの採用によって「実質的にさらに数psの上乗せになっているはず」という1.6リッターのターボ付きエンジンは、アクセル操作に対するレスポンス、そしてパワー感共に申し分ない。「ホームストレートの後半で一瞬4速まで入る」という程度のレイアウトであるタイトなこのコースでは、内輪のホイールスピンをブレーキ力で食い止めることでトラクション能力をアップさせる「R.S.デフ」がたびたび介入する状態になった。
相変わらずのツルツル路面ではあるものの、多少慣れたところでセンターコンソール上の「R.S.ドライブ」ボタンを押して「レース」モードを選択すると、ESC(横滑り防止装置)の機能が解除されて、姿勢変化が大きくなる。
が、それでもスピン挙動に陥る恐怖をほとんど感じなかったのは、このモデルがFFレイアウトの持ち主であることに加えて、アクセルレスポンスにたけていたがゆえ。アクセルオフによる前荷重でノーズを内側に向けた後、すかさずのアクセルオンで直ちに前輪側を引っ張り、狙った方向へと瞬時にクルマを導くことができるからだ。
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気分を高揚させてくれるエキゾーストサウンド
レイアウト上、どうしても大幅なフロントヘビーが避けられず、かつ必要なトラクションを確保するためにはそれが不可欠でもあるFFモデル。それゆえのデメリットが最も大きく表れるのがハードブレーキのシーンである。そもそも重いフロント側に急減速による荷重が加わり、荷重が抜けたリアタイヤによる減速力が期待できなくなると同時に、安定性も急低下しがちだからだ。
実は、シケインが設定された富士スピードウェイのショートサーキット1コーナーは、まさにそんなデメリットが表れやすいレイアウト。高速からの減速Gを残しつつ左→右→左ヘアピンとコーナーが連続するこのセクションは、FF車にとっての“鬼門”と言って差し支えない。
しかし、このような難しいセクションを、ヘビーウエットという悪条件の中でさえ、さほどの危機感もなく何周でも同じラインを踏みながらクリアしていけるという点に、このモデルの高いポテンシャルを実感する結果となった。ハードブレーキングを繰り返しても利き味が変わることのないブレーキのタフネスぶりが、そんな1コーナーへのアプローチシーンで大きな信頼を感じさせてくれた点も見逃せない。
そして、シャシーカップ仕様の14.5に対して13.2へと速められたステアリングギア比がもたらす、俊敏でゴキゲンなコーナー切り返しでの挙動と共に、サーキットドライビングでの気分を高揚させてくれたのが、アクラポヴィッチマフラーが奏でるサウンドにあったことも間違いナシ。ルーテシアR.S.トロフィーが備える絶対的なスピード性能に、ドライビングプレジャーをさらに盛り立てるサウンドを上乗せした、コンパクトながらもプレミアムなスポーツモデル。それが、限られたオーナーだけに届けられる、R.S.トロフィー アクラポヴィッチなる特別なルーテシアの真価なのだ。
(文=河村康彦/写真=向後一宏)
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テスト車のデータ
ルーテシア ルノー・スポール トロフィー アクラポヴィッチ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4105×1750×1435mm
ホイールベース:2600mm
車重:1290kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:220ps(162kW)/6050rpm
最大トルク:260Nm(26.5kgm)/2000rpm
タイヤ:(前)205/40ZR18 86Y XL/(後)205/40ZR18 86Y XL(ミシュラン・パイロットスーパースポーツ)
燃費:--km/リッター
価格:344万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:245km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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